コールセンターで従業員満足度(ES)を向上させる実践的な方法について解説

2024/02/11

コールセンターにおいて顧客満足度(CS)は至上命題ですが、近年CSの実現に向けてまずは従業員満足度(ES)を向上させることに目を向けるセンターが増えています。また、コールセンター業界では長らく人材不足や人材定着率が課題でしたが、その対策としても従業員満足度が注目されています。

本記事では、定着率の向上を目指すコールセンター管理者向けに、従業員満足度の重要性や構成要素を理解し、具体的な向上方法を紹介していきます。

記事を読むことで、ESの課題に対する解決策を網羅的に把握できるようになり、センターで実践できるアイデアが得られるでしょう。一緒に働きやすいコールセンター環境を実現し、生産性や定着率の向上につなげましょう。

従業員満足度(ES)とは

従業員満足度(以下、ES)とは、企業内で働く従業員が自分の仕事や職場環境にどれだけ満足しているかを示す指標です。従業員が働く環境や条件に満足しているほど、モチベーションが高まり、生産性や定着率が向上することが期待できます。顧客満足度(CS)とは異なり、ESは従業員の視点から評価されるため、企業の内部向けの評価指標となります。

ESとCSは密接に関連しており、従業員が働きやすい環境が整っている場合、サービス品質も向上し、顧客満足度が高まることが一般的です。そのため、ES向上は結果として顧客満足度の向上にも寄与します。

ESが注目されている背景

近年、ESが求められるようになったのは労働人口の減少で人材獲得の競争が激化しているためです。特に若い世代の価値観が変化しており、職場に働きやすい環境や従業員の意見を取り入れてくれるかを求める傾向が強まっています。

特にコールセンターは、顧客窓口として様々な声や要求をダイレクトに受けたり、時間内での高い生産性を求められるなど、ストレスのかかりやすい職場であると同時に、労働集約型のため大量に人材が必要ということで定着率を上げていくことが課題でした。

従業員が働きやすい環境を整えることで、定着率向上や業務効率アップが期待できます。そのため、コールセンターにおいても、ES向上が重要な課題となっているのです。

ESの構成要素とは

ESを構成要素を考える上で参考になるのが、アメリカの臨床倫理学者ハーズバーグ(1923〜2000)が提唱した「ハーズバーグの動機付け衛生理論」です。この考えでは仕事の満足度を上げる要因(動機づけ要因)と下げる要因(衛生要因)の2つで考えています。

この中でも、特にコールセンターにおいて重要な要素をピックアップしてご紹介します。

マネジメントの質

マネジメントの質は、ESを大きく左右します。特にコールセンターでは日々の業務のあらゆる場面で管理者とオペレーターは関わります。

オペレーター一人一人を理解し、適切なコミュニケーションやフォローができる管理者のいるセンターは定着率が高いです。逆にコミュニケーションが不足による納得感のないマネジメントを行なったり、フォローが行き届いていないと定着率が低い傾向にあります。

マネジメントの質を上げるためには、管理者への適切な研修、フォローアップが必要です。また、管理者への権限委譲も適切に行う必要があります。このあたりはどのセンターでも悩ましいところだと思いますが、重要なのは横と縦でコミュニケーションがスムーズに行える体制が整っているかです。情報の流れが切れていると、そこがボトルネックになる可能性があるので、センターでの情報流通がしっかりと行われているか注意してみていきましょう。

仕事の意義

従業員が自身の仕事の意義を感じることは、ESに深く関わります。自分がやっている業務が会社やユーザーに貢献していると実感してもらうことが大切です。

特にコールセンターは職業柄フォロワー気質のオペレーターが多く、他者への貢献に意義を感じるタイプが多いです。業務によってはなかなかユーザーからポジティブなフィードバックをもらうことはできないこともあるので、その場合は上司がしっかりとオペレーターのパフォーマンスや貢献について称賛や感謝を伝えることが大切です。また、社員同士で褒め称える文化の形成も大切です。

