LTVとは?カスタマーサポートでの向上施策と効果的なKPI設定をご紹介
2025/03/25
- 品質向上
- 顧客満足度向上

企業の成長において、既存顧客との関係を深め、収益を最大化することは重要です。そのカギを握るのが「LTV(顧客生涯価値)」という指標になります。 LTVを高めることで一度の取引に依存せず、安定した売上の確保や利益率を向上させることが可能になります。
本稿では、LTVの基本概念から注目されている背景、適切な計算方法、カスタマーサポートがLTV向上にどのように貢献できるかを詳しく解説します。さらに、具体的なKPIの設定とPDCAサイクルの回し方についてもご紹介します。
- LTVを正しく理解し、長期的な売上向上に活かしたい
- カスタマーサポートを活用して、LTVを向上させる方法を知りたい
- LTV向上に向けてKPIを適切に設定し、成果を測定したい
このような課題をお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは
LTV(顧客生涯価値)の定義
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、1人の顧客が企業にもたらす総収益のことを指します。顧客が企業の商品やサービスを購入し続けることで、どれだけの売上を生み出すかを示す指標です。LTVを高めることで、新規顧客獲得に依存しないビジネスモデルを構築し、持続的な成長が可能になります。
例えば、次のような2社を比較すると、LTVの重要性が理解しやすくなります。
・企業A:1回の購入単価が高いが、リピート率が低い
・企業B:1回の購入単価は低いが、リピート率が高い
短期的な売上は企業Aのほうが高いかもしれませんが、長期的には企業Bのほうが安定した収益を生み出しやすいといえます。
CSATやNPSとの違い
LTVと関連する指標に、CSAT(顧客満足度)やNPS(推奨度スコア)があります。 それぞれの違いについて確認しましょう。
指標 |
定義 |
特徴 |
CSAT |
顧客の満足度を測る |
短期的な評価 |
NPS |
企業を他者に推薦する意向を測る |
顧客ロイヤルティを示す |
LTV |
顧客が生涯を通じて企業にもたらす価値 |
売上や利益に直結する指標 |
CSATは顧客の満足度、NPSは他社への推薦度を測る指標です。一方、LTVは実際の売上や収益に直結する指標となります。
カスタマーサポートでは、CSATやNPSを活用して顧客ロイヤルティを高め、LTVの向上に繋げることが求められます。
LTVが注目される背景
新規顧客獲得・新規市場開拓が難しくなっている
近年、新規顧客の獲得が難しくなっており、新規顧客の獲得コスト(CAC)も上昇傾向にあります。広告費の高騰や競争の激化により、従来の手法だけでは費用対効果が悪化しています。特に、ECやサブスクリプションサービスの拡大により、広告費の高騰や競争の激化が顕著です。
CACが上昇すると、短期的な売上に依存するだけでは利益を確保しにくくなります。そのため、既存顧客の継続利用が売上の安定に不可欠となっているのです。
サブスクリプションモデルが浸透しはじめている
サブスクリプション(定額課金)モデルが主流になっていることも、LTVが注目される要因の一つです。 このビジネスモデルでは、「顧客が継続的に利用すること」=「LTVの最大化」が収益のカギになります。
サブスク企業では、解約率(Churn Rate)を抑えることが利益の最大化につながるため、LTVを高める施策が必須となっているのです。
One to Oneマーケティングへシフトしている
従来のマス広告では、多くの顧客に一律のメッセージを届けることが主流でした。しかし、消費者のニーズが多様化し情報過多の時代においては、個別のニーズに応じたアプローチが求められるようになっています。
この背景から「One to Oneマーケティング」が注目され、顧客のニーズに合った個別対応を強化し、LTVを最大化する流れが加速しているのです。
カスタマーサポートでのCRMの活用
近年、顧客体験(CX)の重要性が高まる中、競合他社との差別化が難しくなっています。このような状況で、CRMを活用したカスタマーサポートは、顧客満足度を向上させる重要な手段として注目されています。
CRMを活用することで、顧客データをもとに迅速かつ個別化された対応が可能となり、競争優位性を確立できるのです。また、競合他社も同様の取り組みを強化しており、CRMの導入・活用が業界全体で加速していることも、LTV注目の背景と考えられるでしょう。
▼CRMの解説記事はこちら
「コンタクトセンターのCRMとは|導入メリットや効果的な活用法を解説」
LTVの計算方法
LTVの計算方法には複数のバリエーションがあり、企業の事業モデルや目的に応じて使い分けられます。以下に代表的な計算式を解説します。
基本的な計算式
LTV = 顧客単価 × 購買頻度 × 継続期間
この基本式は、多くの業界で活用されるシンプルな計算式です。
要素 |
説明 |
顧客単価(ARPU:Average Revenue Per User) |
顧客が1回の取引で支払う平均金額。クロスセルやアップセル施策で向上可能。 |
購買頻度(Purchase Frequency) |
一定期間内における購入回数。定期購入プログラムやリピート促進施策が効果的。 |
継続期間(Customer Lifetime) |
