コールセンターの定着率向上ガイド|オペレーターの抱える問題や具体的な改善施策を解説
2025/05/19
- 教育・育成
- 離職率改善

コールセンター運営において安定した顧客満足度を得るためには、経験豊富なオペレーターの定着・長期就業継続が必要不可欠です。しかし、業界の特性上コールセンターのオペレーターの定着率は改善が難しく、長年の課題となっています。
では、定着率向上のために運営側はどのような対策を打つことができるのでしょうか。
本記事では、オペレーターが抱えるリアルな悩みや定着率向上によるメリット、離職防止・定着率向上施策をご紹介します。
オペレーターのモチベーションアップは従業員満足度(ES)に反映され、顧客への持続可能なサービス提供とNPS向上にも繋がります。本記事を参考に、今日から一緒に取り組んでみましょう。
コールセンター業界の特性
コールセンターは顧客の課題解決の最前線を担っています。
近年、AI技術の進歩により、チャットボットやボイスボットを活用した自動化が進んでいます。これにより、顧客自身で問題を解決できる仕組みが増えました。しかし、ニーズを正確に把握することが難しく、臨機応変な対応が求められるテクニカルサポートや、説得力や信頼性が不可欠な新規顧客開拓など、依然として人間のオペレーターにしか対応できない業務も多く存在します。
その一方で、コールセンター業界は高い離職率が課題です。
24時間365日体制で運営されるコールセンターもあり、人員不足が慢性的な問題となっています。このため、労働力の確保が難しく、アルバイトや派遣社員などの非正規雇用者の割合が高い傾向にあります。これがコールセンター業界の特徴の一つといえるでしょう。
参考記事:コールセンタージャパン2019年1月号
オペレーターが抱える問題・不安
それでは、実際にコールセンターで働くオペレーターがどのような問題や不安を抱えながら就業しているのでしょうか。
本章では、あらゆるセンターで共通して挙がる離職理由をピックアップし、解説します。

クレーム対応・カスタマーハラスメントによる心労
コールセンターでは、顧客の生の声を直接受けるため、オペレーターは日常的に厳しく感情的な言葉やクレームに対応することになります。特に、非対面であるため、顧客がオペレーターに攻撃的な言動や理不尽な要求を行う「カスタマーハラスメント」が発生しやすい環境にあります。
顧客対応で受けた精神的なストレスは、体調に現れることもあり、コールセンターでの仕事を検討する際の高いハードルとなり、最終的に離職につながることがあります。
不十分な研修体制
オペレーターには、基本的な電話対応マナーに加え、その場で顧客のニーズに応える臨機応変な課題解決力が求められます。管理者にエスカレーションできる環境やマニュアルが整備されている場合もありますが、リアルタイムでの対応が求められるため、サービスの概要から専門的な知識まである程度習得していなければなりません。
新人オペレーターが最も不安を感じるのは、基礎研修後のOJTやオペレーターデビュー時です。運営側は、1日でも早く顧客対応を開始させるために最低限の研修でオペレーターデビューを目指します。
しかし、AI技術の進化により顧客の自己解決能力が向上しており、コールセンターのオペレーターにはより高いレベルの対応が求められています。このギャップにより、研修内容と実際の対応内容に差が生じ、早期退職を検討するオペレーターも少なくありません。
SV(スーパーバイザー)によって異なる運営方針
オペレーターが判断に迷った際に頼りにするのはSV(スーパーバイザー)ですが、「Aさんに聞いた処理方法とBさんに聞いた処理方法が異なり、どちらが正しいのかわからない」といった事例が発生することがあります。
このような場合、オペレーターは業務上の疑問を解消できず、次の対応に活かせないことになります。その結果、業務効率が低下し、曖昧な案内が顧客からの信用を失う原因にもなります。
実際に顧客対応を行うのはオペレーターであるため、SVは顧客満足度を意識し、エスカレーション対応を行うことが求められます。また、こうした事例が頻発すると、上層部への不信感が増し、役職者を目指しているオペレーターがキャリアアップを断念するケースも多く見られます。
