CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは│用語解説と向上のポイントを紹介
2024/09/27
- 顧客満足度向上
本記事ではコンタクトセンター業務に携わる方向けにCX(カスタマー・エクスペリエンス)について、用語の解説や実務に活かせるCX向上のポイントをご紹介します。
- 「最近CXという言葉はよく聞くけど、いまいち理解できていない」
- 「CSやUXやEXなど、類似用語との違いが分からず混乱している」
- 「現場でCXを向上しろと言われたけど、どうすればいいか分からない」
上記のようなお悩みを持つ方におすすめです。この記事を一読すれば、CXの基本概念を理解することができ仕事でも自信を持ってCXについて取り組めるようになります。
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CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは
CXとは、Customer Experience(カスタマー・エクスペリエンス=顧客体験)の略語です。サービスや商品そのものの機能や価格だけではなく、顧客が体験する購入前から購入後までの一連のプロセスまでを対象とし、「感情的な価値」への訴求を重視するコンセプトないしマーケティング用語を指します。
例えば、インターネット通販で商品を購入することをイメージしましょう。まず、初めに顧客は広告やSNSを見て商品を認知します。その商品に関する情報や口コミなど情報収集をし、購入意欲が高まったところで通販サイトに訪れ、さらに写真や価格、商品紹介文を確認します。その時に不明点や気になることがあったらサイト内のFAQページを確認したり、コンタクトセンターにお問い合わせすることもあるでしょう。疑問が解決できたらようやく購入ページで顧客情報の登録や決済へと進みます。そして、数日待つと運送会社から商品が送られ、それらが気に入ったら自身のSNSにアップしたり、サイトへレビューを書いたりして、共有されます。
今記載したのはインターネット通販で商品を購入する際の一連のプロセス例ですが、まさにこのプロセスで顧客がどのような感情になったかを重視するコンセプトがCXです。
もしかしたら、商品紹介ページが煩雑で煩わしいと感じたかもしれないし、コンタクトセンターでの対応が素晴らしく、企業の信頼感へ繋がったかもしれません。このように顧客の感情を考え、魅力ある体験を提供することが重要です。
CXは複数の構成要素が組み合わさったものである
CXは複数の構成要素からなります。CXの中に、UXなどの考えも包括されるような関係性になります。(CXとUXの違いについては後述します)カスタマーサービスもCXを構成する要素の一つで、顧客との直接のタッチポイントということもあり、CX全体を左右する重要なポジションと言えます。
カスタマーサービスは、単に顧客の対応を行うだけではなく重要なデータの収集場所にもなりますし、ブランドイメージにも大きく関わりがあります。アメリカ企業のザッポス社のカスタマーサービスではいわゆる「神対応」が有名で、その対応がブランドイメージに繋がり、ひいてはマーケティングや広告という要素などにも繋がってきます。
より良いCXを実現するには構成要素のそれぞれが独立したものではなく、連携して質を高めていくことが重要です。例えば、配送スピードというのはCXを高める一つの手段ですが、商品配送をいくら頑張っても商品梱包が追いついていないと配送スピードを高めることはできません。広告にどれだけ力を入れても、ブランドイメージが悪いと逆効果になることもあります。
全体がフィードバックループで繋がっており、ボトルネックとなる構成要素はその時々によって変わっていくため、部分最適ではなく全体最適になるように改善点を見極めていく必要があります。
類似用語(CS、UX、EX)との違い
CXという言葉とよく混合されがちな類似用語についても整理しておきましょう。
名称 |
CS Customer Satisfaction |
UX User Experience |
EX Employee Experience |
和訳 |
顧客満足 | ユーザー体験 | 従業員体験 |
対象 |
顧客 | ユーザー(実際の使用者) | 従業員 |
内容 |
顧客が商品・サービスに対してどの程度満足しているかを示す指標 |
ユーザーが商品・サービスを使用した際に発生する個々の体験のこと |
従業員がその企業で働く際に発生するあらゆる体験のこと |
CXとCSの違い
CSは顧客が商品・サービスに対し、どの程度満足しているかを測る指標です。コンタクトセンターでは長年用いられてきた指標で、顧客へのアンケート等を通し顧客の感情的な評価を定量化することができます。
CXとの違いは、CSが商品やサービスの満足度を扱うのに対して、CXは商品やサービスの購入前から、購入後までの全体的な体験価値を扱う点が異なります。
