カスタマーサポートを強化するカスタマージャーニーマップの活用方法について解説

2023/12/29

カスタマーサポートの分野ではデジタル化に伴い様々なチャネルが増加し、その複雑化が進んでいます。そんな中、顧客との繋がりを強化するためには、彼らがどのような行動をとり、どのような心情でサポートに問い合わせてくるのかを深く理解することが不可欠です。

このような顧客理解を助け、最適なタッチポイントを提供するツールとして「カスタマージャーニーマップ」があります。これは、顧客の行動や思考を時系列に沿って明確に可視化したもので、サポートの適切な提供や施策の計画に大変有効です。カスタマージャーニーマップを用いることで、企業は顧客の心理や行動の背後にあるニーズや課題を把握し、それに適切に対応するサポートのタッチポイントを整備することができます。

本記事では、カスタマーサポートの現場で活用できるカスタマージャーニーマップの概要や作成方法について詳しく解説します。

カスタマージャーニーマップとは?

カスタマージャーニーとは、消費者が自社の商品やサービスを認知し、購入にいたるまでの道筋のことです。

ビジネスを行う上で、消費者の取る行動や思考を理解することは非常に重要です。消費者が自社の商品やサービスを最初に認知し、最終的に購入を決意するまでの過程は、一貫した線上にはないことが多いのです。彼らは様々な触媒やチャネルを通じて情報を取得し、各ステージで異なる思考や感情を持っています。

そして、こうした消費者の行動や思考の道筋(ジャーニー)を可視化し、整理したものが「カスタマージャーニーマップ」です。カスタマージャーニーマップを用いることで、消費者が何を求め、どのような疑問や悩みを抱えているのか、そして我々がどのようなアクションを取るべきかが明確になります。

特に現代はデジタル技術の発展により、消費者が利用する情報の媒体が多様化しています。SNS、Webサイト、ブログ、電子メールなど、さまざまなチャネルが存在し、それぞれにおいて消費者の行動や思考が異なるため、一律のアプローチが難しくなっています。

このような背景から、顧客の行動・思考・感情を時間軸に沿って整理し、最適な接点を見極めるためのツールとして「カスタマージャーニー」の考え方が登場し、広く利用されるようになりました。

カスタマーサポートにおけるカスタマージャーニーマップの必要性

カスタマージャーニーマップは、多くの場合、マーケティング戦略の策定の際に用いられるツールとして知られています。しかし、カスタマーサポートの分野においても、このマップの活用は非常に有効です。

カスタマーサービスが最適なチャネルで提供され、そのすべてのチャネルがシームレスに連携していることで、顧客は一貫したサポートを受けることができます。この一貫性は、カスタマーサポートを通じて顧客との関係を強化する上で欠かせない要素です。実際、カスタマーサポートにおいて問題を迅速かつ効果的に解決することは、顧客の離反を67%も防ぐことが可能であるとの研究結果もあります。

顧客との接点が多様化する現代において、カスタマージャーニーの把握は、全ての部門での連携を強化し、最適な顧客体験を提供するための鍵となります。

カスタマージャーニーマップを作成するメリット

カスタマーサポートにおいて、カスタマージャーニーマップを作成するメリットは多岐にわたります。具体的には、可視化することで顧客体験の全体最適が可能になり、一貫性のある顧客体験が実現できたり、顧客体験の中でのボトルネックの早期発見ができます。また、可視化されていると社内外とのコミュニケーションに役立ち、連携が取りやすくなります。

一貫性のある顧客体験が提供可能になる

現代のカスタマーサポートは、かつてのコールセンター中心のシングルチャネルから、多様なデジタルチャネルを取り入れるオムニチャネルへと変化しつつあります。この多様性は、顧客にとって利便性をもたらしますが、一方で異なるチャネル間での情報の乖離や体験のブレが生じるリスクも孕んでいます。

ここでカスタマージャーニーマップの役割が大きくなります。カスタマージャーニーマップを用いることで、顧客が経験する接点や行動を一つの地図上で整理・可視化することができます。この地図を元に、各チャネル間の情報伝達やサービス提供を調整し、顧客がどのチャネルを利用しても同じレベルの質高いサポートを受けられるような体制を構築することが可能です。