職場での人間関係

職場での人間関係は、ESに大きな影響を与える要素の一つです。特に若年層の離職理由の上位に位置するなど、この要素は避けて通れません。職場の人間関係がこじれると、それがストレスとなり、結果的に満足度を大きく低下させます。

しかし、人間関係を構築するためには、単にコミュニケーションの量を増やすだけでは不十分です。表面的な関係は、結果的には従業員満足度の向上にはつながりません。重要なのは、お互いに深い関心を持ち、理解し合うことです。これは特に、忙しさやプレッシャーの多いコールセンターの環境では、なおさらのことです。

たとえば、チームビルディング活動やメンターシッププログラムなど、職場の人間関係を強化するための具体的な取り組みが求められます。

センター環境の快適さ

センター環境の快適さは、ES向上の重要な要素です。センターの物理的な環境が快適であることに加えて、福利厚生や就業規則の充実も大切です。

職職場環境を改善するためには、従業員のニーズを的確に捉え、それに応じた施策を講じることが重要です。まずは意見が言いやすい職場環境であることが大切ですし、改善に向けた姿勢を見せることも大切です。

昨今では在宅勤務への要望も高まっており、よりオペレーターのライフワークバランスに合わせて就業継続が可能な職場環境の整備が求められています。

在宅に関する記事を読む:コールセンターにおけるテレワーク(在宅勤務)化の導入方法と課題の分析

コールセンターでのES向上によるメリット

ESの向上は、コールセンターの重要な指標である生産性やCSの向上、またそれら生む出すための重要な要素である定着率に繋がります。

定着率の向上

ESはセンターの定着率に大きく影響します。ESが高まると従業員の帰属意識も高まり、人材の流出が防ぐことができます。また、採用活動にもポジティブな影響をもたらし、従業員からのリファラル採用の増加や人材確保コストの削減など、さまざまな面で恩恵を受けることができます。

当然ですが、良い人材が採用で定着してくれれば、後述する生産性の向上やCSの向上に貢献します。

生産性の向上

ESが向上すると、従業員のモチベーションが高まり、能動的に仕事に取り組むようになるため生産性の向上に繋がります。構成要素で説明したビジョンへの共感や仕事の意義が鍵になります。

また、個人でみたときのパフォーマンスだけではなく、全体での動きにも大きく影響します。センターでは生産性を向上するために、あらゆる施策を投じますが、これが即効性をもって浸透するかはセンターでの情報流通量が鍵になります。

高い意欲を持った従業員が多い職場では、コミュニケーションが活発になり、情報流通量が多くなるため、生産性の向上に寄与します。

顧客満足度(CS)の向上

顧客満足度(CS)とESに因果関係があることはあらゆる調査からわかっています。アメリカの調査にはなりますが、書籍「カスタマー・ロイヤルティの経営―企業利益を高めるCS戦略」(著:ジェームス・L.ヘスケット他)では「ESが1%増加すると、CSが0.22%増加する」や「ESとCSとの間に、99%の因果関係が認められた」といった調査結果が報告されています。

ESとCS、そして業績は互いにフィードバックループで繋がっており、ポジティブにいけばよりポジティブに働きますし、ネガティブに回り始めるとどんどんネガティブに回るという性質を持っています。

出典:Talknote Magazineより

ESを向上させるセンターでの具体的な方法

ここまで、ESの構成要素やメリットについて説明してきましたが具体的に改善していくのための方法についてご紹介します。

現在の状況を把握する

何事も改善活動を進めるためには、まず現在地を知る必要があります。一般的には顧客満足度同様に、アンケート調査等で確認するのが一般的ですが、最近ではeNPS(従業員がどれだけ他の人に自社を薦められるか)という指標を用いることもあります。