CXとUXの違い
UXは、ユーザーが商品やサービスを使用した際に発生する個々の体験のことです。ITサービスの普及とともに広まった概念で、アプリケーションの操作性やユーザビリティなどを考える上で重要なコンセプトです。
CXとの違いは、UXが商品、サービスの実際の使用者を対象としてるのに対し、CXでは商品、サービス利用前の潜在顧客までを対象としている点です。そのため、前述の図のように、UXはCXの中に包括されています。
CXとEXの違い
EXは、従業員がその企業で働く際に発生するあらゆる体験のことを指します。日本でも昨今、転職することが当たり前になりつつあります。もとより人口減少で人材不足の中、人材の流動性も活発になり、企業としてはこれまで以上に従業員の満足度を考えないといけない状況であり、その中で言われ始めたのがEXです。
CXとの違いは、CXが対象を社外の顧客としているのに対し、EXは社内の従業員を対象としている点です。より良いCXを実現するためには、EXが重要という考え方もあり、CX向上に向けて まずはEXの改善から始める企業も増えてきています。
CXが注目されている背景
CXがこれまでに注目されるようになった背景について解説します。
商品・サービスのコモディティ化が進んでいる
CXが重視されるようになったのは、インターネットが一般家庭にも普及し始めてきた2000年ごろからです。インターネットが急速に普及したことで情報が早く広がるようになり、「技術の発展」と「消費者の行動変容」という2つの大きな変化がありました。その結果、商品が急速にコモディティ化する現象が起きるようになってきたのです。
こちらの図が示しているのは、コモディティ化のメカニズムです。
初期の頃は技術を開発、リードする企業が技術的な優位性をもって市場を独占するのですが、その後 他社がすぐに技術のキャッチアップを行い、類似商品が安価で市場に出回るようになります。また、ある一定まで技術が進むと顧客ニーズに対してオーバーシュートしてしまい、機能の差は顧客ニーズにヒットしなくなります(スマートフォンのカメラ画質などが良い例です)。ユーザーも以前より情報感度が高く、より安くより良いものにすぐに乗り換えることができるようになったため、いずれ価格競争になっていくというのが商品、サービスのコモディティ化です。
このコモディティ化の現象に対応するため、注目され始めたのがCXです。CXでは機能や価格など、顧客が得られる合理的な価値に対して、感情的な価値を上乗せすることで、顧客の企業や商品に対するロイヤルティを高めます。ロイヤルティとは、企業や商品に対して感じる「愛着」や「信頼」のことを指します。高いロイヤルティが得られると様々な効果があります。
高いロイヤリティがもたらす効果
1.顧客の定着
高いロイヤルティは顧客の離脱を防ぎ、企業や商品に長く定着することができます。人にもよりますが多くの顧客にとって長く利用してきたものから別の新しいものへ変えるのは心理的なコストがかかります。長く定着すればするほど、さらに長い期間顧客は顧客であり続けます。
2.顧客単価の向上
高いロイヤリティはより上位の商品やプランに変更するアップセルや、関連製品を追加購入するクロスセルなどに繋がる効果があります。結果、顧客単価の向上に繋がり、売上を拡大する要因になります。
3.口コミによるマーケティング効果
高いロイヤルティはブランドイメージの向上にも繋がります。また、昨今はSNSや口コミサイトによる評価を購買時に重視する傾向があり、高いロイヤルティは大きなマーケティング効果を発揮します。
実際に高いロイヤルティを形成している米国ザッポス社では新規顧客の43%が口コミからの流用になります。口コミは直接的な広告費が必要ないので、新規顧客獲得のコスト削減や新規顧客の増大に繋がります。
CX向上のためにコンタクトセンターができること
CXを向上するために、コンタクトセンターではどのような取り組みができるでしょうか。ここでは4つのステップに分けて解説します。
1.CXの可視化(ペルソナ/カスタマージャーニーの作成)
まず最初のステップはCXを可視化することから始めます。優れたCXを実現するためには顧客の視点に立つということが重要です。しかし、企業内の人間が客観的に顧客の視点に立つというのは容易ではありません。客観的に社内で思考、議論するためにはまずはCXを可視化して客観視するツールが必要です。
そこで、活躍するのが「ペルソナシート」と「カスタマージャーニーマップ」です。
ペルソナとは、企業が提供する商品やサービスの典型的な顧客像のことで、ペルソナシートは既存顧客情報や市場調査などを通じて得られた顧客像の情報が詳細にまとめられたものです。ペルソナシートの作成で気をつけないといけないのは、「20〜30代女性で都内住み」のようなぼやっとした像ではなく、年収や家族構成、社会的・文化的習慣など、ペルソナの具体的なライフスタイルを想像することです。
▼ペルソナの解説記事はこちら
「【解説】カスタマーサポートを高度化!ペルソナ設計の重要性とポイント」
