1on1ミーティングとは?コンタクトセンターで導入する目的やメリット・注意点を解説
2025/07/01
- 品質向上
- 定着率向上
- 従業員満足度向上
- 教育・育成
- 離職率改善

応対品質やKPIに日々追われるコンタクトセンターの現場では、離職率の高さやストレスによるメンタル不調など、マネジメントの難しさに直面するSVも少なくありません。
そんな中、注目を集めているのが「1on1ミーティング」です。
これは業務の報告や評価ではなく、部下の気持ちや成長に寄り添う“対話の場”です。感情労働の蓄積によるストレスケアや信頼関係の構築に役立ち、心理的安全性のある職場づくりにもつながります。
本記事では、1on1ミーティングの基本から、コンタクトセンターにおける導入目的、効果的な進め方、注意点、そして成功のポイントを解説します。
1on1ミーティングとは
1on1ミーティングとは、上司と部下が定期的に1対1で行う対話の場で、主に部下の成長支援や信頼関係の構築を目的としています。
これは単なる報告や指導の時間ではなく、部下が本音を安心して話せる空間をつくることに重きが置かれます。とくに感情労働の多いコンタクトセンターにおいては、メンタル面のケアとしても有効です。
人事評価面談との違い
評価面談が上司からの一方的な評価や指導が中心となるのに対し、1on1ミーティングは部下が主体となり自由に話せる場であることが大きな違いです。
1on1ミーティングでは、上司は傾聴に徹し、否定やアドバイスを急がず、まずは受け止める姿勢を大切にします。
また、評価面談は年に数回といった断続的な実施が多い一方、1on1は月1回など、継続的かつ定期的に行われる点でも対照的です。継続的な対話の中で、部下は徐々に本音を話せるようになり、信頼関係の構築や心理的安全性の確保につながっていきます。
コンタクトセンターで1on1ミーティングが注目される理由
コンタクトセンターでは、オペレーターが顧客対応の最前線に立ち、時には厳しい言葉や理不尽な要求にさらされる場面もあります。こうした環境で働くことは、表面上では見えにくい“感情労働”を強いるものであり、心の疲弊や孤立感を引き起こす一因となります。その結果、メンタル不調やモチベーションの低下が表面化し、離職率の上昇にもつながっているのが現実です。
このような問題に対し、1on1ミーティングは有効な手段として昨今注目されています。
1on1ミーティングを導入する3つの目的とメリット
1on1ミーティングは、現場が抱える課題に対して、以下のような効果をもたらします。
- 離職抑止・メンタル不調への対応
- 上司と部下の信頼関係の構築と心理的安全性の向上
- オペレーターの育成と応対品質の安定化
離職抑止・メンタル不調への対応
コンタクトセンターにおいては、応対のプレッシャーやクレーム対応によるストレスが蓄積し、心身のバランスを崩すオペレーターが後を絶ちません。こうした“異変”は日常業務の中では見逃されがちですが、1on1ミーティングを定期的に行うことで、微細な変化や不安の兆しを上司が早期に察知することが可能になります。「気にかけてもらえている」と実感できることで、メンタルケアとしても効果を発揮し、離職予防や定着率向上に直結します。
▼従業員の定着施策については以下の記事で解説しています
「リテンションとは?コンタクトセンターにおけるメリットや効果的な人事施策を解説」
信頼関係の構築と心理的安全性の確保
1on1ミーティングは、業務連絡とは異なる“人としての関係構築”に効果を発揮します。普段の業務指示だけでは距離を感じやすい上司と部下の間に、定期的な対話という接点ができることで、感情や価値観に触れる機会が生まれます。
こうした積み重ねにより、部下は「ここなら本音を話しても大丈夫」と感じ、心理的安全性が高まります。この信頼感がチーム全体に伝播することで、協力的で前向きな職場風土が育まれます。
オペレーターの成長と応対品質の安定化
1on1は、単なるケアの場ではなく“育成の場”としても機能します。業務上の悩みや課題を対話の中で言語化することで、「次はこうしてみよう」という具体的な目標を立てられるようになります。
