採用ブランディング完全ガイド|取り組むメリットや進め方、ポイントを徹底解説

2024/10/31

採用活動において優秀な人材を確保することは、企業の成長にとって欠かせない要素です。そのために注目されているのが「採用ブランディング」です。
しかし、「採用ブランディングとは何か」「どのようなメリットがあり、どのように進めれば成功するのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。

本記事では、採用ブランディングの基本から、そのメリットや具体的な取り組み方法、さらには成功のポイントまでを解説します。自社の採用力を強化し、持続的な成長を遂げるための参考にしていただければ幸いです。

採用ブランディングとは?

採用ブランディングとは、企業が求職者に対して自社の魅力を伝え、その魅力を高めるための戦略的な活動を指します。具体的には、企業理念やビジョン、社風、働く環境の良さなどを発信し、求職者に「この企業で働きたい」と思わせるブランドとして確立させることです。

採用ブランディングの目的は、企業のビジョンに合った人材に入社してもらい、長期的に活躍してもらうことにあります。採用ブランディングを成功させることで、企業は自社にマッチする人材を集めやすくなり、採用後の定着率も向上するでしょう。

採用ブランディングが注目されている背景

採用ブランディングが注目されている背景には、労働市場の競争激化採用チャネルの多様化があります。

【参照:株式会社帝国データバンク/人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)】

厚生労働省によると、2024年9月時点の有効求人倍率は1.24倍と、緩やかに改善傾向にあります。

しかし、株式会社帝国データバンクによる「人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)」では、正社員の人手不足を感じている企業が51.0%と高止まりが続いている状況です。特に、DX需要が相まってIT企業などの情報サービス業界では71.9%の企業が人手不足を感じているとの結果が出ています。

【参照:株式会社帝国データバンク/人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)】

つまり、労働市場は依然「企業が求職者を選ぶ」よりも「求職者が企業を選ぶ」時代にあるのです。

さらに、近年ではSNSの普及により求人メディア以外の採用チャネルも増加し、求職者は従来よりも多くの求人情報を得ることができるようになりました。

こうした状況下で優れた人材を確保するためには、企業は単に求人情報を出すだけでなく、他社にはない自社の強みや魅力をアピールして差別化することが重要です。
また、採用ターゲットに合わせた最適な採用チャネルを選択する必要があるでしょう。

採用広報や採用マーケティングとの違い

採用ブランディングと類似する活動として「採用広報」「採用マーケティング」があります。

採用広報は、オウンドメディアやブログ、SNSなどを活用し、企業に関する情報を発信する活動です。企業の魅力や働く環境をより多くの求職者に知ってもらうことを目的としており、企業の認知度向上やミスマッチ防止による定着率向上に貢献します。

採用マーケティングは、採用ブランディングをベースにマーケティング手法を活用して、求職者の興味を引き、応募を促進させる活動です。データ分析を行いながら、施策の効果を検証・改善することで、よりターゲットに特化したアプローチを実行します。

採用ブランディングは、企業のビジョンや価値観を求職者に伝え、長期的に企業の魅力を築く戦略です。このように、採用広報や採用マーケティングが情報発信や応募促進に重点を置くのに対し、採用ブランディングは全体的なブランドイメージの向上を目指す点がポイントです。

採用ブランディングのメリット

採用ブランディングに取り組むことで、以下のメリットが得られます。

自社の認知度向上

効果的に採用ブランディングに取り組むことで、適切なチャネルでターゲットの心に刺さる魅力的なメッセージを伝えることが出来ます。

また、「今は転職情報サイトを閲覧するほどではないが、いつか転職する時のために良い企業を把握しておきたい」と考える転職潜在層にもアピールすることができるでしょう。
これにより、企業の認知度が向上し、ブランドイメージが強化されます。

母集団形成・応募数増加

採用ブランディングでは、自社の魅力や他社との差別化ポイントをターゲットに合わせて発信することで、求職者の応募意欲向上につながります。
企業のビジョンや価値観に共感する求職者が増えることで、応募数の増加と母集団形成が期待でき、優秀な人材の選別が容易になります。

さらに、転職潜在層にもアピールすることで、中長期的に母集団形成の最適化を図ることができるでしょう。

▼母集団形成に関する記事はこちら
【成功する採用戦略】母集団形成とは│メリットと手法を徹底解説

採用ミスマッチの減少と定着率向上

企業の価値観や働く環境を事前に伝えることで、求職者側と企業側のミスマッチを減少させることができます。
求職者が企業の文化やビジョンに共感した状態で応募するため、入社後の従業員エンゲージメントが高まり定着率が向上します。これにより、採用後のトラブルや離職リスクの軽減が期待できます。

