【事例あり】従業員エンゲージメントとは?高める7つの施策と成功のヒント
2025/04/18
- 品質向上
- 定着率向上
- 従業員満足度向上
- 離職率改善

近年、多くの企業が「従業員エンゲージメント」に注目しています。
従業員が仕事や職場に対してどれだけ愛着や意欲を持っているか──それが、企業の成長や生産性に大きく影響することが明らかになってきたからです。
本記事では、従業員エンゲージメントの基本的な概念から、重要視される背景、構成要素や測定方法、具体的な向上施策までを網羅的に解説します。
自社の組織力を強化したい、離職率を下げたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
従業員エンゲージメントとは?
「エンゲージメント(Engagement)」は本来、「契約」や「約束」といった意味を持つ言葉ですが、ビジネスシーンにおける従業員エンゲージメントとは、従業員が自分の仕事や職場、そして企業そのものに対して持つ「感情的なつながり」や「主体的な関与」を指します。
これは、日々の業務に対するやりがいや達成感、企業への信頼や帰属意識と深く結びついています。
エンゲージメントが高い従業員は、単に与えられたタスクをこなすのではなく、「この会社の一員として貢献したい」「成果を出して組織の成功に寄与したい」という前向きな意欲を持ち、自ら積極的に行動するのが特徴です。
こうしたエンゲージメントの高さは、企業の生産性や業績、離職率などに直接的な影響を与えることから、近年、多くの企業が注目する重要な指標となっています。
従業員満足度(ES)・モチベーションとの違い
従業員エンゲージメントと混同されやすい概念として、「従業員満足度」や「モチベーション」があります。
それぞれの違いを理解することで、エンゲージメントがどのように企業に貢献するかがより明確になります。
従業員エンゲージメント | 従業員が企業の目標や価値観に共感し、自発的に貢献しようとする意欲を測る指標 |
従業員満足度(ES) | 業務内容・職場環境・上司・待遇などに対する「満足度」を測る指標 |
モチベーション | 個人のやる気や意欲の高さを示す状態であり、主に感情面を反映する |
従業員満足度は、企業側が提供する環境に対して「どれだけ満足しているか」を測るのに対し、
モチベーションは個々人の内面的な感情やテンションのようなもので、変動しやすいのが特徴です。
一方で、従業員エンゲージメントは「企業への共感」や「自発的な貢献意欲」といった、より深い結びつきを表しています。
単なる満足や一時的なやる気ではなく、企業と従業員との間に築かれる、長期的で持続性のある関係性こそが、エンゲージメントの本質です。
▼従業員満足度(ES)に関する記事はこちら
「コールセンターにおける従業員満足度(ES)向上のメリット・施策を解説」
従業員エンゲージメントが注目される背景
前述の通り、従業員エンゲージメントとは、従業員が企業のビジョンや価値観に共感し、「自分もこの組織に貢献したい」と感じている状態を指します。
このエンゲージメントの高さは、企業の成長や組織の安定運営において極めて重要な要素となっており、近年あらためて注目されています。
近年では、エンゲージメントが企業のパフォーマンスや離職率、職場の雰囲気にまで影響を与えることが国内外の調査で明らかになっており、
従業員一人ひとりが前向きに働ける環境づくりが企業の競争力にも直結すると考えられています。
しかし、日本では「自分の仕事に意味を見出せない」と感じる従業員が多く、国際的にもエンゲージメントスコアは低水準であると報告されています。
こうした背景から、従業員エンゲージメントの向上は、今後の組織づくりにおける重要課題とされています。
従業員エンゲージメントを構成する3つの要素
従業員エンゲージメントを高めるためには、単に「やる気がある」だけでは不十分です。
組織との結びつきを深め、主体的に行動する状態には、3つの要素が関係しています。

理解度|企業のビジョンを共有する
従業員が企業の目標やビジョンを正しく理解していることは、エンゲージメント向上の土台となります。
