オペレーターの定着率向上施策を解説│コールセンターの課題とは?

2024/11/12

コールセンター運営において安定した顧客満足度を得るためには、経験豊富なオペレーターの定着・長期就業継続が必要不可欠です。しかし、業界の特性上コールセンターのオペレーターの定着率は改善が難しく、長年の課題となっています。

では、定着率向上のために運営側はどのような対策を打つことができるのでしょうか。

本記事では、オペレーターが抱えるリアルな悩み定着率向上によるメリット離職防止・定着率向上施策をご紹介します。

オペレーターのモチベーションアップは従業員満足度に反映され、顧客への持続可能なサービス提供とNPS向上にも繋がります。本記事を参考に、今日から一緒に取り組んでみましょう。

コールセンター業界の特性

コールセンターは顧客の課題解決の最前線を担っています。

昨今、AI技術の進歩により、チャットボットやボイスボットを用いて顧客自身で問題を解決できる仕組みが増えてきました。しかし、ニーズの把握が困難で臨機応変な対応が必要なテクニカルサポートや、説得力や信頼性が必要不可欠な新規顧客開拓など、人間のオペレーターの需要が尽きることはありません。

一方でコールセンター業界は離職率が高い傾向にあります。24時間365日人員が必要なセンターもある中、慢性的な人手不足を解消するため、アルバイトや派遣社員などの非正規雇用者の割合が高いことが特徴の一つであるといえます。

参考記事:コールセンタージャパン2019年1月号

オペレーターが抱える問題・不安

それでは、実際にコールセンターで働くオペレーターはどのような問題や不安を抱えながら就業しているのでしょうか。あらゆるセンターで離職理由として挙がりやすい共通した要因をピックアップし解説します。

クレーム対応・カスタマーハラスメントによる心労

顧客の生の声が届くコールセンターにおいて、オペレーターは厳しく感情的な言葉やクレームを日常的に対処することになります。さらに、非対面のコールセンターでは対面の接客と比べ、顧客がオペレーターに攻撃的な言動や理不尽な要求を行うカスタマーハラスメントが発生しやすい環境にあります。

顧客対応で受けた精神的ストレスは体調に現れるケースもあり、コールセンターで働くことを検討するうえでも高いハードルとなり、離職にも繋がりやすい要因です。

不十分な研修体制

オペレーターは基本的な電話対応マナーに加え、顧客のニーズにその場で応える臨機応変な課題解決力が求められます。管理者にエスカレーションできる環境やマニュアルがあるとはいえ、リアルタイムの対応が求められるコールセンターでは、サービスの概要から専門的な知識まである程度頭に入れた状態で対応しなければなりません。

新人オペレーターが最も不安を感じやすいのは、基礎研修後のOJTやオペレーターデビューのタイミングです。

運営側は1日でも早く顧客対応に入ってもらうために、必要最低限の研修でオペレーターデビューを目指しますが、前述のとおりAIの進歩により顧客の自己解決力が上がっており、コールセンターのオペレーターにはよりレベルの高い回答内容が求められています。

研修内容と研修後の実際の対応内容にギャップを感じてしまい、早期退職を検討するオペレーターも少なくありません。

SV(スーパーバイザー)によって異なる運営方針

オペレーターが判断に迷った際に頼りになるSV(スーパーバイザー)ですが、「Aさんに聞いた処理方法とBさんに聞いた処理方法が異なり、どちらが正しいのか分からない…」という事象が発生すると、オペレーターは業務上の疑問点を解消できず次へ活かすことができません。結果として業務効率の低下や、曖昧な案内により顧客からの信用を失うことにもなります。

実際に顧客対応を行うのはオペレーターであるため、SVはその先の顧客満足度を見据えてエスカレーション対応を行うことが大切です。 また、このような事象が頻発すると上層部への不信感増長にも繋がりかねません。将来的に役職者を目指しているオペレーターが、SVの対応や就業環境を見てそのセンターでのキャリアアップを断念するケースも多くみられます。