採用コスト削減

適切な採用ブランディングによって企業にマッチした求職者が集まり、採用ミスマッチが減少するため、内定辞退や早期離職に伴うコストが削減されます。
さらに、広報やマーケティング活動の効果が高まることで、求人広告やエージェントを利用しなくても応募が集まりやすくなり、総合的な採用コスト削減につながります。

従業員エンゲージメントの向上

採用ブランディングの取り組みは、既存の従業員にも企業のビジョンや価値観を再認識させる機会となります。これにより、従業員のエンゲージメントが高まり、組織全体のモチベーションや定着率が向上します。
従業員が企業に誇りを持つことで組織力も強化され、共通の目標に向かって協力して働く環境が築かれるでしょう。

採用ブランディングのデメリット

採用ブランディングには多くのメリットがある一方で、想定しておきたいデメリットもあります。
本記事では、以下の2つのデメリットをご紹介します。

全社を巻き込んで取り組む必要がある

採用ブランディングに取り組むには、採用担当者だけでなく経営層や現場など、全社を挙げての協力が必要です。特に、現場の担当者も巻き込んで取り組まないと、「実際に働いてみたら違った」というギャップが発生するリスクがあります。

企業のビジョンや価値観を統一して発信するためには、従業員全員が共有し、理解することが採用ブランディング成功へのカギとなります。

結果が出るまでに時間と手間がかかる

採用ブランディングに取り組む際は、結果が出るまでに多くの時間と労力を要するため、長期的な取り組みとなる点を留意しましょう。

特に、ブランドイメージの確立と求職者の信頼を得るには、中長期的な視点での取り組みが求められます。一時的な施策では効果が限定的になりがちなため、長期的にPDCAサイクルを回して、継続していくことが重要です。

採用ブランディングの取り組み方とポイント

本章では、実際に採用ブランディングの取り組み方を6ステップに分けてご紹介します。各ステップのポイントも解説しますので、あわせてご参考ください。

自社・競合他社の分析を行う

採用ブランディングの第一歩は、自社と競合他社の徹底的な分析です。このステップでは、自社の現状・立ち位置を把握し、強みや弱み、訴求ポイントを明確にすることが重要です。
分析の際には、「3C分析」というフレームワークを活用するのもよいでしょう。
※3C分析:Customer(求職者)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つの視点から分析を行う手法

例えば、自社の魅力は働きやすい環境やキャリアアップの機会にあるかもしれませんが、競合他社は給与面で強みを持っているかもしれません。このように分析を行うことで、自社がどのような点で競合に勝つ可能性があるか、どこを強化すべきかが見えてきます。

採用ターゲット・ペルソナを明確にする

次に、採用ターゲットとペルソナを明確にしましょう。採用ターゲットとは、企業が求める理想的な人材像のことです。一方、ペルソナとは、その理想的な人材像(採用ターゲット)を具体的に描写した仮想の人物像のことを指します。

採用ターゲットとペルソナを設定することで、企業はどのような求職者にアプローチすべきかが明確になります。また、ターゲット層に向けた情報発信や採用イベントが効果的に行え、採用メッセージに一貫性と共感を持たせることができます。結果として、採用活動全体がターゲット層にとって魅力的でわかりやすくなり、理想の人材を効果的に確保できるでしょう。

採用コンセプトを決める

採用コンセプトとは、企業が求職者に伝えたいメッセージや企業の魅力を一貫して表現するための基本的な考え方です。これにより、企業のビジョンや価値観、魅力を明確かつ効果的に伝えることができます。

採用コンセプトは、求人情報から採用イベント、面接まで、すべての採用活動で一貫して使用しましょう。この一貫性が企業の信頼性と魅力を高め、共感を呼び起こします。また、自社で働く従業員にも共通の目標や価値観を再認識させる効果があります。

採用コンセプトを決めることで、統一されたメッセージを発信し、企業のブランドイメージを強化することができるのです。

情報発信するチャネル・コンテンツを決める

ターゲット層に効果的な情報発信を行うためには、ターゲットがよく利用するチャネルやメディアを選定することが重要です。有効なチャネルに関しては、次章で紹介しておりますのでぜひご覧ください。

コンテンツ作成では、企業のビジョンや価値観を反映しつつ、求職者の関心を引くような内容を組み込みましょう。たとえば、社内環境の紹介や、従業員インタビュー、日常の業務風景を切り取った写真などが考えられます。

