【法人向け】コールセンターテレワーク化│検討すべき理由と課題・導入ステップを解説
2024/10/02
- 在宅勤務
- 従業員満足度向上
- 生産性向上
コロナパンデミック以降、コールセンターでもテレワーク(在宅勤務)による運営が一気に増加しました。BCP観点で一部の業務をテレワーク化したり、テレワーク前提のセンターを立ち上げている企業もあります。一方でテレワーク化を考えていても、通常センターとの違いに迷う方々もいるかもしれません。
そこで、今回はコールセンターのテレワーク化を考える方向けに実際の導入ステップなどについてご紹介します。いま導入すべき理由や概要、テレワーク化における課題や導入ステップを網羅的に紹介した記事となります。
コールセンターにおけるテレワークとは
テレワークとは、2つの言葉「tele(遠隔)+work(勤務)」を組み合わせた造語であり、通常のオフィスに集まって働くのでなく遠隔地(主には自宅)で勤務する働き方のことです。「在宅勤務」「遠隔勤務」「リモートワーク」などと呼ぶ場合もあります。
コールセンターにおけるテレワークの現状
リックテレコム社の「コールセンター白書2021」によると、アンケートに回答した110社のうち、3社中2社は在宅運営を継続すると回答しています。また、弊社の調査ではピーク時に比べて減少はしているものの、現在でも25.7%のセンターで在宅勤務を導入しています。
コロナパンデミックが終息し、喫緊の課題ではなくなりましたが、より長期的な展望としてテレワーク化を検討する企業が多いのが実態です。
今テレワーク化を検討すべき理由
なぜテレワーク化をいま検討すべきなのかを整理したいと思います。現在のコールセンターを取り巻く市場状況などを踏まえて、2つの理由で必要になります。
人材不足の観点から
テレワーク化を検討すべき1つ目の理由は「人材不足の観点」からです。コールセンター市場ではトレンドを行き来しながらも、全体の傾向として「人材不足」が深刻化しつつありました。
これは根本的に「少子化による労働人口の減少」という日本全体の問題によるもので、短期的には改善が見込めない問題です。そのため、コールセンターを継続するためには、いかに人材を安定して確保できるかが課題であります。課題の対応策は整理すると大きく4つあります。
- 労働者人口が減少する中でも採用人数を確保できるだけの競争優位性をもつ
- 現状活かせていない労働力(地方、主婦、シニア、外国人など)を活かす体制の構築
- テクノロジーを利用することによる省人化
- 退職率を下げるための職場改善
テレワーク化することによる最大のメリットは、場所的な制約がなくなることです。
これまで、就業したくてもできなかった労働者(地方や専業主婦など)の確保や、家庭環境の変化により就業継続が困難になった労働者の退職を防ぐことができます。
BCPの観点から
テレワーク化を検討すべき2つ目の理由は「BCPの観点」からです。
BCPとは、「Business Continuity Plan(事業継続計画)」の略で、災害やパンデミックなどの発生により、事業継続(センター運営)が危機的な状況に陥った際に、損害を最小限に抑えつつ、業務継続するために多拠点化、分散化など必要な対応策を計画しておくことを指します。
日本では2011年に発生した東日本大震災時に、多拠点化、分散化できていないコールセンターが運営継続困難になりました。もともと日本は台風や地震など災害リスクが高いため、改めてBCPが重視されるようになっています。コールセンターにおけるBCPでは以下のことを考慮する必要があります。
また、パンデミックは地震や災害とは違い局地的なものではないため、BCPにおいてもさらなる対策が求められています。これまでは自社コールセンターの他拠点化やアウトソーシングによる対応がメインでしたが、一つの場所に集まることがリスクになった今、真剣にテレワーク化によるBCPを考える必要性が出てきています。
▼コールセンターにおけるBCP対策について解説している記事はこちら
「コールセンター業務を守るBCP対策とは│必須の知識とステップについて解説」
テレワーク化の課題整理
コールセンターにおいて、テレワーク化が進んでこなかった理由、課題を整理したいと思います。
テレワーク化できない理由
以下はコールセンター白書2020年よりテレワークに移行しなかった理由のアンケート結果です。
