【最新】ボイスボットの活用事例を紹介 │ コール削減を実現するポイントとは

2024/09/25

近年、人材不足を背景に、コンタクトチャネルのデジタルシフトが進んでいます。コンタクトチャネルのデジタルシフトではこれまで、FAQサイトやチャットなどが中心でしたが、近年注目されているのがボイスボットです。これはデジタルチャネルだけでは限界があり、本丸の電話業務自体が効率化されないことには、安定したコールセンター運用ができなくなってきているためです。

実際、リックテレコム社が行ったコールセンター実態調査によると「ボイスボット(音声ボット)」を導入している企業は2023年で8.2%、「今後導入予定のITソリューション」として選択をした企業は22.6%となっており、ボイスボットへの期待が伺えます。

本記事ではコールセンター業界で注目されるボイスボットについて、最新の活用事例をご紹介します。これまでボイスボットの事例として多かったのはある特定の処理をボイスボットで対応する「手続き系」の処理でしたが、実は今別の使い方が注目されています。最新の使い方について具体的な事例を踏まえポイントを紹介します。

ボイスボットとは

ボイスボットとは、AI技術を組み合わせ、電話対応を自動化することができるシステムです。従来、コールセンター業界ではチャット対応を自動化するチャットボットがありましたが、その技術に音声認識と合成音声の技術を組み合わせたものがボイスボットです。

ボイスボットの基本的な仕組み

お客様からお問い合わせ頂いた質問をシステムが回答するまでの流れは以下です。

ボイスボットは従来のPBXなどを通して、公衆網を通じてユーザーからの電話を受電します。そして、ユーザーの音声入力に対し、まずは音声認識によりテキスト化し、自然言語処理を使って会話の内容を理解します。その後、問い合わせの内容に合わせて予め用意された回答を音声合成を使って回答するまでが一連の流れです。

会話の処理の流れで、シナリオに応じた単純な回答だけではなく、APIを利用した外部システムとの連携を活用することもできます。外部システムの情報を利用することで、「本人確認」や「予約受付」、「本人情報を使ったパーソナルな回答」などが可能となります。

ボイスボットの詳細についてはこちらの記事でも紹介しています。

デジタルシフトが進むコールセンター現場

日本では、人材不足や国際的な競争力の低下を背景として生産性向上が求められてきました。そこで、ビジネスのあり方を変えるため「デジタルファースト」が掲げられ、コールセンターでもデジタルシフトが進んできました。

コールセンターのデジタルシフトの中核を担ってきたのはチャットボットやFAQサイトを中心とする人を介さないセルフ解決への誘導です。人材不足を背景としたデジタルシフトのため、ユーザーが自ら問題が解決できるようセルフ解決のチャネルが拡充されてきました。

デジタルシフトの限界

デジタルファースト推進により、各社が様々なセルフ解決手段を準備するようになりました。その結果、ユーザーが選択できるチャネルは多様化しましたが、その弊害としてチャネルが複雑化することでユーザーがどのチャネルを選択すればよいのかが分からなくなるという問題が起きています。

また、企業が提供できるセルフ解決の手段の多くは、一般的なFAQ回答にとどまっており、ユーザーが抱える個別の課題を解決するのには限界があります。そのため、現状でも多くのユーザーは問題を解決するために電話を利用しています。

実際、トランス・コスモスが2022年に行ったオムニチャネル利用実態調査では、全国の20代から70代に対して「最終的に解決した手段(チャネル)」を調査したところ、どの世代においても電話チャネルが最も選ばれています。

なぜ電話対応は減らないのか

では、なぜ電話チャネルがここまで支持されているのでしょうか。もちろん、デジタルチャネルに慣れていない年齢層や、デジタルチャネルを利用したが解決しなかったという消極的な理由で利用されるケースも多くありますが、実はそれだけではありません。

先のオムニチャネル利用実態調査では、一番最初に選ぶ手段(チャネル)も調査されており、その結果でも全世代で電話が選ばれています。つまり、デジタルチャネルに慣れている年齢層でも、一番最初の手段として電話を選んでいるのです。

これは、音声対応がテキストとは異なる優位性を持っていることを示しています。多くの人は「急いでいたら電話対応の方が早い」「PC・スマホを使って調べるのが面倒」など、「簡単、最短を求めて」電話対応を利用しているのです。

音声対応のデジタルシフトが必要

音声対応固有の優位性がある以上、どれだけ従来のデジタルチャネルへの移行を進めても一定数電話対応は残り続けます。そのため、電話対応のデジタルシフトも必要になってきます。

しかしながら、電話対応は長年デジタルシフトできず、有人対応が中心でした。一部、IVRを利用した自動対応も進められてきましたが、IVRは選択メニューを聞くのに時間がかかったり、表現がわかりにくいなどの問題もあります。実際、コールセンター白書2023年の調査では、IVRを便利だと感じている利用者が14.6%なのに対し、IVRに不便さを感じている利用者は85%を超えています。