顧客が取引を続ける平均期間。解約率の低下やロイヤルティ向上が重要。 |
例えば、以下の条件の顧客がいるとします。
• 顧客単価:10,000円
• 購買頻度:12回/年
• 継続期間:3年
この場合、計算式は以下になります。
LTV = 10,000円 × 12回 × 3年 = 360,000円
この計算は売上ベースのLTVですが、実際の利益を考慮する場合は「利益率」を加味する必要があります。
利益率を含めた計算式
LTV = 顧客単価 × 収益率 × 購買頻度 × 継続期間
この式では、「収益率」を加味することで、売上だけでなく実際の利益を反映したLTVを算出できます。特に、SaaSビジネスや製造業など、コスト管理が重要な業界で用いられることが多いです。
例:
• 顧客単価:20,000円
• 収益率:50%(利益率)
• 購買頻度:12回/年
• 継続期間:3年
LTV = 20,000円 × 0.5 × 12回 × 3年 = 360,000円
この計算を行うことで、単なる売上ベースではなく利益ベースのLTVが算出され、より正確な顧客価値を把握できます。
チャーンレートを用いた計算式(サブスクリプション向け)
LTV = 顧客単価 ÷ チャーンレート
この式は、主にサブスクリプション型ビジネスに適用されます。
※チャーンレート(解約率)とは:一定期間内にサービスを解約した顧客の割合
例:
• 顧客単価:10,000円/月
• チャーンレート:10%(0.1)
LTV = 10,000円 ÷ 0.1 = 100,000円
サブスクリプション型ビジネスでは、顧客が契約を続ける限り収益が発生します。このサービスモデルの場合、解約率を低く抑えることがLTV最大化のカギとなるため、チャーンレートを用いた計算を行います。
コストを考慮した計算式
LTV =(顧客単価 × 購買頻度 × 継続期間) -(新規獲得コスト + 維持コスト)
この式は、LTVから顧客獲得コスト(CAC:Customer Acquisition Cost)と維持コストを差し引いた「純粋な利益ベースのLTV」を算出する方法です。
コスト項目 |
説明 |
新規獲得コスト(CAC) |
広告費、営業コスト、プロモーション費用など |
維持コスト |
CRM運用費、カスタマーサポート費用、メールマーケティング費用など |
例:
• 顧客単価:10,000円
• 購買頻度:12回/年
• 継続期間:3年
• 新規獲得コスト:50,000円
• 維持コスト(年間):5,000円
LTV =(10,000円 × 12回 × 3年) -(50,000円 + 5,000円 × 3年)
LTV = 360,000円 – 65,000円 = 295,000円
この計算式は、LTVの利益貢献度を評価し、マーケティング投資の最適化に役立ちます。
最適な計算式の選択方法
どの計算式を使用するかは、企業の事業モデルや目的によって異なるため、自社に最適な計算方法を選択する必要があります。 以下に、各ビジネスモデルに適した計算式をまとめましたので、ぜひご参考ください。
ビジネスモデル |
適したLTV計算式 |
一般的なビジネス |
LTV = 顧客単価 × 購買頻度 × 継続期間 |
利益率を重視する企業(製造業・SaaSなど) |
LTV = 顧客単価 × 収益率 × 購買頻度 × 継続期間 |
サブスクリプション型ビジネス |
LTV = 顧客単価 ÷ チャーンレート |
マーケティングROIを分析する企業 |
LTV =(顧客単価 × 購買頻度 × 継続期間) -(新規獲得コスト + 維持コスト) |
※ROI(Return on Investment):投資した費用に対する利益の割合を示す指標
カスタマーサポートでのLTV向上施策
LTVを高めるには、次の3つの施策をバランスよく行うことが有効です。
顧客単価を上げる(パーソナライズ提案、アップセル・クロスセル)
カスタマーサポートは顧客と接する場であり、適切な提案を行うことで顧客単価を向上させることができます。
パーソナライズ提案の強化
CRM(顧客管理システム)を活用し、顧客ごとの購買履歴や問い合わせ履歴を把握することで、より適切な提案が可能になります。
例:「過去に化粧水を購入した顧客に、相性が良くて効果を高める美容液を提案する」
アップセルとクロスセルの活用
• アップセル:顧客の単価を上げるための営業手法で、顧客が利用中の商品やサービスを、より高額な上級モデルに乗り換えてもらうこと
例:「今お使いの商品よりも、上位プランの方が より高性能になるのでおすすめです」
• クロスセル:顧客が購入予定の商品やサービスと、関連する商品やサービスを提案し、追加購入を促す手法
例:「Aの商品とBの商品をセットでご利用いただくと、より効果が高まります」
アップセルとクロスセルを行う場合は、顧客にとって「本当に必要なもの」であることが重要です。企業の売上向上だけに捉われず、顧客にとって最適な提案を行ってください。
購買頻度を高める(フォローアップ対応、リマインド施策)
購買頻度を高めるためには、適切なタイミングでのフォローアップやリマインド施策が重要です。
フォローアップ対応の強化
• 購入後のフォローアップメール・電話で顧客満足度を確認
• カスタマーサポートによる、商品やサービスの最適な活用方法を案内
例:「以前ご購入いただいたサプリメントの飲み方について、ご不明な点はございませんか?」
リマインド施策の活用
