アクティブリスニングとは?期待できる効果やコールセンターでの活用法を解説 

2025/01/28

現代社会では、相手の意図や感情を理解し対応するコミュニケーション能力が求められています。特にコールセンター業界では、顧客の不満や要望を迅速に把握し、問題を解決する力が重要です。 

そこで役立つのがアクティブリスニング(積極的傾聴)です。アクティブリスニングは、単に「聞く」のではなく、話し手の感情や意図を深く理解し共感を示すことで、信頼関係を築き、問題解決能力を高めるスキルです。 

本記事では、アクティブリスニングの概要や具体的な効果、活用のための手法や注意点を解説します。アクティブリスニングについて学び、より良いコミュニケーションを実現する手段を探っていきましょう。 

アクティブリスニングとは?

アクティブリスニング(積極的傾聴)は、話し手の感情や意図を理解し、共感を示すことでコミュニケーションを深めるスキルです。 

現代のビジネス環境では、相手の話を「聞く」ことが重要視されており、顧客対応やチーム運営においては、信頼関係の構築や問題解決の鍵となります。 
特にコールセンター業界では、顧客の悩みや要望を的確に把握することで、スムーズなクレーム対応や顧客満足度の向上が期待できるでしょう。 

アクティブリスニングが注目されている背景

近年では、顧客体験(CX)の重要性が高まり、「自分の話をしっかり聞いてもらえた」と感じることが、顧客満足度やリピーター獲得に大きく影響しています。 
マネジメントや社員育成の場面においても、部下や新入社員の悩み・意見を正確に汲み取り、適切なフィードバックやサポートを行うことで、チーム全体のモチベーション向上や信頼関係の構築につながります。 

このように、アクティブリスニングは顧客対応だけでなく、組織全体の成長を支える基盤として注目を集めています。 

アクティブリスニングで期待できる効果

アクティブリスニングは、信頼関係を築き、問題解決能力を高めるための非常に効果的なスキルです。このスキルは、ビジネスや日常生活にとどまらず、特にコールセンター業界のような顧客対応が重視される現場で大きな効果を発揮します。ここでは、一般的な4つの効果について解説します。 

信頼関係の構築

アクティブリスニングを実践することで、話し手は「自分の意見や感情がきちんと受け止められている」と感じ、聞き手への信頼感を深めます。 

たとえば、コールセンターで顧客の悩みやクレームに真摯に耳を傾け、共感を示す対応を行うと、顧客は「この企業は自分を大切にしてくれる」と感じ、満足度が向上します。 

また、この効果は社内コミュニケーションにおいても発揮されます。部下がリーダーに対して不満や悩みを打ち明ける場面で、リーダーがアクティブリスニングを使うことで、部下は「話して良かった」と感じ、リーダーを頼れる存在だと認識するようになります。こうした信頼関係の構築は、職場の円滑なコミュニケーションを支える重要な要素となります。 

問題解決能力の向上 

アクティブリスニングは、コールセンターで顧客の意図や背景を正確に把握し、問題の根本原因を明確にするための強力な手段です。 
顧客からの問い合わせ内容を丁寧に聞き取り、潜在的なニーズや真の問題を的確に理解することで、オペレーターは迅速かつ適切な解決策を提示できます。これにより、顧客は「自分の問題がしっかり解決された」と感じ、顧客満足度向上やリピーターの増加が期待できるでしょう。 

特にクレーム対応の場面では、顧客の不満や悩みを真摯に傾聴することで問題の焦点を早期に特定し、解決までのプロセスを効率化できます。こうした対応は、トラブルのエスカレートを防ぎ、顧客との信頼関係を構築する基盤となります。 

ハラスメント防止・抑制

アクティブリスニングは、カスタマーハラスメント(カスハラ)を抑制するための有効な手段にもなります。 
顧客の感情を正確に汲み取り、共感を示すことで、怒りや不満のエスカレートを防ぐことが期待できます。クレーム対応では、真摯な傾聴と冷静な対応によってトラブルを早期に収束させることが可能でしょう。 

