コールセンターの代表的なKPIを徹底解説 | インバウンド編

2024/10/02

コールセンターには、多くのKPI(Key Performance Indicator)が存在します。

今回は初めてコールセンター運営を任された方、コールセンター業界にお客様が多い営業の方向けに、代表的なKPIを一覧で、できるだけ分かりやすく説明したいと思います。
※今回はインバウンド=受電コールセンターで使われるものを取り上げます。

そもそもKPIとは何か?

KPI(Key Performance Indicator)とは、センターで設定した目標を達成するための過程を計測・評価する中間指標のことです。日本語では、「重要業績評価指標」とも言います。

KPIという言葉はコールセンター以外でもよく聞きますが、コールセンター業界は特にKPIの種類が多く、意味が分かりにくいものが多いです。
多いところだと、10以上ものKPIを管理する必要があり、コールセンター部門に初めて配置された人が最初に直面する課題です。

なぜKPIを管理する必要があるのか

KPIの種類やその言葉を学ぶ前に、そもそもなぜKPIを管理する必要があるのでしょうか。
それは、コールセンターでは「顧客満足度の向上」や「応対品質の向上」といった達成の道筋が立てづらい目標を掲げており、そうした目標を達成するためのプロセスを数値化し具体的にするためです。

数字として定められた目標は、オペレーターをはじめとするコールセンタースタッフ全員にとって、明確な目標になります。管理者にとってもスタッフを評価するうえでの明確な根拠となるため、センター全体でKPIを共有する必要があります。

各オペレーターのパーフォマンスは常に管理、分析を行います。数値にバラつきが見られれば、それがどういった問題に起因するものなのか考える必要があります。

例えば、ACW(平均後処理時間)に時間がかかっている場合、それはシステムやオペレーションといった「センター全体の問題」なのか、タイピングスピードや文章作成能力といった「各オペレーターの問題」なのかによって、対策すべき内容が変わってきます。

そのため、各オペレーターの数値を管理することで、打ち手が見えてきて、個人の改善がセンター全体の数値の改善にも繋がります。

また、KPIには「プロセス指標」と「成果指標」というものがあり、「成果目標」を達成するための「プロセス目標」という風に考えることが基本になります。

例えば、コールセンターが掲げる代表的な成果目標は「顧客満足度の向上」です。
この成果目標を達成するためのプロセス目標として、「応答率の向上」「AHT短縮」などを管理する必要が出てきます。成果目標を達成するためにはプロセス目標の改善が不可欠となります。

上記に記載の通り、まずはどこに原因があるのかを特定し、原因に対して有効な打ち手が何かを考え、実行していくのが管理者の役割になります。

それでは、それぞれの代表的なKPIについて一つ一つ説明していきたいと思います。

代表的なKPIの一覧(とりあえずこれだけ覚えておけば大丈夫なKPI一覧)

下記に代表的なKPIの概要と、算出方法について表をまとめました。
詳しい説明は後述しますが、まずは以下の内容を参照ください。

応対品質

応対品質

KPI項目

概要

算出方法

応答率

着信呼数に対し、オペレーターが対応した数(一部、IVRでの対応も含む)の割合のこと。

対応呼(件) ÷ 着信呼(件)数 × 100
放棄呼率
(アバンダンコールレート)

着信呼数に対する放棄呼数の割合のこと。応答率と対をなす。

放棄呼(件) ÷ 着信呼(件)数 × 100
SL(サービスレベル)
(サービスレベル)

着信呼数に対し、設定した時間内で応答できた呼数の割合のこと。

規定時間内につながった件数
÷ 着信件数
(一般的には20秒以内が多い)

ASA
(平均応答速度)

着信要求があってから、オペレーターが応答するまでの平均時間のこと。

繋がった呼の待ち時間
÷ つながった件数

効率性

効率性

KPI項目

概要

算出方法

稼働率

オペレーターのログイン時間
(稼働時間)のうち、本来業務(電話・Eメール対応など)を行っているの時間の割合のこと。

(会話時間+後処理時間
+その他時間)
÷(総ログイン時間−離席時間)

AHT
(平均処理時間)

1コールあたりの通話開始から
後処理終了までに要した時間の
こと。

(総通話時間+総後処理時間
+総保留時間)÷ 総応答呼数
ATT
(平均通話時間)