• 一定期間購入がない顧客に「特別割引」や「限定キャンペーン」を案内
• 購入サイクルに合わせた「再購入リマインドメール」の送信
例:「3ヶ月前に購入したスキンケア商品がそろそろなくなるころです。ご状況はいかがでしょうか?」
顧客ロイヤルティを高める(VOC活用、オペレーターの対応品質向上、パーソナライズド対応)
長期的に顧客と関係を築くためには、顧客ロイヤルティを高める施策が不可欠です。
VOC(顧客の声)の活用
• 問い合わせやクレームの傾向を分析し、サービス改善につなげる
• 「こういう機能を追加してほしい」「この商品の〇〇を改善してほしい」という要望をもとに、新商品や新サービスの開発を進める
• ただ「問題を解決する」だけの対応ではなく、顧客との関係を深めるコミュニケーションを重視する
• 傾聴力や共感力を高める研修を実施し、顧客にファンになってもらう
パーソナライズド対応の強化
• 過去の問い合わせ履歴をもとに、顧客ごとに最適な対応を実施
• 「前回のご利用から〇〇日経ちますが、その後問題なくご利用いただけていますか?」とフォローを行う
「この企業はユーザーの声をちゃんと聞いてくれる」「自分のことを気にかけてサポートしてくれている」と顧客が感じることで、顧客ロイヤルティが向上し、継続利用につながります。
▼関連記事はこちら
「CS向上させるオペレーター育成法とは│具体的な研修内容やポイントについて解説」
LTV向上に効果的なKPIの設定
LTVを向上させるには、適切なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定し、継続的に改善していくことが重要です。単に売上を追うのではなく、LTVを構成する要素ごとにKPIを設定することで、課題を特定しやすくなります。
LTV向上のための主要KPI
LTVを向上させるためには、以下のKPIをモニタリングし、施策ごとに効果を測定しましょう。
KPI | 意味 | 目的 |
ARPU(Average Revenue Per User:顧客平均単価) |
1人あたりの平均売上高 |
アップセル・クロスセル施策の効果を測定 |
購買頻度(Purchase Frequency) |
1顧客が一定期間内に何回購入したか |
リピート施策の効果を確認 |
継続期間(Customer Lifetime) |
顧客が企業と取引を続ける平均期間 |
顧客ロイヤルティ向上の効果を評価 |
NPS(Net Promoter Score) |
企業への推奨度を測る指標 |
顧客ロイヤルティの向上度を測定 |
リピート率 |
1回以上購入した顧客のうち、再購入した割合 |
継続利用を促進する施策の効果を確認 |
解約率(Churn Rate) |
一定期間内に顧客がサービスを解約した割合 |
解約を防ぐ施策の効果を測定 |
例えば、「購買頻度」を高めるためのフォローアップ施策を実施した場合、リピート率の変化を確認することで、その施策がLTV向上に貢献しているかを判断できます。
KPIを活用したPDCAサイクルの回し方
LTV向上施策は一度行って終わるのではなく、継続的に改善を続けることが求められます。PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)をしっかりと回して、定期的に施策の見直しを行いましょう。

Plan(計画) |
LTV向上のためのKPIを設定し、目標を明確にする |
例:「購買頻度を1.2倍にする」「解約率を5%低減する」 | |
Do(実行) |
施策を実施 |
例:「購入から1ヶ月に、顧客にフォローアップメールを送る」 | |
Check(評価) |
KPIを分析し、施策の効果を検証 |
例:「フォローアップメールを送ったグループのリピート率が20%向上した」 | |
Act(改善) |
効果が低い施策を見直し、次の施策に活かす |
例:「メールの開封率が低い場合、件名や配信タイミングを改善」 |
このプロセスを繰り返すことで、LTV向上のための施策を最適化できるでしょう。
LTVについてのまとめ
LTV(顧客生涯価値)は、企業の長期的な成長において重要な役割を果たします。特に、カスタマーサポートはLTV向上のカギを握る部門です。アップセル・クロスセルの提案、フォローアップ施策、顧客ロイヤルティ向上施策などを通じて、顧客との関係を深めることが求められます。
LTVを向上させるためには、目的に応じた適切なKPIを設定し、PDCAサイクルを回しながら改善を続けることが不可欠です。試行錯誤を重ねて、リピート率や解約率の改善、顧客満足度の向上を図ることで、安定した売上基盤を築くことが可能になるでしょう。
本稿が、LTV向上に課題をお持ちの方の一助となれば幸いです。
顧客満足度向上に向けた施策を検討中なら、ウィルオブ・ワークにお任せください
「コンタクトセンター現場の課題を解決し、スムーズな運営を実現したい」「競合にユーザーを奪われないよう、サポートの質を向上させたい」「顧客体験価値を向上させ、企業の成長につなげたい」このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひウィルオブ・ワークにご相談ください。ウィルオブ・ワークは、地方BPOセンターにて高品質なカスタマーサポート運営を行っています。企業課題に合わせたカスタマイズのご提案が可能です。ご相談、お見積りは無料ですので、お気軽にお問い合わせください。