【2025年6月申請開始】カスハラ対策に最大40万円!東京都の奨励金・補助金制度を徹底解説
2025/04/18
- 品質向上
- 従業員満足度向上

近年、接客現場での理不尽なクレームや暴言などのカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)と呼ばれる行為が社会問題として注目されています。特にコンタクトセンターやオフィスワークの現場では、従業員の心身への影響が深刻で、早急な対策が求められています。東京都では、2025年4月に全国初となる「カスタマーハラスメント防止条例」が施行され、それに伴い、企業や団体を対象とした奨励金・補助金制度がスタートしました。 本記事では、カスハラ対策をこれから始めるご担当者様に向けて、支援制度の詳細についてご紹介します。支援制度を活用し、どのように対策を進めていくべきかをわかりやすく解説します。
カスタマーハラスメントとは
一般的なクレームとの違い
カスハラとは、顧客や取引先などから、業務上の対応を超える過度な要求や暴言・暴力を受ける行為のことを指します。通常のクレームは、サービスや商品に対する不満や改善を伝えるものであり、業務の範囲内で対応が可能です。しかしカスハラは、社会通念を逸脱した言動や要求が伴い、従業員の人格や尊厳を著しく傷つける点が大きな違いです。
コンタクトセンターにおけるカスハラの実態
コンタクトセンターは、顔の見えないやり取りで顧客の感情が高ぶりやすく、カスハラが発生しやすい環境にあります。長時間のクレーム対応、人格否定のような発言、業務外の謝罪要求などが日常的に報告されており、離職やメンタル不調の原因にもなっています。企業が従業員を守る体制を整えることは、職場の健全性だけでなく、人材確保の面でも急務となっています。
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「【全センター必見】コンタクトセンターにおけるカスタマーハラスメント│原因、影響、予防と対応」
東京都が施行する「カスハラ防止条例」とは
条例の概要と背景
東京都は、全国に先駆けて「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を2025年4月1日から施行します。条例の目的は、顧客や取引先による著しい迷惑行為(=カスハラ)から従業員を守り、事業者が安全配慮義務を果たせるようにすることです。
条例では、東京都内の全ての事業者(法人・個人事業主を含む)に対して、「カスハラの防止に関する必要な措置を講ずるよう努めなければならない」とする努力義務を課しています。
「努力義務」とは何か
ここでいう「努力義務」とは、法的な強制力はないものの、都としては事業者に対して真剣に取り組んでほしいと求めていることを意味します。義務化ではなく“努力義務”とした背景には、企業規模や業種によって実施可能な対策が異なることへの配慮があります。ただし、カスハラを放置した結果、労働環境の悪化や従業員のメンタル不調につながるようであれば、安全配慮義務違反に問われる可能性もあります。
そのため、東京都はこの条例の実効性を高めるため、対象となる企業・団体が実際にカスハラ対策に取り組めるよう、補助金・奨励金といった支援制度もあわせて整備しています。
「企業向け奨励金」の内容と申請要件
対象となる企業と金額
企業向け奨励金は、東京都内で事業を行う企業を対象とし、定額で40万円が支給されます。この支援は、カスハラ防止に向けた実践的な取り組みを行った企業を奨励することが目的となっており、返済不要で使用用途もカスハラ対策に限定されているため、多くの企業にとって導入の後押しとなります。
企業向け奨励金(定額40万円) |
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申請のために必要な取り組み
奨励金を受け取るためには、表に記載したとおり、以下の2つのステップが必須です:
STEP1:カスハラ対策マニュアルの作成・提出
東京都が提供する指針や厚労省のマニュアル等を参考にしながら、自社の実情に合ったカスハラ防止マニュアルを作成し、提出する必要があります。
STEP2:以下いずれかの実践的対策の実施
- 録音・録画環境の整備
- AIを活用したシステム等の導入
- 外部人材の活用
申請スケジュールと注意点
申請は2025年6月から開始予定とされており、詳細な受付方法や申請様式は、東京都の公式サイト「TOKYOはたらくネット」で公開される予定です。申請件数には上限(3か年で10,000件)が設けられる見込みのため、早めの情報収集と準備が重要です。