自分の業務が会社全体の目標にどう貢献しているかが見えていないと、やりがいや責任感を持つのは難しくなります。
この「理解度」を高めるには、経営方針や事業目標の定期的な共有が効果的です。
部署ごとに目標と企業ビジョンの関連性を示したり、日々の業務と会社の成果とのつながりを可視化することで、従業員の納得感と主体性が育まれます。
帰属意識|企業理念に対する信頼感
帰属意識とは、「この会社の一員である」という実感や、企業理念への共感から生まれる信頼の気持ちです。
この意識が高まると、従業員は企業の成功を「自分ごと」としてとらえ、前向きに行動するようになります。
帰属意識を育むためには、従業員との丁寧な対話が欠かせません。
1on1ミーティングやアンケートなどを通して、個々の声に耳を傾ける姿勢を見せることが信頼構築につながります。
また、社内イベントやプロジェクトを通じて仲間との絆を深める場を提供することも、チームとしての一体感を高める効果があります。
行動意欲|自発的に行動する力
エンゲージメントは「理解」や「共感」だけでなく、それが実際の行動につながるかどうかが重要です。
行動意欲とは、従業員が「企業のために自分が何かをしたい」と自発的に考え、行動に移す力を指します。
この意欲を引き出すためには、努力や成果を適切に認める評価体制が不可欠です。
具体的なフィードバックや成功体験の共有は、次のチャレンジへの自信とモチベーションにつながります。
従業員が「自分の行動が組織にとって価値のあるものだ」と実感できる環境が、持続的なエンゲージメントを支えます。
従業員エンゲージメントを高めるメリット
従業員エンゲージメントを高めることは、単に「働きがいのある職場をつくる」というだけでなく、企業の成長や安定的な組織運営にも直結する重要な施策です。
本章では、特に注目すべき3つのメリットをご紹介します。

企業のパフォーマンス向上
エンゲージメントが高い従業員は、自らの役割を理解し、企業の目標達成に向けて主体的に行動します。
その結果、生産性が向上し、業務の質も高まり、組織全体のパフォーマンスが底上げされるのです。
さらに、意欲的な従業員は課題に対して前向きに取り組み、創造性や問題解決力も発揮しやすくなります。
これにより、業務改善のアイデアが生まれやすくなり、結果として企業の業績向上や競争力強化につながります。
職場の雰囲気とコミュニケーションの活性化
エンゲージメントの高い従業員は、前向きな姿勢や協力的な態度を持って業務に取り組むため、職場全体の雰囲気が明るく、ポジティブになります。
こうした空気感は、周囲の従業員にも良い影響を与え、チーム全体の一体感や連携の強化へとつながります。
また、円滑なコミュニケーションが生まれやすくなり、情報共有や相互サポートの機会が増えることで、業務効率や対応力も向上していきます。
従業員の定着率向上
エンゲージメントが高い従業員は、企業への信頼や共感を持って働いているため、長く働き続けたいという意識が高まります。
その結果、離職率が低下し、採用や教育にかかるコストの削減にもつながります。
定着率が上がることで、現場にノウハウが蓄積されやすくなり、組織の安定性や生産性も向上します。
また、定着している従業員がロールモデルとなることで、社内の育成環境も自然と強化されていきます。
従業員エンゲージメントの測定方法
従業員エンゲージメントを向上させるためには、まず現状を正確に把握することが重要です。適切な測定を行うことで、課題を明確にし、効果的な改善策を講じることが可能になります。
現状把握のための基準設定
測定を始める前に、何を目的としてエンゲージメントを測定するのかを明確にすることが重要です。目的が曖昧なままでは、収集したデータを有効に活用することが難しくなります。例えば、離職率の低下や生産性の向上など、具体的な目標を設定することで、測定の方向性が定まります。
エンゲージメントサーベイの実施
エンゲージメントサーベイは、従業員の仕事や組織に対する情熱や関与度を測定するための有効な手段です。質問項目は、企業文化、業務内容、報酬・評価制度、リーダーシップ、人間関係・コミュニケーション、情報共有、ワークライフバランス、成長機会・キャリアなど、多岐にわたります。これらの項目を通じて、従業員のエンゲージメントの状態を多角的に評価することができます。
