元CS担当者が解説│クレーム対応の心得・NG対応・発生させない仕組みづくり
2025/01/28
- 品質向上
- 顧客満足度向上
コールセンターの運営において、顧客からのクレームは避けて通れない問題です。顧客が抱える不満や怒りはさまざまで、時には企業への期待も含まれます。コールセンターのクレーム対応は、マニュアル通りの対応では解決できないケースもあるため、多くの新人SVやオペレーターは、適切な対応ができずに悩むこともあるのではないでしょうか。
本記事では、元カスタマーサポート担当の筆者が、顧客クレームの本質とその効果的な対処法について解説します。 「クレーム対応でやってはいけないこと」「クレームを発生させないための仕組みづくり」についても触れますので、円滑なコールセンター運営の実現のためにご参考ください。
コールセンターのクレームとは
はじめに、「クレーム(Claim)」という言葉は、直訳すると「主張」や「要求」を意味します。コールセンターにおいては、顧客が製品やサービスに対して抱いた不満や問題点を伝える行為を指します。
クレームは一見ネガティブに捉えられがちですが、企業と顧客の重要なコミュニケーション手段の一つです。適切に対応することで、顧客満足度の向上や信頼関係の構築が期待できるだけでなく、サービスや製品の改善につながる貴重な機会にもなります。
クレームの種類
コールセンターに日々寄せられるクレームには、さまざまな種類があります。品質クレーム、対応クレーム、顧客期待値のギャップによるクレームです。詳しく見ていきましょう。
品質クレーム
製品やサービス自体の品質に対する不満から生じるクレームです。品質クレームは、商品の機能や性能の不具合、サービス提供内容が聞いていた内容と異なる場合に発生します。
対応クレーム
コールセンターでの対応に起因するクレームです。オペレーターの対応が悪い、説明の仕方が分かりづらい、対応スピードが遅いなどの理由で顧客の不満が高まり、クレームに繋がります。
顧客期待値のギャップによるクレーム
顧客が事前に抱いていた期待が、実際のサービスや製品と一致しなかった場合に発生するクレームです。この種類のクレームは、期待値の誤解や説明不足によって生じることが多いです。
クレームの発生原因
品質クレームの原因
品質クレームは、主に商品やサービスそのものの不備や、品質管理の不十分さが原因です。
具体例
• 商品の破損や欠陥が発見された場合
• サービス内容が、広告や事前説明と異なっていた場合
対応クレームの原因
対応クレームは、オペレーターのスキルやコールセンターの体制が不十分であることが原因です。顧客が求めるレベルの対応ができない場合、不満がクレームに発展します。
具体例
• オペレーターの説明が不十分で、顧客の疑問が解消されなかった場合
• 応対中の態度が冷たく感じられた場合
顧客期待値のギャップが原因
顧客期待値のギャップによるクレームは、顧客が「こうであるはず」「こうしてくれるだろう」と期待していた内容と、実際の提供内容が一致しなかった場合に発生します。
具体例
• 手続きが複雑で時間がかかった(簡単だと思い込んでいた)
• サポートが迅速に提供されると思ったが、待たされた
日本はサイレントクレーマーが多い?声をあげる割合と、顧客の心理状態
クレームを言う割合
日本では、不満を感じても企業にクレームを申し出ない「サイレントクレーマー」が多いと言われています。以下のグラフは、日本とアメリカにおけるクレームの申し出割合を比較したものです。
出典:https://service.nikkei-r.co.jp/report/cscx_id94
日本では、企業に対して不満を感じる割合はアメリカとほぼ同じですが、実際に申し出る割合は3割弱に留まっています。これは、日本特有の「言いたいことを我慢する文化」が影響していると考えられます。
クレームを言う顧客の心理状態
言いたいことを我慢する文化が根付く日本ですが、その中で声をあげる顧客は、どのような心理状態でクレームを申し出ているのでしょうか。
顧客のクレームの背景にはさまざまな感情が潜んでいます。詳しく見ていきましょう。
困っている・怒っている
商品の不具合や説明不足、納品の遅れなど、顧客が不便や不満を感じているケースです。多くのクレームは、謝罪や問題解決を求める心理から発生します。
公平性を求める
他の顧客と比較して不公平に扱われた場合に起こるクレームです。たとえば、案内の順番が守られていない、特典が自分だけ適用されていないといったケースが該当します。
改善提案や指摘
顧客の正義感や親切心から、サービスや製品の改善を求めるケースです。「オペレーターの対応が機械的で冷たい」「サービスページが分かりづらい」などの指摘が考えられます。この場合は、建設的な意見として受け止め、改善に努めることが重要です。
不当な要求や金銭目的
一部の顧客は、金銭要求や不当な理由でクレームを申し出る場合があります。このようなケースでは、毅然とした態度で対応し、必要に応じて上司や組織と連携することが求められます。
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顧客がクレームを申し出る際、「悲しみ」「不安」「怒り」「嫌悪」などの感情が潜んでいます。特に、怒りは「自分の声を聞いてほしい」「不満やモヤモヤを解消したい」という心理の表れであることを理解しましょう。