また、オペレーターの悩みに耳を傾けることでストレスの蓄積を防ぎ、心理的安全性の向上に寄与します。 

顧客満足度(CS)の向上

コールセンターでは、顧客が「自分の話をしっかり聞いてもらえた」と感じることが、顧客満足度(CS)に直結します。 

たとえば、商品の不具合を訴える顧客に対し、アクティブリスニングを実践して丁寧に対応することで、「この企業は信頼できる」と感じるようになります。 
この結果、リピーターが増加し、ポジティブな口コミによって新規顧客の獲得が期待できるでしょう。 

アクティブリスニングの手法

アクティブリスニングを効果的に実践するためには、「バーバルコミュニケーション(言葉を用いる技術)」と「ノンバーバルコミュニケーション(非言語的な技術)」の両方を活用することが重要です。本章では、それぞれの具体的な手法と実践例を解説します。 

バーバルコミュニケーション

バーバルコミュニケーションとは、言葉を使ったコミュニケーションのことを指します。アクティブリスニングでは、言葉を通じて話し手の意図を確認したり、共感を示したりする技術が求められます。 

具体的な手法と例: 

反復・要約 
手法: 話し手の言葉を繰り返したり、要約したりして確認します。 
例: 「つまり〇〇ということですね?」と相手の話を簡潔にまとめることで、話し手に「正しく理解されている」と感じてもらえます。 

質問で会話を深める 
手法: オープンクエスチョン(相手の考えを引き出す質問)を使って、話を掘り下げます。 
例: 「具体的にはどういう状況でしたか?」や「それについて詳しく教えていただけますか?」などの質問で、話し手の思考や感情を整理しやすくします。 

共感を示す言葉を使う 
手法: 相手の気持ちに寄り添ったフレーズを使います。 
例: 「それは大変でしたね」「そのお気持ち、よくわかります」といった共感の言葉は、話し手に安心感を与えます。 

ノンバーバルコミュニケーション

ノンバーバルコミュニケーションとは、言葉を使わずに行う非言語的なコミュニケーションのことを指します。相手に安心感や信頼感を与えるためには、聞き手の態度や表情が重要な役割を果たします。 
しかし、電話対応では表情が見えないため、声のボリュームやトーン、話すスピードが特に重要となります。これらの要素を意識することで、より効果的なコミュニケーションを図ることができるのです。 

具体的な手法と例 

声のトーンで相手を落ち着かせる 
手法: 落ち着いたトーンや優しい声で話しかけます。 
例: クレーム対応の際、「落ち着いて対応しています」と相手に感じてもらうことで、怒りを和らげることができます。 

うなずきで話を促す 
手法: 話し手が話しやすくなるように、適度なタイミングでうなずきを入れます。 
例: 「うんうん」とうなずくことで、話し手は「もっと話していいんだ」と感じ、自分の気持ちを素直に話しやすくなります。 

視線で関心を示す 
手法: 話し手に適度にアイコンタクトを送り、関心を示します。 
例: 話している相手の目を見ることで、「あなたの話に集中しています」という姿勢を伝えることができます。 

表情で安心感を与える 
手法: 穏やかな表情や微笑みを心掛けます。 
例: 怒りや不安を抱える話し手に対しては、リラックスした表情で対応することで、相手の感情を落ち着かせる効果が期待できます。 

▼ノンバーバルコミュニケーションについて解説している記事はこちら
ノンバーバルコミュニケーションとは?コールセンターでの活用法とその効果を解説

コンタクトセンターで必要な3つの心構え

アクティブリスニングを実践する際には、単に技術や手法を学ぶだけでなく、聞き手自身の心構えが重要です。聞き手がどのような姿勢で相手と向き合うかによって、コミュニケーションの質が大きく変わります。 
本章では、アクティブリスニングを効果的に行うための3つの心構えについて解説します。 

無条件の肯定的配慮

無条件の肯定的配慮とは、相手を一切否定せず、そのまま受け入れる姿勢を指します。話し手がどのような意見や感情を持っていても、先入観を持たずに受け止めることが大切です。 
この姿勢を取ることで、話し手は安心して自分の本音を話すことができ、信頼関係が深まります。 

