【海外成功事例から学ぶ】注目される次世代アウトソーシング「BPaaS」の最前線

2024/09/25

近年、日本でもBPaaSが注目を集めています。しかし、日本ではまだ普及し始めたばかりで、具体的な事例も少ないのが現状です。一方、BPaaSの概念が誕生した米国では、2009年ごろから急速に発展し、今ではメジャーなビジネスモデルとして定着しています。

本記事では、日本に先行する海外の成功事例を通じて、次世代アウトソーシングであるBPaaSについて学び、その可能性を探ります。

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BPaaSとは

BPaaS(Business Process as a Service)は、クラウドを活用したアウトソーシングサービスの一種です。業務効率化とコスト削減を実現できるため、次世代のアウトソーシングモデルとして注目を集めています。

BPaaSの概要

BPaaSは、バックオフィス業務などを対象に、業務プロセスをアウトソーシングし、そこにクラウドシステムを利用することで、業務効率化を実現するサービスです。主に人事、財務、カスタマーサポート、給与計算などのノンコア業務が対象となります。

BPaaSの最大の特徴は、単なるアウトソーシングサービスではなく、クラウド上でシステムまで提供する点にあります。企業はシステム導入や運用にかかるコストを削減しつつ、最新のテクノロジーを活用した高度な業務効率化を実現できます。

BPaaSについてはこちらの記事でも詳細を解説しています。

BPaaSが拡大している背景

BPaaSの市場は急速に拡大しています。SDKIの調査レポートによると、BPaaSの世界市場規模は2017年の402億米ドル(約6.0兆円)から、2022年には687.6億米ドル(約10.3兆円)へと成長しています。現在、最大の市場は北米地域ですが、アジア太平洋地域が最も高い成長率を示しており、日本でも近年注目が集まっています。

この背景には、深刻化する人材不足の中で、企業のデジタル化が加速し、業務プロセスのクラウド化による効率化・自動化を図る動きが活発化していることがあります。また、クラウドコンピューティング市場全体の成熟に伴い、SaaS、PaaSに続く新たなサービス形態としてBPaaSが浸透しつつあることも拡大の要因です。SaaSベンダーが新たな成長戦略としてBPaaSの拡充に注力していることも、市場拡大を後押ししています。

BPaaSがもたらすビジネスインパクト

BPaaSの普及は、日本企業に大きなビジネスインパクトをもたらすと期待されています。BPaaSを導入することで、業務プロセスのクラウド化・自動化が進み、効率性と柔軟性が向上することで、日本企業の生産性向上とデジタルトランスフォーメーションが加速することが予想されています。

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特に、人材不足に悩む日本企業にとって、BPaaSは業務効率化の切り札となり得ます。BPaaSを活用することで、限られた人員でも高い生産性を維持し、競争力を強化することができます。

また、BPaaSは日本企業の働き方改革や業務プロセスの見直しにも貢献すると考えられます。クラウドベースのサービスにより、場所や時間に縛られない柔軟な働き方が実現し、業務の効率化と従業員の満足度向上につながることが期待されています。

BPaaSの主なメリット

BPaaSには、大きく分けて3つの主要なメリットがあります。

1.コスト削減と効率化

BPaaSは、SaaSを駆使することで、少ないリソースで高いパフォーマンスを実現します。また、業務プロセス全体を外部委託することで、内部リソースをコア業務に集中させることができ、コスト削減と効率化を同時に達成できます。

2.運用の柔軟性とスケーラビリティ

BPaaSでは、人的リソースへの依存度が低いため、柔軟かつスケーラブルな運用が可能です。ITシステムを活用することで、ビジネス環境の変化に迅速に対応できます。

3.データ・ノウハウの蓄積

BPaaSを利用することで、クラウドを経由してデータやナレッジを蓄積することができます。蓄積されたデータを分析・活用することで、業務改善や新たなビジネス機会の創出につなげられます。さらに、アウトソーシングによるコスト削減とデータ活用を同時に実現できるのも大きな利点です。

海外での成功事例5選

ここからは、すでにBPaaSの導入が進んでいる海外において、BPaaSを推進するリーディングカンパニーを紹介します。これらの企業の事例から、実践的な活用方法と効果を学びましょう。

アクセンチュア

アクセンチュアは、グローバルなプロフェッショナル・サービスを提供するアイルランド系アメリカ企業で、日本でもデジタルに強いコンサルティングファームとしてよく知られています。40を超える業界にわたる経験と専門スキルを活かし、クライアントが複雑な課題を克服し、新たなビジネスチャンスを活用できるよう支援しています。

アクセンチュアはBPaaSを提供するベンダーでもありますが、自らの社内プロセスの変革にも力を入れています。その一つが、セロニス社のプロセスマイニング技術を活用して、購買から支払いまでのプロセスを最適化した事例です。

セロニスの技術により、プロセスの透明性と効率性が向上し、依頼から注文までのサイクルタイムが50%短縮、請求書承認時間が30%減少、年間3500万ドルの運転資本の改善が実現しました。この事例は、アクセンチュアがBPaaSを活用してビジネスプロセスを効率化し、サプライヤーとの関係強化や調達機能内での革新を推進した好例といえます。

事例の詳細:celonis usercase

TCS(タタ・コンサルタンシー・サービシズ)

TCSは、ITサービス、コンサルティング、ビジネスソリューションのグローバル企業ですが、BPaaS分野でも世界的にみて、進んだ事例を持つ会社です。TCSのBPaaSは、財務・会計BPaaS、ライフサイエンス、ヘルスケア、製造、テレコムなどの業界特化型ソリューション、人事やカスタマーサービスなどの重要な機能をカバーする水平型BPaaSなど、複数のビジネスセグメントにわたって展開しています。

