VOC(Voice of Customer)とは?コンタクトセンターで活用するためのステップと効果的な分析法
2025/05/22
- 品質向上
- 顧客満足度向上

近年、顧客の声(Voice of Customer)を分析し、サービス改善に活用するのは当たり前になりました。顧客接点の最前線であるコンタクトセンターは顧客の声の収集、分析、活用において重要な役割を担っています。
この記事では、VOCについて概要の解説、今VOC活用が必要とされている背景・理由、コンタクトセンターでの活用ステップについて解説します。
VOC(Voice of Customer)とは
VOCとは、サービスや商品、企業に対する顧客の意見や品評などを総称したものです。
一般的にはコンタクトセンターなど、顧客と直接接点をもつ部署にお客様の声は集まります。最近ではTwitterをはじめとするSNSや口コミサイトなど企業には直接コンタクトはないものの、インターネット上に寄せられる声もあります。
VOC分析ではこれらのお客様の声を分析し、サービスの改善や新商品の開発、マーケティングへと活用されます。
なぜ今、VOCが注目されているのか?|背景とトレンドの変化
VOCが重要になってきた背景には、インターネットやSNSの普及によって、顧客が気軽に意見を発信できるようになったことが挙げられます。
インターネット上での評判は企業ブランドにとって重要な意味を持ちます。そして、商品やサービスのコモディティ化が進んでいる今、企業ブランディングを行うことは競合他社と差別化するための重要なポイントです。VOCを取り込むことで顧客満足度を改善し、顧客のロイヤルティを上げていくことは現代のビジネスにおいては大切な課題です。
また、顧客が求めるニーズや購買行動も多様になり、日々変化しています。これらの顧客ニーズにスピーディに対応していくため、企業側では顧客側の意見を素早く取り入れていく必要があり、VOCが重視されるようになりました。
コンタクトセンターにおけるVOC活動のステップ
コンタクトセンターでのVOC活動には大きく分けると「収集」「分析」「活用」の3ステップがあります。それぞれ解説します。

VOCの収集方法
VOCの収集方法は、主に以下の3つが一般的です。

コンタクトセンター
コンタクトセンターには、日々多くの顧客の声が寄せられます。従来は電話が中心でしたが、近年ではチャットやメールなどのテキストコミュニケーションも増加傾向にあります。
寄せられる意見には、肯定的なものから否定的なものまでさまざまです。特に、コンタクトセンターに直接連絡する顧客は企業に対して強い関心や要望を持っているケースが多く、その声は非常に貴重です。
また、コンタクトセンターは双方向の対話が可能なため、顧客の抱える問題を深掘りしやすい特徴があります。第一報では気づかなかった本質的な課題が、対話を通じて明らかになることも少なくありません。実際、深掘りによって得られたVOCから、製品・サービスの大きな改善やヒット商品が生まれた事例も多く存在します。
SNSが発展した現代においても、コンタクトセンターは依然としてVOC収集の最前線を担う重要なチャネルです。
SNS・口コミサイト等
近年、SNS上で企業や製品・サービスについて意見を発信する顧客が増えています。特にX(旧Twitter)などは拡散力が高く、多様な声を迅速に把握できる場となっています。
SNSは匿名性が高いため、ユーザーの本音や率直な意見を得やすい一方で、情報の信頼性や正確性の見極めが必要です。すべての投稿をVOCとして扱うのではなく、収集や分析の範囲を慎重に見定める必要があります。
加えて、口コミサイトや比較サイトもVOCの有効な収集源です。こうしたサイトでは、顧客からの評価が定量化されており、競合他社との比較も可能です。購買前に口コミサイトを参照する消費者も増えているため、企業としてもこれらの声をモニタリングし、戦略に反映させることが求められます。
アンケート調査
アンケート調査は、古くから用いられてきたVOCの収集手法です。前述の2つの方法が「受動的(リアクティブ)」に顧客の声を受け取るのに対し、アンケートは「能動的(プロアクティブ)」に企業側が情報を取りに行くという違いがあります。
アンケートは、企業が特定のテーマについて意見を求めるため、ピンポイントで必要な情報を収集できる利点があります。しかし、設計を誤ると本質的な顧客の声が得られなかったり、回答のバイアスがかかるリスクがあります。たとえば、誘導的な設問や選択肢の偏り、設問数の過不足などが挙げられます。
また、調査対象となる母集団の規模や属性にも注意が必要です。偏りのある母集団では、収集データにも偏りが生じ、誤った解釈につながる恐れがあります。
アンケートの実施方法は、メール・SMSを活用した簡易的な方法から、調査会社による大規模なリサーチまでさまざまです。目的に応じて適切な手法を選ぶことが重要です。
なお、顧客満足度を数値で測定する手法の一つに、代表的な指標として「NPS®(ネットプロモータースコア)」があります。
▼NPSに関する詳しい内容はこちら
「NPS®(ネットプロモータースコア)とは?コンタクトセンターでの計算方法や運用方法を解説」