1コールあたりに要する通話時間の平均のこと。

総コール数 ÷ 総通話時間
ACW
(平均後処理時間)

1コールあたりに要する後処理
時間のこと。

合計後処理時間 ÷ 総応答呼数
CPC
(1コールにかかるコスト)
1コンタクト当たりに要した
コストを示す指標のこと。

コールの処理件数
÷ コールセンター全経費

顧客満足度

顧客満足度

KPI項目

概要

算出方法
CS
(顧客満足度)

企業が提供する商品やサービスに対する顧客満足の度合いのこと。

NPS
(顧客推奨度)

企業やブランドに対する愛着・信頼
他者への推奨の度合いなどを数値化することで、顧客ロイヤリティを評価する
手法のこと。

(推進者−誹謗者)÷全体数

マネジメント

マネジメント

KPI項目

概要

算出方法

欠勤率

あらかじめシフト割り付された・スケジュールされた就業日数に対して、欠勤した日数の割合のこと

欠勤日数 ÷ あらかじめシフト
割り付された就業日数 × 100
離職率

在籍人数に対する離職者の割合のこと

当該期間の離職者数 ÷ 当該期間の総在籍者数 × 100 

 

それでは、次に各KPIの詳しい説明をしていきたいと思います。

応対品質に関するKPI

応答率とは

「応答率」は、「センターにかかってくる電話に対して、どれだけ対応ができているか」を表している指標です。コールセンターの基本は繋がることです。
そのため、応答率は最も重要なKPIの一つで、リックテレコムが2018年に行った「最も重視している品質目標は何ですか」というアンケートでも56.9%が応答率(放棄呼率)と答えています(コールセンター白書2018より参照)。

ちなみに、「応答率」と「放棄呼率」は裏表の関係であり、「放棄呼率」で管理するセンターもあります。応答率の悪化を単純に表すと以下の式になります。

着信している呼量>受付可能なオペレーター数

このような状態になるのは、以下のような可能性があります。

  • 呼量が増加している(自然災害やリコール、テレビやネットで取り上げられたなど)
  • スタッフ数が減っている(退職や欠勤、採用難、離席中のスタッフが多いなど)
  • スタッフ一人当たりの対応件数が落ちている(後処理時間が伸びている、研修が不十分、新人の増加、システムの不具合など)

悪化している場合、まずはどこに原因があるのか、それは一時的なものなのかを判断する必要があります。

そのためにも、応答率が低下している時間帯においてセンター内の状態を把握し、原因となっている状況を打開するため、その時点で対策を実施することが重要になります。

SLとは

「SL(サービスレベル)」は「決めた時間内にどれだけ電話が繋がったか」を表す指標です。
多くの企業では、着信から20秒以内に対応できるようにしており、その割合が80パーセントを超えるように設定しております。

SL(サービスレベル)も応答率と同じく「繋がりやすさ」を示すKPIであり、重要な位置づけになります。基本的には応答率が悪いセンターはSL(サービスレベル)も悪くなるため、まずは応答率の改善に取り組む必要があります。

ただし、応答率だけを指標とすると「どれだけ待たせたか」というプロセス管理ができないため、SLの管理は重要な指標になります。悪化の原因は、応答率と同じような理由になります。そのため、同じく何が原因なのかを特定し、有効な打ち手を考えます。

SL(サービスレベル)の低下は、お客様満足度に大きく影響するため、早急に取り組むべき課題になります。代表的な改善策に、「オペレーターの適正配置(呼量を予測し、適切な要員数を決定)」と「オペレーションの改善(AHTの改善など)」があります。

ASAとは

「ASA(平均応答速度)」は、「着信要求があってからどれだけ早く応答できたか」を表す指標です。つまり、裏を返すと「お客様がどれだけ待たされたか」という指標になります。待ち時間には、IVRメニュー時間や自動対応時間を含むこともあります。

多くの企業では10秒台以下の範囲で対応しており、20秒以内で対応している企業割合は約76%を超えます(コールセンター白書2018を参照)。SL(サービスレベル)のプロセス指標として、管理されることが多い指標になります。

