話題のChatGPTについて解説!ChatGPTによってコンタクトセンターはどのように変化する?
2024/07/11
- 生産性向上
2023年、ビジネス界隈を最も賑わしているのが「ChatGPT」をはじめとする大規模言語モデルです。連日テレビやSNSでも話題になっており、名前や概要を聞いたことがある人も多いかもしれません。最新のAIであるChatGPTは、人間のように精度の高い受け答えをすることができ、マイクロソフトが巨額の投資をしていることでビジネス的にも大きな注目を集めています。
この記事では、ChatGPTの概要や特徴を掘り下げながら、コンタクトセンター業界に与える影響について考察します。
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ChatGPTとは
ChatGPTとは、OpenAIが開発した大規模言語モデルを使ったサービスのことです。与えられたプロンプトに対して非常に精度の高いテキスト応答を生成することができます。
ここで「OpenAI」「大規模言語モデル」「プロンプト」といくつかキーワードが出てきました。それぞれChatGPTを理解するためには重要なキーワードなので説明します。
OpenAIとは
OpenAIとは、人工知能の研究、開発を行う組織で、営利団体である「株式会社OpenAI LP」とその親会社である非営利団体「OpenAI Inc.」から構成されています。人類全体に利益をもたらす友好的なAIを普及、発展させることを目的に2015年にイーロンマスクらによって設立されました。
AI業界をリードするメンバーによって創立され、創立当初から業界では注目されていた企業ですが、特に彼らを有名にしたのはこれまでのAIモデルの中で最大かつ強力な言語モデルの一つであるGPT-3を開発したことです。さまざまな質問やプロンプトに対して人間のような応答を生成できるAI技術は世界を驚かせました。そして、今回GPT-3を活用したChatGPTを発表し、全世界で最速となる2ヶ月で1億MAU(月間で利用している数)を達成、ビジネス的にもいま最も注目されている企業です。
大規模言語モデルとは
大規模言語モデルは、機械学習アルゴリズムを用いて膨大な量のテキストデータを処理、分析する高度な人工知能システムです。大規模言語モデルのすごいところは、人間のようなテキストを生成する能力を持ち、翻訳、質問応答、要約などの幅広いタスクを一つのモデルで高精度でできるようになったことです。有名な大規模モデルに、GPT-3(OpenAIが開発)、BERT(Googleが開発)などがあります。
GPT-3はChatGPTで活用されているモデルで、約1750億のパラメータで構成され、8億以上の単語から成るトレーニングデータを使用して学習されています。このデータは、ウェブページ、電子書籍、ニュース記事、ウィキペディアの記事、会話のログ、科学論文、小説、詩など、多様な言語で書かれたさまざまな種類のテキストから収集されています。
また、GPT-3は、一定の品質を保証するために、悪意のあるコンテンツや不適切な言語を含むデータをフィルタリングするように設計されています。例えば、ChatGPTは人種差別的な言語、性的な表現、暴力的な表現、自殺や自傷行為を助長する内容など、様々な種類の不適切なコンテンツを避けるようにトレーニングされています。
現在はその後継版であるGPT-3.5、GPT-4などが一般的に利用されており、特にGPT-4は驚異的な精度を実現しています。
プロンプトとは
ChatGPTのような言語モデルの文脈における「プロンプト」は、応答を生成するためにモデルに与えられた入力(質問や指示)です。プロンプトは、1つの単語、文、または段落であり、モデルが出力を生成するために必要です。モデルが文脈を理解するための指針となり、どのような応答が期待されるかを判断するために使用されます。例えば、以下の図の赤枠がプロンプトです。
どういう仕組みなのか
ChatGPTでは、トランスフォーマーと呼ばれる最新の深層学習モデルが元となっています。
従来のモデルは、文章を単語や文字のような小さな部分に分解して処理し、それらの部分の意味を組み合わせて文全体の意味を理解しようとしていました。しかし、この方法は複雑な文脈をうまく捉えられず、長い文章の処理に時間がかかるという問題がありました。
トランスフォーマーは、この問題を解決するために開発されました。トランスフォーマーは、文章の中の各単語が、他の単語とどの程度関連しているかを計算することができ、それに基づいて文全体の意味を理解することができます。文章生成においても、ある単語の次に続く、単語の発生確率を計算しています。シンプルにいうと「手前の文章や単語に対して、確率的にありそうな続きの文字を繋げていく」ということです。
