NPS®(ネットプロモータースコア)とは|コンタクトセンターでの計算方法や運用方法を解説

2024/09/28

近年、「NPS®」という評価指標がコンタクトセンターで採用されています。コンタクトセンターでは、これまでのコストセンターという認識から、顧客とのタッチポイントを担う重要なプロフィットセンターという意識が高まっており、その中でNPS®は顧客ロイヤルティを図る指標として重宝されています。

本記事では、コンタクトセンター運営担当者にNPS®の概要や計算方法、具体的な運用方法について、分かりやすく解説します。

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NPS®(ネットプロモータースコア)とは

NPS®(ネットプロモータースコア)とは、知人に商品やサービス、あるいは企業そのものを薦めたいと思う推奨度をスコアにし、顧客ロイヤルティを図る指標です。アメリカの大手コンサルティング会社ベイン・アンドカンパニー社が2003年に提唱したことで広く普及し始めました。

欧米の大手企業ではすでに3分の1以上が活用をしており、AppleやNIKE、P&Gなど、顧客ロイヤルティが高いことで有名な企業がNPS®をもとに改善活動に取り組んでいます。日本でも顧客満足度に並ぶ指標として導入している企業が年々増加しています。

「あなたはこの商品を親しい友人や家族にどの程度勧めたいと思いますか?」という質問を通じて推奨度を測るNPS調査では、リピーターになりうる顧客ロイヤルティが高い顧客の特定や、逆にサービスから離脱する可能性が高い顧客を特定するのに役立ちます。

顧客ロイヤルティとは

顧客ロイヤルティとは、顧客がサービスや企業に対して感じる「信頼」や「愛着」のことです。現代のビジネスはインターネットが普及したことに伴い情報の流通量が増え、商品がコモディティ化(※1)しやすくなっています。商品の性能や価格だけでは競合他社と差別化が難しくなってきた時代において、顧客ロイヤルティを高めることは益々重要な経営課題になりつつあります。ロイヤルティの高い顧客は一般的に企業収益の貢献度が高いことで知られています。

※1 コモディティ化…競合他社の参入により、製品やサービスの性能・品質などに差がなくなること

従来の顧客満足度(C-SAT)との違い

顧客満足度(C-SAT)とは、顧客がどの程度そのサービスや商品に満足しているかを測る指標です。コンタクトセンターでは、主にオペレーターの対応が満足のいくものだったかを測るために採用されている指標です。一般的には電話などの対応完了後に、SMS等で簡単なアンケートを送付する方法で取得します。計算式は以下です。

C-SAT調査は、顧客に満足のいく案内ができているかという品質を定量的に測ることができる優れた指標ではありますが、長期的なロイヤルティを測る指標としては不十分です。なぜなら、あくまでC-SATは直近の対応に対する評価であり、長期的なサービスに対する評価ではない可能性があるためです。

例えば、たまたまその時に対応したオペレーターの良し悪しによって、企業やサービスへの愛着とは別に良くも悪くも評価される可能性があるためです。そのため、顧客ロイヤルティを測るためのより優れた手段としてNPS®を採用する企業が増えてきています。

C-SATとNPS®の違いをまとめると以下になります。

  C-SAT NPS®
概要 満足度を調査 推奨度を調査
評価段階 5段階評価 11段階評価
設問数 複数 単一
業績との関連性 低い 高い
他社との比較 不可(それぞれ独自に計算) 可能(共通の計算方法)

NPS®の計算方法

NPS®の計算方法はシンプルです。「あなたはこの企業(製品/サービス/ブランド)を友人や家族にどの程度勧めたいと思いますか?」という質問を行い、0~10の11段階で評価をしてもらいます。

その後、スコアごとに「批判者」「中立者」「推奨者」の3つに分類し、NPS®を計算します。

NPS®は推奨者しかいない+100%から、批判者しかいない−100%の範囲内になります。実際にはそのような極端な数字になることはなく、NTTコムオンラインが実施しているNPSベンチマーク調査では、業界トップ企業は0から-20前後、業界平均は-30から-40前後となっています。

統計学的に有意な数値をとるためには一般的に最低でも400以上のサンプルが望ましく、この場合誤差は±5%になります。誤差±2%に抑えたい場合は、2000以上のサンプル数が必要です。

2種類の調査方法

NPS®には「リレーション調査」と「トランザクション調査」の2種類の調査方法があります。この2つの調査方法は、目的や内容、調査をする頻度やタイミングが異なります。

リレーション調査

リレーション調査はブランド体験全体を評価する調査方法です。経営層がビジネス全体における改善点を把握するために利用されます。

顧客は購入やコンタクトセンターへの問い合わせなど直接的な接点や、SNSや口コミサイトでの評価など間接的な接点まで1年間を通して常に企業と接しており、この体験を総合的に調査し、ブランドの関係性を計測するのがリレーション調査です。

この調査は年に1〜2回程度実施することが推奨されています。また、その際にブランドの関係性に影響する体験を発見することも重要です。そのためには、体験時の満足度も一緒に調査し、どの体験が顧客の評価を生んだのか、どのような体験が顧客にとって重要だったのかのを分析することが大切です。

トランザクション調査

トランザクション調査は特定の利用体験を評価する調査方法です。現場で改善プロセスを回すために利用されます。

通常トランザクション調査はサービスを利用した直後に調査が実施されます。具体的には、顧客がコンタクトセンターに問い合わせをした直後にアンケートを送付し、評価します。