施策・チャネルの優先度が明確になる

カスタマーサポート業務を進化させていくために、限られたリソースの中で成果を挙げていくためにはどの施策やチャネルに力を入れるべきかの判断は重要です。カスタマージャーニーマップを利用することで、この判断がより明確に、かつ客観的に行えるようになります。

まず、マップで可視化することで各フェーズごとに区切ることができます。顧客満足度が低下しているフェーズやチャネルは明確に識別され、これを中心に改善施策を練ることができます。一方、満足度が高い部分は、現状維持の方針を取ることでリソースの効率的な割り当てが実現可能です。

さらに、カスタマージャーニーマップを通じて全体の顧客体験を俯瞰的に捉えることができるので、局所的な分析では見逃してしまうような要因も発見しやすくなります。

例えば、特定のフェーズでの満足度低下の原因が、実は前後のジャーニーの接続性や情報伝達の乱れに起因している場合、このような関連性を早期に捉えて、適切な対応策を立てることが可能となります。

センター内外との連携がとりやすくなる

カスタマージャーニーマップを活用することで、カスタマーサポートセンター内外との連携がスムーズになるのもメリットの人っつです。

センター内では、マップの作成を通じて顧客の行動や感情に関する共通の言語や認識を持つことができます。これにより、日々の業務内でのコミュニケーションが円滑になるだけでなく、問題発生時の対応も迅速に行えます。さらに、ワークショップ形式でマーケティング、営業、商品開発など異なる部門のメンバーを巻き込んでのマップ作成は、顧客を中心としたビジネスの理解をセンター内外の全員が共有する絶好の機会となります。

社外との連携においても、カスタマージャーニーマップは大いにその価値を発揮します。マップをもとにした説明は、関係者が顧客の経験を直感的に理解するのを助け、プロジェクトの方向性や目的を明確に伝えるのに役立ちます。加えて、CRMや他のシステムの連動性をマップ上で可視化することで、ベンダーやシステム開発者への要望が具体的に、そしてずれることなく伝えられます。これにより、センターとしてのニーズや要求が正確に反映されたシステムの開発や改善が期待できます。

カスタマージャーニーマップの作り方

カスタマーサポートをより効果的に行うためのカスタマージャーニーマップの作成方法について解説します。以下では、マップを効果的に作成するための具体的なステップを順を追って説明していきます。適切なテーマの決定から、顧客の感情や行動を洗い出し、最終的な対応策を練るまでのフローを紹介します。

テーマの決定

カスタマージャーニーマップ作成の第一歩は、テーマを決めることです。

テーマとは、マップ作成の主な目的や焦点を明確にしたものであり、このステップは全体の方向性を定める基盤となります。何を解決したいのか、どのような洞察を得たいのかといった目的をしっかりと設定することが重要です。

また、対象とするジャーニーのスコープを決定することで、詳細な行動や感情を洗い出しやすくなります。具体的には、顧客がカスタマーサポートにアプローチする「始点」から問題解決やサービス終了などの「終点」までを明確に定義します。このスコープ設定により、後のステップでの分析やマップの詳細化がスムーズに行えるようになります。

ペルソナの設定

カスタマージャーニーマップの作成において、最も重要なのは具体的かつリアルなペルソナを策定することです。ペルソナは、ターゲットとなる顧客の代表的な人物像を表すもので、この設定を通じて、顧客の視点に立ったサービス提供や課題の洞察が可能となります。

ペルソナ作成の際は、「女性、20代」といった単なる属性レベルでの設定では不十分です。具体的な人物像がわかるよう、仕事の内容や趣味、日常の悩みなど、リアルなプロフィールを詳細に設定することが重要です。例えば、東京都在住のIT企業勤務・結婚を控えた女性で、毎日の業務に追われる中でのカスタマーサポートへの要望や感じる煩わしさなどを想定することができます。