VOCの分析方法
次にVOC分析の具体的な方法についてご紹介します。分析するためにはいくつかのフェーズがあります。
分析の目的を明確にする
VOC分析を行うためには、まず分析する目的を明確にする必要があります。
VOCの活動目的は、単にデータを収集して分析することではありません。分析から得られた情報をもとに、どのようにビジネスを改善するかが最終的なゴールです。ここでいうビジネスの良い方向には様々なものが当てはまります。例えば、企業の売上をあげるために企業ブランディングを確立するということもあれば、コストを下げるため問い合わせ傾向を分析し、問い合わせを減らすための施策に役立てるということもあるでしょう。
目的を明確にすることで、どのデータを集めるべきか、どのように分析を進めるべきかが見えてきます。重要なのは、最終的にどんな成果を出したいのかをしっかりとイメージし、そのために必要なデータを収集し、分析を行うことです。
このように、目的を最初にしっかり設定することで、VOC分析がただのデータ集めに終わらず、実際に役立つ気づきや改善点を得るための強力な手段になります。
分析の方針を明確にする
VOC分析を行う前に、分析の方針を明確にすることが重要です。最初に方向性を決めておくことで、収集すべきデータや分析方法が見えてきます。
まず、マクロ的な視点で、広い範囲から統計情報などの大きなトレンドを把握したいのか、それともミクロ的な視点で、具体的なクレームやSNSでの投稿内容などから改善点を洗い出したいのかを考えましょう。これによって、分析のアプローチや収集するデータが変わります。
また、分析手法によっても適切なデータの形が異なります。たとえば、テキスト分析を行うのであれば、単語やフレーズごとの出現頻度を計測するデータが必要ですし、感情分析を行いたいのであれば、顧客の感情を定量的に表現できるデータが求められます。ですので、データを収集する前にどの手法を使うかを決め、その手法に合わせたデータを準備することが大切です。
データを収集する
目的と分析方針が決まったら、それに沿ったデータを収集します。
ここで大切なのは、仮説通りに目的に合ったデータを収集できているかをしっかり確認することです。データ収集が順調に進んでいないと感じた場合は、収集方法を見直すか、もしくは分析手法自体を変更する必要があるかもしれません。収集したデータが目的に合っていない場合、その後の分析に進んでも正しい結果が得られません。定期的に進捗をチェックしながら、収集方法を調整していくことが求められます。
データを分析可能な状態にする
収集したデータは、そのままでは分析に使いにくいこともあります。特に、コールセンターでの音声データなどは、そのままでは数値化できないため、分析には不向きです。
このような場合は、音声認識ツールなどを活用してテキストデータに変換したうえで、分析に適した形式に整える必要があります。さらに、テキストデータをもとに言葉の出現頻度や傾向を分析することで、顧客の声に潜む課題や傾向を可視化することができます。
このステップは、データの信頼性と分析結果の精度に直結する重要な工程です。
分析をする
分析にはさまざまな手法がありますが、基本的には「共通点を探す(類似)」か「違いを比較する(対比)」という2つの視点で行います。
- 類似(共通点の抽出)
AとBの共通点を見出す分析手法です。例えば、テキストマイニングなどを活用し、顧客の声に多く含まれる単語を分析することで、問い合わせの共通点・傾向を掴むことができます。 - 対比(相違点の分析)
AとBの相違点を見出す分析手法です。対比するものは様々なケースが考えられますが、例えば、満足度の高い顧客と低い顧客との対比や、過去と現在の対比、製品Aと製品Bの対比などを行うことで、それぞれの特徴などを分析することができます。
いずれの方法においても大切なのは、分析結果に信頼性があるか、そして次の行動につながる内容になっているかという2点です。
分析結果にバイアスや誤解があると、ビジネスにおいてミスリードにつながるリスクがあります。そのため、必要に応じて統計の知識を活用しながら、正確な読み取りと冷静な判断が求められます。
▼テキストマイニングに関する記事はこちら
「コールセンターの顧客分析に役立つテキストマイニングとは?仕組みや分析手法の概要を解説」
VOCの活用方法
VOC分析の結果を以下のような目的に繋げることができます。
顧客満足度やNPSの向上に繋げる
VOCを分析しサービスや商品改善を行うことで、顧客満足度やNPSといった指標を向上させることができます。NPSは、顧客が企業やサービスをどの程度「他人にすすめたいか」を示す指標であり、企業のブランド力や顧客ロイヤルティを測るうえでも重要なものです。近年では、コンタクトセンターにおいてもNPSが重要な評価指標として広く活用されるようになっています。
VOC活動と企業ブランディングにおける関係で重要なのはダウンサイドのリスクをいかに抑えるかです。近年では、SNSでのネガティブな投稿がきっかけで炎上し、最悪の場合にはサービス停止に追い込まれるケースも珍しくありません。このようなレピュテーションリスク(企業の信頼に関するリスク)を適切に管理するためにも、VOC分析は非常に重要な役割を担っています。
