従業員体験(EX)とは?コールセンターでの重要性とEX向上施策を解説

2025/07/30

コールセンターやカスタマーサポートの現場では、日々の応対品質や顧客満足度に直結する“従業員の働きやすさ”が、今あらためて注目されています。
中でも「従業員体験(EX)」は、スタッフがどのように働き、どのように感じているかを見つめ直す重要な視点として、多くの企業が関心を寄せ始めています。

本記事では、従業員体験とは何か、その意義や注目される背景を整理したうえで、特にコールセンター業界における影響や効果について解説します。
あわせて、EXを高めるための取り組みや最新のトレンドもご紹介しますので、現場改善や人材定着にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

従業員体験(EX)とは?

従業員体験(Employee Experience)とは、従業員が企業との関わりのなかで経験するすべてを指す概念です。採用プロセスから入社、日々の業務、評価、キャリア形成、そして退職に至るまでの一連の流れを通じて、従業員が何を感じ、どのような体験をしているかを包括的に捉えます。
その中には、職場の環境や企業文化、上司・同僚との人間関係、業務内容、成長機会、報酬や福利厚生など、さまざまな要素が含まれます。

従業員体験は、従来の「人事管理」や「従業員満足度」といった枠組みよりも広く深い視点から、企業と従業員との関係性を見直す取り組みです。
従業員を単なる労働力ではなく、企業の成長に欠かせない重要な存在と位置づけ、その体験全体を戦略的に最適化していくことが、今後の組織づくりにおいてますます求められています。

従業員体験が重要視されている背景

従業員体験(EX)が注目を集める背景には、労働市場の変化と価値観の多様化があります。給与や待遇だけでなく、「やりがい」や「成長機会」、「柔軟な働き方」といった要素が、働く環境を選ぶうえで重要視されるようになってきました。転職が一般的な選択肢となった今、優秀な人材を採用し、長く活躍してもらうには、従業員体験の最適化が欠かせません。

さらに、従業員が職場でポジティブな体験を得られれば、自発的な行動や高いパフォーマンスにつながり、結果として顧客に対してもより良いサービスを提供できるようになります。
特に顧客対応が主業務となるコールセンターでは、従業員満足度の高さが、そのまま対応品質や顧客満足度に反映されるため、EXの改善がセンター全体の価値向上にも直結します

従業員体験が企業に与える影響

従業員体験(EX)の質は、特にコールセンターのような人が主役となる業務において、企業パフォーマンスに直結する重要な要素です。
本章では、EXが現場と経営に与える影響を詳しく見ていきます。

コールセンターにおける従業員体験の影響

コールセンターは、従業員体験が業務の安定性や品質にダイレクトに反映されやすい代表的な業態です。昨今は人手不足の影響もあり、都市部を中心に人材確保がますます難しくなっています。特に非正規雇用者の割合が高いセンターでは、人材の定着が大きな課題です。

もともとストレスの多い環境であるコールセンターでは、働きづらさを感じた従業員が早期に離職するケースも少なくありません。従業員体験を軽視すれば、人材の流出が加速し、結果的に残ったメンバーへの業務負担が増加。その負担がさらなる退職を呼び、悪循環に陥ってしまいます。
この“負のスパイラル”を防ぐには、従業員が安心して働ける環境づくり、つまりEXの改善が欠かせません。

顧客満足度と従業員満足度の関係

従業員体験が重要視されるもう一つの理由に、「サービスプロフィットチェーン」という考え方があります。これは、従業員満足度(ES)が業務パフォーマンスや顧客満足度(CS)を高め、最終的に企業の業績向上につながるというものです。

コールセンターでは、顧客満足度の向上が最優先の目標として掲げられるケースが多く見られます。しかし、CSを高めるには、まずは現場で応対する従業員自身の満足度を向上させる必要があります。
「顧客満足度」と「従業員満足度」の両輪をバランスよく強化し、戦略的に取り組むことが、持続的な成果につながる鍵となるでしょう。

従業員体験向上のための施策

従業員体験(EX)を高めるには、場当たり的な対応ではなく、計画的かつ継続的な取り組みが欠かせません。
本章では、EX向上を実現するために企業が押さえておきたい、下記4つの主要な施策について解説します。

  • 効果的なコミュニケーション
  • トレーニングとキャリア開発
  • 適切なフィードバックと評価
  • 快適な職場環境

効果的なコミュニケーション

良好な従業員体験(EX)を支えるうえで、効果的なコミュニケーションは欠かせない基盤です。

組織内でオープンかつ透明性の高い対話を促すことで、従業員の信頼感や帰属意識を高めることができます。朝礼・夕礼などの全体ミーティングに加えて、SVやメンターとの1on1ミーティングといった個別の対話機会を設けることも効果的です。

また、社内SNSやニュースレターのようなデジタルツールの活用も有効です。従業員の声に耳を傾け、フィードバックを受け取る仕組みを整えることで、現場の課題を早期に把握し、柔軟に対応することができます。

▼コミュニケーションの工夫についてはこちらの記事をご覧ください
ノンバーバルコミュニケーションとは?コールセンターでの活用法とその効果を解説

トレーニングとキャリア開発

従業員の成長を支える研修制度やキャリア支援は、EX向上に直結します。

特に離職率の高いコールセンター業界では、初期研修の質が定着率を左右するケースも多く見られます。業務理解が浅いまま現場に立たせてしまうと、スキル不足や成功体験の欠如が不安要素となり、早期離職の原因になります。