ペルソナを設定する過程では、対象となる顧客の情報を集め、それらから共通する特徴やニーズを抽出し、一つの人物像に仕上げます。こうして詳細に設定されたペルソナは、顧客の心の中に入り込み、彼らが何を感じ、どのような期待を持っているのかを理解する強力なツールとなります。

また、センターの特性やニーズに応じて、例えばロイヤルカスタマーと新規の顧客といった複数のペルソナを分けて設定することも効果的です。これにより、さまざまな顧客層に対する最適なサポートの提供が期待されます。

行動を洗い出す

カスタマージャーニーマップを効果的に活用するためには、顧客がジャーニーのスタートからゴールまでの間にどのような行動を取るのか、その全体像を把握することが必要不可欠です。具体的には、顧客が商品やサービスに関心を持ち始めた瞬間から、商品の比較検討、購入、使用、そして最終的にはロイヤルカスタマーになるまでの一連のアクションをリストアップします。

例えば、インターネットでの情報収集、友人からの口コミの確認、店舗やサイトでの実際の商品確認、購入の決定、アフターサポートの利用など、顧客が経験する可能性のあるさまざまなステップを詳細に洗い出すことで、その各段階での顧客のニーズや疑問点、ハードルなどを明確にすることができます。この行動の洗い出しは、カスタマーサポートの最適化だけでなく、マーケティングや商品開発においても非常に有効な情報となります。

行動をステージに分ける

顧客の行動を洗い出した後の次のステップは、それらの行動をステージごとに分類し、整理することです。ステージの設定により、顧客のジャーニーを大きなフェーズに分けることができ、各ステージでの主要な行動や課題、ニーズが一目でわかるようになります。

例えば、典型的なステージとして「認知」「検討」「決定」「購入」「利用」「ロイヤルティ構築」などが考えられます。このようにステージを設定することで、各フェーズでの顧客の感情や期待、必要とする情報やサポートなどを具体的に把握することが容易になります。また、これによりカスタマーサポートがどのステージでどのようなサポートを提供すべきか、またどのステージに重点を置くべきかの判断材料となります。

顧客接点を洗い出す

顧客のジャーニーを追う際、彼らがどのようなメディアやサービスに触れ、どのような情報を得ているのかを理解することは極めて重要です。これらの接点を洗い出すことにより、カスタマーサポートがどのタイミング、どの場所で介入やサポートを提供すべきかが明確になります。

例として、ウェブサイト、アプリ、SNS、コールセンター、実店舗、Eメール、チャットなど、多岐にわたる接点が考えられます。これらの接点を明確にし、それぞれの接点で顧客がどのような情報を求め、どのような行動を取っているのかを確認することで、より適切なサポートや情報提供を実施することができるようになります。

顧客の感情を想像する

カスタマージャーニーマップには、顧客がジャーニーの各ステージで感じる感情を明確にすることが重要です。具体的な接点や行動だけでなく、その時々の顧客の感情を理解することで、真に顧客中心のサポートを提供するヒントを得ることができます。

例えば、新しいサービスの登録時、顧客は「わくわく」「期待」といった前向きな感情を抱くかもしれません。しかし、操作が複雑だと「面倒」「不安」といった感情に変わるかもしれません。また、質問や問題がスムーズに解決した時点で「安堵」「感謝」といった感情が湧き上がることでしょう。

これらの感情の変化をマップ上で可視化することにより、どのステージで顧客が特定の感情を感じるか、そしてそれに対してどのようなサポートや施策が求められるかを明確にすることができます。

対応策を考える

カスタマージャーニーマップを完成させたら、そのマップをもとに課題や改善点を明確にし、具体的な対応策を考えるステップが始まります。マップ全体を一つの視点から俯瞰することで、それまで気づきにくかった顧客の課題や不満点が浮かび上がりやすくなります。

具体的な課題を洗い出したら、それに対する解決策や施策をブレストすることが求められます。この際、異なる部門や役職の人々の意見を取り入れることで、多角的な視点からの解決策が得られるでしょう。

実際に顧客が直面する問題点を改善する施策の策定は、カスタマーサポートの質を高める上で極めて重要です。このステップにおいて、マップはその改善策を策定するための強力なツールとなります。