▼顧客満足度・顧客ロイヤルティ・レピュテーションリスクに関する記事はこちら
「CSATとは│コールセンターで必須のKPI計測方法と施策を紹介」
「カスタマーサポートでの顧客ロイヤルティ向上施策│メリットと注目の背景とは?」
「企業のレピュテーションリスク対策|コンタクトセンターが果たすべき役割とは」
市場のニーズを素早く捉えるのに役立てる
VOC分析をリアルタイムに行うことができれば、市場のニーズを機微に捉えることができ、それらを素早く商品やサービスにフィードバックすることができます。
特にここ最近ではIT業界におけるクラウドサービスのように、一度リリースをすれば終わりではなく、時代に合わせてどんどん商品やサービスを改善していくことが求められます。これはIT業界に限らず多くの業界で起きている現象で、そのためにも市場のニーズを素早く捉えていくことが重要です。
マーケティング活動の戦略に役立てる
VOC活動を行うことで、商品やサービスの改善だけではなく、企業としてどのように市場とコミュニケーションを取っていくかの戦略が立てやすくなります。マーケティング活動では、企業がどのように市場に認知をしてもらうと良いかが重要ですが、VOC分析を行うことで実際の市場の反応を見ることができ、適切なマーケティング施策ができるようになります。
このようにVOC分析を行うことで、「スピーディー」に「正しい方向」へとサービスや商品、マーケティング等を修正、改善できる点がVOC活動のメリットになります。

VOC活動における注意点
さまざまなメリットのあるVOC活動ですが、いくつか注意点もあります。
工数やコストがかかる
VOC分析を行うためには、企画からデータ収集、分析、実際の活用まで、それぞれのフェーズでリソースが必要です。また、部門を跨った活動になると、部門間の調整やコミュニケーションといった可視化はされにくいものの、確実に存在するコストも発生してきます。
VOC活動はただやれば良いというものではなく、工数をかけた分の見合った成果が求められます。再三この記事でも申し上げてきたとおり、目的をもった活動が重要です。
スキル・経験を持った人材が必要になる
先ほどはリソースの問題に触れましたが、リソースをかければ、VOC活動ができるというわけではありません。各フェーズにおいて、スキルや経験のあった人材が必要になります。
例えば、アンケートを設計する際にはアンケートの正しい手法を知っていないと、バイアスがかかる可能性があります。また、集めてきたVOC分析からインサイトを引き出すには統計的な知識も必要になるかもしれませんし、VOC分析の結果からサービス・商品開発に繋げるにはUX設計のスキルなども求められるかもしれません。
必ずしもスキルや経験がないとできない訳ではありませんが、自社で利用可能なリソースや人材のスキルを把握した上で正しい企画が行われないと、ただデータを集めてきただけで何も得られないVOC活動になる可能性があるので注意が必要です。
コールセンターでのVOC活用のまとめ
本記事ではVOCについて、概要や求められている背景、コンタクトセンターでの活用ステップについて解説しました。
顧客の声は現代のビジネスにおいて貴重な宝です。これまではコンタクトセンターに寄せられる一部の顧客の声しか収集することができませんでしたが、今はさまざまな角度で収集することができ、よりリアルな顧客の声が浮き彫りになってきています。また、最新のテクノロジーと組み合わせることで、これまでは気づかなかったインサイト(洞察)も発見することができるようになってきました。
VOC活動は多くの部署を跨いで会社として取り組んでいく必要があります。経営層も経営課題としてVOCを捉え、適切に組織を連携させていく必要がありますが、その際コンタクトセンターは最前線の部署になることになります。まずはコンタクトセンター内でVOC活動ができ、それらを波及していけるような仕組み作りが求められています。
「日々の運営で手一杯。分析や改善まで手が回らない…」
コンタクトセンター運営は、目の前の対応だけで精一杯になりがちです。 WILLOFのBPOサービスを活用することで、運営設計から品質改善まで伴走し、業務負荷を減らしつつ、効率化と改善を両立します。 業務の最適化と品質向上を実現し、貴社のコスト削減にも貢献できる提案をさせていただきます。
Writer編集者情報
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コネナビ編集部 小林 弘明
新卒1年半は銀行にて勤務。その後 株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)にキャリアチェンジし、営業職と支店長を経験。
その後4年間は教育担当者として従事し、本部営業を1年間経験。現在は営業推進部マネージャとしてスタッフキャリア支援を担当。
・趣味:北海道の田舎で育ったので、自然アクティビティが大好き!特にシュノーケリング、川遊び。
・特技:飲み屋でだれとでもすぐ仲良くなること。