「自分で考えて行動できる」ことの重要性│社員の“否定をしない教育法”とは
2024/09/15
- 教育・育成
近年、企業界では自分で考え行動できる社員が少なくなり、多くの企業担当者がこの課題に直面しています。自ら考え行動できる社員は、組織にとって非常に価値のある存在です。しかし、なぜこのような問題が目立ってきているのでしょうか?
本記事では、自主性と主体性を持つ社員の重要性について探求し、企業担当者に向けて解決策を提供します。意外とやるべきことはシンプルな社員への接し方・教育方法について、筆者の経験談を交えてお届けします。
「自分で考えて行動する」とは
冒頭で、自ら考え行動できる社員は組織にとって非常に価値のある存在とお伝えしました。自ら考え行動できる状態とは具体的にどういうことなのでしょうか。 このテーマを開設する際に「主体性」と「自主性」ふたつの言葉をよく耳にします。似ているようで少し意味が違うこのふたつの言葉を理解した上で、本記事を読み進めていきましょう。
自主性と主体性の意味の違い
自主性とは
自主性とは、誰かに言われなくても「自分から進んで物事を行う」ことを指します。自分で判断し、意思決定し行動することを言います。しかし、必ずしもその結果に対して責任を負うとは限りません。自分から積極的に行動することが重点であり、その行動がもたらす結果に対する責任まで強調されるわけではありません。
主体性とは
主体性とは、「自主性」の意味に加えて、その結果に対して責任を持つことも含みます。自分の決定や選択がもたらす結果が良いものでも悪いものでも、それに対して自分が責任を持つことです。
例えば、あるプロジェクトを自分で考えて進める場合、そのプロジェクトの成功も失敗も自分の責任として受け入れるのが主体性です。
企業が求める社員の〇〇性とは?
自主性と主体性、どちらも兼ね揃えている人材が多くいる組織と、そうでない組織とでは組織の活力や生産性は雲梯の差が生じるでしょう。些細なことであっても自ら進んで行動することが出来たり、選択した行動や判断に対して責任感が持てたりすることは非常に重要なことです。
企業にとってのベストは、「自主性」「主体性」このふたつの素質を持ち合わせている社員が多くいることだと思います。自ら進んで行動する、自ら意思決定し行動した結果に対しても責任を持って、結果に向き合い次回アクションについて考え、また行動する。これが出来る社員は成長が止まることはないですし、個々が成長すれば会社に良い結果をもたらします。もちろん顧客にも競合他社に勝る価値提供がなされ、選ばれる組織になるでしょう。
しかし現実はどうでしょうか?「自分で考えられない人が増えた・・・。」と嘆く企業担当者の声を多く聞くようになった気がします。次章では自主性・主体性を持って行動できる人が少なくなった原因について考えてみたいと思います。
働く社員の現状│自分で考え行動できない人が増えている?
それでは、現代社会においていったいどれくらいの人が「自ら考えて行動」できているでしょうか。
定量的な数値で表すことが難しいものの、よくコンサル企業の方々からよくこういうお話を聞きます。「『自分で考えて行動できる社員が少なくなった』という話を聞いたり、主体性に欠ける社員が多く、この問題に直面する企業が増えていたりする所感だ」と。
筆者もコンタクトセンターの現場で勤務する管理者に直接現場の問題点を聞いてみると、「自分で考えて行動できない人が増えた印象」と回答があったこともありました。数年前に比べて、やはり自主性・主体性を持って行動ができる人は減っているように思えます。
では、なぜこのようなことが起きているのでしょか?考えられる原因を掘り下げて見ていきましょう。
インターネットの普及
現代社会においてインターネットの利用はごく普通で当たり前の光景になりました。 インターネットの利便性の向上により、困ったことがあればWEB上で何でも情報が手に入る時代です。知りたい情報や、ほしい答えがすぐにWEB検索などで解消できるため、そもそも脳を働かせる機会が減っているように思います。
組織の風土
その社員が働く環境に問題があるケースも考えられます。
組織のビジョンや目標が浸透していないケース
