コールセンター業務を守るBCP対策とは│必須の知識とステップについて解説

2024/07/08

地震、台風、大規模な水害といった自然災害が頻発する日本の環境下では、コールセンター業務の継続は特に重要です。さらに、最近のコロナパンデミックのような世界的な健康危機は、従来の業務運営方法に再考を迫っています。

この記事では、BCP(事業継続計画)の基礎から、具体的な手順、実例に至るまで、コールセンター運営者が直面するこれらの課題に対する解決策について解説します。災害や緊急事態は予告なく発生しますが、適切なBCP対策により、コールセンターは顧客サービスの質を落とすことなく業務を継続できます。

本記事を通じて、あなたのコールセンターが非常時でも円滑に運営を続けられるよう、実践的なガイドラインを提供しますので、ぜひ参考にしてください。

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BCP対策の基本概念

この章では、BCPの基本的な概念と、コールセンターにおけるBCPの重要性について深く掘り下げます。

BCPとは

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)は、予期せぬ災害や緊急事態が発生した際に、企業活動を継続するための予防策や対応計画を指します。この計画は、事業の中断を最小限に抑え、迅速な復旧を目指すためのものです。

コールセンターにおけるBCPの重要性

特にコールセンターにとって、BCPは極めて重要です。コールセンターは多くの企業にとって顧客との直接的な接点となる場であり、自然災害やパンデミックといった緊急事態においても、この接点を維持することが求められます。そのため、単に災害時の対応計画にとどまらず、顧客の信頼を維持するための戦略的な取り組みになります。

日本では、地震や台風などの自然災害が頻繁に発生し、コールセンターの業務に大きな影響を及ぼすことがあります。さらに、最近のコロナパンデミックのような世界的な健康危機は、従業員の安全と業務継続のバランスを取ることの難しさを浮き彫りにしました。これらのリスクに効果的に対処するためには、事前に綿密なBCPを策定することが不可欠です。

日本における主要なリスクと対策

コールセンターが直面する主要なリスクには、自然災害、感染症の流行、システム障害などがあります。これらはいつどこで発生してもおかしくありません。詳しく解説します。

自然災害

日本は地震、台風、洪水などの自然災害が頻繁に発生する国です。特に大きな地震は発生すると、インフラへの影響も甚大です。例えば、2011年の東日本大震災や2018年北海道胆振東部地震では、多くの企業のコールセンターが被害を受けました​​。国土技術研究センターによると、2011年~2020年に発生したマグニチュード6.0以上の地震は、全世界の17.9%が日本周辺に集中しています。

このような自然災害に対するBCP対策としては、非常用電源の確保、バックアップサーバーの設置、代替拠点の準備などが挙げられます。

感染症の流行

密閉された室内で多くのオペレーターが働く環境は、感染リスクが高いとされています。特に新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、コールセンターにおける業務運営に大きな影響を与えました。例えば、NTTドコモのコールセンターで感染者クラスターが発生し、運営が一時停止された事例があります​​。

感染症に対するBCP対策としては、オンライン通信ツールの活用、在宅勤務体制の整備、職場での感染予防策の徹底などが必要です。

システム障害

現代ではシステム障害へのBCP対策も重要です。

現在のコールセンターはITシステムに大きく依存しており、システム障害は業務の中断を引き起こす可能性が高いです。こういったシステム障害はサイバー攻撃やマルウェア感染、システムの故障などが主な原因です。

システム障害に対するリスクに対処するためには、定期的なシステムメンテナンス、データのバックアップ、サイバーセキュリティ対策の強化が重要です。また、システム障害時に迅速に対応できるよう、予備の通信手段や代替システムの準備も必要です​​​​。

BCP対策の具体的な手順

コールセンターのBCP対策を策定し実行するためには、具体的な手順が必要です。手順について具体的に解説します。

対策すべき対象の特定

まずはコールセンターにおいて最も優先して継続、復旧すべき重要な業務を特定します。一般的には、特に顧客影響の大きい”顧客からの緊急の問い合わせに対応するサポートライン”や、サービスの品質を維持するための基本的な通信機能が優先されるべきです。

この段階では、どの業務が事業の核心を成すかを評価し、それらを最優先で保護する計画を策定します。また、災害時における顧客への迅速な対応方法も考慮に入れる必要があります。

BCP発動基準の明確化

緊急事態が発生した場合、BCPを有効に機能させるためには、その発動基準を明確にすることが重要です。コールセンターの重要な業務に甚大な影響を及ぼす可能性のある災害の種類と規模に基づき、BCP発動基準を定めます。

BCP発動基準を予め明確にしておくことで、緊急事態時になっても冷静に意思決定ができます。

目標復旧時間、サービスレベルの決定

中小企業庁が公表している「中小企業BCP策定運用方針」によると、優先して継続、復旧すべき中核事業が決まったら、次にやるべきこととして下記の二つを提唱しています。

  • 緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておくこと
  • 緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客と予め協議しておくこと

これは中小企業に限らず、コールセンターでも重要な考え方になります。

BtoCビジネスだと、顧客とサービスレベルを予め協議しておくことは難しいかもしれませんが、緊急時にどのように顧客へ状況を共有するのかなど、コミュニケーションの方針を決めておくとよいでしょう。

