LTVとは?重要視されている背景とカスタマーサポートでの向上施策を解説 

2025/06/17

企業の成長において、既存顧客との関係を深め、収益を最大化することは重要です。そのカギを握るのが「LTV(顧客生涯価値)」という指標になります。 LTVを高めることで一度の取引に依存せず、安定した売上の確保や利益率を向上させることが可能になります。 

本稿では、LTVの基本概念から注目されている背景、適切な計算方法、カスタマーサポートがLTV向上にどのように貢献できるかを詳しく解説します。さらに、具体的なKPIの設定とPDCAサイクルの回し方についてもご紹介します。 

  • LTVを正しく理解し、長期的な売上向上に活かしたい
  • カスタマーサポートを活用して、LTVを向上させる方法を知りたい
  • LTV向上に向けてKPIを適切に設定し、成果を測定したい

このような課題をお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。 

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは 

LTV(顧客生涯価値)の定義

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、1人の顧客が企業にもたらす総収益のことを指します。顧客が企業の商品やサービスを購入し続けることで、どれだけの売上を生み出すかを示す指標です。LTVを高めることで、新規顧客獲得に依存しないビジネスモデルを構築し、持続的な成長が可能になります。 

例えば、次のような2社を比較すると、LTVの重要性が理解しやすくなります。 

・企業A:1回の購入単価が高いが、リピート率が低い  
・企業B:1回の購入単価は低いが、リピート率が高い 

短期的な売上は企業Aのほうが高いかもしれませんが、長期的には企業Bのほうが安定した収益を生み出しやすいといえます。 

CSATやNPSとの違い

LTVと関連する指標に、CSAT(顧客満足度)NPS(推奨度スコア)があります。 それぞれの違いについて確認しましょう。 

指標

定義

特徴

CSAT

顧客の満足度を測る

短期的な評価

NPS

企業を他者に推薦する意向を測る

顧客ロイヤルティを示す

LTV

顧客が生涯を通じて企業にもたらす価値

売上や利益に直結する指標

CSATは顧客の満足度、NPSは他社への推薦度を測る指標です。一方、LTVは実際の売上や収益に直結する指標となります。 

カスタマーサポートでは、CSATやNPSを活用して顧客ロイヤルティを高め、LTVの向上に繋げることが求められます。 

LTVが注目される背景

新規顧客獲得・新規市場開拓が難しくなっている

近年、新規顧客の獲得が難しくなっており、新規顧客の獲得コスト(CAC)も上昇傾向にあります。広告費の高騰や競争の激化により、従来の手法だけでは費用対効果が悪化しています。特に、ECやサブスクリプションサービスの拡大により、広告費の高騰や競争の激化が顕著です。 

CACが上昇すると、短期的な売上に依存するだけでは利益を確保しにくくなります。そのため、既存顧客の継続利用が売上の安定に不可欠となっているのです。 

サブスクリプションモデルが浸透しはじめている

サブスクリプション(定額課金)モデルが主流になっていることも、LTVが注目される要因の一つです。 このビジネスモデルでは、「顧客が継続的に利用すること」=「LTVの最大化」が収益のカギになります。 
サブスク企業では、解約率(Churn Rate)を抑えることが利益の最大化につながるため、LTVを高める施策が必須となっているのです。

One to Oneマーケティングへシフトしている

従来のマス広告では、多くの顧客に一律のメッセージを届けることが主流でした。しかし、消費者のニーズが多様化し情報過多の時代においては、個別のニーズに応じたアプローチが求められるようになっています。
この背景から「One to Oneマーケティング」が注目され、顧客のニーズに合った個別対応を強化し、LTVを最大化する流れが加速しているのです。 

カスタマーサポートでのCRMの活用

近年、顧客体験(CX)の重要性が高まる中、競合他社との差別化が難しくなっています。このような状況で、CRMを活用したカスタマーサポートは、顧客満足度を向上させる重要な手段として注目されています。 
CRMを活用することで、顧客データをもとに迅速かつ個別化された対応が可能となり、競争優位性を確立できるのです。また、競合他社も同様の取り組みを強化しており、CRMの導入・活用が業界全体で加速していることも、LTV注目の背景と考えられるでしょう。 