人間は、実現すべきビジョンがある場合、本来もつ本能で主体性を発揮することができます。しかし目指している方向性がわからないと、今任されている仕事が作業と化してしまい、本来持つ能力を発揮することができません。 組織や所属する部署の目指すべき方向性があやふやな状態だと、自身の仕事の意味を見いだせず、社員が主体性を発揮できなくなる場合があります。
「考える」ことを妨げる組織になっているケース
マネジメントの際、詳細な指示を与え過ぎたり、細かい部分までコントロールしようとしたりするスタイルは、社員の自主性や主体性を奪うことがあります。人間は本来、自分で考え行動ができる生き物であり、自己判断し行動したいという欲求を持ち合わせています。
自己判断や自己責任を奨励するより、厳格なルールや手順に従うことに重視させてしまうと、社員は自ら考えて行動する機会を失ってしまいます。このような組織風土だと、社員が本来持ち合わせている能力を発揮できずに活躍の場を失ってしまう恐れも。
組織や企業がこれらの要因に注意を払い、主体性と自主性を育む環境を意識して作り出すことが、健全な組織の発展には必要不可欠です。
自分で考えて行動できる人とそうでない人の特徴
次に、主体性を持って取り組むことができる人と、そうでない人の特徴を見ていきましょう。
できる人の特徴はあくまで特徴であり、すべてを持ち合わせている方はいないかもしれませんし、すべてを兼ねそろえなければいけないということでもありません。 しかし「そうでない人」の特徴が多く一致する社員がいる場合は要注意です。
できる人の特徴
ポジティブである
自ら考え行動できる人は常にポジティブ思考であり、たとえ精神的につらいことがあっても、それを周囲に悟られまいと明るく振る舞うことができます。ネガティブな心境や他者の愚痴などは口にださず、逆境に立ち向かう強さを兼ね備えています。
失敗を恐れないチャレンジ精神がある
自ら考え行動できる人は挑戦する勇気があり、右も左もわからない状況におかれても、理想に対しての現状とのギャップを洗い出し、施策を打ち出したり良い方向に向かえるようにしたりと、コントロールすることが出来ます。チャレンジした結果、たとえ失敗したとしても、失敗から学び成長を続けることができます。
広い視野を持てている
自ら考え行動できる人は視野が広くて視座が高いです。相手の気持ちに立って物事を考え取り組むことが出来たり、自組織や自社だけでなく、他社や市場にも目を向けられたりしています。細かいところにも気が付くことが出来るので、雑務も積極的に対応することが出来て、何か他にも自分にできることはないか?と考え行動ができます。
知的好奇心が旺盛
自ら考え行動できる人は、知的好奇心が旺盛で何事にも興味関心を持ち、疑問が解消されないままだとモヤモヤします。自ら学ぼうとする姿勢があるため、読書をしたりセミナーに参加したりして新しい情報を得る姿勢があります。人の話を聞いて学んだり、考え方や価値観を広げようとしたりする努力が出来ます。
思考を停止させていない
自ら考え行動できる人は、常に脳に汗をかかせています。例えば上司へ相談する際、「どうしたらいいですか?」ではなく、しっかり自分の答えを持ったうえで相談するなど、思考を停止させることなく常に考えています。いわれたことをこなすだけでなく、もっと別の観点で物事を考えて提案をしようと努力をします。
そうでない人の特徴
目的や目標がなく問題解決しようとする機会がない
自分で考え行動できない人は、プライベートや仕事においても目的・目標がないケースが多いです。目的や目標がないと、問題に対して積極的に取り組む動機が生まれません。目標を持たずに日々を過ごすと成長のチャンスを見逃し、主体性を発揮できなくなります。これは個人の問題でもありますが、組織の問題が原因の場合もあります。
仕事が作業と化している
先ほど述べた「目的がない」ことと関連する内容になりますが、目指すべき姿がないと、今行っている仕事が単なる作業と化してしまいます。淡々と作業をこなすだけでは、創造性や自分自身の改善の余地が見落とされてしまいます。この状態では単調なルーチンに捉われ、自ら考え行動する力が鈍化します。
指示待ちである
自分で行動ができない人は、誰かからの指示を待っているケースが多いです。指示を受けてからやっと手を動かし始めます。常に指示を待っている状態では、自主性をもって動く機会が減ってしまい自ら行動を起こすことが少なくなると、問題解決能力はもちろん、自立心が育ちにくくなります。
自ら動こうとしない