次に、カスタマージャーニーマップとは、購入前〜購入後までの一連のプロセスの中で、顧客がどのような感情になり、どのように行動するのかを1枚絵でまとめたものです。
顧客が商品を認知したところからジャーニーは始まっており、最後の継続的コンタクトまで各ステージでどのようなタッチポイントがあるかを整理します。
▼カスタマージャーニーマップの解説記事はこちら
「カスタマージャーニーマップとは|カスタマーサポート強化の活用方法を徹底解説」
2.現状把握(顧客サーベイの実施)
カスタマージャーニーマップによってCXが可視化できたところで、次にそれぞれのステップにおいて現状ではどうなっているかを把握することが大切です。コンタクトセンターで行っているタッチポイントがジャーニー上のどの位置にあるのか、そこではどのような対応を行なっているのかなどを整理していきます。
さらに、実際に現状のCX評価を可視化するためにサーベイを実施します。サーベイ方法は顧客満足度調査や応対品質評価などもありますが、現在最もCXを評価できる指標としてはNPS(ネット・プロモータ・スコア)を利用することが多いです。
NPSとは顧客ロイヤルティを測る指標で、顧客に対して「あなたはこの会社の製品・サービスを友人に薦めますか?」という質問を行い、0~10までの11段階で評価する方法です。NPSを用いてロイヤリティの高い顧客と、低い顧客を可視化することでよりCXを実現する上での課題や必要な対応が明確になります。
▼NPSの解説記事はこちら
「NPS®(ネットプロモータースコア)とは|コンタクトセンターでの計算方法や運用方法を解説」
3.戦略策定
ここまでペルソナの設定とカスタマージャーニーマップにより全体的なCXを可視化し、顧客サーベイをとることで各チャネルがどのように現状機能しているかを明らかにすることができました。ここからは得られたデータをもとに具体的にCXの向上に向けてどのような取り組みを行なっていくべきか、戦略を立てていくフェーズです。
まず、ボトルネックとなっているチャネルを明らかにし、そのチャネルが全体にどのような影響を与えているか仮説を立て課題点を整理していきます。できれば、仮説をもとに試行運用を実施してみて、数値がどのように変化するのかを確認するとよいでしょう。また、その際にどのKPIが関連するのか細かい数値と紐づけて管理することと、「人的課題」「システム的課題」など、課題を大分類で分けることが大切です。
仮説が立てられたら、整理された課題に対して、どのような改善活動を行うのか計画していきます。CXは部署横断的な取り組みになることも多いため、ここまでで整理してきたカスタマージャーニーマップなどを活用して、議論していくことが必要になります。
ターゲットとなるKPI、目標、改善活動の計画(スケジュールや誰が何をするかなど)が決まっていれば、いよいよ改善活動に進みます。
4.改善活動
実際に立案した戦略を実行に移していきます。ここで重要なポイントは必ずデータを見ながら進めることです。顧客サーベイやターゲットとなるKPIがどのように推移していくのかを追いながら立案した戦略を定期的に評価してくことが重要になります。また、CXにおけるボトルネックは必ずしも固定されるものではないため、定期的にステップを戻り戦略を見直すことも必要になります。いわゆるPDCAを回しながら、取り組んでいくことが大切です。
また、改善していく中でデジタル化の検討も必要になります。タッチポイントを充実させるためのマルチチャネルの検討や、限られたリソースでパフォーマンスを発揮するための自動化の検討も必要です。
まとめ
本記事ではCXについて、その概念や注目されるようになった背景、CX向上に向けてコンタクトセンターができることについて解説しました。
変化の激しい時代において、CXは重要な差別化要因であり、CXを起点にサービスや企業文化を構築する企業が増えてきています。その中で、顧客にとって直接的な企業との関わりになるコンタクトセンターは重要な役割を果たすでしょう。
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Writer編集者情報
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コネナビ編集部 小林 弘明
新卒1年半は銀行にて勤務。その後 株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)にキャリアチェンジし、営業職と支店長を経験。
その後4年間は教育担当者として従事し、本部営業を1年間経験。現在は営業推進部マネージャとしてスタッフキャリア支援を担当。
・趣味:北海道の田舎で育ったので、自然アクティビティが大好き!特にシュノーケリング、川遊び。
・特技:飲み屋でだれとでもすぐ仲良くなること。
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