コールセンターのSL(サービスレベル)とは?KPI設計から運用改善まで徹底解説
2025/05/29
- アウトソーシング
- システム導入
- 品質向上
- 顧客満足度向上

「SL(サービスレベル)って、結局どれだけ重要なの?」
コールセンターの現場で働く中で、一度はそう感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
SLは、応答品質を示す代表的なKPIの一つとして多くの現場で活用されています。
しかし実際には、「SLを目標通りに達成するのが難しい」「改善しようにも、何から手をつければいいのかわからない」といった課題に直面するケースも少なくありません。
本記事では、SLの定義や計算方法などの基礎知識から、改善に向けた具体的な施策、さらには他のKPIとの関係性や運用体制の見直しまでを解説します。
「SLを“ただの数値”ではなく、意味のある運営指標として使いたい」
そんな方に向けた、実践的なガイドとしてご活用ください。
SL(サービスレベル)とは?
SL(サービスレベル)とは、一定時間内にどれだけの着信に応答できたかを示す指標で、コールセンターにおける代表的なKPIのひとつです。
対応スピードを数値化することで、運営体制がどれだけスムーズに機能しているかを可視化できます。
この指標は、単にオペレーターの処理能力を測るだけではなく、「つながりやすい」ことで顧客満足度にも直結する要素です。
そのため、多くのコールセンターでは業務効率や品質の改善にSLを活用しています。
SLと応答率の違いとは?
SL(サービスレベル)と同様に「つながりやすさ」に関する指標として「応答率」がありますが、それぞれ計測しているポイントが異なります。
指標 | 計測の焦点 | 含まれる要素 |
SL (サービスレベル) |
設定した時間内の応答率 | 応答スピードを評価 |
応答率 | 応答の有無 (時間の制限なし) |
応答できたかを評価 |
SLは、一定時間内に何%のコールに応答できたかを示す指標で、応答のスピードに焦点を当てています。
一方、応答率は、着信全体のうち応答できた割合を表し、時間に関係なく“応答できたかどうか”を評価します。
運営状況を正しく把握するには、SLでリアルタイム体制を、応答率で全体カバー率を把握するように目的に応じて使い分けることが大切です。
▼応答率に関する記事はこちら
「コールセンターの応答率とは?適正目安や低下の原因、効果的な改善策を解説」
SLが注目される背景と、現場で求められる理由
SLが注目される背景には、コールセンターが“企業の顧客接点”としての役割を強め、プロフィットセンターとしての機能が期待されるようになったことが挙げられます。
かつてはコスト削減の手段とされていたコールセンターも、今では顧客体験やブランドイメージを左右する重要なチャネルとして再評価されています。
一方、『コールセンター白書2024』によると、SLの目標を明確に設定している企業は47.0%にとどまり、半数以上の企業(53.0%)は未設定という状況です。

また、同調査では、重視している応対品質の指標として「放棄呼率(応答率)」を挙げた企業が81.4%にのぼることも明らかになっています。これにより、まずは「電話に出られるかどうか」という応答体制の安定が重視されていることがうかがえます。

とはいえ、応答率は「出られたかどうか」を示す基本的な指標である一方、SLは「どれだけ早く出られたか」を測るものです。
両者は切っても切れない関係にあり、SLを活用することで、より質の高い顧客対応が可能になります。
応答率を土台に、応答スピードという視点を加えることで、SLは現場で重視されるKPIとして改めて注目されています。
SLの計算方法と目標設定
SLの代表的な計算式
SL(サービスレベル)は、一般的に以下のような計算式で求められます。
SL(%)=指定時間内に応答できたコール数÷全体の着信件数×100
SLでは、特定の「応答時間の上限」を設定するのが一般的です。たとえば、20秒を上限に設定した場合、「20秒以内に応答できた割合」がSLとして算出されます。
この指標は、リアルタイムでの入電状況や人員配置の適正さを確認する際にも活用され、現場の負荷やオペレーターの対応力を可視化する手段としても重要な役割を果たしています。
