カスタマーサポートとは│CS向上のカギと目的・役割を徹底解説

2024/10/16

かつて、「コストセンター」とよばれていたカスタマーサポート業務は、今や「プロフィットセンター」と呼ばれるようになりました。顧客満足度向上を課題とする企業にとって、カスタマーサポートは単なるコストではなく、重要な価値を提供する部門となっています。

本稿では、カスタマーサポートの運営目的や役割、具体的な業務内容やオペレーターに必要なスキルを網羅的に理解できるよう解説しています。

あわせて、カスタマーサポート運営を成功させるポイントについても詳しく解説します。 これからカスタマーサポートを立ち上げる企業ご担当者様、運営改善を図りたい企業ご担当者様にとってお役に立てる情報をまとめましたので、ぜひご覧ください。

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カスタマーサポートとは│意義や役割を解説

カスタマーサポートは顧客が製品を正しく、かつ効果的に使用できるよう支援するためのカスタマーサービスの一種です。商品購入前から購入後のサポート、担当部署との連携など、対応は多岐にわたります。

カスタマーサポートの目的

カスタマーサポートの目的は、顧客の不満や疑問を解消することです。その結果、顧客満足度が向上し、企業の売上・利益に直接的に貢献する重要な役割を担っています。ただ電話対応をするだけに留まらず、顧客満足度調査の実施やVOC(顧客の声)データの収集・分析、関係部署へフィードバックを行うなど、さまざまな業務を担います。

カスタマーサポートの業務内容

次に、カスタマーサポートが果たす具体的な役割について見ていきましょう。

■カスタマーサポート業務(コンタクトセンター業務全般)

カスタマーサポート業務は、主に顧客からの問い合わせ対応が中心です。電話対応に加え、昨今では時代や顧客ニーズの変化に伴い、チャットやメール、SMSなど多様なチャネルでの対応が求められるようになっています。

顧客からの問い合わせの内容は多岐に渡ります。以下に、購入前から購入後に至るまでの各フェーズのカスタマーサポート業務をまとめましたのでご参考ください。

■顧客管理・VOCデータ収集・データ分析

カスタマーサポート業務は、顧客対応のみならず、顧客情報の管理や対話履歴の保存、商品・サービスに関する要望や意見などの蓄積も含まれます。
業務責任範囲によっては、VOCデータの収集や分析を行い、その結果をもとに顧客満足度向上にむけた施策の展開を担う場合もあります。

■関係部署への連携

カスタマーサポート業務は、顧客と直接接点が持てる重要な業務を担います。顧客からの製品やサービスに関するフィードバックを、製品開発部門などの関連部署に適切に伝達し、品質改善に役立てることも大切な役割です。

カスタマーサポート担当者に必要なスキル

この項目では、カスタマーサポート業務を担当するオペレーターに必要なスキルをまとめます。一般的な視点での解説に加え、実際にカスタマーサポートの現場で、フィールドサポーターとして勤務経験のある筆者の考えもまとめておりますので、ぜひご参考ください。

■コミュニケーション能力

カスタマーサポート担当者にとって最も重要なのは、コミュニケーション能力です。このスキルが不足していると、電話対応に対する苦手意識や対人コミュニケーションへの不安から、カスタマーサポートの現場で長く働き続けることが難しくなる場合があります。
筆者の経験からも、「人と話すことが好き」「誰かの役に立ちたい」「電話対応が得意」といった方が、能力の有無に関わらず、コンタクトセンターの現場で活躍している傾向にあります。

ここで、コミュニケーション能力について少し掘り下げてみましょう。
コミュニケーション能力とは、対人における円滑な意思疎通を図る能力のことをいいます。カスタマーサポートでは、顧客の声を傾聴し、相手の気持ちや要望を汲み取る力、顧客の抱える課題を解決するための適切な提案や対応が求められます。
最初からこれらの能力を備える必要はなく、研修を通じて徐々に鍛えられるものです。

■ロジカルシンキング(論理的思考)

