SLAとは?│SLOとの違いやコールセンターでの設計項目を解説
2025/04/03
- 品質向上
- 生産性向上
- 顧客満足度向上

提供するサービスの品質を維持し、顧客満足度を向上させるためには、明確な基準を定めたルールが必要です。
特にコールセンターでは、サービスの品質や応対品質、生産性などの指標を明確に設定し、一定の品質を維持することが求められます。その役割を果たすのがSLA(Service Level Agreement) です。
SLAを導入すれば、目標が数値で明確になり、責任範囲も明確化されるため、運営がよりスムーズになり、サービスの質も向上できるでしょう。
しかし、「どのような項目を設定すれば良いのか」「SLAにはどのようなメリットがあるのか」 と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、SLAの基本概念やそのメリット、コールセンターにおける設計項目、設定時の注意点について詳しく解説します。
適切なSLAを設定し、コールセンターのパフォーマンス向上と顧客満足度の最大化を目指しましょう。
SLAとは?コールセンターにおける定義とその重要性
SLA(Service Level Agreement)とは、サービス提供者と利用者の間で取り交わされる、サービスの品質や範囲に関する合意書です。主に 「どの程度の品質でサービスを提供するのか」 を明確にし、サービスの安定性や信頼性を確保するために設定されます。
コールセンターでは、応答率、平均応答時間、一次解決率などの重要な指標を定め、一定の水準を維持するための基準としてSLAが活用されます。これにより、オペレーターの業務が属人的にならず、適正な運営が可能になるのです。
また、SLAによってサービスの質を数値化できるため、利用者側もパフォーマンスを客観的に評価しやすくなります。
SLA・SLO・SLIの違い
SLAに関連する概念として、SLO(Service Level Objective) と SLI(Service Level Indicator) があります。これらを正しく理解することで、SLAの適切な運用が可能になります。

つまり、SLI(指標)をもとにサービスのパフォーマンスを測定し、SLO(目標)を達成することで、結果的にSLA(合意)の基準を満たすことができる、という関係が成立しているのです。
SLAがもたらす4つのメリット
SLAを導入することで、サービスレベルを明確にし、利用者との信頼関係を築くことが可能になります。 本章では、SLAがもたらす主な4つのメリットについて解説します。

