チャットセンターで使えるKPI一覧│概要や計算方法を解説

2024/10/08

年々、チャット対応に取り組むカスタマーサポートが増えています。チャットセンターはコールセンターと運営方法や性質が大きく異なるため、コールセンターで活用されてきた従来のKPIをそのまま使うのは難しく、チャットセンターにあったKPIを設計する必要があります。

本記事では、チャットセンターで必要なKPIの概要や計算方法を一覧にしてご紹介します。

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カスタマーサポートでチャット対応が増加している理由

スマートフォンやタブレットなどが普及したことで、LINEに代表されるようなテキストベースのチャットコミュニケーションが一気に広まりました。カスタマーサポートでも、従来の電話やメールだけでなく、テキストベースのチャット対応を行う企業が増えています。顧客は専用アプリやウェブサイトから簡単にチャット対応を受けることができ、顧客の利便性の観点からも需要が高まっています。

チャット対応は従来のチャネルの弱点を補うことができます。長らくカスタマーサポート対応のメインチャネルは電話対応でした。オペレーターがリアルタイムに対応できる電話対応は現在でも優れたチャネルであることは間違いありません。

しかしながら、電話は1対1で対応することが必要なため、顧客の問い合わせをどのように効率的に処理するかという問題を抱えています。
また、良くも悪くもオペレーターの会話スキルによって品質に大きなばらつきが生じます。時に声の印象は会話の内容以上にコミュニケーションに影響を及ぼすことがあります。そのため、優れたオペレーターの採用や教育は常にコールセンターが抱える課題の一つです。

対して、チャット対応は複数の問い合わせを同時に処理できるため、より多くの顧客の問い合わせを効率的に処理することができるという利点があります。諸説ありますが、一般的には1オペレーターあたり同時に3件ほどの処理が可能と言われています。また、テキストベースのコミュニケーションは電話対応に比べると、オペレーターごとの対応品質のばらつきを抑えることができます。

従来の運用方法を活用できるか

コールセンターでは多くのKPIを設定し、効率や品質を向上するための運営が行われています。
(過去の記事を参照:コールセンター運営のKPIをわかりやすく解説 | インバウンド編

長年、多くのKPIを扱いながら改善を繰り返してきたコールセンターはKPIをトラッキングし、分析するノウハウがあります。しかし、コールセンターで現在運営されているKPIの多くは電話対応を前提としたものが多く、チャット対応ではそのまま使うことができません。

例えば、コールセンターでは1通話あたりの平均処理時間が代表的なKPIとしてあります。しかし、チャットではユーザー側が途中離脱、再開が可能なことから平均処理時間が効率性を測る上で適切なKPIとはいえません。従来のKPIをそのまま適用するのではなく、チャット対応の特徴に合わせた最適なKPIを活用することが重要になります。

チャットセンターで利用される代表的なKPIの一覧

チャットセンターで活用されている代表的なKPIの概要と算出方法をまとめました。

KPI項目

概要 算出方法

◆品質に関するKPI

顧客満足度

チャット対応に関する顧客満足度

「満足」と回答した数
÷ 回答数

MCS
(Meaningful Connection Score)

顧客との関係を総合的に評価・測定した指標

メッセージで表現されたセンチメント(ポジティブ、ニュートラル、ネガティブ)に応じてスコアを算出

接続品質(応対までの時間)

要求があってから、オペレーターが応答するまでの平均時間

合計応答時間
÷ 総応答呼数
中断率

顧客が離脱し問い合わせが中断した割合

会話の途中で中断した数
÷ 問い合わせ件数

◆効率に関するKPI

CCpLH
(Closed Conversation per Login Hour)

1時間あたり何件の対応ができたか測る指標 総対応件数
÷ 営業時間

対応件数

チャットによる対応件数 チャットで対応した数
完了率

チャット対応で問い合わせを完了した割合

完了した件数
÷ 問い合わせ件数
利用率

電話、メールなど全ての問い合わせからチャットが利用された割合

チャットの問い合わせ数
÷ センター全体の問い合わせ数

一人当たりの同時対応数

一人当たり同時に対応する接続数

品質に関するKPI

顧客満足度

顧客満足度は、コールセンターでも多く採用されているKPIですが、チャットセンターでも有効なKPIの一つです。顧客満足度には企業が提供する商品やサービスに対する満足度もありますが、センターで計測するのはチャット対応に対する満足度です。

一般的にはチャット対応完了後に顧客へアンケートを送付し、対応への満足を5段階などで確認します。アンケートの設計は企業ごとに異なり、一般的に項目が多い方が緻密な分析ができるものの、アンケートに回答してくれる数が減ります。あまりに説明文が長いと回答率が下がるため、顧客が直感的に回答できるようアンケートを工夫する必要があります。

MCS

MCS(Meaningful Connection Score)は、アメリカのチャットコマース企業LivePerson社が開発したKPIで日本よりもチャットでの対応が進んでいるアメリカで活用が広がっている指標です。MCSは、顧客との関係性を総合的に評価・測定し、従来の顧客満足度測定が盛っていた大きな問題を解決することができます。