このアンケートで最も多かった回答が「個人情報の保護ができない、難しいから」となっており、セキュリティ上の問題が一番の課題になっています。個人情報など秘匿性の高い情報を多く扱うコールセンターでは、情報漏洩の可能性があるテレワーク化を進めづらいのが現状です。
次点には「ITソリューションの導入ができなかった」という問題が続いています。テレワーク化には電話システム基盤をクラウド型にする必要がありますが、オンプレミス型を採用している企業ではなかなかクラウドへの移行ができないというハードルがあります。
以降の回答では、エスカレーション対応やモニタリングが難しい点が挙げられており、いかにテレワークで品質を保つのかが課題になっています。さらに、オペレーターの精神的なケアや労務管理の問題など、遠隔でマネジメントするノウハウが蓄積できていないのも、コールセンターでテレワーク化に踏み込めない理由になっております。
課題の解決方法
では、それぞれの課題に対してすでにテレワーク化を進めているセンターは、どのように解決をしているのか。解決方法の一例をご紹介できればと思います。
セキュリティの課題
セキュリティの課題解決のためには、まずセキュアな環境の準備が必要です。これは利用する端末やソフトウェア、ネットワークのセキュリティが担保されていることを意味します。
端末やソフトウェアは企業側で予めキッティングしたものを用意し、各テレワーク環境に郵送します。ネットワークに関してはルーターなどの機器がセキュリティ対策できていることはもちろん、社内ネットワークにアクセスする場合はVPN接続やシンクライアント環境を準備する必要があります。
セキュリティ対策にはヒューマンエラーの防止も含まれます。性善説に基づいて最低限の対策に留めるのか、性悪説に基づいてログ監視やカメラと連動した本人認証を導入するかは企業の方針によって異なります。
また、企業によっては、コールフローの設計を見直し、個人情報の扱いがない業務からテレワーク化を検討するのも一つの方法です。
ITインフラの問題
ITインフラ化が難しい問題については経営陣のIT投資への考え方を切り替えてもらうことが重要です。すでにクラウドはオンプレイス並みのセキュリティレベルを担保するに至っています。これからDX化が重要だと言われる中、その第一歩としてクラウド化は必須になります。
それでも減価償却や他のシステムとの連携などの関係で、すぐにはクラウドPBXへ切り替えができず、オンプレミス型のPBXを使い続けなければならない場合はどうすればよいのでしょうか。参考になるのがチューリッヒ保険会社様の例です。
センターで利用しているオンプレミス型PBXとは別にクラウドPBXやゲートウェイ装置を用意することでテレワーク化を実現しています。
品質管理の問題
品質の問題は総じてオペレーターとSVのスキルや向き不向きが重要です。
エスカレーションについてはチャットでの対応が基本線になります。そのため、ある程度テキストコミュニケーションに慣れた人材でないと成立しない可能性があります。ブラインドタッチはもちろん、要点を文章にまとめる力などが必要です。
また、そもそもエスカレーションが発生しないように、FAQやマニュアルの充実も重要です。FAQやマニュアルから自力で答えを見つけ出す力などが求められます。最近ではAIシステムと組み合わせることでFAQを自動的にレコメンドするものもあるので活用を検討してもよいでしょう。
そのほかにも、オンライン通話を使ってエスカレする方法もありますが、これは通信への負荷も大きいです。最近ではテレワークに適合した通信負荷の少ないシステムもあるため、それらの検討も一つの手です。
労務管理の問題
労務管理の問題についても、どこまで性善説に従うか、性悪説に従うかで各社対応状況はまちまちです。基本的にはPBXのログイン、ログアウトとステータスによって管理するのがよいでしょう。
また、モチベーション管理や精神的なケアも重要です。まず、大前提としてテレワークに合う人と合わない人があるため、その見極めが重要です。その上で、定期的な1on1の実施やチャットやバーチャルオフィスなどによるコミュニケーションの場を設けるなどの対策が必要です。
ノウハウ等については、すでに導入している企業の事例を参考にする、実際にテレワーク化を進めたことのあるコンサルティング会社やベンダーなど外部の知見を活かしながら進めていくことが成功確率を高めます。
総務省が提供する【 テレワークに関する先進事例】に事例の掲載がありますので、ご参照ください。
