アルムナイ採用とは?導入メリットや注意点、成功のポイントを解説
2025/04/16
- コスト削減
- 人材採用
- 定着率向上

現代の企業が直面する採用課題として、労働力不足や採用コストの増加が挙げられます。このような状況の中で注目を集めているのが、「アルムナイ採用」です。
アルムナイ採用とは、一度退職した元社員を再雇用する手法で、即戦力の確保や採用コスト削減、組織の活性化にもつながります。
本記事では、アルムナイ採用の定義や注目される背景、具体的なメリットや課題、活用ポイントについて詳しく解説します。アルムナイ採用を効果的に活用し、企業の成長につなげていきましょう。
アルムナイ採用とは?
アルムナイ採用は、以前自社で働いていた元社員(アルムナイ)を再び採用する手法です。この手法では、過去の勤務経験を活かし、即戦力として組織に貢献できる人材を迎え入れることができます。
なぜ今アルムナイ採用が注目されるのか
アルムナイ採用が注目されている背景として、以下の要因が考えられます。
順番に見ていきましょう。

生産年齢人口の減少

「令和4年版高齢社会白書」によると、2021年時点で7,450万人いる生産年齢人口は、2050年には29.2%減の5,275万人まで減少する見通しです。
このような急速な人口減少により、企業にとって労働力の確保は喫緊の課題となっています。
慢性的な人材不足

株式会社帝国データバンクによる「人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)」によると、正社員の人手不足を感じている企業が51.0%にのぼり、依然として高水準です。特に専門的な知識や経験が求められる職種では、新規採用だけでは人材確保が追いつかないケースが多くなっています。
労働市場の流動性の高まり
現代の労働市場では、転職が一般的な選択肢となり、特に若年層や専門職においては、スキルや経験の幅を広げる目的で積極的に転職する動きが増えています。このような背景から、終身雇用を前提としない柔軟な人材マネジメントが必要とされています。
元社員との関係性の変化
かつては「退職=縁の切れ目」とされていましたが、現在では退職後も関係を継続する「アルムナイネットワーク」の構築が広まりつつあります。良好な関係を築いておくことで、再雇用の可能性だけでなく、紹介採用やブランド価値向上にもつながると期待されています。
このような複合的な要因から、アルムナイ採用は単なる“再雇用”にとどまらず、持続可能な人材戦略のひとつとして再評価されているのです。
アルムナイ採用のメリット
アルムナイ採用は、企業・採用側にとっても、応募者・元社員にとっても多くの利点があります。
本記事では、主に企業側のメリットに焦点を当てて解説します。

