クラウドPBX主要ベンダー5社比較│システム概要・選定方法・各社の特徴を解説

2024/09/25

近年、ITシステム導入において「クラウド」サービスを検討するのは当たり前になりつつあります。コールセンター業界においてもコールセンターシステムの要であるPBXを中心に、従来のオンプレミスからクラウドへ切り替えるケースも増えてきています。

本記事では、そんなクラウドPBXの基礎的な知識やメリット・デメリットなどを整理しつつ、国内主要ベンダーを比較し解説しています。既存PBXのリプレイスを考えている方も、これからコールセンターを立ち上げる方もぜひご参考頂けると幸いです。

クラウドPBXとは

クラウドPBXはPBX(電話交換機)を、インターネット上(クラウド)に構築し、通話・通信を行うことができるサービスになります。

従来のオフィス内に専用のハードウェアを設置するものに比べ、企業側が保有する必要がなくなり、初期費用やメンテナンス費用が削減され、柔軟性やスケーラビリティが向上します。

クラウドとは

クラウドとは、インターネットを介してデータの保存、処理、管理、配信などを行うコンピューティングサービスのことです。従来は企業が保有するコンピューターやローカルサーバーで行っていたこれらの作業を、リモートで接続されたサーバーシステム上で実行することができます。クラウドサービスは、必要に応じてリソースを利用し、使用した分だけを支払うことが一般的です。

PBXとは

PBX(Private Branch eXchanger)とは 企業内に置かれた電話交換機のことで、内線電話の接続や発着信制御、ダイヤルイン機能、代表番号着信機能、転送機能、パーク保留機能などがついています。

例えば、PBXがないと社内同士で電話をする際に外線を通さないといけなくなり、料金が発生してしまいます。また、外線からの電話は番号ごとでなく回線ごとにつなぐ必要が出てくるため、同じ部署で複数の番号が混在するような状態になります。

そのため、ある程度規模のある企業やコールセンターなどでは電話業務の効率化の観点から必ずと言っていいほどPBXが導入されています。

クラウドPBXが注目され始めた背景

クラウドPBXが注目され始めた背景には、いくつかの要因があります。

第一に、コールセンターでは常にコスト削減のニーズがあり、クラウドPBXが一つの解決策になるからです。従来の電話システムは初期投資や維持管理に高コストがかかりますが、クラウドPBXはこれらを大幅に削減できます。

第二に、働き方が多様化してきた背景もあります。コロナ禍を機に、リモートワークや多拠点での業務が増え、柔軟かつ効率的なコミュニケーション手段が求められています。これらを実現するために、クラウドPBXのようにインターネットが接続できる環境であれば、場所を問わずに利用でき、拡張性も高いサービスが求められるようになりました。

QYResearchの「グローバルクラウドベースのPBXに関する市場レポート, 2023年-2029年の推移と予測、会社別、地域別、製品別、アプリケーション別の情報」の調査資料によると、クラウドPBXの世界市場規模は2022年に3746.6百万米ドルと予測され、2029年まで、19.3%の年間平均成長率(CARG)で成長し、13060百万米ドルの市場規模になると予測されています。

コールセンターにクラウドPBXを導入するメリット・デメリット

クラウドPBXにはメリットとデメリットがあります。クラウドPBXのメリットを理解しつつも、デメリットを鑑みて、導入に足踏みしてしまうセンターも少なくはありません。ここではオンプレミス型とクラウド型を比較し、そのメリットとデメリットを整理したいと思います。

オンプレミス型とクラウド型の比較

オンプレミス型とクラウド型を7項目で比較しました。

 

オンプレミス

クラウド

コスト形態

資産 経費

初期費用

高額(機器購入、設置費用など) 不要もしくは少額(設定費など)

ランニングコスト

運用・保守費用

ライセンス費用+オプション
※企業規模によっては高額になる

セキュリティ

外部からの侵入リスクが少ない 外部からの侵入リスクがある
※プライベートネットワークを使うことでリスクを軽減

導入スピード

運用開始まで数週間から数か月かかる 即日での導入が可能

カスタマイズ

要望に合わせて自由にカスタマイズ可能 事業者が提供可能なサービスに限られる

音質

ローカル回線のため安定している インターネット環境に品質が左右される

クラウドPBXメリット

上記の表を踏まえて、クラウドPBXのメリットは以下になります。

  • 初期の導入費用がかからないため、小規模でもPBXの導入が可能。またスピーディに構築が可能
  • サーバー増強やシステム変更、負荷分散もクラウドなら安価かつオンデマンドで実現できるため、繁閑差の激しいコールセンターでもコストコントロールができる
  • 自社で大規模なデータセンターを持つ必要がないため、ロケーションフリーでメンテナンスも不要