たとえば、着信件数が1,000件あり、そのうち20秒以内に応答できた件数が850件だった場合、SLは以下のように算出されます。
850÷1000×100=85%
目標設定の考え方と注意点
SLを効果的に活用するには、「どの水準を目標とするか」を明確にすることが欠かせません。
一般的に知られているのは「20秒以内に80%の着信に応答する」という基準ですが、これはすべての現場にとって最適とは限りません。
以下の観点を踏まえてSLの基準を設定することが重要です。
- 顧客の求める応答スピード
- オペレーターの配置やシフト体制
- 入電の波(時間帯による繁閑差)
- 他KPI(応答率・放棄呼率やAHT)とのバランス
無理に高いSL目標を設定すると、応対品質が犠牲になったり、現場の負担が大きくなったりするリスクがあります。
逆に、目標が低すぎると、顧客満足度を損ねる可能性が出てきます。
つまり、SLは「高ければ良い」わけではなく、自社の運営体制や業務特性に合った“現実的な目標値”を設けることが重要なのです。
SLを改善するために押さえるべき3つのポイント
SLを改善するためには、対応スピードだけでなく、体制や仕組みなど複数の観点から見直していくことが求められます。
本章では、特に重要な3つの観点から改善ポイントを解説します。
応答時間(AHT)を短縮する工夫
SLを改善するうえで欠かせないのが、AHT(平均処理時間)の最適化です。
AHTは通話開始から後処理までの平均対応時間を示す指標で、ATT(平均通話時間)とACW(平均後処理時間)の合計で計算されます。
AHTが長くなると、新たな着信への対応が遅れ、結果的にSLが下がる要因となります。とはいえ、単に対応時間を短くするだけでは、応対品質が低下し、クレームや再入電の増加につながるおそれがあります。
重要なのは、「無駄な時間を省きつつ、必要な対応は丁寧に行う」ことです。以下のような工夫が効果的です。
- よくある問合せに対するスクリプトやFAQの整備
- システムやツールの見直しによる操作時間の短縮
- • 応対のばらつきを減らすための研修や教育の実施
こうした取り組みによって、対応品質を維持しながらAHTを最適化し、SLの向上につなげることができます。
▼AHTに関する記事はこちら
「コールセンターのCPH・ATT・AHTとは|生産性指標の意味と計算方法・改善ポイントを解説」
適正な人員配置と予測対応
SLの安定化には、人員配置の適正化と入電数の予測精度を高めることが欠かせません。
どれだけオペレーターの対応力があっても、入電の波に対して適切な人数が確保できていなければ、SLは安定しません。
まず大切なのは、時間帯別の入電傾向を正確に把握し、それに合わせて人員を調整することです。
たとえば、午前中や週初めに入電が集中する傾向がある場合、その時間帯にオペレーターを厚めに配置することで、応答遅延を防ぐことができます。
また、ワークフォースマネジメント(WFM)を活用すれば、過去の入電データに基づいて必要な人員数を算出し、シフトを最適化できます。
入電予測と人員配置を戦略的に設計することで、応答の遅れやSLの低下を抑えることが可能になるのです。
▼ワークフォースマネジメント(WFM)に関する記事はこちら
「コールセンターのワークフォースマネジメント(WFM)とは?その重要性と導入メリットを徹底解説」
システムを活用した入電導線の最適化
SLの改善には、入電の“受け方”そのものを見直すことも重要です。
限られた人員で安定した応答体制を維持するには、「すべての問い合わせをオペレーターが受ける」状態を脱却する必要があります。
たとえば、IVR(自動音声応答)を活用すれば、問い合わせ内容に応じて適切な部署や担当者に振り分けることができ、対応の集中を防げます。
さらに、視覚的に操作できるビジュアルIVRや、会話形式で一次対応を担うボイスボットの導入により、ユーザーが“電話をしなくても解決できる”環境を整備できるでしょう。
加えて、チャットボットやFAQページの整備によって自己解決チャネルを強化すれば、「本当に電話が必要な問い合わせ」を選別でき、限られた人員でも高いSLを維持しやすくなります。
SLが不安定なときは“体制の立て直し”を考えるタイミング?
