バーチャルオペレーターとは│特徴やコンタクトセンターでの活用法を解説

2024/10/08

近年、テクノロジーの発展と共に注目されているのが「仮想空間/メタバース」です。

メタバースとは、インターネット上に構築される仮想の三次元空間のことです。利用者はアバターと呼ばれる分身を操作して空間内を移動し、他の参加者と交流することができます。
現在は主にVRゲームなど、娯楽を中心に発展しておりますが、商用的な活用も今後期待されており、コンタクトセンターでもアバターなどを活用したバーチャルオペレーターによる新しい顧客体験が生まれる可能性があります。

今回の記事では、すでにコンタクトセンターなどでも活用の兆しが見えているバーチャルアシスタントについて、概要や特徴、コンタクトセンターで期待される活用方法について解説します。

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バーチャルオペレーターの特徴

バーチャルオペレーターとは

参照:https://mobilus.co.jp/press-release/16533

バーチャルオペレーターとは、WEB画面でCGなどで作成したアバターが顧客への案内をする新しい顧客接点のことです。対話型AIデジタルヒューマンなどと呼ばれることもあります。その場合、キャラクターというよりはリアルな人間を模したCGであることが多いです。

バーチャルオペレーターの裏側では、人間のオペレーターや人工知能(AI)が遠隔で操作をし、ユーザーからの質問や要求に対して、回答やサービスを提供することができます。その際、画面上ではキャラクターなどが映し出され、合成音声によって作られた声によって、あたかもそのキャラクターが案内をしているようなコミュニケーションが実現できます。

UneeQ社が提供するDigital Einstein and Sophie

バーチャルオペレーターが求められる背景

バーチャルオペレーターが求められる背景に、人材不足と自動化の限界があります。

少子高齢化による労働人口の減少は多くの先進国が直面する課題です。日本でも全業態のビジネスに影響のある深刻な問題として対応が迫られています。特に、従来のカスタマーサポートは労働集約的な側面があり、人材不足は常にコンタクトセンター業界を悩ませる課題の一つです。

また、その対応策として期待されるテクノロジーを活用した自動化にも課題があります。最近ではAIを活用した自動化が進んでおり、チャットボットなどはその典型です。しかしながら、AIでの対応は単調なことが多く、顧客に寄り添った対応ができるレベルではありません。これは感情労働ともいわれるカスタマサポートにとっては致命的な課題になりうる可能性があります。

それらの問題を解決する可能性としてバーチャルオペレーターが期待されています。米国のある企業ではアバターを活用し、対応の質は変わらないものの、顧客に接するインターフェイスを動物に変えただけで、カスタマーサポートに寄せられる誹謗中傷の数が大幅に減少したという事例があります。
人はメラビアンの法則(※)に代表されるように、コミュニケーションにおいて視覚情報や聴覚情報を重視する傾向があります。従来のカスタマーサポートは視覚情報はなく、聴覚情報においてもオペレーターによってばらつきがありました。

バーチャルオペレーターでは企業のブランドイメージに合ったキャラクターや声を用意することでそれらの品質を一定に保つことができます。AIの自動化と組み合わせることで、効率的かつ高い品質のカスタマーサポートが実現できます。

※メラビアンの法則…人と人とのコミュニケーションにおいて、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%のウェイトで影響を与えるという心理学上の法則の1つ

バーチャルオペレーターのメリット・デメリット

バーチャルオペレーターのメリット

バーチャルオペレーターは、次のようなメリットがあります。

同じ声、見た目で顧客対応ができるため、ブランドイメージがぶれない
自社キャラクターや人気のキャラクターとのコラボによる顧客ロイヤルティの向上
視覚や感情がベースとなった顧客体験を生み出すことができる
遠隔操作ができるため労働場所を選ばない
AIを活用すれば24時間365日サポートが可能
ビッグデータや統計をベースにした質の高い応対をしていくことが可能

バーチャルオペレーターの1番の特徴は「ぶれない顧客体験を生み出す」ということです。
前述した通り、人間はコミュニケーションにおいて視覚情報と聴覚情報に最も影響を受けます。従来のコンタクトセンターや対面接客では「何を言うか(言語情報)」はマニュアルやFAQを整備することで品質を一定にすることができましたが、オペレーターや接客員毎に見た目や話し方、声に違いが発生するために品質がバラバラでした。コンタクトセンターでも、他のオペレーターと同じことを言っているはずなのになぜか顧客満足度が高いオペレーターがいますが、それは声だったり、話し方だったりと個体の差の大きな部分に特徴があります。バーチャルオペレーターでは声や話し方を統一することができるので、高いパフォーマンスを出すオペレーターの品質を再現することができるようになります。