▼CRMの解説記事はこちら 
コンタクトセンターのCRMとは|導入メリットや効果的な活用法を解説」 

LTVの計算方法

LTVの計算方法には複数のバリエーションがあり、企業の事業モデルや目的に応じて使い分けられます。以下に代表的な計算式を解説します。 

基本的な計算式

この基本式は、多くの業界で活用されるシンプルな計算式です。

要素

説明

顧客単価
(ARPU:Average Revenue Per User)

顧客が1回の取引で支払う平均金額。
クロスセルやアップセル施策で向上可能。

購買頻度
(Purchase Frequency)

一定期間内における購入回数。
定期購入プログラムやリピート促進施策が効果的。

継続期間
(Customer Lifetime)

顧客が取引を続ける平均期間。
解約率の低下やロイヤルティ向上が重要。

例えば、以下の条件の顧客がいるとします。 
• 顧客単価:10,000円 
• 購買頻度:12回/年 
• 継続期間:3年 

この場合、計算式は以下になります。 

LTV = 10,000円 × 12回 × 3年 = 360,000円 

この計算は売上ベースのLTVですが、実際の利益を考慮する場合は「利益率」を加味する必要があります。 

利益率を含めた計算式

この式では、「収益率」を加味することで、売上だけでなく実際の利益を反映したLTVを算出できます。特に、SaaSビジネスや製造業など、コスト管理が重要な業界で用いられることが多いです。 

例: 
• 顧客単価:20,000円 
• 収益率:50%(利益率) 
• 購買頻度:12回/年 
• 継続期間:3年 

LTV = 20,000円 × 0.5 × 12回 × 3年 = 360,000円 

この計算を行うことで、単なる売上ベースではなく利益ベースのLTVが算出され、より正確な顧客価値を把握できます。 

チャーンレートを用いた計算式(サブスクリプション向け)

この式は、主にサブスクリプション型ビジネスに適用されます。 
※チャーンレート(解約率)とは:一定期間内にサービスを解約した顧客の割合 

例: 
• 顧客単価:10,000円/月 
• チャーンレート:10%(0.1) 

LTV = 10,000円 ÷ 0.1 = 100,000円 

サブスクリプション型ビジネスでは、顧客が契約を続ける限り収益が発生します。このサービスモデルの場合、解約率を低く抑えることがLTV最大化のカギとなるため、チャーンレートを用いた計算を行います。 

コストを考慮した計算式

この式は、LTVから顧客獲得コスト(CAC:Customer Acquisition Cost)と維持コストを差し引いた「純粋な利益ベースのLTV」を算出する方法です。 

コスト項目

説明

新規獲得コスト(CAC)

広告費、営業コスト、プロモーション費用など

維持コスト

CRM運用費、カスタマーサポート費用、メールマーケティング費用など

例: 
• 顧客単価:10,000円 
• 購買頻度:12回/年 
• 継続期間:3年 
• 新規獲得コスト:50,000円 
• 維持コスト(年間):5,000円 

LTV =(10,000円 × 12回 × 3年) -(50,000円 + 5,000円 × 3年) 
LTV = 360,000円 – 65,000円 = 295,000円
 

この計算式は、LTVの利益貢献度を評価し、マーケティング投資の最適化に役立ちます。 

最適な計算式の選択方法

どの計算式を使用するかは、企業の事業モデルや目的によって異なるため、自社に最適な計算方法を選択する必要があります。 以下に、各ビジネスモデルに適した計算式をまとめましたので、ぜひご参考ください。

ビジネスモデル

適したLTV計算式

一般的なビジネス

LTV = 顧客単価 × 購買頻度 × 継続期間

利益率を重視する企業
(製造業・SaaSなど)