テレワーク(在宅勤務)化に向けてやるべきこと
次に、具体的にテレワーク化を進めるにあたって必要なステップを整理します。
現状調査
まずは現状のコールセンターについて可視化・整理を行います。
すぐにテレワーク化が可能なのかは既存システムやオペレーション、業務の内容によります。他社事例などを参考にしながら自社でもテレワーク化が可能かを検討していきます。
また、大まかなコストと投資対効果、リスクについて数パターン シナリオを用意しておくと以降のフェーズを進めやすくなります。同時にベンダー調査も進めておくといいでしょう。ここは各社状況によりますが、数週間から数か月ぐらいの期間がかかることもあります。
テレワーク化を緊急で進めていかなければいけない場合は、以降のステップと並行するか、外部コンサルティングなどを使うことで、期間を短縮できます。
計画策定
計画策定では、具体的にテレワーク化していくためのプラン策定を行っていきます。
社内外で調整や承認が必要になるため、ドキュメント作成や会議体の設計が必要になります。手間はかかりますが、できるだけドキュメント等で明確に規定していくことが望まれます。懇意のベンダーがあれば、RFP作成や選定を相談するのも一つの手段です。
ここも期間としては数週間必要になると思いますので、うまく外部の知見や力を借りながら進めていくのが良いでしょう。
設計
次に、テレワークに必要なシステム、ネットワークの要件定義(接続元のIPアドレスや、ポートの解放設定など)を行います。
テレワークに必須となるクラウドPBXやソフトフォンは最短で1~2週間でインストールまでの構築が可能です。ただ、納期については通信キャリア等の影響もあるため注意が必要です。また、物理機器(PC、USBヘッドセット等)の準備も必要になります。
このフェーズでは滞りなく進められるよう、社内外で役割分担を明確にし、プロジェクト責任者が工程管理を行います。プロジェクト推進やテレワーク化においての業務設計、コールフローの要件定義/設計なども必要になります。社内に知見がない場合は、知見のある人材の採用、もしくは社外の知見を利用しながら進めていくことをお勧めします。
まとめ
本稿では、コールセンターにおけるテレワーク化について詳細に整理しました。
近年、コールセンターのテレワーク化は急速に進展しており、多くの企業がこの新しい働き方に対応しています。特に、2020年以降のパンデミックを契機に、リモートワークの導入が加速しました。これに伴い、テレワークに対応したシステムやツールの開発も進み、業界全体での標準化が進んでいます。
ただし、テレワークの導入にはいまだ多くの課題が残されています。特に、セキュリティ対策や従業員の管理、コミュニケーションの円滑化などが重要なポイントです。また、業界全体としてはまだ知見が少なく、多くの企業にとっては初めての試みとなるでしょう。
そのため、まずは外部協力会社や専門知識を持つベンダーの力を借りることが推奨されます。これにより、スムーズな導入と運用が可能となり、トラブルの発生を最小限に抑えることができます。
テレワークの成功には、企業全体での理解と協力が不可欠です。最新の情報を常にキャッチアップし、適切な対策を講じながら、未来のスタンダードに向けて準備を進めていきましょう。
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Writer編集者情報
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コネナビ編集部 丸山 実咲季
2022年4月に入社し、コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属。
営業推進部にてインサイドセールスに従事し、テレアポからメールマーケティングなどのプル型施策によりリード獲得に貢献。
2022年5月からTwitterアカウントの運用も担当。2022年度のグループ全体「新卒新人賞」にノミネートされる実力者。市場価値爆上がり中の2年目社員!
・趣味:お洒落なカフェの空間を探したり、自然の中をお散歩することが好きです!その他、バスケ 料理 音楽など多趣味です。
・特技:相手の表情を汲み取って行動や発言ができる点。
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