採用ブランディングとは?メリットや取り組み方、成功のポイントを解説

2025/04/11

採用活動において優秀な人材を確保することは、企業の成長にとって欠かせない要素です。そのために注目されているのが「採用ブランディング」です。
しかし、「採用ブランディングとは何か」「どのようなメリットがあり、どのように進めれば成功するのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。

本記事では、採用ブランディングの基本から、そのメリットや具体的な取り組み方法、さらには成功のポイントまでを解説します。自社の採用力を強化し、持続的な成長を遂げるための参考にしていただければ幸いです。

採用ブランディングとは?

採用ブランディングとは、企業が求職者に対して「この企業で働きたい」と思ってもらえるように、自社の魅力や価値を戦略的に構築・発信していく活動です。具体的には、企業理念やビジョン、社風、社員の働き方、キャリアの成長環境などを明文化・可視化し、それらを一貫した形で社外に発信することで、企業の“雇用主としてのブランド”を確立します。

採用ブランディングの目的は、企業の価値観や目指す方向性に共感する人材と出会い、長期的に活躍してもらうことにあります。その結果として、マッチング精度の向上採用コストの削減内定辞退率や離職率の低下などの効果も期待できます。

採用ブランディングが注目されている背景

少子高齢化による労働人口の減少に加え、コロナ禍を経て働き方の多様化が進んだことで、優秀な人材の確保はますます難しくなっています。

【参照:株式会社帝国データバンク/人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)】

実際、帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)」では、正社員が不足している企業は全体の51.0%、情報サービス業に限ると71.9%にも上っており、人材不足が深刻であることがわかります。
また、厚生労働省の発表によると、2024年9月時点の有効求人倍率は1.24倍と高水準を維持しており、企業間の人材獲得競争は依然として激しい状況です。

【参照:株式会社帝国データバンク/人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)】

このような背景から、企業が求人を出せば人が自然と集まる時代は、すでに過去のものとなりました。
現在は、求職者が自ら情報を集め、企業を見極めて選ぶ時代です。企業は“選ばれる存在”になる必要があります。
SNSやオウンドメディア、リファラル採用など採用チャネルが多様化する中、求職者の目に留まり、共感を得るためには、企業としての「魅力」や「価値観」を丁寧に伝える必要があります。

つまり、企業が求職者を選ぶ時代から、求職者が企業を選ぶ時代へ——。
この流れの中で、採用活動にブランディングの視点を取り入れることの重要性が、ますます高まっているのです。

採用広報や採用マーケティングとの違い

採用ブランディングと混同されやすい概念に、「採用広報」や「採用マーケティング」があります。それぞれの違いを理解することは、適切な採用戦略を設計するうえで重要です。

採用広報は、オウンドメディアやSNSなどを活用し、企業の魅力や働く環境を求職者に伝える活動です。主に企業の認知度向上や、入社後のミスマッチを防ぐことを目的としています。

採用マーケティングは、マーケティングの手法を活かして採用活動を設計・最適化するアプローチです。求職者のペルソナ設計、カスタマージャーニー分析、データ分析による改善を通じて、より精度の高い母集団形成や応募促進を図ります。

一方で採用ブランディングは、企業のビジョンや価値観を明確に打ち出し、長期的に「この企業で働きたい」と思ってもらうための土台を築く戦略です。採用広報やマーケティングが施策的・戦術的であるのに対し、採用ブランディングはその根幹を担う位置づけといえます。

採用ブランディングのメリット

採用ブランディングに取り組むことで、以下のメリットが得られます。

自社の認知度向上

効果的な採用ブランディングを行うことで、適切なチャネルを通じて、ターゲット層に響く魅力的なメッセージを届けることができます

また、「今すぐ転職を考えているわけではないが、将来のために企業情報を集めている」といった転職潜在層にもアプローチが可能です。
このような層に認知されることで、企業の知名度向上ブランドイメージの強化につながります。

母集団形成・応募数の増加

採用ブランディングでは、自社の魅力や他社との差別化ポイントを明確に伝えることができ、求職者の興味や応募意欲の向上につながります。

特に、企業のビジョンや価値観に共感した人材が集まりやすくなるため、応募数の増加と質の高い母集団の形成が期待できます。
また、転職潜在層にも継続的にアピールできるため、中長期的な人材確保の基盤づくりにも有効です。

▼母集団形成に関する記事はこちら
【成功する採用戦略】母集団形成とは│メリットと手法を徹底解説

採用ミスマッチの減少と定着率向上

あらかじめ企業の価値観や職場の雰囲気を伝えることで、求職者と企業との間に起きやすいミスマッチを防ぐことができます

共感を持って応募した人材は、入社後のギャップが少なく、エンゲージメントの高い状態で活躍してくれる可能性が高まります
結果として、定着率の向上や、早期離職・トラブルのリスク軽減にもつながります。