悪化の原因はSL(サービスレベル)や応答率と同じく、呼量に対して対応可能なオペレーターが不足している状態が原因です。そのため、対応としてはSL(サービスレベル)改善での対策と同様の対策が必要になります。

効率性に関するKPI

稼働率とは

「稼働率」は、「給与が発生している時間内で、どれだけ顧客対応に時間を割けたか」を表す指標です。つまり、稼働率が高いと多くの顧客対応ができている状態だと言えます。

稼働率に含まれる時間を「生産時間(=お客様対応している時間)」 含まれない時間を「非生産時間(=待機時間や研修、面談など)」と呼びます。より効率的なセンター運営を目指すため、稼働率を適切に保てるように管理していく必要があります。

ただし、稼働率は高ければ高いほどいいわけでないというのがあります。非生産時間には研修や面談といった時間も含まれており、オペレーターへの教育やセンター全体に周知を行うためには、非生産時間も確保しなければなりません。

そういった非生産時間を確保せず、無理な運営を続けると、教育不足によるオペレーターの質の低下、オペレーターのモチベーションの低下が起き、応対品質の低下や顧客満足度の低下に繋がるという事態も考えられます。

そのため、自社の稼働率はどれくらいが目標になるのかを設定したうえで、稼働率の上がり下がりを数値だけでなく、内容を把握したうえで適切にコントロールする必要があります。

AHT(ACW、ATT)とは

「AHT(平均処理時間)」は、「1通話を対応するにあたってかかった時間」を表す指標です。AHTは細かく分けると、「ATT(平均通話時間)」「ACW(平均後処理時間)」に分けられます。

(算出式)AHT=ATT+ACW

「ATT(平均通話時間)」は「1通話に要する通話時間の平均」「ACW(平均後処理時間)」は「1通話に要する後処理時間の平均」を表す指標になります。

業務内容によってセンターの目標は変わりますが、一般的にはAHT(平均通話時間)が短いほど一人あたりに処理できるコール数が増えSL(サービスレベル)が上がるため、短縮を目指して改善を行います。顧客の満足度はSL(サービスレベル)に左右されるため、AHT(平均通話時間)を短縮し高い顧客満足度を維持するためにも不可欠です。

また、AHT(平均処理時間)が短縮できると、一人あたりの対応件数が増加します。そうすると、オペレーター人数を削減し、人件費を抑えることができるため、コスト削減対策や生産性向上においても、コールセンターにとってAHTの短縮が検討課題になることが非常に多いです。

ただし、AHT(平均通話時間)だけのことを考えて短縮を考えると、顧客満足度が下がる可能性があることを考慮しなければなりません。

特に通話時間の短縮は注意が必要で、短縮のため通話を早く終わらせようとするあまり早口になる、顧客からのレスポンスを待たずに話を進める、といった行動はCS(顧客満足度)の低下につながります。

そのため、AHT(平均通話時間)を短くするためにはまずはACW(平均後処理時間)から対策するのが定石になります。ここ数年、音声認識ツールや入力補助ツールが発展してきているので、それらを利用してACW(平均後処理時間)を短くすることが対策として考えられます。

CPCとは

「CPC(コスト・パー・コール)」は「1コールにかかる費用」を表す指標です。

費用とは、人件費や通信費、家賃などを含めた総費用のことを指すことが多いですが、中には変動の激しい人件費のみを考慮する場合もあります。経営指標として最も重要視されるKPIの一つで、経営側も注目度の高い指標です。

費用の中でも人件費が大きく割合を占め、かつ変動が激しい費用でもあるため、CPC(コスト・パー・コール)が上昇トレンドにある場合は、人件費に起因している可能性が高いです。

削減の施策はシステム面の強化や業務フローの見直しによる処理時間の効率化、センターの地方移転やアウトソーサーの変更などがあります。

顧客満足度に関するKPI

CSとは

「CS(顧客満足度)」は「企業が提供する商品やサービスに対する顧客満足の度合い」を表す指標です。アンケート調査などを実施することで「お客様の声」を客観的にデータ化・分析し数値化します。

商品開発やサービスの質の向上に反映させ、リピーター増やすことで最終的に利益アップを目指します。悪化する原因には、「なかなか繋がらない」「オペレーターの対応が悪い」「一回での解決に至らなかった」などが考えられます。