選定したチャネルに適したコンテンツを提供することで、求職者に企業の魅力を効果的に伝えることができます。これにより、ターゲット層の関心を引き、応募促進が期待できます。

従業員とブランドイメージを共有する

従業員とブランドイメージを共有することも、採用ブランディングにおいて重要なプロセスです。企業全体で一貫したメッセージを発信できるように、採用コンセプトやターゲット、企業のビジョンを丁寧に伝えるようにしましょう。

近年では、従業員がSNSで社名を公開し、自社のことを発信するケースが増えています。また、従業員が友人や知人を紹介する「リファラル採用」を取り入れている企業もあります。

いずれの場合も従業員がブランドアンバサダーとなるため、自発的かつ自然な形で企業の魅力を発信できるようにすることが重要です。そのためにも、企業全体で一貫したメッセージを発信することに努めましょう。

効果測定・改善を行う

採用ブランディングは長期的な取り組みであり、KPIを設定して定期的な効果測定と改善を行うことが重要です。

採用メディアの応募数やイベントの参加者数、SNSの反応・フォロワー数の増減などのデータを参考にしましょう。これらのデータをもとに、どの施策が効果的か、改善の余地があるかを分析します。
たとえば、応募者数が不足している場合は情報発信の頻度を増やす、またはターゲット層に適したチャネル・メディアを再選定するなどの対応が考えられます。

効果測定と改善を定期的に繰り返すことで、採用ブランディングの精度を高め、長期的に持続可能な優れた採用活動を行うことができるでしょう。

採用ブランディングに有効なメディア・チャネル

本章では、採用ブランディングに有効なメディアやチャネルをご紹介します。
採用ターゲットによって有効なものは異なるため、ぜひ参考にし、自社に合ったメディアやチャネルを活用してください。

自社採用サイト・ブログ・オウンドメディア

自社採用サイトやブログ、オウンドメディアは、企業の魅力を直接伝えるための重要なプラットフォームです。自社運営のサイトでは、文字数や画像・動画数の制限がなく、自由に表現することができます。そのため、企業のビジョン・ミッション・文化や社員インタビューなど現場の声を詳細に紹介することが可能です。

また、採用プロセスや求める人材像など具体的な情報を提供することで、求職者の企業理解を深めることができるでしょう。

SNS

SNSは、幅広いターゲット層にアプローチするための強力なツールです。X(旧Twitter)、LinkedIn、Instagram、Facebookなどを活用することで、企業の最新情報をリアルタイムで発信し、求職者との距離を縮めることができます。

写真や動画を通じて、従業員の声や企業の文化、働き方を視覚的にアピールします。ユーザーとのコミュニケーションを通じて、企業への関心を高め、ブランドロイヤルティを築くことが可能です。

求人メディア(就活ポータルサイト・転職情報サイト)

就活ポータルサイトや転職情報サイトは、多くの求職者が利用するため、効果的な採用チャネルです。特に、新卒採用や中途採用において、幅広い層に対して企業の求人情報を一括で掲載できるため、効率的に候補者を集めることができます。

また、企業の概要や働く環境を詳しく記載することで、求職者の理解を深め、応募意欲を高めます。各求人メディアの特性を理解し、ターゲットに合わせた適切なメディアを選ぶことがポイントです。

イベント・セミナー・ミートアップ

イベント、セミナー、ミートアップは、求職者と直接的なコミュニケーションを図る絶好の機会です。企業説明会や業界セミナー、カジュアルなミートアップを開催することで、求職者に企業の魅力や働く環境をリアルに伝えることができます。

また、顔を合わせて話すことで、求職者との信頼関係を築くことができるだけでなく、企業の雰囲気を味わってもらい、強く印象付けることができるでしょう。

まとめ

採用ブランディングは、企業のビジョンや価値観を求職者に効果的に伝えるための戦略的な取り組みです。全社を巻き込んで一貫したメッセージを発信し、ターゲットに適したメディアやチャネルを活用することが重要です。

また、定期的な効果測定と改善を行うことで、持続可能な採用活動を実現できます。これらのステップを踏まえ、魅力的な採用ブランディングを実践し、理想的な人材を効果的に確保しましょう。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 上原 美由紀

    採用業務支援・求人広告事業会社を経て2019年9月に株式会社ウィルオブ・ワークに入社。
    コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属、キャリアアドバイザー職を経験。
    産育休を経て現在子育てにも奮闘中!
    ・趣味:音楽 ゲーム ディズニー お酒
    ・特技:タスク管理

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