コールセンターの定着率改善に必要なVOEとは│その概念や目的・活用方法を解説

2024/02/11

コールセンター管理者として、高い定着率を維持することは常に頭を悩ませる課題の一つです。これまでもいろいろな施策を打ってきたにも関わらず、思うような結果が得られないという経験をされている方も多いのではないでしょうか。

この記事はそんなコールセンター管理者の皆様に向けて、「VOE(Voice of Employee)」という概念とその活用方法について詳しく解説します。VOEの目的や課題を理解し適切に取り入れることで、従業員満足度の向上から定着率改善に繋がるヒントが見つかります。

VOE(Voice of Employee)とは

VOEとは「Voice of Employee」の略で、直訳すると「従業員の声」を意味します。一般的にビジネスの文脈で利用される場合は、従業員からのフィードバックや意見、感想などを収集・分析することを指します。また、「顕在化された声」だけではなく、従業員の仕事に対する意欲やモチベーションのように意見には表れないものの態度に表れるような「潜在的な声」も含む広範な概念で捉えられる場合もあります。

コールセンターで一般的に耳馴染みがあるのは、VOC(Voice of Customer)でこちらは「顧客の声」を意味します。後述しますが、VOEは定着率の向上だけではなく、VOCを補完する役割も担います。より深くVOCについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

VOC(Voice of Customer)とは何か?コンタクトセンターでの活用ポイントについて解説!

VOE収集の目的

VOE収集の主な目的は2つあります。
一つは「VOC活動の補完」、もう一つは「定着率の向上」です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

VOC活動の補完

コールセンターにおけるVOC活動は、顧客の意見や要望、不満を集めて分析することで、製品やサービスの改善に繋げる重要なプロセスです。しかし、VOCを分析するだけでは背景にある潜在的な課題やニーズに十分に対応することが難しい場合もあります。

その際、オペレーターの声、すなわちVOEを分析することで、VOCだけでは気づかなかった新たな視点やインサイトを引き出すことができます。なぜなら、顧客の声を最も効果的かつ正確にキャッチできるのは、実際に顧客に相対しているオペレーターだからです。オペレーターは日々、お客様との会話を通じて、その声の内容(質)の変化や増減傾向を、意識・無意識にかかわらず把握しています。このような数値に表れないような微妙なニュアンスも含めてVOCを見ることで本当のニーズを掴むことができます。

定着率の向上

オペレーターの定着率向上において、VOEの活用は重要な要素になります。その理由の一つは、自分の意見が組織に届き、必要な措置が取られると感じられると、エンゲージメントが高まり、オペレーターがより長く組織に留まる可能性が高まるからです。

実際、ギャラップ社が行った調査によれば、従業員に対して複数のコミュニケーションチャネルを持っている組織では、従業員の定着率が向上しています。これは、従業員が自分の声が聞かれ、その意見や懸念が組織の中で重視されていると感じることが、彼らの職場への帰属意識を高めるからです。

また、管理者はVOEを通じて、社員がどのような教育ニーズを持っているのか、どのようなトレーニングを行えばよいかを把握することができます。コールセンターでの離職理由の多くは業務に対する不安によるものです。特に立ち上がりの際に行うトレーニングは重要で、適切なトレーニングが行われれば、業務に対する不安が緩和され、長期的な定着に繋がります。

VOE収集における課題

VOEを有効に活用するためには、従業員からの意見を正確に収集することが必要です。しかし、そのプロセスには様々な課題が存在します。その中でも特に頻繁に遭遇する3つの課題について解説します。これらの課題を理解し適切に対応することで、より質の高いVOEの収集が可能となります。

従業員がアンケートに答えてくれない

VOEを収集するための一般的な方法の一つがアンケート調査です。しかし、アンケート設計の手法に問題があると、従業員はアンケートに回答することをストレスと感じ、その結果、回答率や回答の精度が低下する可能性があります。

アンケートが長すぎる、または頻繁すぎると、従業員はアンケートへの回答に時間を割くことを避けようとするでしょう。質問が複雑で理解しづらい、または回答形式が煩雑な場合も同様です。

アンケートの回答率を向上させるためには、必要最低限の設問数に絞り、調査の頻度を適切に設定する必要があります。また、質問文はわかりやすく、回答しやすい形式にします。従業員が迷わずに回答できるよう、単純明快な質問文と回答形式を選びます。また、回答者に対するインセンティブを設けることも有効です。