運用体制の決定

非常時の運用体制とルールを設定します。これには非常時のコミュニケーション計画、従業員の安全確保策の策定が含まれます。

BCP対策の大前提には、常に従業員の安全が第一であることを忘れないでください。具体的には、災害発生時の連絡網、従業員の安全確認手順などが必要です。

また、非常事態における運用の切り替え方法や、その際の指揮系統も明確に定めます。コールセンターにおける非常時の運用体制には拠点の切り替え、リモートワークへの移行などがあります。他拠点への切り替え方法やリモートワークの詳細なガイドラインを準備しておきましょう。

加えて、緊急事態発生時には、平時とは違うプロセスでの運用、判断が必要です。コロナパンデミックでも示された通り、緊急事態発生時にはリーダーによるトップダウンの指揮命令によって従業員を先導することが重要であり、指揮命令と情報の管理に注力することが大切です。

運用体制の準備

運用体制が決まったら環境の準備をしましょう。例えば、リモートワークへの切り替えをBCP対策として行う場合、リモートワーク可能な環境を整備します。信頼性の高いインターネット接続、適切なワークスペース、効果的なオンラインコミュニケーションツールの確保などが必要です。

また、在宅勤務を行う従業員に対して必要な機器やソフトウェアの提供、オンラインでの業務プロセスの最適化、従業員の健康と生産性を維持するための指針も策定しておきましょう。

その他にも、ITシステムの活用も大切です。非常時でも対応可能な自動応答システム、音声認識システム、顧客管理システムなどのITシステムを検討しましょう。これにより、人手が不足している状況やリモートワーク中でも業務を円滑に運営できるようになります。また、これらのシステムは、通常時の業務効率化にも寄与します。

BCP関連情報の整理と文書化

ここまで策定した内容を適切に運営するためには、情報が整理されていて、従業員がいつでもアクセスできる状態にしておく必要があります。策定してきたルールや運用体制などを明文化して、文章化しておきましょう。

中小企業庁が公表している「中小企業BCP策定運用方針」では、BCP対策で用意しておくべき文章がフォーマットとして整理されています。ぜひ参考にしてください。

その他の対策

その他にも、データとシステムのセキュリティを強化し、サイバー攻撃やデータ漏洩から保護するなど、予防対策も検討しましょう。具体的には、セキュリティソフトウェアの更新、定期的なセキュリティトレーニング、従業員に対するサイバーセキュリティ意識の向上、データバックアップとリカバリ計画の策定が含まれます。

これは普段のセキュリティ意識を高め、サイバー攻撃などに対する防御を強化するだけではなく、非常時にリモートワークに切り替えた際の、外部からのアクセスに対するセキュリティ対策にもなります。

コールセンターにおけるBCP対策例

最後に、コールセンターにおける具体的なBCP対策例を見ていきましょう。

多拠点化・分散化

コールセンターでは通常BCP対策として、多拠点化や分散化が対応策として講じられるケースが一般的です。コールセンターの多拠点化では以下のことを考慮する必要があります。

まずセンター同士の地理的な距離が必要です。これは、地理的な距離が近いと大規模災害が発生した際にどちらのセンターにも被害が出る可能性があるためです。加えて、東日本大震災では広範囲に影響があったこともあり、センターの複数分散化が急速に進みました。

また、多拠点化をする場合、すぐに運用の引き継ぎができるようにする必要があります。そのためにはシステムも冗長化しておく必要があります。また、これらの対策にはコストがかかるため、どこまで対策をしておくかは事業停滞時に発生する損失を評価しておく必要があります。

在宅化

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、従来の多拠点化・分散化の戦略だけでは、大規模な感染症の拡大に対して十分な対策とは言えないことを明らかにしました。そのため、感染リスクを低減する一環として、多くの企業が在宅勤務へシフトしています。

在宅勤務の導入により、従業員は自宅から安全に業務を続けることが可能となり、企業はコールセンター業務の継続を図ることができます。この取り組みは、従業員の健康と安全を守りながら、顧客サービスを維持する上で重要な役割を果たしています。

在宅化と地方拠点への多拠点化についてはコストやメリットを比較した下記の記事も参考にしてください。
▼参考記事:
コールセンターのBCP対策は在宅拠点と地方拠点どちらが効果的?それぞれのコストやポイントを比較

ノンボイス化

近年、コールセンターにおけるノンボイス化が、人材不足への対策としてだけでなく、BCP対策としても注目されています。ノンボイス化とは従来の電話対応に加えて、メールやチャット、SMSやSNSなどを利用した多様な対応方法を導入することです。

特に新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおいて、多くのコールセンターが通常の運営を行うことが困難となりました。そこで、多くの企業がコールセンターの運営を縮小し、ノンボイス化を進めています。

さらには、顧客が自ら情報を得られるセルフサービス化を推進する企業も増加しています。このようなノンボイス化の取り組みにより、非常事態におけるコールセンターの柔軟な運営が可能となり、顧客サービスの質を維持することができます。

まとめ

コールセンターのBCP対策は、現代のビジネスにおいて不可欠な要素です。非常事態はいつ発生するか予測できませんが、適切な準備と計画により、どのような状況にも効果的に対応することが可能です。安定したコールセンター運営を通じて、顧客との信頼関係を保ち、企業の持続可能な成長を実現しましょう。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 平井 美穂

    2012年、株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)へ入社し、コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属。フィールドサポータや営業コーディネータ、キャリアアドバイザー、新規営業、人材紹介(転職支援)などを経験。
    2020年 人材紹介にて自己最高売上を記録、時短勤務×妊娠中での実績が評価され全社月間MVPにノミネート。現在5歳と2歳を育てるパワフルワーママ!

    ・趣味:断捨離、森林浴、岩盤浴
    ・特技:細かい事に気が付く点

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