ロジカルシンキング(論理的思考)についても、オペレーターが備えるべき力だと考えます。
ロジカルシンキングとは、直感や感覚で物事を捉えるのでなく、物事を道筋立てて論理的に考え、結論を導き出す思考法です。
この思考法は、顧客対応時にはもちろん、SV(スーパーバイザー)へのエスカレーション対応時や相談時にも役立ちます。
顧客対応時には、「なぜ?」や「他には?」という問いを立て、顧客に適切な質問をすることで、本質的な問題を明確にできます。矛盾を排除し、顧客と適切にコミュニケーションをとることができるのです。

SVへのエスカレーション対応依頼や相談時には、ロジカルシンキングを兼ねそろえているとアウトプットの質が高まり、業務効率化につなげることが出来ます。
例えば、顧客からサービスについてのクレームがあり、エスカレーションを求められた場合を想定してみましょう。
まず、SVに結論(顧客の要望)を伝え、その後、理由やクレームに至った背景を説明するという順序で話すことで、SVの理解が早まり、迅速かつ適切な判断が可能になります。

ロジカルシンキングを鍛えることで、MECE(抜け漏れなくダブりなく)の観点でも安心して顧客対応を進めることができ、アウトプットの質が高まることで、効率的に物事を進められるようなります。

■事務処理能力

カスタマーサポート業務は、顧客と対話することだけでなく、パソコン操作のスキルも必要になります。顧客管理や対話履歴の入力、場合によってはメールやチャットでの対応など、パソコンを使った作業が求められます。
では、どの程度のスキルが必要と言えるのか?といった点については、業務内容により異なりますが、筆者の経験からするとタイピングスピードは必要な要素だということです。

タイピングがスムーズだと、顧客と対話しながら顧客の要望や対話内容を記録すること(同時操作)ができ、業務に必要なパソコン操作をスムーズに行えるため、AHT(平均処理時間)の短縮につながります。

筆者は以前、某大手IT企業の手続き専門の部署にフィールドサポーターとしての勤務経験があるのですが、当時タイピングスキルに不安があり、苦戦していました。
パソコンを3台使用する部署だったため、コールセンター未経験者からするとかなりの負担でした。しかし、タイピングスピードが向上し、顧客対応に慣れることで、これらの問題は次第に解消されます。

さらに、フィールドサポーターとして、自社派遣スタッフの教育に携わる中で実感したことがあります。タイピングスピードが速いオペレーターほど業務に慣れるのが速く、顧客対応もスムーズだということです。
これはあくまで私個人の経験に基づくものですが、ぜひご参考にしていただければと思います。

カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違い

この章では、カスタマーサポートとよく似た言葉である「カスタマーサクセス」との違いについてみていきましょう。

カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いは、主に目的やアプローチの仕方、担当者に求められるスキルにあります。
カスタマーサポートの目的は、顧客の問題解決でありそのアプローチは受動的です。一方で、カスタマーサクセスの主な目的は、顧客の成功を支援し、その結果として企業の成長や利益の向上を促進することにあります。アプローチの仕方は能動的で、積極的なサポートが必要となります。

▼カスタマーサクセスについて詳しく解説している記事がありますので、ぜひご覧ください。
カスタマーサクセスとは|カスタマーサポートとの違い・基本概念を解説

カスタマーサポートの業界動向

かつて「コストセンター」と呼ばれていたカスタマーサポート業務は、今や「プロフィットセンター」として認識されるようになりました。ITツールの発展や、顧客ニーズの変化に伴い、存在意義も変わりつつあります。
この章ではカスタマーサポートの業界動向と、業界トレンドについてデータを用いて解説します。

コロナ渦以降のBPO市場の動向

ミック経済研究所が発表した「BPO総市場の現状と展望 2023年度版」によると、2023年のBPO市場は、コロナ特需の反動により成長率が2.5%増に留まりました。しかし、コールセンター業界の市場は1兆円規模を維持し、ゆるやかに成長を続けています。

2023年度以降コロナ禍による特需が収束し、カスタマーサポート業界は成熟市場に移行中のため、新規案件の獲得が難しくなると予想されます。今後は、BPO各社間での競争が一層激化すると見込まれています。

カスタマーサポート業界のトレンド

生成AIの登場による業務効率化

2022年に登場したChatGPTは、当時カスタマーサポート業界に大きな衝撃を与えました。ChatGPTは、OpenAI社が提供する文章生成AIツールであり、高度な自然言語処理能力によってさまざまな顧客対応業務の効率化を実現しています。