カスタマージャーニーマップのポイント

カスタマージャーニーマップを効果的に活用するためには、ただ作成するだけではなく、いくつかの重要なポイントに留意することが必要です。これらのポイントを押さえることで、より実際に役立つマップを作成し、企業のカスタマーサポートの質を向上させる手助けとなります。以下では、カスタマージャーニーマップを最大限に活用するための主要なポイントを詳しく解説していきます。

実際の顧客の声を基にする

カスタマージャーニーマップを作成する際の最も重要な要素は、その情報源となる「顧客の声」です。この顧客の声は、自社の都合や想定だけに基づく架空のものではなく、実際の顧客からのフィードバック、アンケートなどで収集された生の声を基にして構築する必要があります。

実際の顧客の声を取り入れることで、マップは現実の顧客経験を正確に反映することができ、具体的な改善策の策定や施策の実行に役立てることができます。架空の情報に基づくマップは現実から乖離してしまい、意味のないものとなりかねません。そのため、常に「現実の顧客の声」を根拠としてマップを更新し続けることが重要です。

作成には各部門の協力が必要

カスタマージャーニーマップは、顧客がビジネスのあらゆる点で経験するジャーニーを正確に捉えるツールです。そのため、各顧客接点でのリアルな顧客の声を効果的に集め、マップに反映するには各部門の協力が不可欠です。営業、マーケティング、カスタマーサポート、製品開発など、顧客と接する部門ごとの情報やフィードバックは、マップを豊かで詳細なものにします。

一方、一つの部門だけでマップを完結させるアプローチも考えられますが、これは部門内だけの最適化を追求する結果となり、ビジネス全体としての最適解を得ることが難しくなります。全社規模での顧客体験の最適化を目指す場合、全部門が連携し、共有の視点で顧客のジャーニーを捉えることが極めて重要です。

作成後の見直しが重要

カスタマージャーニーマップは一度作成したら完結するものではありません。市場の状況や顧客のニーズ、社内の戦略など、様々な要素が変動する中での固定的なマップは、徐々に実際のジャーニーとの乖離を生むリスクがあります。このため、定期的な見直しは絶対に必要です。

施策の実施後には、その結果をもとにマップの更新や調整を行うことが求められます。さらに、マップを継続的に磨き上げることで、社内の顧客理解が深まり、より精度の高いサービス提供や施策の策定が可能になります。カスタマージャーニーマップは、企業の成長とともに進化し続けるべきツールであり、そのための定期的な見直しが不可欠です。

まとめ

本記事を通して、カスタマーサポートを強化するためのカスタマージャーニーマップの活用方法を解説しました。カスタマージャーニーマップは、顧客が商品やサービスとの接触から購入、使用、そしてリピートまでの過程を明確に把握するための強力なツールです。特に、カスタマーサポートの領域においては、顧客の声や体験を真摯に受け止め、それを基にサービス改善を進めることが求められます。

現代のビジネス環境では、単なる商品やサービスの提供以上に、顧客体験を高めることがプロフィットの観点で非常に重要となっています。そして、これまでコストセンターとしての側面が強かったカスタマーサポートも、プロフィットセンターとしての可能性を秘めています。そのためには、顧客体験の改善に真摯に取り組む必要があります。

最後に、ビジネスの各ステージでの顧客体験を網羅的に、かつ具体的に捉える手段として、カスタマージャーニーマップの活用は欠かせません。これをベースに、カスタマーサポートを更なる価値あるものへと昇華させる努力を続けましょう。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 平井 美穂

    2012年、株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)へ入社し、コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属。フィールドサポータや営業コーディネータ、キャリアアドバイザー、新規営業、人材紹介(転職支援)などを経験。
    2020年 人材紹介にて自己最高売上を記録、時短勤務×妊娠中での実績が評価され全社月間MVPにノミネート。現在5歳と2歳を育てるパワフルワーママ!

    ・趣味:断捨離、森林浴、岩盤浴
    ・特技:細かい事に気が付く点

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