採用コスト削減

採用ブランディングによって、企業にマッチした人材が集まりやすくなり、ミスマッチや早期離職が減少します

これにより、内定辞退・再採用活動といった無駄なコストが削減できるほか、
ブランディングによって広報効果が高まれば、求人広告や紹介会社に依存せずとも応募が集まりやすくなります
結果として、採用活動全体のコストダウンが実現できるでしょう。

従業員エンゲージメントの向上

採用ブランディングは、外部へのアピールだけでなく、社内へのメッセージにもなります

企業のビジョンや価値観を発信・再確認するプロセスが、既存の従業員にも良い影響を与え、エンゲージメント向上や定着率の改善につながります
従業員が企業に誇りを持てるようになれば、組織の一体感が高まり、生産性やモチベーションの向上も期待できるでしょう。

▼従業員エンゲージメントに関する記事はこちら
従業員エンゲージメントとは?企業成長に与える影響と効果的な施策を解説

採用ブランディングのデメリット

採用ブランディングには多くのメリットがある一方で、想定しておきたいデメリットもあります。
本記事では、以下の2つのデメリットをご紹介します。

全社を巻き込んで取り組む必要がある

採用ブランディングは、採用担当者だけで完結できるものではありません
経営層から現場の従業員まで、組織全体で一体となって取り組む姿勢が求められます

特に、現場を巻き込まずに発信した情報と、実際の職場環境にギャップがある場合、「入社してみたらイメージと違った」といったミスマッチのリスクが高まります。

採用ブランディングの成功には、企業としてのビジョンや価値観を社内でしっかり共有・理解した上で、一貫性ある発信を行うことが重要です。

結果が出るまでに時間と手間がかかる

採用ブランディングは、即効性のある施策ではなく、中長期的な取り組みが必要となります

ブランドイメージの浸透や、求職者からの信頼獲得には時間がかかるため、
「すぐに応募が増える」といった短期的な成果は見込みにくい点を認識しておきましょう。

また、戦略の立案・チャネル設計・コンテンツ制作・社内調整など、一定のリソース(人・時間・予算)も必要です。
長期的な視点で継続することが、効果を最大化するためのポイントといえるでしょう。

採用ブランディングの取り組み方とポイント

採用ブランディングを成功させるには、明確な手順を踏んで計画的に進めることが大切です。本章では、採用ブランディングを効果的に進めるための6つのステップと、それぞれのポイントを解説します。

Step1.自社・競合他社の分析を行う

採用ブランディングの第一歩は、自社と競合他社の現状を把握することです。自社の魅力や改善点、業界内でのポジションを明確にすることで、他社との差別化ポイントが見えてきます。

このとき、3C分析(Customer:求職者、Company:自社、Competitor:競合)を活用すると、戦略立案がスムーズになります。

たとえば、自社の強みが「働きやすい職場環境」だとしても、競合は「給与水準」で強みを発揮している可能性があります。こうした分析結果をもとに、自社が打ち出すべき魅力や戦略を明確にしましょう。

Step2.採用ターゲット・ペルソナを明確にする

誰を採用したいのかを明確にしなければ、魅力的な発信も的外れになります。

ここではまず、「採用ターゲット」となる理想の人材像を定義し、さらにその人物像を具体化した「ペルソナ」を設定しましょう。年齢、経歴、価値観、情報収集の手段など、リアルな人物像を描くことで、訴求力の高い採用活動が可能になります。

これにより、採用メッセージや発信内容に一貫性と説得力が生まれ、求職者とのミスマッチを防ぐことにもつながります。

Step3.採用コンセプトを決める

採用コンセプトは、自社が伝えたいメッセージの「」です。企業のビジョンや価値観、働く魅力などをわかりやすく言語化し、すべての採用活動に一貫性をもたせましょう。

たとえば、「挑戦を楽しむチームへ」という採用コンセプトを掲げれば、それに沿って求人票、採用サイト、面接時のメッセージまで統一感が出せます。

この一貫性が企業の信頼性を高め、求職者の共感を得やすくなります。

Step4.情報発信するチャネル・コンテンツを決める

求職者に情報を届けるためには、適切なチャネル(媒体)と魅力的なコンテンツの選定が欠かせません。

自社のターゲット層がよく利用するチャネル(例:求人媒体、SNS、オウンドメディアなど)を選び、それに合ったコンテンツを展開しましょう。たとえば以下のような内容が効果的です。

  • 社員インタビュー
  • オフィスや業務の様子を伝える写真・動画
  • 企業文化を表現するブログ記事 など

チャネル選びのポイントについては、次章で詳しく解説します。

Step5.従業員とブランドイメージを共有する

採用ブランディングは、社内の理解と協力があってこそ成功します。現場社員や管理職にまでブランドイメージや採用コンセプトを丁寧に共有し、社内で一貫した認識を持つことが重要です。

