リテンションとは?コンタクトセンターで人材流出を防ぐ施策を解説
2025/04/09
- 定着率向上
- 離職率改善

コンタクトセンター業界では、オペレーターの高い離職率が課題となっています。クレーム対応や厳しい労働環境、キャリアパスの不透明さなどが要因であり、多くの企業が人材流出に悩まされています。
新たな人材を採用するコストや育成にかかる時間を考えると、「採用」よりも「定着」に力を入れることが、安定した運営と業績向上につながるでしょう。そこで注目されているのが「リテンション(社員の定着施策)」です。
本記事では、リテンションの基本からコンタクトセンター業界特有の課題、そして実際に活用できるリテンション施策までを詳しく解説します。オペレーターの定着を促し、長く働き続けてもらうためのヒントを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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コールセンター業務は、採用の難しさ・離職率の高さ・研修コストの増加など、運営上の課題が尽きません。しかし、適切な人材確保と定着施策を行うことで、負担を軽減し、安定した業務運営が可能になります。ウィルオブは、コールセンター専門のノウハウを活かし、貴社に最適なプランのご提案が可能です。
リテンションとは?
リテンション(Retention)とは、企業が従業員の離職を防ぎ、長期間にわたって働き続けてもらうための施策を指します。これには給与や福利厚生の改善、職場環境の整備、キャリアアップの支援など、多様な方法が含まれます。
人材確保が難しくなっている現代において、リテンションは単なる「人材流出の防止策」ではなく、企業の成長や競争力向上を実現するための重要な戦略です。
なぜ今、リテンションが重要視されているのか?
近年、多くの企業でリテンション施策が注目されている背景には、労働市場の変化や働き方の多様化が深く関係しています。

少子高齢化により生産年齢人口が年々減少し、新規採用がますます難しくなっています。そのため、企業は新規採用だけに頼るのではなく、現在の従業員に長く働いてもらうことが重要な課題となっています。
また、リモートワークの普及や副業・フリーランスの増加によって人材の流動性が高まり、転職のハードルも低くなっていることが影響しています。 このような環境の変化を受け、人材の確保だけでなく、定着率の向上にも積極的に取り組むことが企業の成長に欠かせない要素となり、リテンション施策が一層重要視されるようになったのです。
コンタクトセンター業界におけるリテンションの重要性

コンタクトセンター業界では、従業員の定着が大きな課題となっています。
厚生労働省が発表した「-令和5年雇用動向調査結果の概況-」によると、令和5年の全就労者の離職率は15.4%で、前年より0.4%上昇しています。
「コールセンター白書2024」によれば、新人オペレーター(入職1年以内)の離職率は、全体平均よりも高い傾向が見られます。
離職率が高い理由として、クレーム対応による精神的負担、単調な業務によるモチベーションの低下、給与や待遇への不満、キャリアアップの不透明さが挙げられます。これにより、オペレーターが長く働き続けられる環境を整えなければ、人材の流出が止まらず、さらに新たな採用や育成のコストが増加し続けることになりかねません。
さらに、近年ではコンタクトセンター業界での新規採用自体が難しくなっており、新しい人材の確保が困難になっています。こうした状況において、企業が安定した運営を続けるためには、新規採用よりも既存のオペレーターを定着が欠かせません。リテンション施策を強化することで、人材の流出を防ぎ、業務の安定化や企業の成長につなげることができるのです。
リテンションを行うメリット

採用コストの削減
新しいオペレーターを採用するには、求人広告費、採用活動の手間、研修コストなど、多くの時間とコストがかかります。定着率が向上すれば、新規採用の頻度が減り、これらのコストを削減できます。
知識・スキルやノウハウの流出を防ぐ
オペレーターが長く働くことで、業務に関する知識や対応スキルが蓄積され、組織のパフォーマンスが向上します。離職が多いとせっかく育てた人材が流出し、新人の教育を繰り返さなければならず、業務の質が安定しません。リテンション施策により、経験豊富なスタッフを確保し、安定した高い応対品質を保つことができるでしょう。
企業の競争力を高め、持続的な成長を実現
従業員が安定して働ける環境を整えることで、職場全体のエンゲージメントが高まり、パフォーマンスの向上につながります。さらに、リテンション施策が成功すると「社員を大切にする企業」として評価され、求職者からの企業イメージ向上や、新たな人材の確保にも好影響を与えます。その結果、企業の競争力を強化し、持続的な成長を促すことができるのです。
▼従業員エンゲージメントに関する記事はこちら
「従業員エンゲージメントとは?企業成長に与える影響と効果的な施策を解説」
リテンションの種類と具体例