クラウドPBXデメリット

  • 運用コストがかかるため長期間で比較したときに、規模によってはオンプレミスよりトータルコストがかかることもある
  • 音質がインターネット環境に依存するため、事業者によっては音質が悪い
  • セキュリティ面で不安がある(現在のクラウド技術ではほぼほぼセキュリティ面のリスクはないですが、世間的なイメージで不安を感じる方はいまだに多いです

特に音質やセキュリティの面はイメージに引っ張られている部分がありますが、未だにクラウドに切り替えられない大きな心理的ハードルになっています。

上記のほかにも、クラウドPBXのデメリットは110番や119番などの特殊番号へ発信できない、また停電には弱いなどが挙げられます。またコスト比較をしたときに、長期で見ると意外と運用費用が高くついてしまうこともあります。

そのため、クラウド化すればすべてが良いというわけではありません。コストメリットや運用方針、事業継続性などをトータル的に判断し、クラウド化の方針を決めていく必要があります。

コールセンター向けクラウドPBXの国内主要ベンダーの特徴・比較

次にコールセンター向けにクラウドPBXを展開している国内主要ベンダー5社を比較してみました。

  1. コラボス【@nyplace/ COLLABOS PHONE】
  2. リンク【BIZTELコールセンター】
  3. コムデザイン【CT-e1/SaaS】
  4. 楽天コミュニケーションズ株式会社【コネクト2.0】
  5. ジェネシス【PureCloud】

コラボス【@nyplace/ COLLABOS PHONE】

[特徴]

  • 国内におけるクラウド型コールセンターシステムのパイオニア、導入実績は750拠点以上
  • お客様の運用に併せて、ソフトフォンのみ、ハードフォンソフトフォンセットで提供可能
  • 信頼度の高いAVAYA社製のIP電話交換機システムをクラウドで提供

コラボスは2001年からコールセンター向けクラウドサービスを提供しており、パイオニア的存在であるベンダーです。サポートが手厚く解約率が低いのが特徴です。

コラボスが提供するPBXは大きく二つあり、AVAYA社製をベースとしている「@nyplace」、Asteriskベースで独自に開発したソフトフォンである「COLLABOS PHONE」があります。

「@nyplace」は、オンプレミスにおいて国内シェアナンバー1のAVAYA社製のシステムを使用しているため信頼度が高く、AVAYA社製のシステムを安価に利用したい方向けです。「COLLABOS PHONE」は「@nyplace」に比べて低価格、短納期での導入が可能なため、小規模なセンター向けの製品になります。コラボスでは他社サービス連携や導入を積極的に行い、お客様の課題解決型の提案ができるのも強みです。

リンク【BIZTEL】

[特徴]

  • 国内シェア6年連続No.1
  • 複数のCRMと連携実績あり(特にSalesforceとの連携に定評あり)
  • クラウドCTIで国内唯一、FISC・PCI DSSに対応

BIZTELはクラウドPBX国内ナンバー1の導入実績があるクラウドPBXです。導入企業は大手から中小企業まで幅広く、低コストが特徴です。一貫して独自の開発を行っており、ユーザーからのフィードバックをもとに「顧客目線」を徹底追求したUIなどが強みになります。セールスフォースをはじめとしたCRMとの連携実績が多数あるのも選ばれるポイントの一つになります。

また、国内のクラウドCTIで国内唯一、FISC・PCI DSSを取得しており、金融機関でも採用するセキュリティプランを備えています。

コムデザイン【CT-e1/SaaS】

[特徴]

  • 自社開発した技術をベースにしたシステムを持ち、1,550テナント 31,000席の導入実績
  • 運用性が高い自由なカスタマイズと自由な構成が行え、カスタマイズは基本0円で提供
  • CCP(Converged Communications Platform )として多様なDXソリューションとの連携を実現

コムデザインはすべて自社開発を行っており、カスタマイズ性に強みをもつベンダーです。

自社開発の強みとして、市場からのフィードバックと対応のラグが小さく、新しい機能の開発・実装や保守などスピード感がある対応が特徴です。また通常連携には高額の開発費用が掛かるケースがありますが、相対的に見て安価で開発を行っております。

これまでにない機能も「基本0円」で開発、提供をしており、各社の要望に対しても丁寧に対応を行うところも魅力になります。CCP(Converged Communications Platform )として多様なDXソリューションとの連携を実現しており、近年ではAIソリューションとの連携も積極的に行っています。

アマゾン ウェブ サービス【Amazon Connect】

[特徴]

  • 従量課金制のため最低月額料金、長期契約、前払いライセンス料が不要
  • AI と ML を搭載したオールインワンのコンタクトセンター構築が可能
  • 世界最高水準のクラウドサービスであるAWSのあらゆる機能と連携