生成AIの種類についてはChatGPT以外にも、MicrosoftのAzure OpenAIや、GoogleのCloud AIなど、各社が提供するAIサービスが続々と展開されています。
2023年には、JR西日本カスタマーリレーションズが、株式会社ELYZAと協力し、国産AI(株式会社ELYZA提供の『ELYZA Brain』)とGPT系外国産AIを組み合わせた大規模言語モデルの業界最速導入を果たし、注目を集めました。(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000047565.html

生成AIの導入においては、ハルシネーションリスク(AIが事実と異なる情報を生成するリスク)が懸念されていましたが、技術の進化により、このリスクも徐々に解消されつつあります。

現在もなお、生成AIの導入はカスタマーサポート業界全体で進んでおり、業務効率化と顧客満足度の向上を目指す企業にとって、引き続き注目したいトレンドです。

▼コネナビ編集部が株式会社ELYZAご担当者へ取材した記事もぜひご覧ください。

【取材】株式会社ELYZA│たった2カ月で導入成功-コールセンター×AI社会実装の秘訣とは-
(2023年4月掲載)

オムニチャネル化によるシームレスな対応

業務効率化を図るためのツールは、生成AIだけにとどまりません。チャットボットボイスボットFAQシステムなども、顧客満足度の向上を目指す企業に広く導入されています。これらのツールは、時代の変化や顧客の購買行動の多様化に伴い、急速に進化し、新たなソリューションも次々と登場しています。

特に注目されているのが、「オムニチャネル化」です。オムニチャネル化は電話やメール、チャットやSNS、店頭販売など、どのチャネルを利用しても一貫したサービスを提供できるようになります。顧客が自分にとって最適なチャネルを選択できることは、顧客のニーズに迅速かつ的確に対応できるため、顧客満足度の向上が期待されます。

さらに、オムニチャネル化は企業の業務効率を向上させます。チャネル間での情報共有がスムーズになることで無駄な作業や対応の重複が減少し、従業員のストレス軽減にも寄与するのです。

結果として、企業は効率的な運営を実現し、顧客との信頼関係を強化することが実現できるようになります。

▼オムニチャネルとは?具体的な解説記事はこちら
オムニチャネルとは?メリットやコールセンターでの推進方法や取り組み事例を解説

カスタマーサポート業務(コールセンター)は無くなるのか?といった議論がしばしばされますが、完全に消える未来はないと考えます。
業務効率化の観点では、間違いなくAI導入によるカスタマーサポート業務の効率化は進むものの、複雑な対応や人間らしい対応は人が担う必要があります。
今後もカスタマーサポート業務を取り巻く環境は変化していくため、動向観察を行いながら柔軟な対応をしていきましょう。

カスタマーサポート運営の成功のカギ

それでは、顧客満足度向上が期待できるカスタマーサポート運営の成功のカギについて、解説していきます。自社内での取り組みと外部サービスの活用という2つのアプローチに分けて考えてみましょう。

カスタマーサポート業務の標準化

コールセンターの現場で起こりうる問題として「業務マニュアルが整備されておらず、応対が均一化されていない」「オペレーターの対応が均一でなく、応対品質が安定しない」といった点が挙げられます。
特に、カスタマーサポート業務の立ち上げ当初は、担当者にノウハウがなく、マニュアル整備が後回しになることがあります。これにより、現場は多くの問題を抱えています。

センターの安定稼働を目指すために、カスタマーサポート担当者が取り組むべきことは次の2点です。

業務マニュアルの整備による業務の標準化

なぜ業務の標準化を行う必要があるのでしょうか?それは、業務プロセスや、製品・サービスの品質について一定の基準を設けることで、次のようなメリットがあるからです。

業務効率化:

マニュアル整備により業務フローを明確にすることで、無理・無駄・重複作業がなくなり円滑なセンター運営を行うことが可能になります。

一貫性が保たれ品質が向上する:

業務標準化により、センター全体に一貫性が保たれるようになります。これにより、誰が対応しても同じ結果が得られ、応対品質が安定し、顧客に対して高品質なサービスを提供できるようになります。

オペレーターやSV育成による応対品質の均一化

この項目では、オペレーターとSV(スーパーバイザー)の育成方法について、それぞれに分けて解説します
カスタマーサポート運営で一番のカギを握るのが、実際に顧客対応を行うオペレーターの応対品質です。オペレーターの応対品質が悪ければ、企業のブランド価値が低下し、顧客離れにつながる恐れがあります。

