コールセンター立ち上げの5ステップ|概要・成功のポイントを解説

2024/10/08

コールセンターは、顧客からの問い合わせに対し迅速かつ正確に対応することで、顧客満足度の向上やビジネスの発展につながる非常に重要な役割を担っています。

最近ではSNSやメール、チャットなど、多様なコミュニケーションチャネルが増加しており、顧客との接点を増やすためにもコールセンターが必要不可欠となっています。

しかし、コールセンターの立ち上げにはやるべきことが多く、実際に自社で運営を開始できたとしても業務に忙殺され、運営がうまくいかないといったケースも少なくありません。

本記事では、コールセンター立ち上げの手順を解説いたします。立ち上げに必要な準備やポイントを理解し、コールセンター運営を成功につなげるための基礎知識もご紹介いたします。

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目的とゴール設定

コールセンターを立ち上げる前に、なぜコールセンターを立ち上げるのか、目的を明確にします。

「顧客満足度を高めたい」「売り上げを上げたい」「新規顧客を獲得したい」など、目的が何であれ最初に明確にしておく必要があります。コールセンター全体のGOAL(KGI)をしっかり立てることで方針のブレがなくなり、管理者やオペレーター全員が同じ方向を向くことができるので、社員の定着率向上が期待できます。
また、そのように安定したコールセンターは、応対品質向上にもつながり、結果的に顧客満足度向上も期待できるでしょう。

現状把握・課題選定

次に、現状を明確に把握していきましょう。
運用プロセス、マネジメント、組織体制、オペレーター管理、システム、この5つに分けて確認していくとスムーズです。現状を把握した上で、カスタマーサービス業務を妨げている問題を特定する必要があります。

例えば、現状コールセンターを持っておらず、顧客からの問い合わせ対応を営業部で行っている企業の場合、問題点としては

  • 人的リソースが不十分で電話の取りこぼしが発生している
  • 製品やサービス知識が社員間でまばらであり、回答にばらつきがある
  • システムが使いにくく生産性が上がらない

などが考えられます。

これらを解決するため、取り組むべき課題は

  • 顧客満足度をあげるため十分なリソースを配置する
  • 社内マニュアルの整備、ならびに新人社員でも分かりやすい研修の構築
  • 生産性向上、顧客満足度向上を目的としたシステムを導入

などがあげられるかと思います。 このように問題を特定することで、取り組むべき課題が明確になり、効果的なアクションプランを考えコールセンター設計に役立てることができます。

設計

コールセンターを立ち上げるための前提条件が整ったら、運用プロセスや組織設計に注力していきます。それぞれ確認していきましょう。

運用プロセスの設計

まずコールセンター運営のゴールに向かっていくために、求められているプロセスを洗い出します。コールセンター運営に起こりうる事態を想定し、実際にどのような業務を誰がどのように対応するのかを明確にします。

例えば

  • オペレーターが担当する業務内容
  • SVへのエスカレーション方法
  • SVが対応する業務内容
  • 定期報告内容や報告方法の決定
  • イレギュラー発生時の対応方法
  • 緊急事態発生時の運用方法
  • センター全体の体制や組織図、オペレーターの緊急連絡先管理など

マネジメント設計

次に運用プロセスを管理するために、必要な管理項目を洗い出します。

コンタクトセンターの運用が適正な状態であるかを判断するための管理指標やその数値を明確にします。 管理すべきKPIとしては下記のような項目があげられます。

  • 1日あたりの受電件数
  • CPH(1時間あたりの受電件数)
  • ATT(平均通話時間)
  • AHT(平均処理時間)
  • 応答率
  • 稼働率
  • 応対品質
  • 新規獲得件数 ・顧客満足度 など

コールセンターの運営目的によって、定めるKPIは異なりますので、管理できる仕組みを構築し、KPIの目標設定と目標が達成できるマネジメント設計をしていきましょう。

組織体制設計

次に、コールセンターを運用するための組織体制を明確にします。 必要人員数や職務・役割の決定をし、組織図も明確にしておきましょう。マネジメント設計で必要なKPIの設定ができているので、それに応じて必要人員も決定します。

  • 必要なオペレーター数
  • 管理者(SV)の配置
  • 研修担当者や品質担当者の配置 など

大規模コールセンターの場合、一般的には1つの班に1名のSVとリーダーが配置され、その班に5名~8名程のオペレーターが配属されます。 オペレーターが顧客対応時、一人で解決できない問題が発生したときに、所属している班のSVやリーダーにヘルプを出します。ヘルプが必要になったときに、もし管理者が別のオペレーターのヘルプ対応に入っていると、顧客を待たせてしまうことになります。そのような場合は隣の島のSVに聞きに行くなど、センターでルールを設けていれば混乱を招くことが避けられるでしょう。

人材育成設計

組織体制が決まったら、オペレーターや管理者を育成するプロセスを考えます。 業務内容や業務の難易度によって、必要な研修や研修期間が異なります。

化粧品コールセンターと、携帯電話の総合受付コールセンターを例に比べてみてみると下記のように研修期間や研修カリキュラムは当然変わってきます。

 