また、申請内容に不備があると支給対象外になる可能性もあるため、マニュアルの質や必要書類の整備にも注意しましょう。
▼参照元:
http://hataraku.metro.tokyo.lg.jp/kaizen/ryoritsu/kasuhara/index.html
「団体向け奨励金・補助金」の内容と活用方法
対象となる団体と支援内容
団体向けには、主に業界団体や事業者団体を対象とした2つの支援制度があります。ひとつは「団体向け奨励金」、もうひとつは「団体向け補助金」です。
団体向け奨励金(最大100万円) |
会員企業及びその従業員向けに防止対策の体制を整備した場合に、奨励金が支給される。※申請後、都が交付決定した取組が対象 ・規模:30件 |
団体向け補助金(補助上限5,000万円) |
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補助金申請には、都との事前相談や事業計画書の提出が必要となるケースがるため、対象となる活動内容や事業規模の条件は、今後の公募要項で確認する必要があります。
奨励金と補助金の違い
奨励金は、あらかじめ定められた対策を行えば、原則として一律の金額が支給されるのに対し、補助金は経費の実費に応じて支給される仕組みです。補助金は支給額が大きい分、事業計画や実施内容の妥当性、都との協議などが求められるため、より本格的な取り組みを目指す団体向けといえます。
申請スケジュールと注意点
団体向け支援も企業向け同様、申請期間が限定される可能性があるため、早めの準備がカギとなります。対象事業や必要書類、申請スケジュールの詳細は「TOKYOはたらくネット」にて順次公開予定です。内部体制の整備や関連企業との連携体制づくりも、申請の成功に向けた重要なポイントとなります。
▼参照元:
http://hataraku.metro.tokyo.lg.jp/kaizen/ryoritsu/kasuhara/index.html
参考までに・・・
「最新情報はどこを見ればいいの?」と疑問をお持ちの方へ
明確には言えませんが、おそらくTOKYOはたらくネットの分野別メニュー → 働く環境の改善 → 家庭と仕事の両立・ハラスメント防止対策 に掲載されるのではないかと予測しております。あわせて、トップページの「最新情報」の欄も、こまめにチェックしましょう。
最新情報が出次第、本記事にも反映していく予定です。

奨励金・補助金を活用したカスハラ対策の始め方
何から始めるべきか
まずは、自社や団体の現状把握から始めることが重要です。
- カスハラの発生状況
- 従業員へのヒアリング
- 過去の対応事例など
これらを洗い出すことで、どのような対策が必要か明確になります。そのうえで、東京都の指針や厚生労働省のマニュアルを参考に、適切な体制やマニュアルの整備方針を検討しましょう。
現場と経営層の連携方法
カスハラ対策を効果的に進めるには、現場任せでは不十分です。経営層が課題意識を持ち、対策の必要性を明確な方針として社内に周知することが重要です。
そのうえで、マニュアルの作成や研修の実施を現場と協力しながら推進することで、実効性の高い取り組みとなり、奨励金の支給対象にもなりやすくなります。
外部支援の活用例
外部の専門家やシステムベンダーの力を借りることも有効です。たとえば、以下のような支援が想定されます。
- カスハラ研修やマニュアル策定支援
- AIや通話録音装置などの導入支援
- 労務・メンタルヘルス領域の専門家によるコンサルティング
これらの支援は、奨励金や補助金の対象となる場合も多いため、費用面の負担を軽減しながら対策を強化できるでしょう。
カスハラ条例(補助金・奨励金)についてのまとめ
カスタマーハラスメントは、現場の従業員の安全と企業の健全な運営に直結する深刻な課題です。東京都はその解決に向け、2025年4月に「カスハラ防止条例」を施行し、すべての事業者に対して防止への努力を求めるとともに、実効性を高めるための奨励金・補助金制度を整備しました。
企業向けには40万円、団体向けには最大5,000万円の支援が用意されており、マニュアル作成や録音体制整備、専門家の活用など、具体的な取り組みが対象となります。
対策を進める第一歩として、まずは現状を見直し、必要な対策を整理すること。そして制度の活用によって、従業員を守りながら顧客との健全な関係を築いていくことが、これからの企業運営に不可欠です。
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