クレーム対応でやってはいけないこと
クレーム対応において、顧客の心理状態を理解し、適切に対応することが重要と学びました。しかし、間違った対応をすると問題を悪化させる原因になります。 本章では、クレーム対応時に避けるべき6つの行動を解説します。
親身な姿勢になっていない
形式的で冷たい対応は、顧客の不満をさらに増幅させます。顧客は「話を聞いてほしい」「共感してほしい」と思っているので、「こちらには関係ありません」「規則なのでできません」といった発言は、クレームを悪化させる原因になります。 例えば、「ロボットのような対応ですね」と顧客から指摘された場合、その背後には「もっと気遣いを感じる言葉がほしい」という期待が隠れているでしょう。親身な姿勢で対応し、顧客の心情を察し、共感することが求められます。
謝罪しない
顧客の不満に対して謝罪をしない対応は、二次クレームを招くリスクがあります。たとえ企業側に明確な過失がなくても、顧客の感じた不快感や不満に対して謝罪することは重要です。 「自分の声を軽視された」と感じさせないためにも、「この度はご不便をおかけして申し訳ございません」と誠意ある謝辞を伝えることで、顧客の怒りを和らげ、信頼回復につなげましょう。
たらいまわしにする
コールセンターの対応で起こりうるのが、他部署へのたらいまわし問題です。初回対応で状況を正確に把握せず、他部署や他担当者へのたらいまわしをすることは、顧客は「誰も責任を取らない」と感じ、不信感が増幅します。
転送が必要な場合は、事前に顧客へ理由を説明し、引き継ぎ先での対応を確実に行う体制を整えましょう。
話を遮る・かたくなに断る
顧客の話を遮る行為も、怒りを増幅させる原因です。また、「できません」と即答することも避けるべき対応です。顧客が納得するまで話を聞き、可能性を検討した上で代替案を提示する姿勢をみせましょう。
顧客の要望を聞かず解決策を提示する
顧客の話を十分に聞かないまま解決策を提示するのは、クレーム対応において逆効果です。顧客は「自分の気持ちを理解してほしい」と思いコールセンターに電話をかけています。話を途中で遮って提案すると、「聞く耳を持っていない」「こちらの要望と異なる」と感じ、状況を悪化させる恐れがあります。
火に油を注ぐワードの使用
クレーム対応において、「ですから」や「先ほども申し上げましたが」といった表現は、避けるべきフレーズです。これらのフレーズは、顧客に「軽視されている」「責められている」という印象を与え、不満や怒りをさらに増幅させる原因となります。 顧客が納得しない場合や、何度説明しても理解が得られない状況では、つい「火に油を注ぐワード」を使いたくなる場面もありますが、感情的にならず冷静な対応を心がけましょう。表現を工夫することで、顧客の気持ちを和らげ、信頼関係を築く一助となります。
言い換えの例 |
|
ですから |
→ 恐れ入りますが |
先ほども申し上げましたが |
→繰り返しのご案内となり申し訳ございませんが |
クレーム対応の心得
AIやシステムの自動化が進む中で、クレーム対応は人間にしかできない重要な役割です。顧客の感情に寄り添い誠実に対応することで、信頼関係を築く機会となります。
本章では、クレーム対応における具体的な心得を6つご紹介します。
傾聴すること
クレーム対応において最も重要なのは、顧客の話を最後までしっかり傾聴することです。顧客は自分の気持ちや不満を理解してもらいたいと考えています。相槌を打ち、話を聞いているという安心感を与えたり、必要に応じて「それはお困りでしたね」と声掛けをしたりすることで、「自分の話を聞いてくれている」という安心感を与えることができます。 傾聴する姿勢が、顧客の不満や怒りを和らげ、建設的な対話へつなげる第一歩となります。
相手の気持ちに寄り添うこと
どのような状況でも否定することなく、顧客の気持ちに寄り添いましょう。怒りや悲しみ、不安といった顧客の感情に共感することが大切です。 「それはお困りでございますね」「おっしゃる通りでございます」といった共感の言葉をかけることで、顧客との心理的な距離が縮まり、信頼関係を築く基盤作りになります。
顧客の要望に出来る限り応える
顧客の要望をしっかりと聞き取り、可能な範囲で実現する努力を見せることが重要です。たとえ要望を全て叶えられなくても、誠実に対応することで顧客の納得感を得られます。
ポイント
• 「おっしゃる内容について検討いたします」と前向きな姿勢を示す。
• 実現が難しい場合は、代替案を提示し、努力の姿勢を伝える。
双方にとって最適な提案をする
顧客の要望をただ鵜呑みにするのではなく、会社や顧客双方にとってメリットのある解決策を提案します。「○○を改善することで、今後同様の問題を防ぐことができます」といった代替案を提示しつつ、顧客が納得しやすい背景や理由を伝えましょう。
最適なタイミングでのエスカレーション対応