TCSでは、米国のフォーチュン500企業の会計業務にてBPaaSソリューションを提供しています。この企業では、支払い業務が非効率的で生産性が低下していました。TCSは、BPaaSモデルを採用し、請求書スキャン、OCR、ルールベースの三者照合エンジン、インテリジェントワークフロー、分析など複数のシステムを組み合わせて、グローバルに分散した支払いプロセスを改革しました。その結果、年間350万以上の請求書を処理し、総コストで4000万ドルの削減を実現しています。

事例の詳細:TCS WHITE PAPER

IBM

日本ではWatsonで有名なIBMですが、グローバルではITコンサルティングのリーダー的な企業です。IBMは、ビジネスプロセスを合理化し、業務効率を高め、顧客体験を向上させる包括的なBPaaSソリューションを提供しています。AI、自動化、アナリティクスなどの先進技術を活用したIBMのBPaaSは、財務・会計、人事、調達、カスタマーサービスなど、幅広いビジネス機能をカバーしています。

IBMのBPaaSソリューションの実績は、Woodside Energy社の事例に見ることができます。新型コロナウイルスのパンデミックや石油価格の不安定性の影響を受け、同社はコスト削減と効率向上のためのデジタルトランスフォーメーションを推進していました。IBM Garageの支援を受け、AIや自動化技術を活用して業務プロセスを最適化しています。

その結果、Woodside Energy社は年間1.1億豪ドルの営業経費削減が見込まれ、新入社員のオンボーディング期間が短縮されました。また、従業員の生産性とビジネス価値の向上が達成されました。この事例は、IBMのBPaaSソリューションが、企業のデジタルトランスフォーメーションを加速し、コスト削減と業務効率化に貢献することを示しています。

事例の詳細:IBM お客様事例

Wipro(ウィプロ)

Wiproは、インドの多国籍企業で、情報技術(IT)、コンサルティング、ビジネスプロセスサービスを提供する大手企業です。SDKIのレポートではWiproをBPaaSの主要ベンダーとして紹介しています。

Wiproの BPaaSソリューションの実績は、世界最大の鉄鋼メーカーの請求プロセス改善プロジェクトに見ることができます。このクライアントは、グローバルで標準化されていない手動のプロセスを多く抱え、ベンダーの問い合わせの多さなど、多くのビジネス課題を抱えていました。

Wiproは、RPA・OCRの導入、指標管理のためのダッシュボードの導入、シェアードサービスセンターの再設計、プロセス再設計による在庫バックログ、ベンダーの問い合わせ削減など複数の手段を用いて、BPaaSソリューションを提供。

その結果、重複支払いの識別により1240万ドルの削減、請求プロセスの98%自動化、在庫バックログの82%削減、クライアントに対する40%の生産性向上、プロセス標準化の60%達成、顧客満足度の36%向上を実現しました。Wiproのような多方面のテクノロジーが活用できるベンダーが提供するBPaaSは、SaaSのような単体製品では難しい複数の業務を一気に解決することができます。

事例の詳細:wipro Finance & Accounting Outsourcing Services

Cognizant(コグニザント)

米国を拠点とするCognizantは、BPaaS市場における著名なプレーヤーです。財務、人事、調達、顧客サービスなど、幅広いビジネスプロセスを網羅するBPaaSソリューションを提供しています。顧客への価値提供に重点を置き、テーラーメイドのBPaaSソリューションを提供できるのが特徴です。

CognizantのBPaaSソリューションの実績は、米国中西部のヘルスケア企業との協業事例に見ることができます。このクライアントは、30,000以上のメンバーにサービスを提供していましたが、古いプラットフォームの使用により、手動での請求処理やカスタムコードの作成が必要となり、エラーの増加やコストの上昇を招いていました。

Cognizantは、クライアントと共同でBPaaSモデルを進化させ、段階的に最新バージョンに移行し、請求処理の自動化を推進しました。また、プロバイダー契約を整理し、複雑な請求の自動化と処理精度を向上させました。

その結果、自動精算率が95.6%向上、最初の通過解決率が88%向上、請求処理の精度が改善されました。さらに、将来のビジネスおよび技術ニーズに対応するための柔軟な運用を可能にしています。このように、BPaaSはただコスト削減に繋がるだけではなく、将来的なビジネス拡張を見据えた柔軟性の獲得にも寄与することがわかります。

事例の詳細:Cognizant case studies

まとめ

本稿では、次世代のアウトソーシングモデルとして注目を集めるBPaaSについて、その概要、背景、もたらされるビジネスインパクト、メリットを詳しく解説しました。また、海外のBPaaSベンダー5社の事例を取り上げ、それぞれどのような変革が起きているかの概要を紹介しました。

日本企業にとって、BPaaSは人材不足や業務効率化の課題を解決する有力な手段となり得ます。海外の成功事例を参考に、自社のニーズに合ったBPaaSソリューションを導入し、競争力強化とビジネスの成長を実現していくことが期待されます。BPaaSは、日本企業が新たな時代に適応し、グローバル市場で躍進するための鍵となるでしょう。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 平井 美穂

    2012年、株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)へ入社し、コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属。フィールドサポータや営業コーディネータ、キャリアアドバイザー、新規営業、人材紹介(転職支援)などを経験。
    2020年 人材紹介にて自己最高売上を記録、時短勤務×妊娠中での実績が評価され全社月間MVPにノミネート。現在5歳と2歳を育てるパワフルワーママ!

    ・趣味:断捨離、森林浴、岩盤浴
    ・特技:細かい事に気が付く点

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