従来の顧客満足度調査は一般的に回答率が低く、またアンケートに回答する顧客はすでに企業への信頼や愛着のある顧客に偏っている可能性があり、必ずしも顧客全体の満足度を正確に表すことができていない可能性があります。また、全ての対応が完了した後にアンケートをお送りするため、リアルタイムで顧客がどのように感じているかなどのフィードバックを得ることができません。MCSでは、従来のアンケート調査ではなく、顧客がチャット中に交わした会話のトーン、コンテンツ、センチメントを、NLP機械学習をベースにした技術でリアルタイムで分析することで、その結果を導き出します。

会話内の各メッセージには、そのメッセージで表現されたセンチメント(ポジティブ、ニュートラル、ネガティブ)に応じてスコアが与えられます。メッセージが肯定的であればあるほど、スコアは高くなり、否定的であればあるほど、スコアは低くなります。スコアは -100~100で表されます。

接続品質(応対までの時間)

チャット対応で接続品質を測るには問い合わせから応対までの時間を計測します。コールセンター白書2021によると国内の有人チャット対応において最も利用されているKPIです。

コールセンターでいう待ち時間に相当する指標で、応対するまでの時間が長くなればなるほど、満足度が下がっていきます。チャット対応はコールと違い、一人のオペレーターで何件も対応することができますが、あまりオペレーターに同時対応を求めすぎると、一つ一つの応対速度が下がり、満足度下がる結果になります。応対までの時間が遅くならないよう注視しておく必要があります。

中断率

顧客がチャットの対応途中でどれだけ離脱したかを計測します。チャット対応は一般的に電話対応よりも顧客が離脱しやすいチャネルです。電話ではオペレーターとの会話中に急に電話を切ることは少ないですが、チャットでは顧客のタイミングでチャットを中断することができるためです。

離脱してしまう理由は様々です。チャットの応対に不満を感じて離脱することもあれば、顧客都合の離脱や自分が求める回答に辿り着いたので離脱してしまう可能性もあります。そのため、一概に離脱率が高いからといって品質が悪いとは言えないですが、異常値が出ている場合やオペレーターで差がある場合などは、他の指標と組み合わせてさらに深い分析を行えば有効な指標となりえます。

効率に関するKPI

CCpLH

CCpLH(Closed Conversation per Login Hour)は、1時間あたりに何件の対応ができたか測る指標です。最終的にオペレーターがクローズした数(同じ顧客から再接触がない)で測ります。

CCpLHは効率性において、音声対応と簡単に比較することができる指標です。現在のCCPLHの基準は、1時間あたり少なくとも音声通話の2倍を達成することを目標にする必要があるといわれています。

対応件数

対応件数はどれだけチャットで対応ができたかを測る指標です。集計方法は時間毎や日毎、週次や月次など、あらゆる時間軸で集計することで、センター全体の運用を可視化することができます。

対応件数の計測において、注意したいのは他のチャネルとのバランスです。センター全体的にどのようなチャネルが利用されていて、その総件数がどうなっているかを把握して初めて個別のチャット対応件数の分析が役立ちます。

完了率

完了率はチャット対応でどれだけ問い合わせを完了できたかを測る指標です。

完了の定義をどのように置くかは業務やセンターによって異なります。純粋に問い合わせに対して最後まで回答することを完了とする場合や、別のチャネルやフォームへの誘導を完了とする場合もあります。自社のチャット対応において何が完了かを明確にしましょう。

利用率

利用率はチャット対応をどれだけ利用されたかを測る指標です。電話、メールなど全ての問い合わせからチャットが利用された割合を算出します。

利用率はチャットの対応を測る指標というよりは、チャット対応に至るまでの導線を改善するための指標です。現在、多くの企業はチャット対応を自社サイトにポップアップ形式で表示させたり、サイドバーなどに表示する形をとっていたり、LINEの公式アカウントなどで利用できる形にしています。これらが顧客にとって、使いやすいものになっているかを利用率を見ながら改善していくことができます。

利用率を改善するためには、いわゆるカスタマージャーニーがどのようになっているかを把握し、適切なタイミングで適切な場所にチャット窓口を配置する必要があります。

同時接続数

同時接続数は、オペレーター一人当たりで同時にどれだけの顧客を対応できるかを測る指標です。一般的には1オペレーターあたり3~5人ほどの顧客を同時に対応できると優秀なチャットセンターと言えるでしょう。

同時接続数については、高ければ高いほど良いわけではなく、応対時間や顧客満足度などと組み合わせてバランスを見る必要があります。同時に対応する数が増えれば増えるほど、対応の品質は下がってしまう可能性が高いです。適切な応対時間が保てて、顧客満足度も高い状態が維持できるよう同時接続数は適切にコントロールする必要があります。

まとめ

今回はチャットセンターを運営するにあたり基本となるKPIを紹介しました。

管理すべきKPIはセンターのフェーズによって変わっていきます。全てのKPIを一度に管理するのは難易度が高いので、この中から自社センターに合わせていくつかを選択して運営していくとよいでしょう。

また、多くのセンターはチャット以外のチャネルと併用運用しています。そういったセンターではチャットだけで考えるのではなく、全体の中で最適化していくことが重要です。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 小林 弘明

    新卒1年半は銀行にて勤務。その後 株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)にキャリアチェンジし、営業職と支店長を経験。
    その後4年間は教育担当者として従事し、本部営業を1年間経験。現在は営業推進部マネージャとしてスタッフキャリア支援を担当。

    ・趣味:北海道の田舎で育ったので、自然アクティビティが大好き!特にシュノーケリング、川遊び。
    ・特技:飲み屋でだれとでもすぐ仲良くなること。

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