無理なノルマや目標設定
アウトバウンドであれば架電件数やアポイント件数、インバウンドであれば応対品質や対応にかかった時間など、オペレーターには数値目標が課せられます。しかし、現実的でないノルマや目標設定は、オペレーターのモチベーション低下を招きます。
目標が設定されること自体は理解しつつも、達成方法やプロセスの考え方に困惑するオペレーターも多く、これがストレスや離職の一因となります。
人間関係を構築しにくい就業環境
オペレーターが抱える問題が多いだけでなく、非正規雇用者の多さも人が離れやすい要因となります。特にキャリアアップを目指して長期的に就業を考えている人にとって、人の入れ替わりが激しく、人間関係を築くことが難しい点がコールセンターでの就業継続をあきらめる原因となることがあります。
定着率向上によるメリット
ここまではコールセンターで働くオペレーターが抱える問題点を述べてきました。
離職につながりやすい問題に適切に対処し、オペレーターの定着率を向上させることで、顧客満足度の向上や採用コストの削減につながります。また、コールセンター運営における他の課題にもアプローチする余裕が生まれます。
定着率向上によるメリットを理解することで、課題解決に向けた施策を立てやすくなります。今回は、主に3つのメリットについて解説します。

生産性やNPSの向上
同じ業務で長く勤務しているオペレーターは、経験を積むことで迅速に顧客の課題を解決できるようになります。その結果、センター全体でクレームが減少し、対応時間の短縮が実現します。これにより、顧客満足度の向上や企業イメージの改善が加速します。
長期的に安定した環境が整えば、オペレーターは業務効率を向上させ、顧客満足度(CS)をさらに高めることができます。また、オペレーター自身のモチベーションも向上し、成果を上げる意欲が高まります。
採用費等の運営コスト削減
定着率の向上は、採用コストの削減にもつながります。頻繁に採用活動を行う必要がなくなり、新人育成のための研修時間を削減することができます。
削減されたコストや時間は、次のような形で既存のオペレーターに還元し、さらにプラスの効果を得ることができます。
・中途研修や教育
新たなスキルの習得や、役職者間の知識統一を目的とした研修
・テクノロジーやシステムの導入
リモートワークシステムやマニュアルの自動化など、柔軟な勤務形態をサポートするシステム
・従業員福利厚生の提供
自動販売機の設置、食事補助、託児所の開設など、従業員の満足度を向上させる福利厚生
業務環境の安定化
同じメンバーで長く働くことで、チームやセンター内の連携が強化され、業務効率が向上します。メンバー間でのコミュニケーションが活発になり、信頼関係が生まれることで、顧客対応で精神的なダメージを受けても、同じ環境で頑張っている仲間がいるという安心感からモチベーションが高まります。
従業員の定着率が向上し、メリットが現れ始めると、リモートワークの導入や時短勤務など、ライフワークバランスを重視した働き方が可能になります。これにより、従業員満足度(ES)が向上し、さらなる定着を促進する好循環が生まれます。
離職抑止・定着率向上に効果的な4つの施策
オペレーターの課題を解決しつつ、パフォーマンスを最大化するために、運営側が取り組むべき施策を4つご紹介します。

充実した研修制度を整える
入社後の初期研修だけでなく、オペレーターデビュー後にも定期的なフォロー研修を行うことで、オペレーターは安心して業務に取り組むことができます。
入社直後は「何が分からないのか分からない」状態で、実際の顧客対応が始まると初めて課題が見つかることがほとんどです。そのため、オペレーターデビュー後にも定期的に研修や質問会の機会を設けることで、オペレーターが自信を持ち、エスカレーションの質や業務効率が向上します。
また、オペレーターだけでなく、運営方針の統一のためにSVや管理者に対しても研修や定期的なミーティングを必ず確保しましょう。SVにはオペレーターとしての実務経験や知識だけでなく、オペレーターへの適切な指導や、センターの効率化、品質向上のための分析力、スケジュール管理能力が求められます。
自社内で研修の時間が取れない場合は、外部の研修サービスの利用も検討するとよいでしょう。