Amazon Connectは米国アマゾンが展開するAWS(Amazon Web Service)上で展開されているCTIシステムです。

2018年ごろに日本に上陸してから、徐々にローカライズを進めており、ここ数年で日本国内でも利用社数が急激に増えています。費用は従量課金で利用した分を支払う形態になっており、センターによっては大幅にコストを削減できます。また、AWSは世界中で最も利用されているクラウドサービスの一つで最高水準の技術を持っています。AIを中心に日々進化する機能がアップデートされていき、高度なコンタクトセンターを目指すことができます。

ジェネシス【Genesys Cloud CX】

[特徴]

  • 世界7000社以上で採用されるデジタルカスタマーサービス
  • 複数チャネルを統合管理でき、様々なビジネスツールと連携可能
  • 週単位で新機能をリリース

ジェネシスはオンプレミスで世界の名だたる企業への導入実績や高いシェアをもつ外資系ベンダーですが、ここ数年最も力を入れているのがクラウドサービス「Genesys Cloud CX」です。

これまでに紹介してきたベンダーとは違い、オンプレミス時代からコールセンターシステムを提供してきた実績があり、高機能に加えクラウドの特徴を活かした週単位の機能実装や利用数の柔軟な変更ができます。

また、コールだけではなく、SMSやメール、チャットといった複数のチャネルを統合することもでき、オムニチャネル化の実現等が可能です。

選定ポイント

各社の特徴を見てきましたが、最後に選定のポイントをまとめたいと思います。

ポイント

コストと機能のバランス

自社が実現したいことを満たせる機能か
それに見合ったコストであるか

規模

自社のセンター規模にあったシステムはどれか

操作性/使いやすさ(UI)

自社スタッフにとって使いやすいものであるか

既存で運用しているシステムとの連携

既存システムとの連携ができるか

サポート

求めるレベルのサポートを受けられるか

コストと機能のバランス

結局、コストをかけて高機能のものを利用しても、使いこなせるオペレーションや人材がいないと意味がありません。コストパフォーマンスを上げるには、自社にとって本当に必要な機能、使いこなせる機能に絞って、選んでいくことが重要です。

規模

各ベンダー得意とする規模感があります。例えば、大企業向けに高機能、手厚いサポートを特徴としているベンダーもあれば、中小企業向けに、低コストで手軽に導入できることを特徴としているベンダーもあります。自社の規模に合ったベンダーを選びましょう。

操作性/使いやすさ(UI)

さまざまな年齢の方が活躍されるコールセンターでは、限られた時間の中で受電業務を早く覚える必要があります。通常のビジネスフォン等にはない機能をいかに分かりやすく短時間でご活用頂けるかがポイントになりますので、自社センターのスタッフにとって直感的に使いやすいUIになっているかを確認する必要があります。これは実際に触ってみないとわからない部分があるので、デモなどで現場の方に触ってもらう機会を設けましょう。

存で運用しているシステムとの連携

すでにCRMや基幹システムを利用している企業にとってはシステム連携が可能かどうかもポイントになります。連携したことのない機能だと、連携に開発費がかかることがあります。自社既存製品と連携が可能なPBX、もしくは開発費用が安価なものを選ぶとよいでしょう。

サポート

PBXは通常導入すると、オペレーション構築やスタッフの慣れも含めて短期で入れ替えの発生するシステムではございません。そのため、一度導入をするとベンダーとも長期間のお付き合いになることが多いです。長期間使うものなのでサポート体制は重要になります。

また、多くのセンターにとってPBXはセンター運営において重大な役割を担っており、安定稼働が不可欠なシステムになります。そのため、有事の際にどのようなサポートを受けられるかもポイントになります。

まとめ

本記事では、クラウドPBXについて概要やメリット・デメリット、国内主要ベンダーの特徴と選定時のポイントをご紹介しました。

クラウドPBXへの移行は急速に進んでおり、すでにオンプレミス型を越える勢いです。これまで、クラウドPBXの欠点とされてきたセキュリティや音声品質についてもIT技術の発展とともに克服されつつあります。

また、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進において、通信インフラもクラウド化することが、その一環として進められています。今後、AI活用なども期待される中でクラウド化は必須になってくるでしょう。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 吉田 章孝

    2011年、株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)に入社。
    3年目に支店長として支店の新規立ち上げを経験。その後は札幌支店長として着任し、2年間で売上倍増に貢献する。
    その後、首都圏管轄マネージャに着任し、営業推進部へ異動。営業推進部では、金融系プロジェクトチームの立ち上げや、部内重点顧客の本部営業などを担当。
    2020年4月より、営業推進部 部長として、本部営業や社員教育、求人広告や転職支援チームなどを担当。現在は本部営業をメインに担当。

    ・趣味:散歩、語学
    ・特技:料理

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