実践例 
・顧客がクレームを伝える際に、「そう感じられたのですね」とまずは受け止める言葉をかける。 
・部下が失敗について話しているときに、「それは大変だったね」と共感を示し、叱責や評価を控える。 

自己一致

自己一致とは、聞き手が自分の感情や考えに正直であり、無理に取り繕わない姿勢を指します。聞き手が本音で対応していることが相手に伝わると、話し手は安心感を覚え、自然なコミュニケーションが生まれます。 
無理に取り繕うと相手に不信感を与えてしまう可能性があるため、自分の気持ちに素直に向き合うことが大切です。 

実践例 
・顧客の話が理解できない場合、「恐れ入りますが、もう少し具体的に教えていただけますでしょうか。」と正直に尋ねる。 
・部下の話に対して、無理にポジティブな反応を取るのではなく、「それは難しい問題だね」と正直に共感を示す。 

共感的理解

共感的理解とは、話し手の立場や感情を理解し、それに寄り添う姿勢を指します。ただ話を聞くだけでなく、話し手が感じていることを汲み取り、それを尊重した言葉や行動で示すことで深い信頼を築くことができます。 
共感を示すことで、話し手は「自分の話が理解されている」と感じ、聞き手への信頼感をさらに深めます。 

実践例 
・「それはとても辛い経験だったのですね」と相手の感情に寄り添う言葉をかける。 
・部下が提案を話しているときに、「そのアイデアを実現したら、チーム全体が助かるね」とその価値を肯定する。 

成果を測る具体的なKPIを紹介

アクティブリスニングを効果的に活用することで、コールセンター業務での成果を具体的な指標で測定できます。 
本章では、顧客対応において重要とされるKPIをご紹介します。 

顧客満足度スコア(CSAT)

顧客満足度スコア(CSAT)は、顧客が提供されたサービスにどれだけ満足しているかを測る指標です。 
アクティブリスニングを取り入れることで、顧客の話を正確に理解し、共感を示す対応ができるようになり、顧客は「自分の意見が尊重された」と感じるようになります。CSATの向上は、顧客満足度の指標として最も直接的に影響を受けやすく、サービス全体の質を評価する基準となります。 

CPH・AHT・ATT

アクティブリスニングを活用することで、コールセンター業務の重要なKPIであるCPH(Calls Per Hour)、AHT(Average Handling Time)、ATT(Average Talk Time)を改善できます。 

CPH(Calls Per Hour)の向上 
CPHは、1時間あたりに処理できるコール数を示す指標です。アクティブリスニングを実践することで、顧客の要望や問題を的確に把握し、効率的に対応することができるため、1件あたりの無駄な時間を削減できます。その結果、1時間あたりの対応件数が増え、CPHが向上します。 

AHT(Average Handling Time)の短縮 
AHTは、1件の対応にかかる平均処理時間を示します。アクティブリスニングによって顧客の話を正確に理解し、解決に向けた効率的な対応ができるため、AHTを短縮できます。特に、クレーム対応の場面では、顧客が「聞いてもらえた」と感じることで、不満を長く話し続けることが減り、迅速な解決につながるでしょう。 

ATT(Average Talk Time)の最適化 
ATTは、1件のコールにおける通話時間の平均を示します。アクティブリスニングを通じて顧客の意図や要望を早期に把握することで、通話内容が的確になり、必要以上に長い通話を防ぐことができます。これにより、ATTの適正化が図れ、顧客満足度を損なうことなく効率的な対応が実現します。 

NPS(ネット・プロモーター・スコア)

NPS(ネット・プロモーター・スコア)は、「この会社やサービスを他人に勧めたいと思うか」を測る指標です。 
アクティブリスニングを通じて顧客が安心感や信頼感を持つと、NPSのスコアが向上しやすくなります。これにより、顧客がリピーターとなったり、口コミを通じて新しい顧客を獲得したりする可能性が高まるでしょう。 

1コールあたりの解決率(First Call Resolution)

1コールあたりの解決率(FCR)は、顧客が最初の問い合わせで問題を解決できた割合を示します。 
アクティブリスニングを実践することで、顧客の問題を正確に把握し、効率的に対応できるため、FCRの向上が期待されます。解決率が上がれば、顧客満足度の向上だけでなく、再問い合わせの減少につながり、業務全体の効率化が実現します。 