即戦力人材の確保が可能
アルムナイ採用の最大の魅力は、元社員がすでに自社の業務内容や企業文化を理解している点です。研修などの手間を最小限に抑えられ、入社後すぐに実務で活躍してもらえる可能性が高まります。特に、専門性が高い職種や管理職層においては大きなメリットです。
また、既存の社員と既に信頼関係が築かれている場合が多く、コミュニケーションの円滑化にもつながるでしょう。
採用コスト・教育コストの削減
新卒・中途を問わず、通常の採用活動には広告出稿費や選考対応、内定者フォローなど多くの工数とコストがかかります。さらに、入社後の育成にも相応の投資が必要です。
アルムナイ採用であれば、そうした採用・教育に関わるコストを大幅に削減できる可能性があります。
さらに、研修コストやOJTにかかる時間も最小限に抑えられるため、採用から戦力化までのトータルコストが低くなります。
新たな知識やスキルの導入
一度他社での経験を積んでから戻ってくるアルムナイ社員は、新しいスキルや知見を持ち帰ってくれる可能性があります。これは、組織にとって“外の視点”を取り入れる良い機会となり、イノベーションや業務改善にもつながります。
離職後も良好な関係を維持するブランディング効果
アルムナイ採用を制度化することは単なる採用活動にとどまらず、企業ブランディングにも効果を発揮します。元社員が企業の“ファン”として社外に良い評判を伝えてくれる可能性もあり、間接的な採用効果をもたらすこともあるでしょう。
また、退職後も企業と良好な関係を維持することで、他の候補者にポジティブな印象を伝え、企業価値を高める効果があります。
アルムナイ採用のデメリットと課題
アルムナイ採用には多くのメリットがある一方で、導入・運用の際には注意すべきポイントも存在します。本章では、想定されるデメリットや留意点を解説します。
社内のバランスに配慮が必要
再雇用された元社員が、以前と同じまたは上位のポジションに就く場合、既存社員のモチベーションや組織内のバランスに影響を及ぼすことがあります。特に現場では「なぜ退職した人が戻ってきて昇進しているのか?」という不公平感が生まれやすいため、事前の説明や配慮が欠かせません。
対策として、再雇用時の給与や待遇を設定する際には、まず在籍社員とのバランスを慎重に考慮しましょう。あわせて、社内コミュニケーションを強化し、再雇用の目的や条件について全社員が理解できるようにしましょう。
退職理由に応じた見極めが必要
アルムナイ採用では、過去に自社を辞めた理由が重要な判断材料となります。たとえば「人間関係」「待遇への不満」「キャリアの方向性の違い」など、再発の可能性がある退職理由の場合、再雇用しても定着せず再び離職するリスクがあります。
そのため、再雇用にあたっては本人の意思や状況を丁寧に確認し、当時の上司・同僚の意見も踏まえて総合的に判断する必要があります。
短期的な効果に頼りすぎるリスク
アルムナイ採用は即戦力としても期待できますが、あくまで長期的なネットワークの維持を前提とした手法です。
アルムナイ採用を積極的に進めるためには、元社員とのネットワーク(アルムナイネットワーク)を継続的に維持・運用していく必要があります。人事・広報などの部門で専任的に運用する体制を作る必要があり、長期的なリソース確保やコストが発生するでしょう。
長期的に企業文化に再適応させ、持続的な関係を築くための情報交換やパートナーシップを育むようにしましょう。
アルムナイ採用を成功させる4つのポイント
本章では、アルムナイ採用を成功させるための4つの重要なポイントをご紹介します。
いずれも成功の鍵となる要素ですので、ぜひチェックしてください。
社内の合意形成
アルムナイ採用を導入する際には、現社員に制度の意義を説明し、理解を得ることが重要です。退職者を再雇用するメリットを共有し、社内全体で受け入れる姿勢を醸成することで、アルムナイ採用の成功確率が高まります。
明文化された制度として運用することで、社員間の合意形成をスムーズに進めることができるでしょう。
イグジットマネジメントを心掛ける
イグジットマネジメントとは、企業が退職者と円満な関係を維持し、将来的な再雇用やビジネス機会を創出するための戦略的な人事マネジメント手法です。
退職時に感謝を伝え、今後のキャリア支援を約束することで、退職後も良好な関係を維持できます。円満な退職は、将来的な再雇用だけでなく、アルムナイが企業のブランドアンバサダーとして活躍するきっかけにもなるでしょう。
長期的視点でのネットワーク運用
アルムナイネットワークを構築し、再雇用以外にも情報交換やコラボレーションを可能にする仕組みを整えることがポイントです。定期的な情報発信や交流イベントを通じて、退職者が企業と関わりを持ち続ける場を提供するようにしましょう。
さらに、オンラインプラットフォームを活用して、アルムナイ同士や現社員との交流を促進し、新しいビジネスチャンスやプロジェクトへの参加機会を提供することで、持続的で有益なネットワークを維持します。
多様な雇用形態の確保
正社員だけでなく、契約社員やプロジェクト単位での雇用形態を検討することで、アルムナイの柔軟な活用が可能になります。専門的なスキルが必要とされる特定のプロジェクトに短期間だけ参加してもらったり、一定期間の契約社員として再雇用したりすることで、企業とアルムナイの双方にとって最適な働き方を実現できるでしょう。
また、パートタイムやリモートワークなど、様々なライフスタイルに対応した雇用形態の導入も効果的です。
まとめ
アルムナイ採用は、即戦力の確保、採用コストの削減、企業イメージの向上など、さまざまなメリットがあります。しかし、一方で公平性の確保や在籍社員の理解促進といった課題にも注意が必要です。
再雇用時には、公平な採用基準と透明性を確保し、社員間の信頼関係を維持することが重要です。
また、長期的な視点でアルムナイネットワークを活用し、定期的な情報交換や交流イベントを通じて退職者との関係を維持することで、企業の持続的な成長を支えます。
多様な雇用形態を取り入れることで、アルムナイの柔軟な活用が可能になり、企業と個人の双方にとって最適な働き方を実現します。
これらのポイントを押さえたアルムナイ採用は、企業の競争力強化につながる有益な戦略となるでしょう。
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Writer編集者情報
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コネナビ編集部 上原 美由紀
従業員1万人以上の企業の5社に1社が導入している採用支援・求人広告会社にて、アルバイト・パート採用や中途採用を中心に、約3年間にわたり企業の採用支援に従事。
2019年9月より株式会社ウィルオブ・ワークに入社し、コールセンター・オフィスワークに特化した人材サービスの事業部でキャリアアドバイザーを担当。現場で培った知見をもとに、コンタクトセンター領域はもちろん、採用・人材分野に関する実践的かつリアルな情報発信を心がけている。
現在は子育てと仕事を両立しながら、日々奮闘中!
趣味:音楽、ゲーム、ディズニー、お酒
特技:タスク管理