特に、SNSや口コミを通じて自然発生的に発信が広がる今、従業員自身がブランドの「アンバサダー」となることも多くあります。従業員の協力を得ることで、よりリアルで信頼性のあるブランディングにつながります。

Step6.効果測定・改善を行う

採用ブランディングは、一度始めたら終わりではありません。効果測定と改善を継続的に行うことが、成功の鍵です。

KPI(重要業績評価指標)を設定し、次のようなデータを定期的にチェックしましょう。

  • 採用ページの閲覧数
  • 求人応募数やイベント参加数
  • SNSでのエンゲージメント(いいね・シェア・コメント数)など

結果に応じて、発信チャネルを見直したり、メッセージの切り口を変えることで、施策の精度を高めていけます。

採用ブランディングに有効なメディア・チャネル

本章では、採用ブランディングに活用できる主なメディア・チャネルについてご紹介します。
採用ターゲットや目的によって適切な手段は異なるため、自社に合ったチャネルを見極め、効果的に運用していきましょう。

自社採用サイト・ブログ・オウンドメディア

自社が運営する採用サイトやブログ、オウンドメディアは、企業の魅力を直接かつ自由に伝えられる重要な情報発信ツールです。第三者のメディアと異なり、掲載内容や構成に制限がないため、自社の価値観や文化、ビジョンを深く掘り下げて伝えることができます。

たとえば、社員インタビューや社内イベントの紹介、仕事風景の写真や動画などを掲載することで、リアルな職場の雰囲気を求職者に伝えることが可能です。また、採用に関するFAQや選考プロセスを掲載することで、応募前の不安や疑問を解消し、応募意欲を高める効果も期待できます。

SNS(X・Instagram・LinkedIn・Facebookなど)

SNSは、日常的に利用されている求職者とフラットにコミュニケーションをとれるチャネルです。X(旧Twitter)やInstagram、LinkedIn、FacebookなどのSNSを活用することで、企業のカルチャーや日常の様子を「共感」や「リアルさ」を伴って伝えることができます。

ビジュアルコンテンツ(写真や動画)を活用し、従業員の声や社内イベント、働き方などを発信することで、ブランドイメージの醸成やエンゲージメントの向上につながります。また、SNS上でのコメントやDMを通じて、求職者との距離感を縮める効果もあります。

求人メディア(就活ポータルサイト・転職情報サイト)

就活ポータルサイトや転職サイトは、多くの求職者が利用するため、採用ターゲットへの広範なアプローチが可能です。とくに新卒・中途ともに、一定の認知拡大と母集団形成を目的とした施策として有効です。

各メディアには掲載フォーマットや主なユーザー層に特長があるため、自社の採用ターゲットとマッチするかを見極めて活用しましょう。また、求人情報に企業理念や働く環境、キャリアパスなどをしっかり盛り込むことで、応募者の理解と納得感を高めることができます。

イベント・セミナー・ミートアップ

リアルまたはオンラインでのイベントやセミナー、カジュアルなミートアップは、求職者との直接的な接点を持つための有効なチャネルです。企業の説明会や業界研究セミナーを開催することで、単なる求人情報だけでは伝えきれない“空気感”や“人の魅力”をダイレクトに伝えることができます。

また、双方向のコミュニケーションが生まれる場であるため、求職者の疑問や関心にリアルタイムで応えることができ、相互理解を深めやすいというメリットもあります。加えて、参加者が企業文化に共感すれば、その場で強い印象を残すことができるでしょう。

まとめ

採用ブランディングは、企業のビジョンや価値観を求職者に効果的に伝えるための戦略的な取り組みです。全社を巻き込んで一貫したメッセージを発信し、ターゲットに適したメディアやチャネルを活用することが重要です。

また、定期的な効果測定と改善を行うことで、持続可能な採用活動を実現できます。これらのステップを踏まえ、魅力的な採用ブランディングを実践し、理想的な人材を効果的に確保しましょう。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 上原 美由紀

    従業員1万人以上の企業の5社に1社が導入している採用支援・求人広告会社にて、アルバイト・パート採用や中途採用を中心に、約3年間にわたり企業の採用支援に従事。
    2019年9月より株式会社ウィルオブ・ワークに入社し、コールセンター・オフィスワークに特化した人材サービスの事業部でキャリアアドバイザーを担当。現場で培った知見をもとに、コンタクトセンター領域はもちろん、採用・人材分野に関する実践的かつリアルな情報発信を心がけている。

    現在は子育てと仕事を両立しながら、日々奮闘中!

    趣味:音楽、ゲーム、ディズニー、お酒
    特技:タスク管理

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