【法人向け】今知っておくべき最新の在宅コールセンターを解説│現在地と今後の展望
2024/09/28
- 在宅勤務
コールセンター業界では近年、急速に在宅化が進んでいます。
本記事では在宅コールセンターに関する最新事情と今後の展望について詳しく解説します。在宅コールセンターの概要やメリット・デメリット、在宅コールセンターを支えるシステム、実践事例から学べる成功のポイントなど、幅広く取り上げています。さらに、今後の市場動向や最新技術などから在宅コールセンターの未来像を解説します。
現在の在宅コールセンターの状況と今後の展望を把握することで、センターが適切な対応を図れるようになれれば幸いです。
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在宅コールセンターの現状
まずは在宅コールセンターの現状について整理しましょう。
在宅コールセンターとは
在宅コールセンターとは、従業員が自宅で働く形態のコールセンターを指します。
従来のオフィスに集まって働くスタイルから、インターネットを利用したリモートワーク環境を構築することで自宅でも働けるようになりました。在宅コールセンターは、柔軟な働き方や効率的な人材活用が可能で、企業にとっても従業員にとってもメリットが多く存在します。
在宅コールセンターの普及背景
日本は災害が多くBCP観点からセンターを分散させる必要があることや、働き方改革を受けて在宅でのリモートワークを検討する企業は数年前から増えていましたが、セキュリティや品質の問題から実際に踏み込む企業は一部でした。
しかし、クラウド技術が発展し在宅環境であってもセンターと変わらないセキュリティや品質が担保できるようになってきたことや、2020年に発生した新型コロナウィルスの感染拡大で従来のオフィスでの勤務が難しくなり、日本国内でも一気に在宅コールセンターが加速しました。
コールセンター業界における在宅化のメリット
コールセンターの在宅化には多くのメリットがあります。以下はメリットの一例です。
企業側のメリット | 個人のメリット |
安定的な労働力の確保 |
柔軟な働き方 |
オフィススペースや交通費のコスト削減 |
通勤時間の短縮 |
BCPの実現 |
人間関係のストレス軽減 |
企業側のメリット
1つ目のメリット
一つ目めのメリットは「安定的な労働力の確保」です。これまでは現実的にセンターに通える範囲での人材確保が必要で、人が集まりやすい地域では競合他社との激しい獲得競争があります。また、特殊な資格や経験、スキルを求めるセンターではそもそもの母集団が少ない問題などがあり人材確保に苦労してきました。その点、在宅コールセンターは全国から(極端な話、海外からでも)募集することができ、採用の母集団確保が一気に拡がります。実際に在宅化することで求職募集者数が約3~5倍になった例もあります。
また、柔軟な働き方を提供することで、これまでライフステージの変化で退職せざるを得なかった人材の退職抑止にもなります。加えて、柔軟な働き方を提供することは従業員満足度の上昇に繋がったり、これまでセンターで多く発生していた人間関係のストレスによる退職も抑えることができます。
2つ目のメリット
二つ目のメリットは、「コスト削減」です。センターを運営するには大きなオフィススペースを確保する必要がありますが、在宅勤務では必要ありません。その分の地代家賃や光熱費等がかからないコスト的なメリットがあります。また、通勤交通費の負担も軽減できます。
3つ目のメリット
三つ目のメリットは、「BCPの実現」です。BCPとは、Business Continuity Planの略で、自然災害や感染症の流行など緊急事態が発生した際にも、事業活動を継続・回復させるための計画です。在宅コールセンターの導入により、従業員が分散して働くことが可能になるため、一部のスタッフが影響を受ける事態が起こったとしても、他のスタッフが業務を継続できる状況を作り出すことができます。
個人のメリット
1つ目のメリット
一つ目のメリットは、「柔軟な働き方」です。在宅コールセンターはローケーションフリーなため、ライフステージの変化によってやむなく引っ越しをする場面が訪れても退職せずに就業が続けられます。また、これまでは場所の問題で就業できなかった仕事や企業に就職できるため、選択肢が拡がります。
2つ目のメリット
二つ目のメリットは、「通勤時間の短縮」です。通勤時間がなくなることで、従業員はその分の時間を自由に使うことができます。通勤に伴うストレスや疲労が軽減され、従業員はその分の時間を自分の生活に充てることができます。通勤時間の短縮により、家庭や趣味、健康管理に費やす時間が増えることで、従業員の生活の質が向上し、ワークライフバランスが改善されます。実際、令和3年度のテレワーク人口実態調査-国土交通省の在宅の継続意向の調査において、在宅ワーク実施者のうち約86%が継続意思があり、その主な理由は「通勤時間の有効活用」が約43%、「通勤の負担軽減」が約30%でした。