例えば、「むかしむかし」とはじまると、日本語で最も確率が高い次の文は「あるところに」になります。すると、その次は「おじいさんとおばあさんがいました」が発生確率としては高そうです。このように、発生確率が高い文章を繰り返して生成していくのが基本的な仕組みになります。
ChatGPTは何ができるのか(コンタクトセンターでの活用方法)
ChatGPTが人間のようなテキストを生成する能力を持ち、翻訳、質問応答、要約などの幅広いタスクをこなせるのは前述したとおりですが、実際に何がどのようなレベルでできるのかを見ていきましょう。2023年6月時点のGPT-3.5を利用しています。
人間が受け答えするような自然な文章で応答できる
ChatGPTの代表的な使い方は自然な文章での対話です。以下は執筆者が実際に試したChatGPTとの会話の一例です。
それなりの回答が自然な文章で返ってきていることがわかります。この文章を作成するのに、かかった時間はほんの数十秒です。
また、返ってきた回答が違うと感じた場合、何度も作り直すことができます。以下は上記と同じ質問で再度生成をした際に返ってきた結果です。
同じ質問ですが別の回答が返ってきており、こちらもそれなりに正しい回答が返ってきているのがわかります。このような応答をほんの数十秒でほぼ無限に生み出すことができるのがChatGPTの威力です。
また、チャット(会話)システムであるため、同じスレッド内であれば、前提条件やその文脈を引き継いだまま会話を継続することが可能です。続けて対話していくことでさらなる示唆を引き出すことができます。
文章を要約することができる
ChatGPTは文章を要約することもできます。しかも、それはただただキーワードを抽出して文章を繋げる不自然なものではなく、人間が要約するのに近い文章で生成できます。以下は弊社のチャットボットに関する記事の冒頭を200字程度に要約したものです。
(元の記事:チャットボット(chatbot)とは?今さら聞けない基礎から簡単に解説)
必要な箇所が網羅されていて、読んでいても違和感のない文章になっていることに驚いたと思います。この文章が凄いのは200字程度に納めるという要求に応えるため、用語の説明を括弧を用いることで文字数を節約している点です。文章の構造を理解していないとなかなかこのような表現をすることはできません。
文章の添削ができる
ChatGPTをうまく活用すれば、例えば、ビジネス文章を書き慣れていないオペレーターの文章を添削することも可能です。
元々はビジネスに適さないくだけた文章でしたが、ChatGPTがビジネスライクな文章へ添削してくれています。顧客へのメールはダブルチェックを行っている企業も多いかと思いますが、ChatGPTを使えば、その必要もなくなるかもしれません。
文章を評価してくれる
添削することができるなら評価することもできるはずです。以下は、弊社に掲載されているFAQをChatGPTに評価してもらった結果です。
こちらが要求した項目に対して、10点満点で評価してくれています。ただ、全て満点のため実際に正しい評価ができているのかは怪しいため、追加で調査をしてみました。先ほどよりも文章を分かりにくくしたらどのように結果が変化するでしょうか。
先ほどよりもスコアが下がり、総評についても改善すべき点が説明されています。さらに、質問に対して全く違う解答をした場合はどうなるかを追加で確認しました。
スコアが大幅に下がりました。また、総評のコメントでは質問と回答がずれていることも指摘されています。評価のロジックが我々にはわからないため、実際に業務に活用できるかはまだ微妙なところですが、大まかには評価することができることがわかりました。
今回はコンタクトセンター従事者向けの利用例をいくつかピックアップして紹介しました。ご紹介した以外にも、コーディングができたり、表計算ができたりとさまざまな使用例が日々見つかっています。
ChatGPTの注意点
高精度の文章を作成することができるChatGPTですが、活用する上での注意点があります。
ファクトチェックができない
ChatGPTで最も大きな欠点と言えるのが、ファクトチェックができない点です。生成される文章は必ずしも真実ではないことが生成される可能性があります。しかも、文章自体はそれっぽい答えになっているので、知らない領域だと真実と誤認する可能性があります。