そこで、現場最前線で対応するオペレーターの教育と、オペレーターを管理するSVの育成について必要なポイントをまとめます。

オペレーターの育成

カスタマーサポート業務を担うオペレーターには、顧客対応における事前研修が不可欠です。業務内容や業務難易度に応じて、研修内容や期間などは変動します。
研修担当者は、オペレーターが顧客対応できる合格ラインを決め、それに基づいた研修マニュアル作成を行いましょう。
以下は一般的なカスタマーサポート業務の研修ステップです。

※OJT(On-the-Job Training)とは、トレーナーが研修対象者に対して実務を通して知識やスキルを習得させる方法です。コールセンターでは、トレーナーが顧客対応をしている研修対象者に対して、適宜アドバイスをします。

▼具体的な研修方法については関連記事をご覧ください。
コールセンター教育のポイント|主な研修の流れについて解説

SV育成

カスタマーサポート業務の第一線で対応するオペレーターを統括するSVの教育についても、円滑なセンター運営を行う大事な要素です。SVの役割はオペレーターのマネジメントから、センター全体の運営管理など多岐に渡ります。
特に対オペレーターの育成や指導法に一貫性がない場合、センター全体の応対品質低下につながる恐れが考えられます。

▼SVの役割や必要スキル、育成のコツについて知りたい方は関連記事をご覧ください。
コールセンターSVの必要スキルとは│効果的な教育方法について解説

顧客自身で問題解決できる仕組みづくり

顧客自身で問題解決できる仕組みづくりを行うことも、重要な要素です。特に、企業のWEBサイトに掲載されているFAQ(よくある質問集)の見直しや、製品・サービスのマニュアルを充実させることが効果的です。

コールセンター白書2022年のデータによると、直近で問い合わせをしたケースにおいて、コールセンターに電話する前にその会社の「よくある質問集(FAQ)」などを確認した人の約6割が、問題解決に至らなかったことが分かっています。

このデータが示すように、顧客の自己解決率をあげる施策は、顧客満足度向上や、呼量の削減、コスト削減につながるメリットがあるため、注力したいポイントです。

外部サービスを利用する

自社のノウハウだけでカスタマーサポート業務を運営することに限界がある場合は、外部サービスの利用を検討されることをお勧めします。 この項目では「アウトソーシングサービスの活用」について解説します。

カスタマーサポートのアウトソーシング

カスタマーサポート業務をアウトソーシングすることも、カスタマーサポート運営を成功させるための一つの手段です。
カスタマーサポート業務をアウトソーシングすることで、業務効率化、応対品質の向上や顧客満足度の向上、コスト削減、BCP対策など多くのメリットが得られます。
ただし、大切なカスタマーサポート業務をアウトソーシングする際は、デメリットについても十分に考慮し、アウトソーサーを選定するためのポイントを押さえておく必要があります。

▼アウトソーシングを検討される方は、ぜひ以下の記事も参考にご覧ください。
【8月最新】カスタマーサポート代行10選│メリットと費用・選定ポイントを徹底解説

まとめ

本稿では、カスタマーサポートの基本的な知識をまとめ、オペレーターに必要な能力や業界動向、顧客満足度向上のヒントとなるカスタマーサポート運営のカギについてご紹介しました。
カスタマーサポート業務を運営するとなると、考えることや対応すべきことが多く、担当者の手を煩わせることもしばしばあります。

本稿を通して現状の見直しや、外部サービスの利用を含め、自社にとって最適な改善策を見つけるためのヒントを得ていただければ幸いです。

カスタマーサポート運営をアウトソーシングしたいとお考えのご担当者様

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 平井 美穂

    2012年、株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)へ入社し、コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属。フィールドサポータや営業コーディネータ、キャリアアドバイザー、新規営業、人材紹介(転職支援)などを経験。
    2020年 人材紹介にて自己最高売上を記録、時短勤務×妊娠中での実績が評価され全社月間MVPにノミネート。現在5歳と2歳を育てるパワフルワーママ!

    ・趣味:断捨離、森林浴、岩盤浴
    ・特技:細かい事に気が付く点

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