化粧品コールセンター(発信)

携帯電話の総合窓口(受信)

業務内容

・新商品に関するキャンペーンの案内業務
・利用者に向けてのアンケート調査など

・個人情報変更手続き
・盗難紛失対応
・製品に関する問い合わせ
・料金プランに関する相談や変更手続きなど

研修カリキュラム

・商品に関する基礎知識研修
・トークスクリプト練習
・ロールプレイ練習
・応対履歴入力

・企業、製品に関する基礎知識研修
・各受付の電話応対の手順
・トークスクリプト練習
・ロールプレイ練習
・顧客情報システムなどの操作研修
・モニタリングとOJTの実施

研修期間

3日~1週間ほど 3か月~6か月ほど

業務難易度

低い 高い

継続研修 有無

無し
(状況に応じて有)

有り

このように、自社で必要な人材育成の設計は事前にしっかりと取り組んでおきましょう。

コールセンター構築

すべての設計が終わったら必要な設備やシステム、運用フローの構築の仕方について考えていきましょう。

設備やシステム

設備の準備

コールセンター設立の最初のステップは、設備の準備です。内製化する場合は十分なスペースの確保を、センターを構える場合はオペレーターが通勤しやすい立地であることなどを考慮しなければいけません。また、入退室管理システムや防犯カメラの設置など、施設の物理的なセキュリティについても考慮する必要があります。

また運営に必要な什器や備品などの用意も必要です。オペレーターやSVが使用するヘッドセットや、顧客対応時にメモができるタブレットなどです。

電話機とコールセンターシステム

コールセンター運営に必須な電話機やPBXを選定します。PBXとは電話交換機の一種です。発着信や、顧客からの電話を適切に切り分けたり、転送、録音、レポート機能があったりとコールセンター運営には欠かせないシステムです。

また顧客情報を管理するCRMシステムも必要です。これは顧客情報の管理のみならず、電話やチャット、SMSや音声認識、FAQといったマルチチャネルに対応でき、スムーズな顧客対応を実現させてくれます。

▼PBXに関する記事はこちら
クラウドPBX主要ベンダー5社比較│システム概要・選定方法・各社の特徴を解説

ネットワークとセキュリティ対策

コールセンターでのネットワーク設計をする必要があります。 それに加えて、コールセンターでは顧客情報や企業情報などの機密性の高いデータが情報漏洩しないように、セキュリティ対策やバックアップシステムの導入も必要です。システム障害などのリスクを抑えるため、セキュリティ対策としては、ファイアウォールやVPNなどが挙げられます。また、万が一の障害に備えて、データのバックアップシステムを導入することも重要です。

運用フロー整備

会社概要や製品概要の資料作成、オリエンテーションで必要な資料の作成をします。

これに加えて、管理者用・オペレーター用のマニュアル作成も必要です。

オペレーターが問い合わせに対応する際に必要な手順や情報をまとめておくと、オペレーター間で共通の知識や対応方法を持つことができるようになります。 イレギュラー対応の場合のマニュアルやフローの整備をすることにより、問題解決の効率化が可能となります。以下は管理者用・オペレーター用のマニュアル一例です。

管理者用マニュアル 業務マニュアル

 スタッフマネジメント

 管理者用システム操作

 管理者用FAQ

 スタッフ勤怠管理

 会社概要・製品やサービス基礎知識

 オリエンテーション資料

 座学研修用資料(業務手順書、応対方法、システム操作、トークスクリプト)

 オペレーター用FAQ

 継続研修資料

▼コールセンターマニュアル作成に関する記事はこちら
【実践ガイド】コールセンターマニュアル作成│重要性と手順を徹底解説!

人材採用

コールセンター運用ができる体制が整えられたら、いよいよオペレーターの採用活動です。組織体制設計で決めたオペレーター人員数に対して計画的に採用活動を行いましょう。 コールセンターに限らず、現代において人材不足はどの業界においても課題なので、いかにして「ここのコールセンターで働きたい」と思ってもらえるか、またどのようにして企業のことを知ってもらうかは重要なポイントです。

スキルや条件の確定

コールセンターの業務内容によっては、募集すべき人物像は異なります。自社コールセンターで働くオペレーターに求められるスキルの洗い出しと、シフトなどの勤務条件をまとめてみましょう。

  • コミュニケーション能力が高く、相手の話を理解し適切に対応できる能力があること
  • ストレス耐性があること
  • PCの基本的な操作ができること
  • 接客、もしくはコールセンター経験のある方 など

あまりにもこだわり条件を盛り込みすぎると、マッチングする人材の母数が減ってしまうため採用がうまくいかなくなる恐れがあります。これだけは最低限必要なスキルとラインを決めておくとよいでしょう。

求人票の作成と媒体の選定

コールセンターで勤務したいと考えている求職者は、たくさん案件をチェックしています。

他社に求職者を取られないように、企業は魅力的な求人表を作成する必要があります。具体的には業務内容に見合った給与設定にする、福利厚生を充実させる、企業やコールセンターの雰囲気が分かるようにする、「ここで働きたい」と思ってもらえるような差別化ポイントを作るなどです。