サービス範囲を明確化し、トラブルを防ぐ
SLAを設定することで、「どこまでがサービスの範囲で、保証範囲なのか」を明確にすることができます。
責任範囲が曖昧なままだと、利用者の期待と実際の提供範囲がずれ、不満やトラブルにつながる可能性があります。SLAを通じて双方の認識を統一することで、スムーズな運営が可能になります。
サービスレベルを数値化し、継続的な改善ができる
SLAには、サービスレベルを数値化し、客観的に評価する基準が含まれています。
数値目標を設定することで、自社の現状を分析しやすくなり、強みや問題点の把握、改善につなげることができます。 その結果、応対品質や顧客ロイヤルティの向上にもつながるでしょう。
透明性の高い運営で、利用者との信頼を深める
SLAは、サービス提供者と利用者の間で信頼を築くための重要な要素です。
明確な基準を設け、遵守することで「この企業は約束を守る」と認識され、顧客満足度が向上します。また、定期的にSLAの達成状況を公開し、透明性のある運営を行うことで、利用者との関係をより強固にすることができます。
高品質な対応を保証し、競合と差別化できる
明確なSLAを提示することで、競合他社との差別化を図ることができます。 SLAに記載された数値が高いほど競争力を示すため、これを活用することで利用者に選ばれる理由を明確にし、ブランド価値を高めることができるでしょう。
コールセンターで活用できるSLAの設計項目
SLAを適切に設計することで、コールセンターの運営基準が明確になり、業務の標準化や品質向上につながります。
本章では、コールセンターで活用できる主なSLA設計項目を紹介します。
サービス品質の指標
サービス品質を評価するための代表的な指標として「応答率」「SL(Service Level)」があります。
これらの指標を適切に設定することで、顧客満足度向上が期待できます。
応答率 | 入電数に対して実際に応答できたコールの割合 例:「応答率85%」と設定 →顧客からの入電85%に応答することを保証する |
SL(Service Level) | 指定された時間内に応答できたコールの割合 例:着信から20秒以内の応答率80%以上を目標とする |
応対品質の指標
コールセンターでは、単に「電話を取ること」だけでなく、顧客対応の質を維持することも重要です。
応対品質の指標としては、「一次解決率」「モニタリングスコア」「ミス率」が用いられます。
一次解決率 | 最初の入電で転送やコールバックをせずに問題を解決できた割合 |
モニタリングスコア | スーパーバイザーがオペレーターのモニタリングを行い、品質を評価するスコア |
ミス率 | オペレーターが誤った案内をしてしまうなど、オペレーションのミスが発生した割合 |
生産性の指標
コールセンター運営では、オペレーターの生産性を適切に管理することが求められます。
生産性の指標として、「CPH(Call Per Hour)」「AHT(Average Handling Time)」「ATT(Average Talk Time)」「ACW(After Call Work)」「稼働率」が用いられます。
処理時間の短縮を優先しすぎると、応対品質が低下する可能性があるため、バランスを取ることが重要です。
CPH (Call Per Hour) |
1時間あたりの対応件数 |
AHT (Average Handling Time) |
通話時間+後処理時間を含めた1件あたりの平均対応時間 |
ATT (Average Talk Time) |
オペレーターが1件のコールで実際に話している時間の平均値 |
ACW (After Call Work) |
1コールあたりの後処理(記録入力など)にかかる平均時間 |
稼働率 | オペレーターの稼働時間(通話+後処理)を全体の勤務時間で割った割合 |
▼CPH・ATT・AHTに関する記事はこちら
「【徹底解説】CPH・ATT・AHTとは?|コールセンターの生産性指標と改善方法」
コストの指標
SLAの設計では、費用対効果を考慮することも重要です。コストの指標には「CPC(Cost Per Call)」が用いられます。
CPC (Cost Per Call) |
1コールの応対にかかるコスト オペレーターの人件費や通信費など、コールセンターの運営にかかる全体のコストから算出 |
補償金額
SLAには、明記されたサービス品質レベルを達成できなかった場合に、サービス提供者が約束する補償内容を明確に記載するようにしましょう。
補償金額については、利用者との条件や状況により異なりますが、一般的にサービス利用料の一定割合または全額を上限として設定されます。
SLAを設定するポイント
SLAを適切に設定することで、コールセンターの業務が明確化され、運営の安定化につながります。しかし、SLAの設計を誤ると、現場の負担が増えたり、実現不可能な目標となったりするリスクがあります。
本章では、SLAを設定する際に押さえておくべきポイントと注意点を解説します。
数値化できる指標を設定する
SLAを効果的に運用するためには、「曖昧な表現を避け、具体的な数値で目標を設定すること」が重要です。
数値化できない指標は曖昧になり、トラブルを引き起こすリスクがあります。 例えば、「迅速な対応を行う」といった指標ではなく、「着信から20秒以内の応答率80%以上」といった具体的なKPIを設定するようにしましょう。明確な数値の設定は、オペレーターが目指すべき目標を明らかにし、業務の効率を向上させます。
適正な目標を設定する
高すぎる目標設定はオペレーターの負担を増やし、モチベーション低下を招く可能性があります。
たとえば、「応答率95%以上、平均待ち時間5秒以内」といった目標は、現実的に達成困難な場合が多いため、自社の実績に基づいた、実現可能な数値を設定することが必要です。
無理なKPI設定はオペレーターへの過度なプレッシャーとなり、結果的に離職率の上昇につながる可能性もあるため注意しましょう。
例外事由を設定する
火災や事故、自然災害などの不測の事態が発生した場合、SLAの達成が難しくなることがあります。そのため、災害時は保証の対象外とする「例外事由」を事前に設定しておくことが重要です。
例外事由を明確に定めることで、不測のトラブルの影響を軽減し、円滑な運営を維持することが可能になります。
まとめ|SLAを適切に設定し、コールセンター運営を改善しよう
SLA(サービスレベルアグリーメント)は、コールセンターの運営ルールを明確にし、業務をスムーズに進めるための大切な仕組みです。
SLAを導入することで、サービスの範囲がはっきりし、トラブルを未然に防ぐことができます。
また、運営の透明性が高まり、顧客との信頼関係を築くことにもつながります。「この企業は約束を守る」という安心感が生まれ、結果的にブランド価値の向上や競合との差別化にも役立つでしょう。
ただし、SLAは一度決めたら終わりではなく、運用しながら継続的に見直していくことが重要です。数値で管理できる指標を設定し、無理のない目標を決め、現場の状況に合わせて調整していきましょう。 SLAをうまく活用すれば、コールセンターの運営がスムーズになり、顧客満足度の向上にもつながります。 自社に合ったSLAを設計し、より良いサービスを提供してください。
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Writer編集者情報
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コネナビ編集部 上原 美由紀
従業員1万人以上の企業の5社に1社が導入している採用支援・求人広告会社にて、アルバイト・パート採用や中途採用を中心に、約3年間にわたり企業の採用支援に従事。
2019年9月より株式会社ウィルオブ・ワークに入社し、コールセンター・オフィスワークに特化した人材サービスの事業部でキャリアアドバイザーを担当。現場で培った知見をもとに、コンタクトセンター領域はもちろん、採用・人材分野に関する実践的かつリアルな情報発信を心がけている。
現在は子育てと仕事を両立しながら、日々奮闘中!
趣味:音楽、ゲーム、ディズニー、お酒
特技:タスク管理