LTV = 顧客単価 × 収益率 × 購買頻度 × 継続期間

サブスクリプション型ビジネス

LTV = 顧客単価 ÷ チャーンレート

マーケティングROIを分析する企業

LTV =(顧客単価 × 購買頻度 × 継続期間) -(新規獲得コスト + 維持コスト)

※ROI(Return on Investment):投資した費用に対する利益の割合を示す指標 

カスタマーサポートでのLTV向上施策

LTVを高めるには、次の3つの施策をバランスよく行うことが有効です。

顧客単価を上げる|パーソナライズ提案、アップセル・クロスセル

カスタマーサポートは顧客と接する場であり、適切な提案を行うことで顧客単価を向上させることができます。 

パーソナライズ提案の強化 

CRM(顧客管理システム)を活用し、顧客ごとの購買履歴や問い合わせ履歴を把握することで、より適切な提案が可能になります。 

例:「過去に化粧水を購入した顧客に、相性が良くて効果を高める美容液を提案する」 

アップセルとクロスセルの活用 

• アップセル:顧客の単価を上げるための営業手法で、顧客が利用中の商品やサービスを、より高額な上級モデルに乗り換えてもらうこと 

例:「今お使いの商品よりも、上位プランの方が より高性能になるのでおすすめです」 

• クロスセル:顧客が購入予定の商品やサービスと、関連する商品やサービスを提案し、追加購入を促す手法 

例:「Aの商品とBの商品をセットでご利用いただくと、より効果が高まります」 

アップセルとクロスセルを行う場合は、顧客にとって「本当に必要なもの」であることが重要です。企業の売上向上だけに捉われず、顧客にとって最適な提案を行ってください。 

購買頻度を高める|フォローアップ対応、リマインド施策

購買頻度を高めるためには、適切なタイミングでのフォローアップやリマインド施策が重要です。 

フォローアップ対応の強化 

• 購入後のフォローアップメール・電話で顧客満足度を確認 
• カスタマーサポートによる、商品やサービスの最適な活用方法を案内 

例:「以前ご購入いただいたサプリメントの飲み方について、ご不明な点はございませんか?」 

リマインド施策の活用 

• 一定期間購入がない顧客に「特別割引」や「限定キャンペーン」を案内 
• 購入サイクルに合わせた「再購入リマインドメール」の送信 

例:「3ヶ月前に購入したスキンケア商品がそろそろなくなるころです。ご状況はいかがでしょうか?」 

顧客ロイヤルティを高めるVOC活用、オペレーターの対応品質向上、パーソナライズド対応

長期的に顧客と関係を築くためには、顧客ロイヤルティを高める施策が不可欠です。 

VOC(顧客の声)の活用 

• 問い合わせやクレームの傾向を分析し、サービス改善につなげる 
• 「こういう機能を追加してほしい」「この商品の〇〇を改善してほしい」という要望をもとに、新商品や新サービスの開発を進める 

オペレーターの応対品質向上 

• ただ「問題を解決する」だけの対応ではなく、顧客との関係を深めるコミュニケーションを重視する 
• 傾聴力や共感力を高める研修を実施し、顧客にファンになってもらう 

パーソナライズド対応の強化 

• 過去の問い合わせ履歴をもとに、顧客ごとに最適な対応を実施 
• 「前回のご利用から〇〇日経ちますが、その後問題なくご利用いただけていますか?」とフォローを行う 

「この企業はユーザーの声をちゃんと聞いてくれる」「自分のことを気にかけてサポートしてくれている」と顧客が感じることで、顧客ロイヤルティが向上し、継続利用につながります。 

▼関連記事はこちら 
CS向上させるオペレーター育成法とは│具体的な研修内容やポイントについて解説」 

LTV向上に効果的なKPIの設定

LTVを向上させるには、適切なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定し、継続的に改善していくことが重要です。単に売上を追うのではなく、LTVを構成する要素ごとにKPIを設定することで、課題を特定しやすくなります。 