また、募集をかける際媒体の選定にも気を付けましょう。コールセンターで働きたい、コールセンター経験のスキルを活かせられる仕事を探している方がよく使う求人媒体を調べて掲載しましょう。

選考方法についても、書類選考でみるべきポイントや、面接の際にかならず確認しておくべきこと、適正テストやタイピングテストの実施をするなど、具体的に決めておくとスムーズです。

企業だけで採用するのが難しい場合は、派遣会社や人材紹介会社を利用するのもひとつの方法です。それらのサービスは、求人掲載と事前面接・企業への紹介までを無料でスムーズに対応してくれます。

人材派遣や人材紹介も検討したいという方は、下記記事に人材サービス会社をご紹介していますのでご覧ください。

▼人材派遣会社・人材紹介会社のご紹介記事はこちら
【法人向け】コールセンターに強い派遣会社9選│選定ポイントやメリットとデメリットを解説
【最新版】コールセンター人材紹介6社│メリットとデメリット│必要手続きや選定ポイントを紹介

オペレーター研修・育成

スタッフを採用できた後は研修内容の構築です。

新人オペレーターにはオリエンテーションの実施をし、社員や同期のオペレーターとのコミュニケーションがとれるようにしましょう。これにより、企業や製品・サービスの理解が高まることはもちろん、社員や同期との団結力が向上します。 また、コールセンター業務の基本的な知識やスキル、社内ルールやマニュアルなどを習得するための教育プログラムを考える必要があります。以下は一般的な研修カリキュラムです。

座学研修

製品やサービスの基礎研修、電話対応の流れや手順、電話応対のトーク練習、電話機やシステムの操作方法など基礎的なことから学びます。基礎を学んだら、次にイレギュラー対応などステップアップしていきます。

システム研修

実際に使用する電話機やコールセンターシステムを操作し、オペレーターに覚えてもらいます。お客様との対話履歴を残す方法や、受注受付方法など、未経験の方でもわかりやすいカリキュラムをこころがけましょう。

ロールプレイ研修

座学研修とシステム研修で学んだことの応用編になります。

同期スタッフ、もしくはリーダーやSVと、ロールプレイを行います。新人スタッフはオペレーター役になって、トークフロー通り進めながら、同時にシステムの操作も練習します。

十分に練習したうえで問題なければ、実際にお客様の対応にチャレンジしていきます。その際、隣に管理者がついた状態にし、何かあった際にいつでもフォローができる体制にしておきます。

▼オペレーター育成のポイントに関する記事はこちら
CS向上させるオペレーター育成法とは│具体的な研修内容やポイントについて解説

運用

いよいよコールセンターの運用開始です。コールセンター運営をしていく上で、立ち上げ後の評価と改善が欠かせません。ここでは、コールセンターのKPI(Key Performance Indicators)や評価基準の設定、問題や改善点の把握と改善策の実行について解説します。

コールセンターのKPIや評価基準

コールセンターのKPIや評価基準の設定をした上で運営をはじめます。先ほどマネジメント設計の項目でいくつか例を出しましたが、平均通話時間、稼働率、顧客満足度などが挙げられます。これらのKPIを設定することで、コールセンターの運営状況を評価することができます。また、評価基準の設定によって、オペレーターのモチベーション向上や業務改善に繋げることもできます。

問題や改善点の把握と改善策の実行

コールセンターの運営においては、常に問題が発生する可能性があります。そのため、問題を把握し、改善策を見つけることが大切です。問題点の把握には、顧客からのアンケート結果やフィードバック、オペレーターなどの現場の声を参考にするとよいでしょう。 それらの改善策として、システムや設備の改善、オペレーターの教育やトレーニング、業務プロセスの見直しなどが考えられます。改善策の実行には、問題点の優先順位付けや計画的な実施が必要です。このPDCAを繰り返すことで、よりよいコールセンターにすることができます。

まとめ

コールセンターを立ち上げるには、目的・ゴールの設定からはじまり、現状把握、運営プロセスの整備、設備やシステムの選定、オペレーターの採用と育成が必要です。

コールセンター運営が実際に始まると、オペレーター教育や顧客ニーズへの対応、システムのトラブルなどさまざまな課題が出てくるはずです。コールセンターのKPIや評価基準を設定し、問題点を把握して改善策を実行することで、コールセンターの品質向上につながります。コールセンターの立ち上げから運営・改善までの全体像を理解し、適切な取り組みを行うことが重要です。 これらを適切に行うことで、スムーズなコールセンター運営が可能となり、顧客満足度の向上や企業の売り上げ向上につながることが期待できるでしょう。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 平井 美穂

    2012年、株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)へ入社し、コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属。フィールドサポータや営業コーディネータ、キャリアアドバイザー、新規営業、人材紹介(転職支援)などを経験。
    2020年 人材紹介にて自己最高売上を記録、時短勤務×妊娠中での実績が評価され全社月間MVPにノミネート。現在5歳と2歳を育てるパワフルワーママ!

    ・趣味:断捨離、森林浴、岩盤浴
    ・特技:細かい事に気が付く点

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