さらに、SVがフィードバックや問いかけを通じて伴走することで、目標設定や行動の具体化が可能となり、主体性の高いメンバーが育ちます。その結果、応対品質にばらつきが出にくくなり、チーム全体の生産性・安定性が向上していきます。
忙しい現場でもできる!1on1ミーティングの進め方
「1on1は良さそうだけど、うちの現場では無理かも」と感じる方は少なくありません。コンタクトセンターは常に応対業務が優先のため、まとまった時間を確保すること自体が難しいのが現実です。
ですが、1on1は“完璧にやること”よりも、“継続して行うこと”が何より大切です。本章では、忙しい現場でも無理なく実施できる進め方のポイントをご紹介します。
実施頻度・時間の目安
まず、頻度と所要時間は「月1回・30分程度」が基本の目安です。最初から週1回など高頻度で設定すると継続が難しくなるため、無理のないペースで始めましょう。
繁忙期はスキップする、15分の短縮版にするなど、状況に応じて柔軟に対応することもポイントです。重要なのは、「形式にこだわらず、話せる機会をつくる」ことです。
テーマ設定と質問例
1on1の場で何を話せばいいかわからない――という声も多くあります。そこで役立つのが事前にテーマを用意しておくことです。例えば以下のテーマが代表的です。
- 最近の業務で感じたこと、困っていること
- モチベーションの状態や不安に感じていること
- キャリアや成長に対する考え
- チームや職場の雰囲気について
質問の例としては、「最近、仕事でやりがいを感じた瞬間はありますか?」「今、何かサポートが必要だと感じていることはありますか?」といった、相手の内面を引き出す問いが効果的です。
回答を否定せずに受け止め、必要に応じて共感やフォローの姿勢を示すことが、信頼構築の第一歩となります。
シフト制でも続けやすい工夫をする
コンタクトセンター特有の課題として、オペレーターが交代勤務やシフト制で動いているため、面談のスケジュール調整が難しいという点があります。以下のような工夫が、定着に効果を発揮します。
- 事前のアジェンダ共有
面談当日にいきなり話し始めるのではなく、あらかじめ「今回はこのテーマで話したい」といったアジェンダを簡単に共有しておくことで、短時間でも中身の濃い対話が可能になります。また、事前に準備ができることで、話す側の心理的負担も軽減されます。
- テンプレートを活用する
話す内容や記録方法が属人的にならないよう、質問項目や記録欄を定型化したテンプレートを用意するのもおすすめです。これにより、誰が実施しても一定の質を保つことができ、「やって終わり」にならない継続的な運用につながります。
1on1ミーティング実施時における3つの注意点
1on1ミーティングは大きな効果をもたらす一方、やり方を誤ると部下との関係を悪化させてしまうこともあります。特に導入初期は、「なんとなくやってみた」状態で進めてしまいがちで、目的を見失ったり、誤解を生んだりといった落とし穴が存在します。
現場でよく見られる以下の失敗例を参考に、実施前の準備と姿勢を整えておきましょう。
- 部下の話を引き出せず、SVの一方的な面談になってしまう
- 目的が曖昧で、継続性や実効性が失われる
- 評価と混同され、本音を引き出せず信頼を損なう
部下の話を引き出せず、SVの一方的な面談になってしまう
1on1の本質は“部下のための時間”です。しかし、アドバイスや進捗確認に意識が向きすぎると、SVが一方的に話し、部下が発言しづらくなる傾向があります。「近況を聞く」「沈黙を受け入れる」「質問で促す」など、話しやすい空気をつくり、相手が自発的に話せるような“傾聴”の姿勢が何より重要です。
▼話しやすい雰囲気づくりや傾聴のコツはこちらの記事で解説しています
「アクティブリスニングとは?コールセンターで期待できる効果や具体的な手法を解説」
目的が曖昧で、継続性や実効性が失われる
何のためにやるのかが明確でないまま始めると、1on1は雑談や業務報告で終わりがちです。結果として「意味のない時間」と認識され、早期に形骸化してしまいます。