3つ目のメリット
三つ目のメリットは、「人間関係のストレス軽減」です。在宅コールセンターでは、従業員がオフィスにいないため、人間関係に起因するストレスが軽減されます。特に、職場のいじめや嫌がらせ、人間関係のトラブルが原因でストレスを抱えていた人にとっては、在宅勤務が心身の健康に良い影響を与えることが期待できます。
在宅コールセンターの課題
多くのメリットが望める在宅コールセンターですが、特に以下の課題に留意が必要です。
- セキュリティ
- システム構築コスト・安定性
セキュリティ
1つ目の課題は、「セキュリティに対する懸念」です。
在宅コールセンターでは、オペレーターが自宅から業務を行うため、セキュリティ対策が不十分になる可能性があります。例えば、在宅勤務では、オペレーターが家族や同居人と共有するスペースで業務を行うことがあるため、顧客情報や企業情報が第三者に漏れるリスクが高まります。
また、自宅で使用する端末やネットワークは、企業内部のネットワークほどセキュリティが厳格ではない場合があります。そのため、VPN接続やファイアウォールの設定など、適切なセキュリティ対策を講じることが重要です。
加えて、社内のセキュリティポリシーとの整合性が取れないことが課題になるケースもあります。最終的にはセキュリティリスクと在宅化することのメリットを天秤にかけた経営判断となるため、早めに経営陣を説得しておくことが大切です。
システム構築コスト・安定性
2つ目の課題は、「システム構築にかかるコストやシステムの安定性に対する懸念」です。
まずコストについては新しいシステムを導入したり、配給用のPCを購入したりと在宅移行に際して直接的にかかるコストが課題となるケースがあります。また、すでに投資しているシステムの減価償却期間が終わっていないことが課題になるケースもよく見受けられます。
システムの安定性については、センターと比べるとネットワーク等が弱くなるため、システムが安定的に稼働できるかという点を懸念として挙げる企業も多いです。最近はクラウド技術の発展で、システムの安定性は非常に高くなってきましたが、過度に負荷がかかると動きが遅くなったりする可能性もあるので、PCのスペックや導入するソフトウェアは考慮する必要があります。
セキュリティ対策とプライバシー保護
在宅コールセンターでは、顧客情報や企業データのセキュリティ対策とプライバシー保護が不可欠です。
まず、セキュアなリモートアクセス環境の構築が必須です。VPN(Virtual Private Network)やVDI(Virtual Desktop Infrastructure)の導入により、企業内ネットワークへの安全なアクセスを実現し、データ漏洩のリスクを軽減します。また、データ暗号化技術を活用しファイルや通信データに暗号化を施すことで、第三者によるデータの不正利用や盗難を防ぐことができます。このように、まずはシステム的にセキュリティ事故が起きないように対策しておくことが大切です。
次に、従業員のセキュリティ意識向上が重要です。セキュリティ事故の多くが従業員のセキュリティ意識の低下によるヒューマンエラーです。定期的なセキュリティ研修や、フィッシング詐欺対策のためのシミュレーションを実施し、従業員が適切な対応をとれるように育成します。また、パスワードポリシーやデータ管理ルールを明確に定め、従業員に周知徹底させることも大切です。
最後に、プライバシー保護のために、個人情報の取り扱いに関するルールやガイドラインを策定し、従業員に徹底させることが重要です。特に、コールセンターは多くの個人情報を取り扱います。個人情報保護法等の法規制を遵守することが求められます。
これらのセキュリティ対策とプライバシー保護を実践することで、在宅コールセンターでの業務を安全かつ安心して遂行でき、企業の信頼性や顧客満足度向上に寄与します。
在宅コールセンターを支えるシステム
在宅コールセンターを実現するためにはいくつかのシステムを組み合わせる必要があります。この章では在宅コールセンターを実現するために必要なシステムについて解説します。
クラウドPBX
コールセンターのインフラとも言えるPBXはコールセンターを実現するには必須ですが、在宅で行うにはインターネットを経由して利用が可能なクラウド型である必要があります。最近のPBXは多機能になっているものも多く、PBXでのステータス管理で在宅の勤務状況を確認したり、モニタリングすることもできます。
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CRM・顧客管理システム
在宅コールセンターでは、顧客情報や対応履歴を一元的に管理することが重要です。CRM(Customer Relationship Management)システムは、顧客情報を統合的に管理し、各オペレーターが必要な情報にアクセスできるようにするものです。これにより、在宅勤務でも顧客対応の質を維持し、効率的な業務遂行が可能になります。
