リファラル採用の報酬(インセンティブ)相場|設計のポイントと違法リスクの回避策
2025/01/21
- 人材採用
- 定着率向上
- 離職率改善
近年、リファラル採用は採用コスト削減や即戦力確保といった理由から、多くの企業が注目する採用戦略の一つとして定着しつつあります。このリファラル採用を成功させる鍵となるのが、社員の紹介活動を促進する「報酬(インセンティブ)」の仕組みです。
しかし、報酬制度の設計を誤ると、ミスマッチな人材の採用や法的リスクを招く可能性があります。そのため、適切な報酬金額や支給条件を設定し、職業安定法や労働基準法を遵守した運用が求められます。
本記事では、リファラル採用における報酬制度の相場や設計のポイント、さらに違法とみなされないための注意点について解説します。
リファラル採用とは?報酬制度の概要
リファラル採用の定義と仕組み
リファラル採用とは、社員が友人や知人を企業に紹介し、その紹介を基に採用を進める手法です。この仕組みでは、紹介者である社員が企業文化や業務内容を候補者へ説明するため、候補者とのミスマッチが少なく、採用後の定着率が高いとされています。
近年では、労働力不足や採用コスト削減が求められる中、多くの企業がリファラル採用を導入しています。
▼リファラル採用についてより詳しく知りたい方はこちら
「リファラル採用の効果的な運用方法とは?成功の秘訣を徹底解説」
報酬(インセンティブ)の重要性
リファラル採用を効果的に運用するためには、社員が積極的に紹介活動を行う動機付けが重要です。
そこで多くの企業が導入しているのが、紹介者に対する報酬(インセンティブ)の支給です。報酬制度は、紹介活動を活性化し、企業全体での協力体制を強化する役割を果たします。
ただし、報酬の設定を誤るとトラブルの原因となる可能性があります。また、法令遵守や公平性を保つことが、報酬制度の成功には欠かせません。
適切に設計された報酬制度は、社員のモチベーションを高め、優秀な人材の確保が期待できるでしょう。
リファラル採用の報酬制度|相場と設計のポイント
一般的な報酬相場
リファラル採用の報酬(インセンティブ)は、一般的に30万円未満のケースが多く見られます。特に、10万円未満のケースが最も多く、中には報酬を設定していない企業もあります。
報酬額は通常、採用難易度やポジションの重要性に基づいて決定されます。例えば、専門知識が必要なポジションや管理職では、より高い報酬が設定されることが多いでしょう。
ここで重要なのは、報酬はあくまでリファラル採用の動機付けの一つとして活用するということです。報酬を設定していなくてもリファラル採用を成功させている企業も多く存在します。
報酬にだけとらわれず、現社員がリファラル採用を積極的に進めたくなるような環境づくりを心がけることが重要です。
報酬の支払い条件やタイミング
報酬の支払いタイミングや条件は企業によって異なりますが、主に以下の2パターンが一般的です。
- 採用が確定し、入社した時点で報酬を支払うケース:短期間で結果が見えるため、社員の動機付けに効果的です。
- 試用期間が終了し、正式に採用された時点で支給するケース:早期退職のリスクを軽減できます。
「応募数増加」を課題としている場合は入社時の支払い、「定着率改善」を課題としている場合は試用期間終了後に支払いなど、現状の課題に合わせて支払いタイミングや条件を設けるようにしましょう。
リファラル採用の報酬設計|成功させる4つのポイント
リファラル採用の報酬設計を成功させるためには、以下4つのポイントが重要です。特に、初めて報酬制度を導入する企業にとってはどれも欠かせない要素ですので、必ず把握しておきましょう。
社内公平性を保つ仕組みを整える
報酬制度を導入する際、社員間の公平性を保つことが最も重要です。不透明な条件や特定の部署・社員だけが恩恵を受けるような仕組みでは、社内の不満や摩擦を引き起こしかねません。
具体的には、一律の基準を設けることで、職種や部署にかかわらず、全社員が平等に参加できる条件を設定します。また、報酬額や支払い条件、リファラル採用を行う背景を全社員に説明し、社内告知を徹底することで、不安や疑念を排除しましょう。
過度な高額の報酬設定を避ける
高額な報酬は「報酬目当て」の紹介が増えてミスマッチを招くリスクがあります。
特に、紹介対象者のスキルや企業文化への適合性が重視されない場合、早期退職や社内トラブルの原因になることがあります。そのため、適切な額の設定が重要です。
一般的な相場(1万円~30万円)を参考にし、必要に応じてポジションや業務内容ごとに細分化します。また、試用期間終了後に報酬の一部を支払うなど、段階的な支払い方法を取り入れ、離職リスクを軽減しましょう。