無理なノルマやNPS目標設定

アウトバウンドであれば架電件数やアポイント件数、インバウンドであれば応対品質や対応にかかった時間など、業務上オペレーターに数値目標を課すことは必須になりますが、現実的ではないノルマや目標設定はオペレーターのモチベーション低下に繋がることになります。

また、目標があることは理解しつつも、どのように達成するべきか、達成までのプロセスを考えることが苦手なオペレーターもいます。

人間関係を構築しにくい就業環境

上記のように、オペレーターの退職に繋がる問題が生まれやすい環境であることに加え、非正規雇用者が多い点も人が離れやすい環境となる要因です。

キャリアアップのため長期継続前提で就業している人も、人の入れ替わりが激しく、人間関係を築きにくい点からコールセンターでの就業継続をあきらめる要因となってしまいます。

定着率が向上することによるメリット

ここまではコールセンターで働くオペレーターが抱える問題点を述べてきました。

離職に繋がりやすい問題に適切に対処し、オペレーターの定着率を向上させることで、顧客満足度の向上や採用コストの削減につながります。また、コールセンター運営上の他の課題点にもアプローチする余裕が生まれます。

離職の要因だけではなく、定着率向上によるメリットを知ることで、課題解決に向けた施策を立てやすくなります。今回は大きく3つのメリットについて解説します。

  • 生産性やNPSの向上
  • 採用費等の運営コスト削減
  • 業務環境の安定化

生産性やNPSの向上

同じ業務で長く勤務しているオペレーターは、蓄積された経験から迅速に顧客の課題を解決することができます。その母数が増えるほど、センター全体のクレーム減少や、対応時間の短縮等、顧客満足度の向上、企業のイメージアップが加速します。

長期継続できる環境さえ整っていれば、オペレーターは自身で業務効率や顧客満足度を上げることが可能となり、さらには自身のモチベーションを高めることもできるのです。

採用費等の運営コスト削減

定着率の向上は採用コスト削減にも繋がります。頻繁な採用活動が不要となり、新人育成のための研修にかかる時間の削減も可能です。

削減できたコストや時間は、下記のような形で既存のオペレーターへ還元することでよりプラスの効果を得ることができるでしょう。

中途研修や教育
 新たなスキル付与や、役職者内の知識統一のための研修

テクノロジーやシステムの導入
 柔軟な勤務形態受容のためのリモートワークシステムや、マニュアルの自動システム化

従業員の福利厚生の提供
 自動販売機の設置や食事補助、託児所の開設

業務環境の安定化

同じメンバーで長く働くことにより、チームやセンター内での連携が強化され、業務効率がアップします。また、メンバー間でのコミュニケーションが活発になり信頼関係が生まれることで、顧客対応で精神的ダメージを負ったとしても、同じ環境で頑張っている仲間がいるという安心感からモチベーションが高まります。

従業員の定着率が向上しメリットが作用し始めることで、従業員のライフワークバランスを重視したリモートワークの導入や、時短勤務の受容等も可能となり、従業員満足度が向上することとなります。

離職防止・定着率向上施策

オペレーターの課題を解決しながら、パフォーマンスを最大化させるために、運営側が取り組むべき施策を4つご紹介します。

充実した研修制度を整える

入社後初めての研修はもちろんのこと、オペレーターデビュー後も定期的なフォロー研修を行うことでオペレーターは安心してその後の業務に取り組むことができます。

入社直後の研修中は「何が分からないのか分からない」状態で、実際には顧客対応が始まってから自身の課題が見つかることがほとんどです。そのため、オペレーターデビュー後にも定期的に研修や質問会の機会を設けることで、オペレーターが自信を持つことができるだけではなく、日々の業務の中でのエスカレーションの質も上がり、業務効率改善にも繋がります。