自ら考え行動できない人は、仕事に対して積極性がなく、誰かがやらなければいけない仕事(雑務)も見て見ぬフリをする人が多いように思います。例えば、社内のごみ箱のゴミがいっぱいになっていても「自分の仕事ではないから」「誰かがやってくれるだろう」と考え、対応をしません。この姿勢は協調性がなく、社内でのコミュニケーションにトラブルをもたらす場合も考えられるでしょう。
責任感に欠け言い訳や不満を口にすることが多い
自ら考え行動できない人は、責任感がなかったり、自分のミスに対して言い訳をしたりする人が一定数います。「誰かに言われてやったから自分の責任ではない」「知らなかったから」「時間がなかったから」など自分の行動に向き合わず、責任逃れをしようとする傾向があります。また、不満を口にすることが多かったりするので毛嫌いされることも。 言い訳や不満が多いと、問題を解決するどころか、様々なトラブルを引き起こす場合も考えられます。
今日から取り組める│カンタン!否定しない教育法とは
それでは、本記事の本題に参りましょう。企業が欲しがる「自ら考えて行動できる」社員はどのように育てればよいのか?新卒社員であろうが、勤続年数が経っている中堅・ベテラン社員であろうが、基本的にどの方にも通用するカンタンな教育方法をお伝えします。 特別なスキルや書籍などは必要ありません。筆者が子育てをしている中で分かった「人との接し方」という観点も含めて、解説を進めてまいります。
上司が背中をみせる
まずは何事においても上司が自ら進んで取り組む姿勢を見せましょう。挨拶や社内清掃といった、社会人として基本的なマナーに関することはもちろん、仕事においても上司が率先して取り組む姿勢を見せるのが効果的です。
例えば、
- 「顧客のために何が出来るか」を考え、提案書を作ったりクライアント先へ出向き提案をする
- 「組織が目指す姿」に対して現状とのギャップ(問題点)を洗い出し、適切な施策を考えて打ち出し、行動を起こす など
子供が親の背中を見て育つように、社員もまわりの先輩社員や上司の背中を見て学び育っていきます。この姿勢を大切にすることは、実は一番大事と言っても過言ではないかもしれません。
先日、5歳の娘の診察のため、病院に連れて行った時のこと。薬局で処方されたお薬を待っているときに、薬局担当者の不注意で、患者側の待合椅子側にカウンターから物がたくさん落ちてしまいました。
私がそれらを拾う手伝いをしていると、娘も待合椅子から立ち上がり、迷わず手伝いにきました。 後日、似たような状況に遭遇したときに、娘は積極的に行動を起こしていました。この時に「自分が今何をすべきか」ということを、親の背中を見て学んでくれているのだと感じました。
子育てと社員教育は似ています。「これをやりなさい」「あれをやりなさい」と命令されると、人は途端に聞く耳を持たなくなってしまいます。 「社員にこうなってほしい」と願うならば、些細なことでも自らそれを体現してみせるのです。
答えではなく方法を教えてあげる
自立した思考力を育てるためには、「答え」を与えるのではなく、「方法」を教えてあげましょう。方法を教えることで、社員は自ら情報を収集し、分析し、結論を導く力を身に付けます。このプロセスを通じて、彼らは問題解決能力を高め、未知の課題にも積極的に取り組むことができるようになります。
答えのない答えを考えるくせをつけさせる
常に一つの正解があるわけではない現実世界に対応するために、社員には答えのない問題に取り組む習慣を身につけさせることが大切です。このアプローチは、創造性と柔軟性を促し、多角的な視点から物事を考える能力を養うことができます。
答えがないものに対し、脳が汗をかくくらい考え行動することは、革新的なアイデアや解決策が生み出される可能性があることはもちろんのこと、考えることが当たり前になってくるので、社員の主体性を育むことが出来るようになります。
否定しないこと
どのような状況においても、否定的な言葉を使うのは避けましょう。
例えば社員が提案してきた内容に対して、修正すべき点があったりアドバイスが必要だったりする場合、「どうしてこういうアイデアになってしまったの?」「全然ダメ」「いいと思うけど・・・」「なんで出来ないの?」というような否定的な言葉でフィードバックされると、社員は自分の行動や作り上げたものすべてを否定されたように感じ、自信をなくしてしまいます。