NPSに関する記事を読む:NPS®(ネットプロモータースコア)とは?コンタクトセンターでの計算方法や運用方法を解説

調査のステップとしては一般的には以下の5つのステップです。

  実施内容 詳細
STEP1 調査目的の明確化 調査目的を明らかにし、従業員に周知することで協力を得る
STEP2 設問の策定 調査目的に合わせ、属性に応じた設問を策定。設問数も配慮する。
STEP3 調査の実施 調査を実施する。
STEP4 結果の分析 単純集計、クロス集計、構造分析等を組み合わせて課題を分析する
STEP5 対策立案 課題に対して優先順位を設け、改善策を立案する

この調査の結果から得られた示唆を元に、対策を立案していきます。特にコールセンターで効果的な施策について説明します。

企業理念やビジョンの浸透と共有

企業の理念やビジョンを従業員と共有し浸透させることは、コールセンターのES向上に寄与します。これは、従業員が企業の目指す方向性を理解し、自身の業務がそのビジョンにどのように貢献しているかを知ることで、業務の意義を感じやすくなるからです。

アメリカのオンラインサービスZapposはこの考えを具現化した企業の一つです。Zapposでは、「Deliver WOW Through Service(サービスを通じて感動を届ける)」という企業理念を掲げています。これはコールセンターにも浸透しており、顧客に対する優れたサービスを提供することが従業員の自己達成感と直結しています。

具体的には、Zapposのコールセンターでは通常の業務時間やスクリプトに縛られることなく、従業員が顧客のために最善を尽くす自由を与えられています。これにより、顧客に対してよりパーソナライズされたサービスを提供でき、従業員自身も自分の仕事に対する満足度を高めています。これがZapposの高いESにつながっています。

職場環境の改善

職場環境の改善もコールセンターのESには大きく影響します。心地よい環境では仕事に集中しやすく、また休息スペース等があるとストレス軽減にもつながります。

日本のIT企業、GMOインターネットでは、食堂での無料食事提供や仮眠スペースの設置など、従業員が心地よく過ごせるような環境作りに力を入れています。これにより、従業員は業務に集中するだけでなく、自身の心身の健康にも配慮することが可能となっています。

コールセンターにおいても、このような施策は有効です。オペレーターの仕事はストレスが溜まりやすいため、仮眠スペースを設けることで、必要な休息を確保できます。また、飲食提供などにより、休憩時間をリフレッシュに活用できます。さらに、社内託児所を設けることで、子育て中の従業員が安心して仕事に打ち込める環境を整備できます。

チームビルディングと人間関係の強化

センターでの人間関係は良くも悪くも、ESを構成する中で引き続き大きなファクターです。どのようにチームビルディングを行い、人間関係を築くかは重要です。

ボルボ・カー・ジャパンでは、チームビルディングに注力し、売上拡大や顧客満足度の向上につながる結果を出しています。同社では「Unipos(ユニポス)」というHRサービスを利用し、従業員同士が感謝や称賛の言葉をオープンに共有できる環境を作り出しています。これにより、ベストプラクティスの共有はもちろん、従業員の働きがいが高まり、ESの向上に寄与しています。

まとめ

本記事では、コールセンターでの従業員満足度(ES)の向上について解説しました。ESは、マネジメントの質、仕事の意義、職場での人間関係、センター環境の快適さなどから構成され、これらが満たされることで定着率や生産性、さらには顧客満足度(CS)の向上にもつながります。

まず自分たちのセンターでの現状を把握し、ESを測定することから始めると良いでしょう。その上で、本記事で提案した具体的な施策を試すことで、着実に改善へと進むことができるはずです。

より良いコールセンターの運営を目指して、持続的な改善活動を行いましょう。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 平井 美穂

    2012年、株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)へ入社し、コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属。フィールドサポータや営業コーディネータ、キャリアアドバイザー、新規営業、人材紹介(転職支援)などを経験。
    2020年 人材紹介にて自己最高売上を記録、時短勤務×妊娠中での実績が評価され全社月間MVPにノミネート。現在5歳と2歳を育てるパワフルワーママ!

    ・趣味:断捨離、森林浴、岩盤浴
    ・特技:細かい事に気が付く点

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