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リモートデスクトップソリューション
在宅勤務をするためには、企業の内部システムやネットワークに外部からアクセスする必要があります。リモートデスクトップソリューションは、遠隔地にいるオペレーターが企業の内部システムやデータに安全にアクセスできるようにするものです。これにより、オペレーターは企業のシステムを使用して業務を行うことができ、業務効率を維持しつつ、セキュリティも確保されます。
コミュニケーションツール
在宅コールセンターでは、オペレーター同士や上司とのコミュニケーションが不可欠です。効率的なコミュニケーションを実現するために、ビデオ会議ツールやチャットツールを導入することが推奨されます。これらのツールによって、オペレーターは遠隔地からでもリアルタイムで情報共有や相談ができ、問題解決のスピードが向上します。また、コミュニケーションツールを活用することで、チームの連携が強化され、従業員のモチベーションも向上することが期待できます。
遠隔監視・管理ツール
在宅コールセンターでは、オペレーターの勤務状況が見えづらくなるため、可視化し管理する必要があります。遠隔監視・管理ツールを導入することで、オペレーターのパフォーマンスや対応品質を評価し、必要に応じてフィードバックやサポートを提供することができます。これにより、在宅勤務でも従業員の教育や研修が円滑に行われ、業務品質の向上が期待できます。
e-Learningシステム
在宅コールセンターでは、オペレーターのスキル向上や研修が重要な要素となります。e-Learningシステムを導入することで、オペレーターは自宅からでも研修を受けることができ、スキルアップが可能になります。また、研修の進捗や成果を遠隔で管理することができるため、効果的な教育体制を構築できます。
AIの活用も
最近では、在宅コールセンターにおいてもAI(人工知能)の活用が注目されています。AIによる音声認識技術を用いることで、通話内容のリアルタイムな文字起こしや要約、FAQのサジェスチョンが可能となります。通話を可視化できることで管理しやすくなることや、FAQサジェスチョンができることでフォローしやすくなることから活用が拡がっています。
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在宅コールセンターの実践事例
在宅コールセンターでのベストプラクティスが増えてきています。この章では在宅コールセンターを実践している企業の事例を紹介し、導入に成功した企業のポイントをみていきます。
国内の在宅コールセンター事例紹介
オンラインサービスを展開するA社では、採用が難しい有資格者の採用を実現するため、当初より在宅前提でコールセンターを構築し、現在では100名近くの在宅オペレーターを抱えています。
A社ではクラウドPBXにAmazon connectを使用しています。通常のコールセンター運営と違い、変則的なシフトも多いため、オペレーターの数が通常のセンター運営よりも相対的に増加します。そのため、ライセンス課金の他サービスより、従量課金のAmazon connectの方がコスト優位性があります。
また、早々にe-Learningの導入を決め、今では数十本の研修動画を用意しており、早期の立ち上がりを実現しています。業務の知識だけではなく、PC操作に関する動画まで準備することで、在宅での細かい困りごとにも対応ができています。コンテンツを作るのは最初は労力がかかりますが、その後は何度でも使いまわせるので、結果的には研修にかかるコストも下げられるとのことです。
また、当初の目的である有資格者の採用については、首都圏だけでは採用ができなかった地方の有資格者やプライベートとのバランスで出勤はできないけど、在宅なら勤務が可能な方も採用ができており、非常に順調とのことです。最近では海外に在住の日本人を採用することにも成功しており、夜勤帯のシフト等の解決にも力を入れています。
在宅コールセンターの導入に成功した企業のポイント
在宅コールセンターの導入に成功する企業は、いくつかの共通点を持っています。
まず、第一に在宅化の目的と投資対効果が明確になっていることです。在宅化に限ったことではありませんが、ビジネスで何か変化を起こす際には明確な目的が必要です。「コールセンター業界全体で在宅化が進んでいるから在宅化する」というのは目的にはなりません。在宅化を実現することで、BCPを実現する、採用コストを下げるなど、自社のセンター運営にあった明確な目的が必要です。また、それらが本当に投資に見合った効果が得られるのかを冷静に判断する必要があります。投資対効果が明確でないものは、経営陣の同意が得られず、いつか立ち行かなくなる可能性があります。在宅化する目的、意義と共に、数字で示せる投資対効果も明確にしておきましょう。