LTV向上のための主要KPI 

LTVを向上させるためには、以下のKPIをモニタリングし、施策ごとに効果を測定しましょう。 

KPI 意味 目的

顧客平均単価
(ARPU:Average Revenue Per User)

1人あたりの平均売上高

アップセル・クロスセル施策の効果を測定

購買頻度
(Purchase Frequency)

1顧客が一定期間内に何回購入したか

リピート施策の効果を確認

継続期間
(Customer Lifetime)

顧客が企業と取引を続ける平均期間

顧客ロイヤルティ向上の効果を評価

NPS
(Net Promoter Score)

企業への推奨度を測る指標

顧客ロイヤルティの向上度を測定

リピート率

1回以上購入した顧客のうち、再購入した割合

継続利用を促進する施策の効果を確認

解約率
(Churn Rate)

一定期間内に顧客がサービスを解約した割合

解約を防ぐ施策の効果を測定

例えば、「購買頻度」を高めるためのフォローアップ施策を実施した場合、リピート率の変化を確認することで、その施策がLTV向上に貢献しているかを判断できます。 

KPIを活用したPDCAサイクルの回し方 

LTV向上施策は一度行って終わるのではなく、継続的に改善を続けることが求められます。PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)をしっかりと回して、定期的に施策の見直しを行いましょう。

Plan(計画)

LTV向上のためのKPIを設定し、目標を明確にする

例:「購買頻度を1.2倍にする」「解約率を5%低減する」
Do(実行)

施策を実施

例:「購入から1ヶ月に、顧客にフォローアップメールを送る」
Check(評価)

KPIを分析し、施策の効果を検証

例:「フォローアップメールを送ったグループのリピート率が20%向上した」
Act(改善)

効果が低い施策を見直し、次の施策に活かす

例:「メールの開封率が低い場合、件名や配信タイミングを改善」

 このプロセスを繰り返すことで、LTV向上のための施策を最適化できるでしょう。 

LTVについてのまとめ 

LTV(顧客生涯価値)は、企業の長期的な成長において重要な役割を果たします。特に、カスタマーサポートはLTV向上のカギを握る部門です。アップセル・クロスセルの提案、フォローアップ施策、顧客ロイヤルティ向上施策などを通じて、顧客との関係を深めることが求められます。 

LTVを向上させるためには、目的に応じた適切なKPIを設定し、PDCAサイクルを回しながら改善を続けることが不可欠です。試行錯誤を重ねて、リピート率や解約率の改善、顧客満足度の向上を図ることで、安定した売上基盤を築くことが可能になるでしょう。 

本稿が、LTV向上に課題をお持ちの方の一助となれば幸いです。 

顧客満足度向上に向けた施策を検討中なら、ウィルオブ・ワークにお任せください

「コンタクトセンター現場の課題を解決し、スムーズな運営を実現したい」「競合にユーザーを奪われないよう、サポートの質を向上させたい」「顧客体験価値を向上させ、企業の成長につなげたい」このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひウィルオブ・ワークにご相談ください。ウィルオブ・ワークは、地方BPOセンターにて高品質なカスタマーサポート運営を行っています。企業課題に合わせたカスタマイズのご提案が可能です。ご相談、お見積りは無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

ウィルオブ・ワークに相談する

Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 平井 美穂

    2012年、株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)へ入社し、コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービス事業部に配属。大手携帯キャリアのコンタクトセンターにて、カスタマーサポートを行いながら、自社派遣社員のサポートやフォローに努める。CSを2年経験した後、営業コーディネーターやキャリアアドバイザー、転職支援など幅広い業務を経験。現在は、2人のこどもを育てるワーキングマザー。

    ・趣味:森林浴、神社巡り、アートに触れること
    ・特技:細かい点に気が付くところ

Related article関連記事

法人お問合わせ・資料ダウンロード

コンタクトセンターの採用・運営に関してお悩みの方、お仕事探しの方はお気軽にお問合せください。