これらの手法を用いることで、従業員がアンケートに回答することをより簡単にし、また意義あるものにすることが可能になります。

従業員は本音を言ってくれない

VOEの調査では、従業員が本音を述べてくれないという問題がしばしば発生します。

その原因は主に二つあります。一つ目は、ネガティブな意見を述べることで、自身の評価にマイナスの影響が及ぶのではないかという懸念からです。二つ目は、たとえ自分の意見を述べたところで、それが組織改善につながらないのではないかという無力感からです。

これらの問題を解決するためには、組織内のコミュニケーションを開放的にし、「心理的安全性」を確保することが重要です。心理的安全性とは、自分の意見や考えを自由に表現でき、失敗や間違いを恐れることなく新たな試みをすることができる環境を指します。「自分の意見を言ってもいいのだ」という空気が重要です。

また、必要に応じてアンケート調査を匿名化することも有効です。匿名化することで従業員が自己保身のために意見を控えるという事態を避けることができます。ただし、匿名化することで具体的な課題の特定が難しくなるというデメリットもありますので、適切なバランスが求められます。

従業員が言語化できていない

VOEの調査では、オペレーターが自身が感じていることを明確に言語化できていないことが問題となる場合があります。特に、質問が抽象的すぎると、どの観点で答えたらよいのかを従業員自身が判断できず、求めていた情報が得られない可能性が高まります。

言語化を促すためには、調査の設計段階で質問の観点を明確にし、具体的な質問をすることが必要です。たとえば、「仕事に対する満足度は?」などのようにざっくりとした質問ではなく、「業務の量は適切と感じるか?」といった具体的な質問にすることで、従業員が自分の感じていることをより明確に言葉にできます。

また、目的や質問の設計によっては、予め選択肢をこちらで用意し、それに対して選んでもらう形式も有効です。これにより、従業員が抽象的な感情や体験を具体的な言葉に変換する負担を軽減できます。ただし、選択肢の設定には注意が必要で、バイアスのない公正な設計が求められます。

VOEの実施プロセス

VOEの調査を実施するには、明確なプロセスを設定することが必要です。具体的には、目標の設定と準備から始め、質問の作成と実施、フィードバックの収集と分析、そして改善策の提案と実行までの手順について解説します。

目標設定と準備

VOE調査を開始する前に、まずその目標を明確に設定する必要があります。この目標設定は、その後の質問の設計や分析の方法、改善策の提案などに大いに影響を及ぼします。例えば、従業員の満足度を向上させるために何が必要なのかを知るための調査であるか、新たな業務改善のアイデアを得るための調査であるかによって、必要な質問内容や評価基準が異なるからです。

目標設定は関係者全員で共有し、認識がぶれないようにすることも重要です。全員が同じ目標を理解し、その達成のためにどのように行動すればいいのかを明確にすることで、効率的で結果を出せる調査に繋がります。

また、VOE収集は通常業務とは異なる特別なプロジェクトと考え、専門のタスクフォースを設置することをおすすめします。それにより、適切なリソースが確保され、計画通りに調査が進められます。最初のステップから整備しておくことで、スムーズな調査実施が可能となります。

質問の作成と実施

次に、設定した目標に沿って質問を作成します。「アンケート疲れ」は注意が必要なポイントで、アンケートの長さ、回答の頻度、回答内容の複雑さなどが引き金となります。あれもこれもとついでに収集するスタンスで不必要な質問を詰め込むと、アンケートの脱落率が高くなる可能性があるため、質問は簡潔で必要なものだけに絞ることが大切です。

アンケートは選択式と記述式があります。選択式は回答者の負担が少なく、定量的な分析をしやすい一方、微妙なニュアンスや個々の思考を排除する可能性があります。そのため、どの程度の範囲で選択肢を設けるのか、慎重に考える必要があります。記述式の質問は、回答者の自由な意見を得られますが、質問の意図が明確でないと望む回答が得られないため、質問文は明瞭でわかりやすいものにするべきです。また、記述式は回答に時間がかかりアンケート疲れを招きやすいので、必要最小限に抑えることが求められます。