個々の進捗に応じた段階的なトレーニングや、メンタープログラム・e-Learningなどの継続的学習機会を整備することで、安心して業務に臨める環境を提供できます。

さらに、キャリアパスを明示し、社内昇進の機会を設けることで、将来像を描きながら働くことが可能になります。定期的なスキル評価と育成計画の策定を通じて、従業員のモチベーションを維持・向上させることが重要です。

適切なフィードバックと評価

フィードバックと評価の在り方も、従業員の意欲や働きがいに大きく関わります。

定期的な1on1ミーティングや業務レビューを通じて、従業員が自身の課題や成長点を客観的に理解できる環境を整えましょう。必要に応じてタイムリーなフィードバックを行うことで、不安の払拭や早期改善にもつながります。

また、評価結果を報酬制度やキャリア開発と連動させることで、従業員の努力を正当に評価し、報いる仕組みを構築できます。納得感のある評価制度は、長期的な定着や高いパフォーマンスにも寄与します。

快適な職場環境

働きやすい物理的環境の整備も、EXの向上に欠かせない要素です。

清潔で明るいオフィス、適切な温湿度管理、疲れにくい椅子やデスクの導入など、基本的な働く環境を整えることが第一歩です。
また、休憩スペースも重要です。リフレッシュできる空間があることで、気分転換がしやすくなり、パフォーマンスの維持にもつながります。

物理的な快適さは、従業員の満足度や集中力に直結します。小さな配慮の積み重ねが、EX全体の質を底上げすることを意識しましょう。

従業員体験向上の最新トレンド

従業員体験の向上に関する取り組みは、社会の変化や技術の進歩に伴い常に進化しています。最新のトレンドを取り入れることで、より効果的な従業員体験向上が可能です。

カスハラ対策

近年、カスタマーハラスメント(カスハラ)は、コールセンターをはじめとした接客現場で深刻な課題となっています。悪質なクレームや暴言は、従業員の精神的負担を増大させ、働く意欲や定着率を著しく低下させる要因となります。
そのため、従業員体験を守るうえでも、カスハラ対策は重要な取り組みとして位置づける必要があります。

具体的には、以下のような対策が効果的です。

  • カスハラに関する社内ガイドラインや対応マニュアルの整備
  • 対応力を養うためのロールプレイや研修プログラムの実施
  • 被害報告を受け止める相談窓口・サポート体制の設置
  • AIによる感情分析や通話記録管理による早期発見とエスカレーション支援
  • 顧客に向けた「カスハラ防止ポリシー」の可視化・啓発活動

顧客次第のため完全に防ぐことはできないかもしれませんが、企業側がカスハラに対して真剣に取り組んでいる姿勢を見せることが従業員の安心にもつながるでしょう。

テクノロジーの活用

従業員体験の向上には、テクノロジーの活用も欠かせません。業務の負荷を軽減し、煩雑さを取り除くことで、働きやすさと満足度を両立することができます。

たとえば以下のような技術活用が効果を発揮します。

  • 社内手続きの効率化ツール
    入退社手続き、給与照会、福利厚生申請などを簡素化することで、従業員が必要な情報に迅速にアクセスできるようになります。
  • 業務支援システムの導入
    顧客情報の自動表示やFAQレコメンドなど、AIを活用した業務サポートツールは、業務負担を軽減し応対品質の安定化にもつながります。
  • 学習・スキルアップ支援
    オンライン学習システムや、生成AIを活用した模擬通話トレーニングなどを導入することで、従業員が自分のペースで継続的にスキルを高められる環境を整備できます。

これらのツールは、「働きやすい」「成長できる」と感じられる環境を提供し、EXの向上だけでなく、顧客満足度や業務成果の向上にも直結します。

まとめ|従業員体験を見つめ直すことが、より良い組織づくりにつながる

従業員体験(EX)の向上は、日々の業務を支える現場の声にしっかり耳を傾けることから始まります。
コミュニケーションの工夫や育成支援、働きやすい環境づくりといった基本の取り組みに加えて、カスハラ対策やテクノロジーの活用といった新しいアプローチも組み合わせながら、少しずつ前進していくことが大切です。

従業員が「ここで働いてよかった」と感じられる環境は、自然と良いサービスや成果を生み出していきます。
特別なことではなく、日々の積み重ねが、従業員・お客様・組織全体にとってプラスになる循環を生み出していくはずです。

これからのセンター運営や組織づくりにおいて、従業員体験の視点を取り入れることが、長く愛される企業への第一歩になるかもしれません。

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 上原 美由紀

    従業員1万人以上の企業の5社に1社が導入している採用支援・求人広告会社にて、アルバイト・パート採用や中途採用を中心に、約3年間にわたり企業の採用支援に従事。
    2019年9月より株式会社ウィルオブ・ワークに入社し、コールセンター・オフィスワークに特化した人材サービスの事業部でキャリアアドバイザーを担当。現場で培った知見をもとに、コンタクトセンター領域はもちろん、採用・人材分野に関する実践的かつリアルな情報発信を心がけている。

    現在は子育てと仕事を両立しながら、日々奮闘中!

    趣味:音楽、ゲーム、ディズニー、お酒
    特技:タスク管理

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