そこで、従来のIVRの使いづらさも解消しつつ、電話業務のデジタルシフトを進めることができるボイスボットが注目されています。

これまでのボイスボットの使い方

ここ数年で、大手企業を中心に導入が進んできたボイスボットですが、これまでのユースケースを実際の事例も交えてご紹介します。

手続きに利用されるケースが大半

これまでのボイスボットでは、注文受付や資料請求など、処理手順が明確な手続き系の問い合わせに利用されるケースが大半でした。現在導入が進んでいるボイスボットは、まだ生成AIなどの導入には至っておらず、会話のシナリオは予め設計が必要になります。シナリオが複雑になると、開発やメンテナンスにかかる工数が膨大になり、それ相応の費用がかかります。

費用をかけても投資回収ができるほど、ボリュームのあるコールリーズンであれば問題ありませんが、そういった業務は多くはありません。結果的に、安価で実現が可能なシナリオでも処理が可能な手続き系のユースケースが大半となります。

事例:ヤマト運輸

手続き系でイメージがしやすい事例としてヤマト運輸のボイスボット活用事例があります。

ヤマト運輸では人材不足を背景に、2021年に本格的に「LINE AiCall(現:LINEWORKS AiCall)」を導入し、集荷受付の自動化を実現しています。現在では、コールセンターへの問い合わせの約8割がLINE WORKS AiCallを経由してAIで対応しており、大きなコール削減に繋がっています。

参考:LINEWORKS AiCall事例ページ 「あらゆる人に寄り添うコールセンターをAI×人で実現」

新しいボイスボットの使い方

これまで手続き系が主なユースケースだったボイスボットに新たな使い方をする企業が増えてきています。それはボイスボットを使い、ユーザーの問い合わせ内容を聴取し、適切な解決手段へ案内する使い方です。

IVRの代替手段としてのボイスボット

従来、ユーザーの問い合わせを事前に把握し、適切な部署に繋いだり、SMSなどデジタルチャネルに誘導する役割はIVRが担っていました。しかし、先に紹介した通り、IVRは利用者の負担が大きく顧客満足度を下げる可能性がありますし、ユーザーは提示された選択肢をプッシュ式で選択することしかできないため、把握できる問い合わせの粒度が限られていました。

ボイスボットによる用件の事前聴取では、ユーザーは自らの用件を自由発話で問い合わせすることができます。ボイスボットはユーザーの自由発話をAI技術を使って意図解釈をし、予め学習をされた内容に応じて、適切なコールリーズンへ振り分けることができます。

コールリーズンを事前に把握することで変わる運用

コールリーズンとは、ユーザーが問い合わせをする理由のことを指します。従来はお客様対応後に、オペレーターがCRMシステムなどに登録し、入電傾向の把握や対応の改善に繋げるためにデータを収集、分析しています。

従来、オペレーター対応後に記録しているコールリーズンを事前に把握することができれば、運用に大きな変化をもたらすことができます。例えば、人で対応しなくても良い内容はそのままボイスボットで対応をしたり、SMSなどを通じて適切なデジタルチャネルへ誘導することで、有人対応を削減し、人が対応すべき入電に集中することができます。入電には一般的に人でなくてもよいとされる問い合わせが20%以上あると言われており、これらを削減することができるようになるのです。

【出典:LINEWORKS ウェビナー資料より】

また、コールリーズンを事前に把握することができれば、リーズン別にスキルグループを分けて、対応できるオペレーターに接続することができるようになります。これは人員配置やオペレーターの育成効率化に繋がるだけではなく、一次解決率を高める効果があります。

このように、ボイスボットをIVR的に利用することで、センターを大きく効率化することできる可能性があるのです。

コールリーズン把握にボイスボットを導入している事例

ここからはすでにコールリーズンの把握にボイスボットを導入し、効果を発揮している事例を紹介します。

事例:銀行コールセンター

ある銀行のコールセンターでは、問い合わせ内容を事前に把握し、事前に学習した100を超えるFAQにマッチさせることで、有人対応を削減することに成功しています。

本事例の企業も、FAQ自体はサイトで検索できるようになっていましたが、多くのユーザーはサイトから自身が求めるFAQを見つけることができない、もしくは、そもそもサイトを見ずに電話チャネルを選択していたため、有人対応が減らないことが課題でした。

ボイスボットを利用して、まずは一次対応としてFAQを案内することで、これまでサイトだけではFAQに辿り着けなかったユーザーにもFAQを案内することができるようになり、一時解決率が劇的に上がっています。また、それでも解決ができない問い合わせだけをシームレスに転送し有人に繋ぐことで、ユーザーの手間を省きつつ、有人対応を削減することに成功しています。

まとめ

本記事では、ボイスボットの利用シーンについて、最新の活用事例を踏まえてご紹介しました。

従来の手続き系だけではなく、コールリーズンの事前把握という使い方で、大きく成果を挙げることができる企業が徐々に現れています。実はこれらのユースケースが実現しつつある背景には、AI技術の進化と、社会がAIに対して受容し始めているという背景があります。今後は生成AIの技術なども取り入れることで、さらなる進化が期待されます。

ボイスボットは今後もコールセンターでの活用が期待されるテクノロジーの筆頭といえるでしょう。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 上原 美由紀

    採用業務支援・求人広告事業会社を経て2019年9月に株式会社ウィルオブ・ワークに入社。
    コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属、キャリアアドバイザー職を経験。
    産育休を経て現在子育てにも奮闘中!
    ・趣味:音楽 ゲーム ディズニー お酒
    ・特技:タスク管理

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