センターとしては、まずはお客様を待たせないために、システムの導入、効率的なオペレーション、適切な人員配置を行う必要があります。

また、オペレーターの対応品質を上げるための研修(商品知識を身に着ける座学やロールプレイングなど)や、管理者によるオペレーター支援(回答のサジェストによる一次解決率の向上やクレーム対応など)を行い、CSの向上を図っていきます。

NPSとは

「NPS(ネットプロモータースコア)」は「企業やブランドに対する愛着・信頼・他者への推奨の度合いなどを数値化することで、顧客ロイヤリティを評価する手法」を表す指標です。

計算式は下記で求められます。
(推進者-誹謗者)÷全体数

NPS(ネットプロモータースコア)では、企業(あるいは、製品、サービス、ブランド)を友人や同僚に薦める可能性を0~10点で回答してもらいます。

それぞれ点数に応じて、10~9点:推奨者(プロモーター)、8~7点:中立者(パッシブ)、6~1点:批判者(デストラクター)にカテゴリ分けを行います。

近年、CS(顧客満足度)調査の代わりとなる指標として、計測する企業が増えてきました。 同じく顧客の不満や課題を見つけるための手段であることは変わりませんが、NPSは業績との相関が高いことが立証されており、収益性とより密接に結びついている点が異なります。

▼関連記事はこちら
NPS®(ネットプロモータースコア)とは?コンタクトセンターでの計算方法や運用方法を解説記事

マネジメントに関するKPI

欠勤率とは

「欠勤率」は、「あらかじめシフト割り付された・スケジュールされた就業日数に対して、欠勤した日数の割合」を表す指標です。
欠勤率が悪化する理由として、「心理的な要因」と「身体的な要因」が考えられます。心理的な要因は、繁忙期の疲労や人間関係(特に管理者の方々との)や業務のストレス、モラルの欠如などがあげられます。身体的な要因は、職場環境(空気の乾燥や換気など)や流行風邪、長時間等労働などが要因になります。

どちらもデータ上だけでは要因の特定は難しく、現場を見ないことには要因が特定しづらく、対策もできません。
また、欠勤率悪化が続くと、出勤しているオペレーターへの負担も大きくなり、さらに欠勤者を増やすという負のスパイラルに陥ります。そのため、早期に改善が必要となります。

改善のポイントとしては、欠勤者の欠勤理由の真因をつかむことと、センター全体として改善に取り組んでいる姿勢を見せることです。オペレーターに要求するだけでは逆に退職に繋がってしまうなど逆効果の可能性が高いので、センシティブに対応する必要があります。

離職率とは

「離職率」は、「在籍人数に対する離職者の割合」を表す指標です。離職率は「外的要因」と「内的要因」に分類できます。
外的要因は、求人倍率の高騰に伴い人材の流動性が高まったり、近くに自社センターより条件の良いセンターができたり、その地域の労働者人口の減少等が考えられます。内的要因は、職場環境悪化や、業務内容、条件の変更、人事制度の問題などがあげられます。

外的要因に対するリスクヘッジはしながらも、早急に対策すべきは内的要因になります。最近ではES(従業員満足度)向上のための施策や、エンゲージメントを高めるための施策に取り組む企業が増えています。
施策には従業員アンケート調査や、360度評価、1on1面談、ファミリーデーなどがあります。

まとめ

今回は基本となるKPIの簡単な紹介でした。

KPI管理はコールセンター運営において非常に重要な業務です。ただし、KPI管理を徹底するあまり、本来の目的を失い、数字を管理するだけが優先されてしまうこともあります。

「なんの為のKPIなのか」を常に意識して、管理していく姿勢が管理者には求められます。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 吉田 章孝

    2011年、株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)に入社。
    3年目に支店長として支店の新規立ち上げを経験。その後は札幌支店長として着任し、2年間で売上倍増に貢献する。
    その後、首都圏管轄マネージャに着任し、営業推進部へ異動。営業推進部では、金融系プロジェクトチームの立ち上げや、部内重点顧客の本部営業などを担当。
    2020年4月より、営業推進部 部長として、本部営業や社員教育、求人広告や転職支援チームなどを担当。現在は本部営業をメインに担当。

    ・趣味:散歩、語学
    ・特技:料理

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