また、もしインターネット上で多数派が間違った知識や偏見を持っていた場合、ChatGPTもその間違った知識を返答することになります。ChatGPTが生成する文章は、インターネット上の情報に基づいて生成されるため、元となる情報が正しくないとこのような問題が起きます。ChatGPTが提供する答えを利用する際には、その情報源や内容に注意して確認する必要があります。
現在も改良は進んでおり、回答に自信がない場合は不用意に答えないように調整されているようです。
無難な回答しかしない
これまで説明してきたとおり、ChatGPTは確率的に最も可能性のある文章を生成しています。そのため、回答は平均的なものになることが多く、新しいアイデアや示唆が得られない可能性があります。
こちらはプロンプトを工夫することである程度改善が見込めます。ポイントは制限をつけることです。例えば、前提条件や制約条件をつけることで、より精度の高い文章が得られます。
(こちらはnote株式会社CXOの深津貴之氏が非常に興味深い実験結果を公表しているので、そちらも参考ください。参考:あなたの仕事が劇的に変わる!? チャットAI使いこなし最前線)
日本語より英語の方が精度が高い
ChatGPTで使用されている学習データの多くは英語であるため、日本語よりも英語での文章作成の方が得意です。日本はそもそも世界的にみてマイナーな言語であるため、学習されているデータ量が、英語に比べると少ないです。学習データの量は文章生成の精度に影響してくるため、英語の方が良い結果を得られる可能性が高くなります。
英語力がなくてもDeepLのような優れた翻訳ツールを使えば、英語での活用も簡単にできます。
(ちなみに、ChatGPTでも翻訳は可能です。筆者の感覚的には翻訳の精度はDeepLの方が高いです)
また、日本語に特化した大規模言語モデルの開発も進んでいます。日本ではLINEやrinna、オルツなどが開発を進めており、今後の展開が期待されています。
ChatGPTはコンタクトセンターにどのような変化をもたらすか
ここからはChatGPTをはじめとする大規模言語モデルがコンタクトセンターにどのような変化をもたらすかを考察したいと思います。
今回は、「人を介さず完全自動化ができる範囲」と「人の補助として機能する範囲」の軸と、「社内の業務を効率化する」と「顧客と相対する場面で活躍する」という軸で整理しました。
「完全自動化×社内向け」の領域
社内の業務を完全自動化する範囲としてはFAQ作成やシナリオ作成、研修のロールプレイなどが予想されます。
FAQ作成はすでに市場でも自然言語処理技術を使って、自動的に作成するツールが出てきています。これらの発展系として、よりインプット情報がバラバラで曖昧なものだったとしても、高精度のFAQを自動的に作成することができる可能性があります。
シナリオ作成については主にChatbotやVoicebotの会話フローの作成が自動化される未来が予想されます。現在は人が会話フローを設計していますが、一定のスキルや経験が必要で、開発やメンテナンスに多大な工数がかかっています。これらが自動化されることで、よりChatbotやVoicebotの普及が加速するかもしれません。
また、研修のロールプレイでも活躍の場があるかもしれません。ChatGPTは与えられたシナリオ、役割を演じることができ、さらにその対応を評価することができます。以下は筆者が実践したロールプレイの一例です。
「完全自動化×顧客向け」の領域
人を介さずに完全自動化で顧客対応をする領域ではChatbotやVoicebotでの活用が期待されます。
すでにChatbotやVoicebotはコンタクトセンターへ導入が進んでいますが、既存のものは人があらかじめ定義したシナリオで限定的に受け答えを行っています。そのため、会話フローを外れると対応ができなくなったり、質問の意図を理解できず、的外れな回答をしてしまうこともあります。
しかし、大規模言語モデルの発展に伴い、Chatbotがより正確にユーザーの要望を理解し、適切な回答を返せるようになることが予想されます。また、会話フローから外れても柔軟に対応することができ、会話フローから外れても自然な会話を続けられることが期待されます。
現時点では注意点としてあげたファクトチェックができない点などを考慮すると、人のチェックなしに相対することはリスクがありますが、これらの制御ができるようになれば、自動化できる範囲は一気に広がっていくでしょう。
「人の補助×社内向け」の領域
人と協業しながら社内業務を効率化する領域では、文章要約、FAQ評価、テキストマイニングなどが考えられます。