▼オペレーター育成やSV教育に関する記事はこちら
「CS向上させるオペレーター育成法とは│具体的な研修内容やポイントについて解説」
「コールセンターSVの必要スキルとは│効果的な教育方法についてポイントを解説」
ノルマや目標設定の見直し
現在のノルマやNPS目標などのKPI設定は現実的でしょうか。再度、センター全体の数値を細分化し、目標を設定しましょう。「なぜその目標を達成しなければならないのか」という理由を明確に伝えることで、オペレーターは納得して目標に向かって取り組むことができます。
また、目標達成のために必要な行動や、達成できなかった場合の改善策をチームごとに共有し、個別面談を行うことで、仲間としての連帯感が生まれます。
カスタマーハラスメント対策
カスタマーハラスメントはオペレーターのモチベーション低下や、最悪の場合心身に影響を及ぼします。さらに、対応が長引くことによる応答率の低下や企業イメージの損失など、生産性やNPSにも悪影響を与えます。
カスタマーハラスメントが発生するリスクを最小化し、万が一発生した際には迅速に対応できるよう、マニュアル化しておくことが重要です。クレームが転じてカスタマーハラスメントに発展することが多いため、エスカレーションの判断基準やスクリプトの準備を整えておきましょう。
また、通話録音の周知やガイドライン・ポリシーの明文化、オペレーターの感情コントロールトレーニングなどが、カスタマーハラスメントの発生リスクを抑える方法として有効です。
▼クレーム対応・カスタマーハラスメントに関する記事はこちら
「元CS担当者が解説│クレーム対応の心得・NG対応・発生させない仕組みづくり」
「カスタマーハラスメントからオペレーターを守る!│コールセンターでの発生原因や対応策を解説」
定期面談の実施
オペレーターとの定期面談は、メンタルケアだけでなく、センター運営の課題を発見するための貴重な機会でもあります。懸念点を早期に発見し、離職を未然に防ぐためにも、定期的に面談を行いましょう。
従業員満足度を高めることで定着率が向上しますが、すべての施策を一度に試みるのは規模が大きすぎることもあります。その場合、ウィルオブ・ワークではセンター内でSVや管理者として勤務しながら、派遣スタッフの業務フォローやメンタルケアを行うフィールドサポーターとしての人材紹介を行っています。
まとめ
今回はコールセンターの定着率向上施策についてご紹介しました。
定着率を向上させるためには、オペレーターが抱える課題を理解し解決すること、そして同じ課題が繰り返されないように環境を整えることが重要です。
ウィルオブ・ワークでは、オペレーターが働きやすい環境づくりの一環として、フィールドサポーターやユニット派遣のサービスをご提供しています。
次回は、弊社が提供する「フィールドサポーター」サービスについて詳しくご紹介します。コールセンター現場の課題解決にどのように役立つのか、またフィールドサポーターを導入することで得られるメリットについて解説しますので、ぜひご期待ください。
コールセンターの定着率を改善したい・・・とお悩みのご担当者さまへ
「採用しても研修中の離脱が多くて悩んでいる」「現場の定着率を改善したい」「オペレータースキル向上のための研修を一から構築したい」とお悩みのご担当者さま、お気軽にウィルオブ・ワークにご相談ください。コンタクトセンター専門特化25年以上の弊社は、お客さまの運営課題にカスタマイズしたご提案をさせていただきます。ご相談・お見積りは無料ですので、お気軽にご相談ください。
Writer編集者情報
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コネナビ編集部 田中 詩絵菜
2019年4月、株式会社ウィルオブ・ワークに新卒入社。
接客・販売に特化した事業部の専門職正社員として、携帯販売を約2年経験。
2021年8月に総合職正社員としてコールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属。
コーディネーター業務を経て、現在はキャリアアドバイザーを担当。
・趣味:音楽鑑賞、ダンス
・特技:スタッフさんのお名前や、趣味・特技などを覚えること