事前に「信頼構築」「育成支援」といった目的を共有し、記録や振り返りを通じて“継続する意味”を全員が理解できる仕組みを整えましょう。
評価と混同され、本音を引き出せず信頼を損なう
1on1で業績や評価の話ばかりをしてしまうと、部下は「これは評価の一環だ」と警戒し、本音を話さなくなります。1on1はあくまでフラットな対話の場であり、評価や指導とは明確に切り分けることが必要です。
実施前にその意図を丁寧に説明し、実際の会話でも安心して話せる雰囲気をつくることが信頼の土台になります。
1on1ミーティング導入を成功させる3つのポイント
1on1ミーティングは、ただ始めればうまくいくというものではありません。現場に合った方法で丁寧に設計し、段階的に定着させていくことが重要です。
導入を成功させるためには、以下の3つのポイントが効果的です。
- まずは小さく始めて、無理なく定着を目指す
- 属人化を防ぐための運用ルールを整備する
- 成果を可視化し、チーム文化として浸透させる
まずは小さく始めて、無理なく定着を目指す
1on1の導入で最も重要なのは、「無理なく続けられるかどうか」です。理想的な形を目指して一度に多人数で始めようとすると、SVの負担が大きく、形骸化や中断の原因になります。
そこで、最初は「1人のオペレーターと月1回15分から」など、小規模に始めるのがおすすめです。まずはやってみることで1on1の効果を実感しやすくなり、少しずつ対象を広げていけば、現場に負担をかけず自然に定着していきます。
属人化を防ぐための運用ルールを整備する
1on1を成功させるためには、「誰が実施しても一定の質を担保できる仕組み化」が欠かせません。担当者の性格や経験に依存すると、ばらつきや属人化が起こり、効果が不安定になるでしょう。
具体的には、目的や頻度、質問項目、記録方法をまとめたガイドラインを作成し、全SVで共有することが重要です。また、実施記録のテンプレートや振り返りの仕組みを整えることで、継続性と改善のサイクルを生み出せます。
成果を可視化し、チーム文化として浸透させる
1on1を“施策”ではなく“文化”として定着させるには、「目に見える成果」が必要です。例えば、導入後の離職率や面談満足度の変化を定期的に測定し、チーム内で共有しましょう。
また、良い実施事例を紹介したり、フィードバックを集めて改善を重ねたりすることで、組織全体の理解と共感が広がります。やらされ感ではなく、「意味のある時間」として捉えられるようになれば、自然と文化として根づいていきます。
まとめ|1on1を通じて“育つ”コンタクトセンターをつくろう
離職や育成の難しさ、感情労働によるストレスなど、コンタクトセンターの現場には多くの課題があります。そんな中で注目される1on1ミーティングは、信頼関係を築き、人材を“育てる”ための実践的な対話の仕組みです。
月1回15分の対話からでも十分効果はあり、小さく始めて仕組みを整え、成果を共有していくことで、自然と現場に根づいていきます。
“人が辞めない”だけでなく、“人が育つ”センターづくりの第一歩として、1on1を今日から取り入れてみてはいかがでしょうか。
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Writer編集者情報
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コネナビ編集部 上原 美由紀
従業員1万人以上の企業の5社に1社が導入している採用支援・求人広告会社にて、アルバイト・パート採用や中途採用を中心に、約3年間にわたり企業の採用支援に従事。
2019年9月より株式会社ウィルオブ・ワークに入社し、コールセンター・オフィスワークに特化した人材サービスの事業部でキャリアアドバイザーを担当。現場で培った知見をもとに、コンタクトセンター領域はもちろん、採用・人材分野に関する実践的かつリアルな情報発信を心がけている。
現在は子育てと仕事を両立しながら、日々奮闘中!
趣味:音楽、ゲーム、ディズニー、お酒
特技:タスク管理