リテンション施策には、大きく分けて「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の2種類があります。
コンタクトセンター業界では、給与・福利厚生の充実だけでは定着率を完全には改善できないことが多いため、働く環境やキャリア支援を含めた多角的なアプローチが求められます。
金銭的報酬|給与・福利厚生で定着率を高める
金銭的報酬とは、給与・賞与・各種手当・福利厚生など、経済的なメリットを提供することで従業員のモチベーションを維持し、定着率を向上させる施策です。
コンタクトセンターのオペレーターは、給与や待遇が理由で転職するケースも多いため、適正な報酬制度を整えることが重要です。
● 従業員の能力に応じた給与制度
市場相場と比較し、評価に応じた昇給を行います。給与水準が市場相場より低ければ、優秀な人材が流出しやすくなります。定期的に給与の見直しを行い、適正な報酬を提供することで、従業員の満足度を向上させることができます。スキルや成果に応じた昇給制度を導入することで、キャリアアップの道筋を明確にし、やる気を引き出せます。
● 賞与・ボーナスの支給
業績や個人の成果に基づくインセンティブを提供します。成果を適切に評価し報酬に反映させることで、オペレーターのモチベーションを維持します。目標達成に応じたインセンティブを導入することで、仕事に対するやりがいが生まれ、モチベーション向上につながります。
● 福利厚生の充実
住宅手当、交通費、食事補助、ストックオプションなどによる経済的な支援を提供します。生活をサポートする福利厚生を充実させることも定着率向上に有効です。例えば、住宅手当や交通費補助、食事補助などで従業員の経済的な負担を軽減できます。ストックオプションを導入することで、企業の成長とともに従業員が経済的なメリットを得られる仕組みを作ることも可能です。
非金銭的報酬|環境やキャリア支援で長く働ける
金銭的な報酬だけでなく、職場環境の改善やキャリア支援の充実も、オペレーターの定着に大きな影響を与えます。コンタクトセンターでは、ストレスの多い業務やキャリアパスの不透明さが離職につながることが多いため、長く働ける環境づくりが重要です。
● 職場環境の改善
メンタルケアやワークライフバランスの向上を図ります。コンタクトセンターの業務は、クレーム対応など精神的な負担が大きいため、定期的なカウンセリングの実施やストレスチェックを活用することで、従業員の精神的な負担を早期に把握し、適切なフォローを行います。
さらに、柔軟なシフト調整やリモートワークの導入など、ワークライフバランスを考慮した働き方を推進することも定着率向上につながります。
● キャリアパスの明確化
昇進・昇格制度、スキルアップ支援、社内転職制度を整備します。オペレーターが長期的に働き続けられるためには、キャリアアップの道筋を明確にすることが重要です。
例えば、SVやマネージャーへの昇進制度を整備することで、オペレーターの成長意欲を高められます。また、他部署への異動や社内転職制度を用意することで、1つの業務にとどまらず多様なキャリアを築く環境を提供し、長期的な定着へとつなげます。
● エンゲージメント向上施策
1on1ミーティング、社内表彰などを通じて、オペレーターが会社への帰属意識を持ち、働きがいを感じられる環境を整えます。定期的な1on1ミーティングを実施し、不満や悩みを早期にキャッチすることで、離職の兆候を把握しやすくします。
また、社内表彰制度を導入し、優秀なオペレーターを積極的に評価することで、やる気を引き出し、定着率の向上が期待できます。
コンタクトセンターでリテンションを強化するポイント
コンタクトセンターにおけるリテンション強化のポイントは、オペレーターのストレスを軽減し、働きやすい環境を整えることです。日々の業務に対する負担を減らし、安心して働ける環境を作ることで、人材の流出を防ぐことができます。ここでは、具体的な取り組みについて解説します。
従業員の不満を見逃さない!現状を把握する方法
オペレーターが不満を抱えている場合、早期に察知し対応することが重要です。離職を考え始めてから対策を講じても手遅れになることが多いため、日常的なコミュニケーションを通じて従業員の現状を把握することが欠かせません。
定期的な面談やサーベイ・アンケートを実施し、業務に対する不満やストレスの原因を明確にすることで、職場環境の改善につなげることができます。また、オペレーターが忙しく、なかなか話を聞く時間が取れない場合は、勤怠記録や、日常の表情・態度の変化(元気がない、笑顔が減っていないか)をチェックし、小さなサインを見逃さないようにすることが大切です。
ストレスを軽減し、働きやすい職場環境を作る
コンタクトセンターでは、クレーム対応や長時間の電話応対によるストレスが大きいため、オペレーターの負担を軽減し、働きやすい環境を整えることが重要です。
まず、チーム内のコミュニケーションを活性化し、オペレーター同士やSV(スーパーバイザー)との関係を強化することで、相談しやすい環境を作ります。また、短時間の休憩制度やリラックスできる休憩スペースを用意し、精神的な負担を軽減することも有効です。さらに、感情分析や自動化システムを活用することで、業務負担を減らし、対応ストレスを軽減することも可能です。
このように、職場環境の改善に継続的に取り組むことが、リテンション強化につながります。
まとめ|リテンションで安定した運営を実現しよう
リテンションは、人材が不足している現在の採用市場において、企業の競争力を保つために重要な要素です。特にコンタクトセンター業界では離職率が高いため、定着率を高めるための戦略が必要不可欠です。リテンション施策を導入することで、採用コストの削減、知識やスキルの流出防止、企業の持続的な成長が可能になります。
金銭的報酬だけでなく、非金銭的報酬も重要で、職場環境の改善やキャリアパスの明確化など、従業員のモチベーションを高める施策が効果的です。また、従業員の現状を把握し、職場環境の整備を徹底することで、より良い職場を提供し、離職を防ぐことができます。
これらを実践することで、オペレーターの定着率を高め、企業の成長への貢献が期待できます。リテンション施策を通じて働きやすい職場環境を作り、優秀な人材を長期的に保持するための取り組みを強化していきましょう。
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Writer編集者情報
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コネナビ編集部 上原 美由紀
従業員1万人以上の企業の5社に1社が導入している採用支援・求人広告会社にて、アルバイト・パート採用や中途採用を中心に、約3年間にわたり企業の採用支援に従事。
2019年9月より株式会社ウィルオブ・ワークに入社し、コールセンター・オフィスワークに特化した人材サービスの事業部でキャリアアドバイザーを担当。現場で培った知見をもとに、コンタクトセンター領域はもちろん、採用・人材分野に関する実践的かつリアルな情報発信を心がけている。
現在は子育てと仕事を両立しながら、日々奮闘中!
趣味:音楽、ゲーム、ディズニー、お酒
特技:タスク管理