次に、重要になるのが適切な技術の導入です。在宅化を実現するためにはいくつかの技術を組み合わせる必要があります。また、従来のセンター運営では属人的なスキルや経験で”なんとかできていた”ことが在宅センターでは通用しない部分がでてきます。その際に、システムをうまく使いこなすことができるかがポイントです。ただ、技術はただ入れれば解決できるものでもありません。自社管理者やオペレーターのレベルに合わせて、適切なシステムとベンダーを選択する必要があります。
オペレーターのサポート体制も大切なポイントです。まずはチャットツールなどを活かし、リアルなセンターと同等のエスカレーション体制を築き、オペレーターを不安にさせないことです。加えて、e-Learningなどを活用し、スキルを適切に学習してもらう体制も重要です。
また、在宅勤務はコミュニケーションが希薄になるリスクもあります。通常のセンターでは笑顔やジェスチャーといったノンバーバルなコミュニケーションができますが、遠隔でのマネジメントは意識的にコミュニケーションの時間を確保し、意思疎通を取りましょう。在宅勤務におけるコミュニケーションにおいて、意外と大切なのがチャットコミュニケーションでのスタンプの活用です。スタンプは言葉だけでは伝えられない感情を伝えることができたり、気軽にリアクションすることができます。管理者が意識的に利用することで、カジュアルなコミュニケーションがチーム内で増えていきます。
これらのポイントを押さえ、企業は在宅コールセンターの導入に成功し、効果的な運営が実現できます。導入を検討する企業は、これらのポイントを参考に計画を進めていくことが望ましいです。
在宅コールセンターの今後の展望
最後に、在宅コールセンターの今後の展望について、市場の動向とテクノロジーの発展について解説します。
今後の在宅コールセンター市場の動向
リックテレコム社の「コールセンター白書2021」によると、アンケートに回答した110社のうち、3社中2社は在宅運営を継続すると回答しています。また、弊社の調査ではピーク時に比べて減少はしているものの、現在でも25.7%のセンターで在宅勤務を導入しています。
大手コールセンターベンダーでは本格的な在宅シフトに向けて、在宅コールセンターのマネジメントができる人材育成に注力するなどの動きも活発化してきています。海外在住者の活用なども広がっており、在宅コールセンターはさらに多様化しながら成長していくことが予測されます。
最新の技術によって進化する在宅コールセンター
技術の発展は在宅化をさらに進める可能性があります。例えば、ChatGPTに代表される大規模言語モデルの発展により、在宅ワーカーのサポートが容易になる未来が考えられます。研修時のロープレもChatGPTを利用すれば可能になるでしょうし、エスカレーションもchatGPTが補助することもできるようになると考えれます。
ChatGPT解説記事はこちら
「話題のChatGPTについて解説!ChatGPTによってコンタクトセンターはどのように変化する?」
また、メタバースの活用も期待されています。大手BPOであるトランス・コスモスとNTTコミュニケーションズはメタバースによる「バーチャルコンタクトセンター」の実証実験を2022年8月に開始したと発表しています。在宅オペレーターもバーチャル上に再現したセンターに集約し運営をする実験です。
この実証実験では、メタバース上でのコミュニケーションによって、情報共有やエスカレーションの効率化を図り管理人員の削減やリモートワークの孤立感の解消に挑戦しています。
まとめ
本記事では、在宅コールセンターの現状、メリットや課題、実践事例、そして今後の展望について解説しました。
コロナパンデミックによって半ば在宅シフトを強制的に加速された形にはなりますが、これをチャンスと捉えて移行を一気に進める企業もあれば、慎重に進める企業もあります。これは業態や企業のポリシーなどにも関わるのでどちらが良い、悪いはありません。
ただし、市場が変化しつつある状況は捉えておく必要があります。市場が変化し、外部環境が変われば、自社センターの運営方法を見直す必要も出てきます。市場動向に注視しながら、柔軟に対応することがどのセンターにも求めれています。
在宅コールセンター導入を検討中のご担当者様へ
「コールセンター業務を在宅化したい」「在宅化をしたけどうまくいっていない」「コンタクトセンター運営に課題がある」「在宅化を検討しているけど導入の進め方が分からない」とお困りのご担当者様、コンタクトセンターの人材派遣/人材紹介/委託運営実績25年以上のウィルオブ・ワークはコールセンターの在宅化支援サービスを行っております。ご相談・お見積りは無料!下記のお問い合わせフォームよりご連絡をお待ちしております。