フィードバックを活用したエンゲージメント評価
サーベイの結果を分析した後は、従業員に対してフィードバックを行うことが重要です。フィードバックを通じて、従業員は自分の意見が組織に反映されていると感じ、エンゲージメントの向上につながります。また、フィードバックは、組織としての改善点を明確にし、具体的なアクションプランの策定にも役立ちます。
定期的なデータ収集と分析
エンゲージメントの状態は時間とともに変化するため、定期的なデータ収集と分析が必要です。定期的なサーベイの実施により、エンゲージメントの推移を把握し、改善策の効果を検証することが可能になります。また、部門や職種、年齢層など、属性ごとの傾向を分析することで、より効果的な施策を講じることができます。
従業員エンゲージメントを向上させる方法
本章では、従業員エンゲージメントを高めるために効果的とされている施策を7つご紹介します。
大切なのは、単発の取り組みではなく、「従業員の声をもとにした継続的な改善活動」として施策を位置づけることです。
定期的なエンゲージメントサーベイの実施
現状の課題を可視化し、改善の第一歩につなげるために、定期的なエンゲージメントサーベイの実施が不可欠です。
従業員の声を収集・分析することで、改善すべき組織課題が明らかになり、対策の精度も向上します。
調査結果は必ずフィードバックし、「声が反映されている」と実感できるようにすることがポイントです。
社内コミュニケーションの活性化
エンゲージメント向上には、心理的安全性と良好な人間関係の構築が欠かせません。
社内でのコミュニケーションが活性化すると、従業員同士の信頼感が高まり、意見や悩みを共有しやすい風土が生まれます。
定期的な1on1ミーティングや、部署横断のプロジェクト、社内報・チャットツールの活用などが効果的です。
上司との信頼関係の構築(1on1・フィードバック)
特にマネジメント層との関係性は、従業員の満足度やエンゲージメントに強く影響します。
定期的な1on1面談や、具体的で建設的なフィードバックを通じて、上司との信頼関係を築きましょう。
評価やアドバイスが適切に行われることで、従業員は安心してチャレンジできるようになります。
成長機会の提供(スキルアップ・キャリア支援)
従業員が自分の成長を実感できる環境を整えることも、エンゲージメントを高める上で重要です。
スキルアップ支援、eラーニングの導入、社内研修やキャリアパス設計など、成長に寄与する機会を提供しましょう。
「この会社で働き続けたい」と感じる一因になります。
評価制度の見直しと透明性向上
頑張りがきちんと評価される仕組みがあるかどうかは、従業員のモチベーションや信頼感に直結します。
明確な評価基準の整備と、評価の過程や結果に対する納得感のある運用が求められます。
成果に基づいた公正な評価と具体的なフィードバックは、従業員の自信や行動意欲を高めます。
柔軟な働き方(リモート・時差出勤など)
働き方の自由度が高い環境は、従業員の満足度とエンゲージメントに好影響を与えます。
リモートワーク、フレックスタイム制度、時差出勤などを導入することで、ワークライフバランスの実現を支援できます。
また、物理的な職場環境の整備(休憩スペースや集中エリアなど)も、ストレス軽減に有効です。
経営層との接点を増やす
経営層と現場の距離が近い組織は、従業員のエンゲージメントが高い傾向にあります。
全社会議でのメッセージ発信や、経営層による現場訪問、ラウンドテーブル形式の意見交換などを通じて、「トップが現場を理解してくれている」という信頼感を築きましょう。
従業員エンゲージメント向上に成功した企業事例のご紹介
本章では、実際に従業員エンゲージメントの向上に取り組み、成果を上げた企業の事例を紹介します。
それぞれの企業がどのような背景で取り組みを始め、どのような成果を得たのかを、企業の特色とあわせてご覧ください。
株式会社LIXIL|多様な働き方を支える環境づくりと制度の進化

株式会社LIXILは、住宅設備機器(キッチン、バス、トイレ、窓など)の開発・製造・販売を行う国内大手の建材・住宅関連企業です。