さらには、合成音声やCGの技術を使えば、さまざまな声や見た目を再現することができます。有名なキャラクターや有名人とのコラボができれば、通常のオペレーターが対応するより高い顧客ロイヤルティが期待できるでしょう。

バーチャルオペレーターのデメリット

バーチャルオペレーターは、次のようなデメリットがあります。

人間を模擬するため、顧客に過度な期待を与える可能性がある
他社との優位性を生み出せなくなる

バーチャルオペレーターのデメリットは期待値のコントロールが難しい点です。これまでも人間を模擬してきたサービスはありましたが、対応が高度になればなるほど顧客の期待値が高まり、失敗した際の失望が大きくなります。特にAIを活用したバーチャルオペレーターの場合、まだまだAIでは全てを回答することができないため、顧客に過度な期待を与えるのはリスクがあります。できること、できないことを顧客に理解してもらいながら適切な期待値コントロールを行うことが求められます。

また、他社との優位性を生み出しづらくなる可能性があります。普及初期の段階では、すでに活動している既存のアバターなどを利用することになると思いますが、それでは他社との差別化ができなくなります。自社独自のキャラクターなどを生み出し、差別化していくことが大切です。

現状は実店舗で活用

現状のバーチャルオペレーターは主に駅の案内や商業施設での案内などにデジタルサイネージを通して利用されているケースが多いです。

すでに稼働しているバーチャルオペレーターで有名なのは「AIさくらさん」です。株式会社ティファナ・ドットコムが提供するサービスで、JR山手線や官公庁施設などに導入されています。

参照:https://www.tifana.ai/news/ai-190618

AIを活用した完全無人のものが多いですが、最近は遠隔で有人がアバターとリンクして案内するケースも増えてきました。AIによる案内よりも柔軟な対応が可能で、高度な接客求められる場面などで活用が期待されています。遠隔操作ができるという点で在宅勤務との相性も良く、非接触の新しい接客の形として受け入れられつつあります。

コンタクトセンターでのバーチャルオペレーターの活用

今後はVRやARの発展により、いわゆるメタバース空間の拡がりが予想されます。その中でカスタマーサポートもこれまでのような音声だけの案内よりは、画像や動画などビジュアル情報も含めた案内が増えていくでしょう。その中で、バーチャルオペレーターは顧客とのインターフェイスとして重要な役割を果たします。自社独自のアバターなどを活用しながら、ブランドイメージの向上や顧客ロイヤルティを実現していくことがコンタクトセンターにも求められます。

また、現状のAIはある程度人間が用意したFAQ等に沿って回答するまでが限界ですが、AIの技術が進歩するにつれて、バーチャルオペレーターの能力は向上し、より人間の対応を疑似的に行うことができるようになるでしょう。
より適切な回答が選択でき、雑談に近いフリートークが可能になるかもしれません。また、膨大な量のデータを処理できるようになれば、パーソナライズ化された案内も可能になるかもしれません。そうなれば、顧客の情報に紐づいて、バーチャルオペレーターが変わるなど、より高度な顧客対応も実現できるかもしれません。

コンタクトセンターでのバーチャルオペレーターの発展は、まずはチャットボットやボイスボットから徐々に拡大していくことが予想されます。すでにチャットボットやボイスボットをキャラ化するような動きは、一部の企業でも見られるようになっています。当分はAIを活用し、一部の問い合わせ、手続き系をバーチャルオペレーターで処理していくような形が先行すると思いますが、人間が裏側でアバターを操作することで高度な専門領域の問い合わせやライブコマースなども対応できるようになるでしょう。

まとめ

今回は今後コンタクトセンターで活用が期待されるバーチャルオペレーターについて紹介しました。

バーチャルオペレーターはまだまだ新しい概念で、使われているテクノロジーも発展が目まぐるしい領域です。そのため、最終的にどのように形になり、どのような活用がされるかはまだ明確には分かりません。

しかしながら、テクノロジーの発展に伴い、コンタクトセンターの形が変わることはほぼ確定的な未来でしょう。バーチャルオペレーターがその中でも一つの有力な候補であることは疑いようがありません。

今後はさらにテクノロジーの活用がビジネス発展の成功の鍵になってきます。海外などの動向も含めて積極的に情報収集することが大切です。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 小林 弘明

    新卒1年半は銀行にて勤務。その後 株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)にキャリアチェンジし、営業職と支店長を経験。
    その後4年間は教育担当者として従事し、本部営業を1年間経験。現在は営業推進部マネージャとしてスタッフキャリア支援を担当。

    ・趣味:北海道の田舎で育ったので、自然アクティビティが大好き!特にシュノーケリング、川遊び。
    ・特技:飲み屋でだれとでもすぐ仲良くなること。

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