オペレーターだけではなく、運営方針の統一のためSVや管理者に対しても研修や定期的なミーティングの時間を必ず確保しましょう。

SVにはオペレーターとしての実務経験知識だけではなく、オペレーターへ適切な指導を行うためのコミュニケーションスキル、センターの稼働状況や業務量に応じたスケジュール管理能力、センターの効率化や品質向上のための分析力などが求められます。

オペレーターのエスカレーションに正しく対応するための知識研修の他、SVとして意識を醸成するための研修も必要です。 自社内でなかなか研修の時間を取ることができない場合は、外部の研修サービスの利用も検討してみましょう。

参考記事:コールセンターSVの必要スキルとは│効果的な教育方法についてポイントを解説

ノルマやNPS目標の見直し

現在のノルマやNPS目標は現実的な数値でしょうか。再度、センター全体の数値を細分化したうえで目標を設定しましょう。「なぜその目標を達成しなければならないのか」という理由があることで、オペレーターは納得してその数値に向けて動くことができます。

また、目標を達成するためにどのような動きが必要なのか、目標が達成できない場合どうすれば達成できるのか、など設定後にチームごとの打ち合わせや個人面談を行うことで、ノルマや目標を一緒に追っていく仲間としての連帯感を生みだすことができます。

カスタマーハラスメント対策

カスタマーハラスメントはオペレーターのモチベーション低下はもちろん、最悪の場合心身の健康状態にも影響を及ぼします。さらに、対応が長引くことによる応答率の低下、企業イメージの損失等、生産性や他の顧客からのNPS等にも影響を及ぼすことになります。そのため、まずは発生するリスクの最小化と、発生した際に迅速に対応ができるようマニュアル化しておくことが重要です。

カスタマーハラスメントは顧客からのクレームが転じて発生することが多く、クレームとの明確な線引きが難しいため、センターごとの方針に従ってエスカレーションの判断基準やスクリプトの準備を行いましょう。

また、通話録音を行っていることの周知やガイドラインとポリシーの明文化、オペレーター側の感情コントロールトレーニングを行うことなどが、カスタマーハラスメントの発生リスクを最小限に抑える方法として挙げられます。

参考記事:【全センター必見】コンタクトセンターにおけるカスタマーハラスメント│原因、影響、予防と対応

定期面談の実施

オペレーターとの定期面談は、オペレーターのメンタルケアとしての手段だけではなく、その後のセンター運営での課題を発掘するチャンスでもあります。

懸念点の早期発見を行うためにも、定期的に面談を行い未然に離職を防ぎましょう。

従業員満足度を高めることで定着率が向上しますが、今から全ての施策を試みるには規模が大きすぎる…というコールセンターも多いのではないでしょうか。

ウィルオブ・ワークではセンターの中でSVや管理者として勤務をしながら、派遣スタッフの業務フォローやメンタルケアを行うフィールドサポーターとしての人材のご紹介が可能です。

まとめ

今回はコールセンターの定着率向上施策についてご紹介させていただきました。

定着率向上のためにはオペレーターが抱える課題を理解・解決し、同じ課題が生まれないよう環境を整えていくことが重要です。

その他参考記事:【解説】コールセンターで従業員満足度(ES)を向上させる実践的な方法

ウィルオブ・ワークでは、オペレーターが働きやすい環境づくりの一環としてフィールドサポーターやユニット派遣のサービスをご用意しております。

次回は、弊社ウィルオブ・ワークが提供する「フィールドサポーター」サービスについてコンテンツを配信します。コールセンター現場の課題解決のためのフィールドサポータとは?どのような役割を担うのか、フィールドサポータを導入するメリットについて解説します。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 田中 詩絵菜

    2019年4月、株式会社ウィルオブ・ワークに新卒入社。
    接客・販売に特化した事業部の専門職正社員として、携帯販売を約2年経験。
    2021年8月に総合職正社員としてコールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属。
    コーディネーター業務を経て、現在はキャリアアドバイザーを担当。

    ・趣味:音楽鑑賞、ダンス
    ・特技:スタッフさんのお名前や、趣味・特技などを覚えること

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