◆背景と課題
多様性を尊重しながら、社員一人ひとりが「自分らしく働ける」職場づくりを推進していた同社では、エンゲージメント向上と長期的な活躍支援の仕組みが求められていました。
◆ 取り組み内容
インクルーシブな企業文化の醸成に向けて、次のような取り組みを実施しています。
- 心理的安全性を高めるためのマネジメント研修の導入
- 毎年の従業員エンゲージメントサーベイを通じた職場改善
- 柔軟な働き方の推進(リモートワーク・フレックス制度)
- 育児・介護・健康支援制度の拡充
- 社員のキャリア・成長支援施策の強化
◆成果
これらの包括的な施策により、多様な人材の活躍を後押しする風土が根づき、従業員の満足度やエンゲージメントが着実に向上しています。
トランスコスモス株式会社|MVVの“自分ごと化”を支援し、現場エンゲージメントを向上
トランスコスモス株式会社は、BPO・ITアウトソーシングを中心に、カスタマーサポートやデジタルマーケティングなど多様なサービスを提供する大手企業です。
全国のコンタクトセンター運営を担う中で、クライアント企業の従業員エンゲージメント向上にも積極的に取り組んでいます。
◆背景と課題
あるクライアント企業では、MVV(Mission・Vision・Value)を策定済みであったものの、「現場で日々の業務とMVVのつながりが感じられていない」という課題を抱えていました。
従業員の37%がMVVを意識せずに業務を行っており、理念の浸透と一体感の欠如がエンゲージメント低下の要因となっていたのです。
◆ 取り組み内容
同社は、MVVの“自分ごと化”を実現するため、以下のような支援を実施しました。
- MVVの意義や活用方法を共有する研修・ワークショップを実施
- 「日々の業務とMVVのつながり」を振り返る仕組みを導入
- 現場スタッフが自らの言葉でMVVを語れるよう支援する取り組みを推進
施策は、単なる共有にとどまらず、MVVを軸とした日々の行動を定着させる文化づくりにまで踏み込みました。
◆成果
現場におけるMVVの理解と実践が進み、従業員の目的意識や一体感が向上。
エンゲージメントが高まり、顧客対応の質や職場全体の活気にもポジティブな変化が現れました。
【出典:Cotra/【MVV浸透の成功事例】株式会社エバーライフ様 × トランスコスモス|コールセンターの事例から学ぶ効果】
まとめ|従業員エンゲージメントを育てることで、組織はもっと強くなる
従業員エンゲージメントは、単なる一時的な施策ではなく、組織と人の信頼関係を育てる“土壌”のような存在です。
それは、従業員が自らの仕事に誇りを持ち、企業と同じ方向を見て進んでいける状態を意味します。
このエンゲージメントを高めていくには、理解・共感・行動意欲という3つの土台を整えること、
そしてそれを支える「仕組み」や「職場環境」「対話の文化」を継続的に整えていくことが欠かせません。
すでに多くの企業が、自社の文化や目標に合った方法でエンゲージメントの向上に取り組み、
離職率の改善、生産性の向上、職場の雰囲気の好転といった成果を実感しています。
「働きたくなる会社」から、「働き続けたいと思える会社」へ――そんな組織づくりを、今から始めてみましょう。
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Writer編集者情報
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コネナビ編集部 上原 美由紀
従業員1万人以上の企業の5社に1社が導入している採用支援・求人広告会社にて、アルバイト・パート採用や中途採用を中心に、約3年間にわたり企業の採用支援に従事。
2019年9月より株式会社ウィルオブ・ワークに入社し、コールセンター・オフィスワークに特化した人材サービスの事業部でキャリアアドバイザーを担当。現場で培った知見をもとに、コンタクトセンター領域はもちろん、採用・人材分野に関する実践的かつリアルな情報発信を心がけている。
現在は子育てと仕事を両立しながら、日々奮闘中!
趣味:音楽、ゲーム、ディズニー、お酒
特技:タスク管理