自分だけでは対応が困難な場合や、クレームが長引く場合は、上司や専門部署へのエスカレーションを検討しましょう。判断が難しい対応の場合、自分で解決しようと努めるよりも、エスカレーションすることで問題が円滑に解決する場合があります。 ただし、エスカレーション癖がつくと、センター全体の生産性低下や自身の対応力低下といった問題につながるため、適切なタイミングをルール化するとよいでしょう。
感謝の気持ちを伝える
クレームを伝えてくれた顧客に対し、感謝の気持ちを伝えましょう。顧客のクレームは、サービスや製品改善につながる機会です。「貴重なご意見をいただき、ありがとうございます」と感謝を伝えることで、顧客との信頼関係修復につながります。
クレームが発生しない仕組みづくり
最後に、コールセンターで取り組めるクレーム発生抑止施策についてご紹介します。
製品やサービスの改善
クレームの多くは、製品やサービスの品質に起因します。これを防ぐには、顧客の声を積極的に収集し、改善に反映させる仕組みが必要です。
具体的な施策
• 顧客アンケートやレビューの活用:顧客から寄せられる意見を分析し、多くの人が指摘する問題を優先的に改善
• VOC(Voice of Customer)分析の実施:他部署と連携し、顧客の声を全社的な改善活動に反映 これらを継続的に行い、製品やサービスの品質を向上させ、クレーム発生率を下げましょう。
センター側でのマネジメント強化
コールセンターの管理体制を強化することで、対応品質を高め、クレーム発生を未然に防ぐことができます。
研修の充実
必要最低限の研修に加え、クレーム対応専用の研修を取り入れましょう。具体的な事例を使った研修を行うことで、突発的なクレームにも冷静に対応できるスキルが身につきます。
サポート体制の構築
オペレーターが安心して対応できるよう、現場リーダーやSVがフォローしやすい環境を整えます。また、クレーム発生時のサポート依頼方法(手上げ合図など)を明確にし、迅速なエスカレーションを可能にしましょう。
オペレーターのフォロー
クレーム対応後には、オペレーターの精神的なフォローが欠かせません。「最後までよく頑張りましたね」といった声掛けや、適切なフィードバックを行い、次回以降の対応力向上につなげます。 こうしたマネジメントの工夫は、オペレーターのモチベーション維持やクレーム件数の削減に直結するでしょう。
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顧客の自己解決率を上げる
顧客がコールセンターに連絡する前に、自分で問題を解決できる仕組みをつくることも、クレーム発生抑止に有効です。
具体的な施策
• チャットボットの導入:商品のトラブルシューティングを即時に案内できるツールを活用
• FAQの充実:よくある質問を分かりやすくまとめたページをウェブサイトに掲載
顧客の自己解決率を高める施策を導入することで、顧客がスムーズに問題を解決できるようになり、コールセンターへのクレーム発生率を低減できるようになるでしょう。
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コールセンターのクレーム対応についてのまとめ
本記事では、クレームの種類や発生原因の理解から、避けるべきNG行動、適切な対応の心得、クレームを未然に防ぐ仕組みづくりについて解説しました。
コールセンターにおけるクレーム対応は、単なる問題解決だけでなく、顧客との信頼関係の構築と、サービス品質を向上させる貴重な機会です。クレームの本質を理解し適切に対応することで、顧客満足度の向上だけでなく、コールセンター全体の効率化にもつながります。
コールセンターの現場でクレーム対応に悩む方にとって、本記事が実務に活かせられる知識習得のきっかけになれば幸いです。
コールセンター運営に課題をお持ちのご担当者様、ウィルオブ・ワークのBPOサービスをご活用ください
「応対品質向上が課題だが、オペレーターの対応レベルがあがらない」「クレーム対応によりセンター全体の生産性が低下している」「離職率が改善されず、具体的な施策が打ち出せていない」このようなお悩みをお持ちの方は、一度ウィルオブ・ワークにご相談ください。コンタクトセンター運営実績25年、さまざまな業界業種のコールセンター業務の改善実績のあるウィルオブ・ワークは、課題に合ったサービス提供が可能です。ご相談、お見積りは無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
Writer編集者情報
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2012年、株式会社セントメディア(現:株式会社ウィルオブ・ワーク)へ入社し、コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービス事業部に配属。フィールドサポーター、営業コーディネーター、キャリアアドバイザー、新規営業、転職支援など幅広い業務を経験。2020年には転職支援サービスにおいて自己最高売上を記録し、育児中の時短勤務ながら成果を上げた実績が評価され、全社月間MVPノミネートおよび事業部内MVPを受賞。同時期に、西日本営業部MVPも2か月連続で受賞。現在は、6歳と4歳の子どもを育てるワーキングマザー。
・趣味:森林浴、神社巡り
・特技:細かい点に気が付くところ