【取材】株式会社協和│実用的なVOC分析とは?AI音声認識を活用したマーケティング施策の実例を紹介!
2024/07/04
- システム導入
- 品質向上
全国4拠点100席規模のコールセンターを構える通販会社大手の株式会社協和では、効果的なVOC分析を行うために、どのようにデータを収集するかが課題の一つでした。そこで、課題解決の施策として考えたのが、Hmcomm社が展開するAI技術を使った音声認識ソリューション「VContact」の導入です。
本記事では協和様で最新の技術を推進していく立場である情報戦略グループ IT化推進2チーム長の針金氏にHmcomm社の音声認識ソリューション導入についてインビューさせていただきました。
掲載日:2018/10/24
お客様の8割はオフライン、電話からお客様情報をどう取得していくかが重要なポイントだった
― 音声認識を導入するに至ったきっかけを教えて下さい。
針金氏:
VOC分析への利用がきっかけになりますね。世の中はweb化が進んでいますが、弊社のお客様の8割ぐらいはオフラインになります。そのため、お客様の情報を取得していくためには、webというよりは電話が中心になってくる。電話からのお客様データをどう取得していくかがカギとなります。
今までも、電話の問い合わせ内容については、オペレーターがサマリーしたものをCRMシステム上に残していましたが、必要な情報を選別して残していくため、分析には使いにくい情報データでした。
そこで、リアルタイムでお客様の声をテキスト化できる音声認識を用いて、データを取得することができれば、お客様に最適なサービスを提供できる方法になるのではないかと思い、音声認識に注目したのがきっかけになります。
今回、ご説明する「VContact KYOWAモデル」を初め新規受注に用いたのは、ステップであって、最終的な目標は顧客へのサービス最適化、それを実現する分析のために利用したという思いは初めから今も変わってないですね。
― 第一ステップとして、新規受注を選ばれた理由を教えてください。
これは、AIを使った音声認識全体に言えることなのですが、今の音声認識技術はフリートークを完全に使える状態でテキスト化するのは、厳しいというのは正直なところです。
最終的に我々が目指すのは、お客様とのフリートークをデータとして取得していくことですが、一足飛びには難しいというのが現状です。ただ、近年通販業界は競争が激化しておりますので、技術の発展を待つというような悠長なことも言ってられないだろうと。また、音声認識は今後必ずやっていかないといけない技術だという認識でしたので、まずは今の技術でどういう風に使えるのかを検討していきました。
検討の結果、お客様の声より学習したオペレーターの声の方がちゃんと認識されるという特徴があり、かつ学習を繰り返せば繰り返すほど精度が上がっていくという特徴もありましたから、トークスクリプトが決まったもの、かつそこから取得するデータも限定されるものの方が活用の余地があるだろうと考えました。
弊社の業務の中で考えるのであれば、新規受注センターがお名前、住所、郵便番号、媒体コード、電話番号、年齢など、ある程度会話の項目が限定されていて、かつオペレーターが必ず復唱する体制のため、導入しやすいと考えました。
導入を推進していくためには、周囲とうまく共同していくことが重要
― 実際の導入はどのような形で進めていかれたのですか。
協和の考え方として、「知恵の協業」というものがあり、なんでも中で持とうとしないで外部とうまく共同していくという考え方があります。
トークスクリプトの部分は社内のコールセンター部門にも協力してもらいましたが、基本的には、社内は私ともう1名、あとはHmcomm社と運用を委託している協力会社と連携しながら進めていきました。
― 導入はどれくらいの期間がかかったのですか
検討段階では、半年ぐらいかけて検討しましたが、いざ音声認識をやると決めてから導入までは、だいたい2か月ぐらいですね。
これも協和の考え方なのですが、「失敗を恐れずチャレンジする」というのがありますので、音声認識の課題やリスクは認識しつつも、それよりもまずはチャレンジしてみることを優先させました。
もちろん、リスクヘッジは十分行いました。最悪、音声認識がうまくいかなくても、運用自体はできるようにはなっていたので。
選定理由は、一緒に作り上げていく発想があるかどうか
― Hmcomm社を選んだ選定理由を教えてください。
選定のポイントとして、会社とその中にいる人たちがどういう考えを持っているのか、というのが一番のポイントでした。
もちろん、検討段階では、実績のある大手企業も検討しましたが、パッケージが出来上がっていて、運用面も融通がきかない印象でした。また、学習方法も、年に何回かデータをバッチでベンダー側に送って学習するという方法で融通がきかないものでした。その点、Hmcomm社は画面の作りこみから、一緒にやっていこうという発想でした。
学習方法もセンター側で随時学習がかけられるような体制でしたので、それらが決め手となり、Hmcomm社を選びました。
― 社内の説得は苦労されましたか
実はそこまで苦労しませんでした。会社の方針として、プロダクトアウトではなく、マーケットインの発想でサービスを提供していかないといけない、そういう会社じゃないと残っていけないという危機感が会社のトップ含め、会社全体にありまして、そのための投資は惜しまないという方針でした。
お客様の情報を電話から取得するというのは、今後、重要な要素であることは間違いなかったので、それについてはやっていこうという判断になりました。もちろん、費用対効果も考えており、考えたからこそ新規受注センターでの活用があるのですが、その先のゴールを見据えての投資であることは間違いないです。