報酬制度を定期的に見直す
採用ニーズや市場状況は変化するため、報酬制度を継続的に改善することが大切です。
まず、定期的に採用状況を確認し、必要な人材が集まらない場合は報酬額や条件の変更を検討しましょう。
また、実際に制度を利用した社員からの意見をフィードバックとして集め、その意見をもとに運用の改善に反映させます。
これにより、報酬制度は常に最新の状況に適応し、効果的に機能することが期待できます。
従業員満足度・従業員エンゲージメント向上に努める
報酬だけではリファラル採用の成功にはつながりません。社員が自信を持って「知人に紹介したい職場」と感じられるよう、報酬設計と共に職場環境の整備にも努めましょう。
従業員満足度(ES)や従業員エンゲージメントを向上させることで、社員が職場に対して誇りを持ち、積極的にリファラル採用に貢献することが期待できます。これにより、優秀な人材の確保が実現し、企業全体の成長にもつながるでしょう。
▼従業員満足度(ES)に関する記事はこちら
「コールセンターにおける従業員満足度(ES)向上のメリット・施策を解説」
リファラル採用の報酬が違法とみなされないための注意点
リファラル採用を成功させるには、法的な規制を遵守した適切な運用が欠かせません。特に、報酬制度を導入する際には、職業安定法や労働基準法を正しく理解し、それに基づいて設計する必要があります。本章では、違法性を回避するための重要なポイントを解説します。
職業安定法・労働基準法の規定
職業安定法は、公正な職業紹介や斡旋を行うための規定を設け、労働基準法は、労働者の権利を守るために基本的なルールを定めた法律です。
職業安定法第30条(有料職業紹介事業の許可)
有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
職業安定法第40条(報酬の供与の禁止)
労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。
労働基準法第15条(労働条件の明示)
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
これらの法律により、人材紹介事業の許可を受けていない個人や企業が職業紹介を行い、金銭を得る行為は禁止されています。そのため、候補者を紹介した社員に対して、紹介報酬としてインセンティブを支給することは、職業紹介業務とみなされる可能性があります。
対策として、「リファラル採用は業務の一部である」とし、これを就業規則や賃金規定に明記します。また、インセンティブを支払う場合は、必ず賃金・給与として支給しましょう。
被紹介者へ「就職お祝い金」の禁止
令和3年(2021年)4月1日より、職業安定法に基づく指針〔第6の9関係〕が一部改正され、「就職お祝い金」などの名目で求職者に対して金銭のやり取りを伴う求職の申し込み推奨が禁止されました。
これは、リファラル採用にも該当するため、候補者に「就職お祝い金」を提供するような施策やお声がけは行わないようにしましょう。
【参照:厚生労働省/就職お祝い金」などの名目で求職者に金銭等を提供して求職の申し込みの勧奨を行うことを禁止しました【周知用リーフレット】(PDF)】
まとめ
リファラル採用の報酬(インセンティブ)は、採用活動の成功を左右する重要な要素です。一方で、法的リスクや公平性、過度な報酬設定によるトラブルには注意が必要です。
職業安定法や労働基準法を遵守し、報酬制度を就業規則に明記すること、そして透明性を保ちながら運用することが求められます。また、報酬設定は過度に高額にせず、社員のモチベーションを適切に引き出すバランスが鍵となります。
ぜひ、本記事を参考にしてリファラル採用の報酬制度を効果的に導入してください。採用活動の成果を最大化し、優秀な人材の確保を実現していきましょう。
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Writer編集者情報
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コネナビ編集部 上原 美由紀
採用業務支援・求人広告事業会社を経て2019年9月に株式会社ウィルオブ・ワークに入社。
コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属、キャリアアドバイザー職を経験。
産育休を経て現在子育てにも奮闘中!
・趣味:音楽 ゲーム ディズニー お酒
・特技:タスク管理