この調査では、特定のタッチポイントの評価を正確に把握することができます。年間を通して実施する場合や、必要に応じてその都度実施する場合があります。

ここまで説明した内容をまとめると以下です。

  リレーション調査 トランザクション調査
目的 経営指標:
ビジネス全体の改善ポイントを把握するため
現場の管理指標:
現場のPDCA(改善プロセス)をまわすため
内容 サービス全体の評価、総合的な体験
の評価を測定
現場における評価、特定のタッチポイント
における評価を測定
頻度 年1~2回 通年(体験の直後)

調査・改善の流れ

NPS®の一般的な調査・改善の流れとしては以下です。

  1. リレーション調査(全体の中でロイヤルティに影響度が強いタッチポイントを特定)
  2. トランザクション調査(重要なタッチポイントにおいて課題の詳細把握を行う)

まずリレーション調査を行い、ロイヤルティへの影響度が強いタッチポイントを特定します。その際、カスタマージャーニーマップなどを用いて、一連の顧客体験を分類し、それぞれのスコアの推移を分析します。推奨度との相関性が高く、満足度が低い体験が見つかれば、改善が必要なタッチポイントと考えてよいでしょう。

その後に、トランザクション調査にて改善が必要なタッチポイントにおける影響度が強い課題の詳細把握を行います。具体的な行動例としては、不満のあるお客様に対して速やかに連絡をとり、課題の深掘りを行い、フォローアップを行うなどのアクションが考えられます。

NPS®の改善は推奨者を増やすよりも、批判者をいかに減らしていくかが重要な鍵になります。批判者を減らすことを目標にして、具体的な不満を一つ一つ改善することで、短期間で成果を上げることができます。

カスタマージャーニーマップについて詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。

NPS®導入の注意点

大手企業やスタートアップなどNPS®をコンタクトセンターに導入する動きは増えてきています。
自社コンタクトセンターにNPS®を導入する際の注意点を解説します。

競合他社と比較し自社の現在地を把握する

NPS®の特徴に、他社との比較が可能な点が挙げられます。前述した通り、C-SATは各社独自で調査を実施することが多く、調査方法が違うために一概に他社と比較することが難しかったですが、NPS®は調査方法が統一されているため、他社との比較が容易です。特に、競合他社となる企業の中でベンチマークになる企業と比較ができると、自社の相対的なポジションを把握することができます。

2つの調査を組み合わせる

「リレーション調査」と「トランザクション調査」はどちらか一方だけで良いというものではなく、並行して行うことで正しい状況把握ができます。

トランザクション調査は各タッチポイントの評価を正確にでき、状況をリアルタイムで把握できますが、局所最適に陥りがちです。逆にリレーション調査は全体を見るため、全体最適を考える際にどこがボトルネックになっているかを把握することができます。しかし、個別のタッチポイントの正確な評価が難しいことと、頻度が多くないためリアルタイム性に欠けるという問題があります。
2つの調査方法の特徴を理解し、うまく使い分けていくことが重要です。

短期間のスコアだけに注目しない

NPS®では1回1回のスコアよりも、どのようにスコアが変化していくか時間の推移を追っていくことが重要です。その中で、ただ計測しているだけでは当然スコアは改善されていきません。
しっかりとデータを集め、数値を把握しながらその奥にある顧客ニーズを捉えていくことが重要です。顧客ニーズを把握するためには、数値だけではなく、フリーコメントにも注目する必要があります。フリーコメントとスコアを行き来することで、真の顧客ニーズや課題が見えてきます。

見つかった課題に優先順位をつけて有効な打ち手を考え実行していく、その中で、狙い通りにスコアが改善されていくと、長期的に見て大きな成果が見込めます。

日本におけるNPS調査の特徴を知る

前述した通り、NTTコムオンラインが実施しているNPSベンチマーク調査によると、日本のNPS®の平均値は業界トップ企業で0から-20前後、業界平均は-30から-40前後となっています。

これは日本人が中間回答を好む傾向にあるためと言われています。欧米諸国では極端な評価をすることを厭わない文化がありますが、日本はアンケートの際により中間の回答を好む傾向があります。そのため、NPS調査においても、スコアでいうと「5」をつけるユーザーが多いため、NPS®ではマイナスの評価になることが多いです。そのため、絶対値で見ることに意味はなく、ベンチマークとの比較や、時間的な推移で比較することが重要になります。

まとめ

今回はコンタクトセンター担当者向けにNPS®について解説しました。

近年、コンタクトセンターは「コストセンター」から「プロフィットセンター」になることが求められています。その中で業績との関連性が認められているNPS®はより重要な指標として注目されています。

また、最近ではNPS調査をユーザーだけではなく従業員に行うeNPSという考え方も導入する企業が増えてきました。こちらは従業員エンゲージメントを測定するための指標で、従業員がどれだけ職場に対して信頼や愛着を持っているかを数値化します。こちらも業績への相関や離職率の低下などの効果が認められており、今後日本での普及が期待されています。

特に、離職率の高いコンタクトセンターでは従業員エンゲージメントを高めることは急務の課題です。NPS®同様にeNPSでも、科学的なアプローチによって成果を出せるようにしていくことが大切です。

▼従業員満足度に関する記事はこちら
【解説】コールセンターで従業員満足度(ES)を向上させる実践的な方法

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 丸山 実咲季

    2022年4月に入社し、コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属。
    営業推進部にてインサイドセールスに従事し、テレアポからメールマーケティングなどのプル型施策によりリード獲得に貢献。
    2022年5月からTwitterアカウントの運用も担当。2022年度のグループ全体「新卒新人賞」にノミネートされる実力者。市場価値爆上がり中の2年目社員!
    ・趣味:お洒落なカフェの空間を探したり、自然の中をお散歩することが好きです!その他、バスケ 料理 音楽など多趣味です。
    ・特技:相手の表情を汲み取って行動や発言ができる点。

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