SLが思うように安定せず、改善策を講じても状況が変わらない…。
そんなときは、現場の努力だけでどうにかしようとするのではなく、体制そのものを見直す視点が必要かもしれません。
本章では、SLが不安定な背景にある運用上の課題と、その打開策としての考え方を見ていきます。
現場が疲弊する原因とは?
SLが不安定な状態が続いているとき、その背景には運用体制そのものに課題があるケースが少なくありません。
たとえば、慢性的な人手不足や入電の集中に対応しきれず、「シフトが組めない」「オペレーターが休憩を取れない」「着信の波に追われて対応が雑になる」といった現象が起こり、結果的にSLが下がり、現場の疲弊が進む悪循環に陥ります。
さらに、SLを維持するためのプレッシャーが現場にかかりすぎると、離職率の上昇や応対品質の低下といった別の問題も発生します。
SLが目標値を下回っているだけでなく、「改善の兆しが見えない」「現場の余力がなくなっている」と感じたときは、応答速度の問題にとどまらず、体制全体の見直しを考えるべきタイミングかもしれません。
委託や外部支援で体制改善を図るには
SLの改善が現場の工夫だけでは難しいと感じるとき、業務の一部を外部に委託することも、検討すべき選択肢のひとつです。
たとえば、入電の多い時間帯や定型的な問い合わせだけを委託することで、自社対応の負荷を抑えながら、体制を安定させることが可能になります。
外部パートナーによっては、SLを指標にした体制構築や運用に慣れているケースも多く、一定の効果が見込めるでしょう。
また、自社だけでは見えにくい課題についても、外部の視点が入ることで新たな気づきにつながることもあります。
まずは、自社の課題に合った運用体制とは何かを整理しながら、必要に応じて支援を検討してみるのも良いかもしれません。
まとめ|サービスレベル改善は“仕組みと戦略”の見直しから
SL(サービスレベル)は、単なる数値ではなく、顧客体験やセンター運営全体の質を左右する重要な指標です。
その定義や計算方法を正しく理解したうえで、応答率との違いや他のKPIとの関係性も踏まえて運用することが、より効果的な活用につながります。
また、SLの改善には、AHTの見直しや人員配置、入電導線の最適化など、多角的な取り組みが必要です。
現場の努力だけで限界を感じる場合は、体制そのものの再構築や外部支援の活用も前向きな選択肢になるでしょう。
サービスレベルを“守るべき数値”としてではなく、顧客と現場双方の満足度を高めるための仕組みづくりの出発点として捉え、自社にとって本当に意味のあるKPI設計を目指していきましょう。
SLの改善に取り組んでいるけれど、なかなか数値が安定しない…
「SL改善のために何から手をつければいいかわからない」 「改善施策を試しても、なかなか効果が出ない」 そんなお悩みを感じている場合は、現場の努力だけでなく、体制や運用設計そのものを見直すタイミングかもしれません。 WILLOFでは、コールセンターの運営設計やKPIの見直しに関するご相談をはじめ、現場の課題や目標に合わせた最適なプランのご提案も可能です。 「まずは話だけでも聞いてみたい」といった段階でも大歓迎ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
Writer編集者情報
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コネナビ編集部 上原 美由紀
従業員1万人以上の企業の5社に1社が導入している採用支援・求人広告会社にて、アルバイト・パート採用や中途採用を中心に、約3年間にわたり企業の採用支援に従事。
2019年9月より株式会社ウィルオブ・ワークに入社し、コールセンター・オフィスワークに特化した人材サービスの事業部でキャリアアドバイザーを担当。現場で培った知見をもとに、コンタクトセンター領域はもちろん、採用・人材分野に関する実践的かつリアルな情報発信を心がけている。
現在は子育てと仕事を両立しながら、日々奮闘中!
趣味:音楽、ゲーム、ディズニー、お酒
特技:タスク管理