目に見えた改善が見られ、現場での反応も変わっていった
― 導入当初、課題はありましたか
とりあえず動くものを作るまではそこまで苦労しませんでした。
ただ、実際にオペレーターにテストコールで使ってもらったのですが、オペレーターは真剣に会話している後ろでみんなはテキスト化されたものを見て、笑うしかないというレベルのものだったというのが事実です(笑)
かつそれがちゃんと帳票に入っている確率は半分もないようなものでした。私自身としては、そのようなものだし、そこからのスタートというのはある程度想定しておりましたが、一緒にいたコールセンターの担当者は「これ大丈夫なの?」というザワザワ感はありましたね。
― そこから現場とはどのように調整されていったのですか
そうですね、現場担当も不安はあったものの、会社としてチャレンジしていくというのは全部署の共通認識だったので、やっていくしかないねという気持ちは持ってくれていました。
そこから、数週間いろいろ改善していったら明らかに目に見えて改善が見えたので、現場のメンバーも「意外といけるかも」という風な雰囲気に導入して3か月目ぐらいでなっていきましたね。
― 音声認識を導入するうえで工夫されたことはありますか
復唱を正確にしたことと、数字データの方が取得しやすいので、数字データでとれるものは数字でとりました。例えば、住所は郵便番号で特定できるところは郵便番号でマスターを引いています。あと、弊社は似た名前の商品名が無数にありましたので、媒体コードをベースに商品を特定する方法をとりました。
最近導入した仕組みとしては、名前推定機能ですね。名前って基本的にはカタカナ情報でしか取れないんですよね。一応、漢字情報に変換して候補としては出るのですが、そこから選んだり、打ち直したりしないといけない。それを漢字で正確に出したいと思い、Hmcomm社に追加で開発してもらった機能が「名前推定機能」です。これは、例えば私の場合、「金偏に十の針です」といえば、「針」の文字が入るようになっている。会話の中でオペレーターが必ず漢字を確認する場面があるので、それを利用して音声認識で拾っていくという機能です。現在は地道に表現のパターンを増やしているところです。
後処理時間の削減など目に見えるもの以外の効果もあった
― 導入の効果について教えて下さい。
新規受注の部分で行くと、システムに手打ちするより、音声認識の方が早いというのが目に見えた効果ですね。後処理時間が4分かかっていたものが、現在アベレージで50秒ぐらいまで削減ができています。音声認識がうまくいけば、入力されているものを確認するだけなので、認識率がいいと10秒を切ることもあります。
あと、これは目に見えたものではないかもしれないですが、どういう形であれ、現場に導入することにより、音声認識の技術がどういう技術なのかを社内的に正確に把握ができたのも大きな収穫です。
次のステップに行くためには何が必要かなど、実用化して初めて分かった部分もあったので、最終的なゴールに向かうためにも、現場に導入してみて、使ってみるというステップを踏み出すのは、大きかったですね。また、私自身はある程度何ができるかを把握していましたが、社内的には音声認識について何ができるかあいまいな部分がありました。
実際に導入してみると、社内の理解も進み、他の部署からも「こういう使い方ができるのでは?」という新しいアイデアが出てくるようになりました。
― 何か社内から出たアイデアで取り組んでいることはありますか。
今、社内から出たアイデアをもらって取り組んでいるのが、アンケート機能です。新規受注センターに全く別の部署のものを連れて行ったときに出た意見で、面白そうだねってことで取り組んでいます。
Webでもアンケートをとったりするのですが、電話でのアンケートの場合、全部書き起こすわけにもいかないし、それをやろうとするとかなりの労力が必要になります。
そこを音声認識を使えば、質問ごとのテキストが出てきて、そこからさらにテキストマイニングして、情報を抽出できるような、効率的かつ正確に、お客様情報を集めることができるんではないかと思っていて、今度そこにトライしようかなと思っております。
今後の課題としては、カスタマーの認識精度がポイント
― 最終ゴールに向けて、様々な取り組みをされていますが、現状の課題を教えてください。
今課題としてはやはりお客様側の認識精度ですかね。
新規受注センターのようにある程度パターン化されている会話については、ある程度不鮮明な音声でもテキスト化できるようにはなってきていますが、我々が最終的に目指すのは完全なフリートークのテキスト化になります。
なので、今後は日々学習に取り組みながら、お客様の認識精度のベースアップに取り組んでいきたいと思っています。
取材を終えて
お客様へ最適な商品、サービスを提供するため、VOC分析を行っている会社は増えてきています。しかしながら、音声データをそのまま分析するのは難しく、かつテキスト化を人力でやると非常に工数がかかるため、満足のいくVOC分析を進められていないセンターは多いのではないかと思います。
そういったときに、今回ご紹介した「VContact」のような音声認識ソリューションは有効といえます。また、VOC分析のためのテキスト化だけではなく、後処理時間の削減やオペレーターのアシスト機能などがついており、コンタクトセンターの効率化も手助けしてくれます。
協和様ではカスタマーのフリートークをVOC分析し、顧客ごとに合った理想的なワントゥーワンマーケティングを進めていくという構想もあり、今後の活用に期待です。
音声認識ソリューションについてはこちらの記事でもご紹介しているのでご参照ください。
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