現在では音声認識ツールを導入している企業も増え、顧客とのやりとりをテキストとして保存している企業も増えました。ただ、やりとりをそのままテキスト化しただけでは非常に見づらいし、長い文章になることがあり、扱いづらいデータとなります。これらを要約したり、テキストマイニングし分析・評価しやすいように大規模言語モデルが活用される可能性は非常に高いです。
また、議事録ツールなどはすでに導入が進んでおり、議事録の要約なども活用が期待されます。
「人の補助×顧客向け」の領域
最後に、顧客対応を行うオペレーターを補助する機能としても大規模言語モデルが活用されるポイントはたくさんあります。
例えば、FAQレコメンドなどはすでにツールとして存在しますが、これまではキーワードを拾ってFAQをレコメンドするのみでした。しかし、大規模言語モデルが入ることで、もっと文脈を理解した上で適切なFAQを提供できるようになります。
また、前述した文章添削などは、チャット対応やメール対応ですぐにでも実用化できそうです。
その他にも、翻訳も大規模言語モデルが得意な領域です。もちろん、多言語対応ができるようになることも有効な手段ですが、筆者が注目したいのは日本語同士でも知識レベルの違いがある両者での会話での翻訳です。例えば、大規模言語モデルは高齢者や5歳児にも分かりやすく説明することができます。
ChatGPTに仕事は奪われるのか
AIの進歩が進むとコンタクトセンター業界で必ず話題になるのが、「AIに仕事が奪われるのか」という命題です。英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が発表した有名な論文「未来の雇用」(2014)には、AIに奪われる仕事として電話オペレータが含まれており、これまでも長くその可能性が示唆されてきました。
そして、今回ChatGPTをはじめとした大規模言語モデルの登場で改めてその可能性が危惧されています。この記事でもこれまで見てきたとおり、大規模言語モデルは高度な対応もできるようになってきています。
AIに仕事が奪われるかどうかは現時点で確からしい答えはありません。ただ、すぐに置き換わるということは、前述したファクトチェックの課題などもあり、難しいというのが筆者の考えです。当分はオペレーターの補助ツールとしての役割に限定されると思いますが、いずれ自動化していく範囲は広がっていく可能性は高いでしょう。ただし、仮に問題解決を全てAIが行えるとしてもインターフェイス部分や学習データのインプット部分では人間がやる意味がある仕事が残ると考えています。
インターフェイスではよりホスピタリティを持った人間らしい対応が求められるようになります。また、どのようなデータをAIに学習すれば、顧客を満足させるAIが作れるのかを考えるのが人間の仕事になっていくでしょう。いずれにしても、顧客のニーズを捉え、適切に提供できる高い対人対応力が求められます。
まとめ
今回は、話題のChatGPTについての概要とできること、今後ChatGPTをはじめとする大規模言語モデルがコンタクトセンターに与える影響について解説しました。
ChatGPTの活用は始まったばかりで、今後さらに活用が広がっていくことが予想されます。また、よりコンタクトセンター向けに利用しやすいツールとして提供する企業も増えていくでしょう。コンタクトセンター業務に大きな変化をもたらす大規模言語モデルに今後も注目です。
ちなみに、今回の記事は一部ChatGPTによって作成しております。どこがChatGPTで作成した文章か、ぜひみなさんも見直してみてください。
コールセンター運営課題はウィルオブ・ワークへ!
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Writer編集者情報
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コネナビ編集部 吉田 章孝
2011年、株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)に入社。
3年目に支店長として支店の新規立ち上げを経験。その後は札幌支店長として着任し、2年間で売上倍増に貢献する。
その後、首都圏管轄マネージャに着任し、営業推進部へ異動。営業推進部では、金融系プロジェクトチームの立ち上げや、部内重点顧客の本部営業などを担当。
2020年4月より、営業推進部 部長として、本部営業や社員教育、求人広告や転職支援チームなどを担当。現在は本部営業をメインに担当。
・趣味:散歩、語学
・特技:料理