社員が自信を持って意見やアイデアを発信したり、背伸びした領域にチャレンジできるようにしたりするためには、その意見を決して否定しない環境を作ることが不可欠です。
「よく頑張ったね」「いいアイデアだね」と肯定的なことばをかけてあげてから、建設的なフィードバックを行いましょう。さらにアイデアを深めるための質問を投げかけることで、社員はより一層「どうすれば良くなるか」を考えるようになります。このようなポジティブなコミュニケーションは、社員が自ら考え、行動する勇気を持つためのサポートとなります
社員のみならず、よい人間関係を作るためのテクニックとして「リフレーミング」というものがあります。リフレーミングは、物事や状況などのフレーム(枠組み)を変えることで、別の視点で物事を見ることができるという心理学のことばです。
例えば、仕事のプロジェクトに参加していて、タクス完了進捗が60%だったときに、「まだ6割しか終わっていない・・・」と思うか、「もう6割完成したので残りは4割だ!」と思うのかでは感じられ方が全く変わります。 要は、「否定的な言葉ではなく、肯定的な言葉がけを意識しましょう」ということです。
言い換えの例 |
|
△「早く提案書を作らないと、クライアントとの商談の日に間に合わなくなるよ。」 |
〇「何日までに提案資料を作り上げられたら、商談までに間に合うよ!」 |
△「なんでまだこのタスクが終わっていないの?」 |
〇「このタスクの期日が過ぎてしまった原因で何かあった?」 |
△「話すスピードが速すぎるよ。」 |
〇「もう少しゆっくり話してみるとお客様も安心して聞き取れるようになるから意識してみよう。」 |
△「後処理時間(ACW)が長すぎるよ。」 |
〇「後処理時間(ACW)を短くするためにどうすればいいか考えてみよう。」 |
リフレーミングについての参考記事
話を聞くこと
社員の話をちゃんと聞いてあげましょう。
例えば社員がミスをした場合、「なんでこんなことになったの?」「なんでこんなことも分からないの?」と咎めてしまうと、社員は自信をなくしてしまいます。そのような上司からの説教が続いてしまうと、仕事に対するモチベーションが下がってしまったり、「もういいや!」と開き直ってしまったりすることも考えられます。
ミスをした社員に対しては、「何があったのか」「どういう背景があってどのような考えがあって社員がそのように対応したのか」しっかり話を聞いてあげるようにしましょう。 そして「自分(上司)に何か出来ることやサポートできることはあったか?」「次回から同じことを繰り返さないようにするためにはどうしていこうか?」など、社員に寄り添う姿勢を持つことで、社員との信頼関係構築につながります。さらに、「同じミスを繰り返して、周りに迷惑をかけないように・・・」と、社員自身が自ら考え、リスク回避するよう行動できるようになっていくでしょう。
最終責任は上司が持ちつつ、社員を信じて任せること
人間は失敗を恐れる生き物です。誰も失敗したいと思うことはないでしょう。
しかし、ビジネスにおいてうまくいかないことが起きたり、失敗したりすることはつきものです。社員が失敗を恐れず主体性も持って仕事ができるようにするためには、上司が最終的な責任を持ってあげること、そしてそれをしっかりと社員に伝えてあげることです。
そうすることで、社員は失敗を恐れずに新しいアイデアやアプローチを試すことができます。この信頼関係は非常に重要で、より大きな責任を任せたい・期待しているよというメッセージを込めることで、社員の自主性と主体性を促すことが出来ますし、彼らが成長することで企業全体の活気にも繋がります。 社員が自信を持って行動できる環境を作ることは、組織全体のイノベーションと生産性向上にも寄与するはずです。
まとめ
自分で考え行動する社員は、組織にとって非常に貴重な存在であり、彼らの存在は競争力を高め、企業の成功につながります。企業担当者は主体性と自主性を持つ社員を育てるための努力を惜しむことなく行うべきです。
社員に対しての接し方を見直してみたり、自分自身の行動を見直してみたりすることで、社員の働くことに対しての姿勢や、考え方は徐々に変わることでしょう。自主性・主体性をもって取り組める社員がいると、周りにもどんどん良い影響を与えます。 本記事を通して一つでも参考になるものがあれば幸いです。
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