フィードバックの収集と分析

フィードバックの収集と分析は、VOE調査の成功を左右する要素の一つです。

集めたフィードバックを記録し、定量的・定性的に分析します。定量的な分析では、選択式の質問の結果を数値化して傾向をつかむ一方、定性的な分析では、記述式の質問に対する回答から深層的な意見や感情を理解します。一度だけフィードバックを集めて終わりではなく、継続的に行うことでトレンドや変化を把握することができます。

フィードバックが時系列的にどのように変化するのかを分析することで、取り組みの効果を具体的に可視化し、改善策の方向性を定めることができます。

改善策の提案と実行

VOEを実施する最終目的は、従業員の声を元に改善を行うことです。ただ集めるだけではなく、収集した意見に対して具体的な対応がなされなければ、従業員は次第にVOEへの協力的な態度を失い、調査自体が形骸化してしまいます。

改善策の提案と実行では、分析結果から導き出された課題解決のためのアクションプランを立てます。リソースや全体最適を考えると、全ての要望に応えられる訳ではないため、できない施策についてはできない理由や背景を透明性を持って説明することが大切です。

また、実施した結果やその効果も定期的にフィードバックすることが求められます。これにより、従業員は自分たちの声が組織に影響を与えていると実感でき、次回以降のVOE調査に対する参加意欲を高めることができます。

こうした一連の流れが、VOEを活用した組織改善のサイクルとなります。改善の提案から実行、結果のフィードバックまで、全てのステップで誠実に取り組むことが、VOEの真の意義を体現することに繋がります。

20の質問例

最後に、従業員調査で効果的な質問の例をご紹介します。以下は、アンケートプラットフォームを提供するQuestionPro社が紹介する従業員調査の質問例トップ20です。

No. 質問例
1 組織での全体的な経験に基づいて、0-10のスケールで、組織をあなたの家族/友人に推薦する可能性はどの程度ですか?
2 この組織で働くことにどの程度誇りを持っていますか?
3 あなたは仕事上の役割や責任にどの程度満足していますか?
4 あなたは、時間内に仕事を完了させるために、どの程度やる気がありますか?
5 組織の目標との整合性を感じているか?
6 目標達成のために、組織内のリーダーの役割を評価しているか?
7 組織から期待されていることを自覚しているか?
8 あなたは、職場で仕事を成功させるために必要なリソースやツールを利用することができますか?
9 あなたは、目の前の仕事を終えるために与えられた時間に満足していますか?
10 毎日、会社に来るのが楽しみになりましたか?
11 あなたは、この組織が自分のキャリアを開発するのに適した場所であると感じますか?
12 2年後、この組織にいる自分を想像できますか?
13 あなたは、組織における自分のキャリアパスについて、どの程度明確にしていますか?
14 あなたの上司は、あなたの意見を尊重してくれると思いますか?
15 あなたのチームはどれくらいの頻度でミーティングを行っていますか?
16 あなたの上司は、どれくらいの頻度であなたにパフォーマンス・フィードバックを行いますか?
17 チームワークを楽しむことができますか?
18 この組織について何かひとつ変えられるとしたら、それは何でしょうか?
19 この組織のどこが一番好きですか?
20 組織の最大の強み・弱みは何か?

まとめ

本記事では、コールセンターの定着率改善のための重要な手法であるVOE(Voice of Employee)の活用方法について詳しく説明しました。

salesforce社の調査によれば、自身の意見や考えが組織に対して受け入れられ、影響を与えられると感じる従業員はパフォーマンスが約4.6倍にも向上すると言われています。パフォーマンスの向上は仕事のやりがいなどにも繋がり、より定着率を高めることができます。このように、VOE調査は効果的に行うことで多方面での効果が期待できます。今回の内容を元に、是非実践に移してみてください。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 平井 美穂

    2012年、株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)へ入社し、コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属。フィールドサポータや営業コーディネータ、キャリアアドバイザー、新規営業、人材紹介(転職支援)などを経験。
    2020年 人材紹介にて自己最高売上を記録、時短勤務×妊娠中での実績が評価され全社月間MVPにノミネート。現在5歳と2歳を育てるパワフルワーママ!

    ・趣味:断捨離、森林浴、岩盤浴
    ・特技:細かい事に気が付く点

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