アクティブリスニングの注意点・改善のポイント 

アクティブリスニングは、顧客対応や職場でのコミュニケーションを円滑にするための非常に効果的なスキルですが、正しく実践しなければ逆効果になる場合もあります。 
本章では、実践時に注意すべきポイントと、その改善策を解説します。

気を付けたい注意ポイント

表面的な対応になってしまう

アクティブリスニングを実践しているつもりでも、適当に相槌を打ったり、形式的な共感の言葉を繰り返したりするだけでは逆効果です。 
たとえば、「そうなんですね」「大変でしたね」といったフレーズを機械的に使うと、話し手に「本当に聞いてもらえていない」と感じる可能性があります。こうした対応は信頼関係を築くどころか、相手に不信感を与えてしまうことがあります。 

聞き手が話の結論を急ぐ

話し手が自分の考えを伝え終える前に、「つまり、こういうことですか?」と結論を急ぐのはよくある失敗です。 
顧客が商品の問題点を説明している途中で、「それは〇〇が原因ですね」と聞き手が早々に判断してしまうと、話し手は「十分に話を聞いてもらえなかった」と感じてしまいます。このような対応は、アクティブリスニングの本質を損なう結果となります。 

聞き手が自分の意見を押し付ける 

聞き手が自分の体験や意見を語り始めることで、相手の話を遮ってしまうことも避けるべきです。たとえば、部下が悩みを相談している途中で、「私も昔こうだったから、こうすればいいんだよ」と自分の話を優先すると、話し手は「聞いてもらえていない」と感じ、心を閉ざしてしまいます。 

対策・改善のポイント

分析ツール(テキストマイニング・VOC分析・感情分析)の活用

AIを活用した録音や分析ツールは、顧客対応の質を向上させるだけでなく、オペレーターの負担軽減や業務効率の改善にも寄与します。たとえば、録音内容をテキスト化するテキストマイニングを使うことで、対応を効率的に振り返ることができます。 

さらに、VOC(Voice of Customer)分析を通じて顧客の意見や感情を把握し、不満度や満足度を数値化することが可能です。このデータは、顧客対応の改善だけでなく、サービス全体の品質向上にも役立ちます。 

また、感情分析により顧客のトーンや態度をリアルタイムで把握し、オペレーターが適切な対応を行うサポートも期待できます。これらのツールを活用することで、顧客対応の精度とコールセンター全体のパフォーマンスが向上します。

聞き手のスキルアップを支援するトレーニングの実施

オペレーターやリーダーがアクティブリスニングを効果的に実践できるよう、定期的な研修やトレーニングを実施することも重要です。 
たとえば、クレーム対応のシナリオを用意し、ロールプレイングを通じて「適切な共感を示す」「質問を活用する」といったスキルを実践的に学べる場を提供します。研修後には、実際の業務にスキルを活かすフィードバックを行うことで、スキルの定着を図ることが重要です。 

まとめ

アクティブリスニングは、顧客との信頼関係を深め、問題解決能力を向上させるために非常に効果的なスキルです。顧客体験(CX)の重要性が高まる中、顧客の言葉に真摯に耳を傾けることが満足度向上やリピーター獲得へと繋がります。 
また、マネジメントや社員育成の観点からも、部下との円滑なコミュニケーションを促進します。アクティブリスニングを実践することで、組織全体の成長を促し、健全な職場環境を築く力となるでしょう。 

ぜひ、本記事の内容を参考にして、日々のコミュニケーションを改善してみてください。小さな実践が職場や顧客対応に大きな変化をもたらすはずです。 

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Writer編集者情報

  • コネナビ編集部 上原 美由紀

    採用業務支援・求人広告事業会社を経て2019年9月に株式会社ウィルオブ・ワークに入社。
    コールセンターとオフィスワークに特化した人材サービスの事業部へ配属、キャリアアドバイザー職を経験。
    産育休を経て現在子育てにも奮闘中!
    ・趣味:音楽 ゲーム ディズニー お酒
    ・特技:タスク管理

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